新たな任務を受け、パラメドラ王国へ向かう事になった神竜隊。1個中隊の隊員を襲った敵の調査をするために彼等は方面師団と合流する為にパラメドラへ向かった。
「ユピローズを出てからもう2時間か・・・・」
マサシはC-1輸送機の窓から外を見ていた。青い海が広がっており、島は一つも無い。
C-1輸送機 日本の航空自衛隊が保有する中型輸送機。初飛行は1970年11月12日。試作機を含む31機が製造され、1機あたりのコストは約45億円とされてる。現在では機体の老朽化や、自衛隊の海外派遣など運用形態の問題から、後継機としてC-Xが開発中である。
神竜隊の7人はすでに私服からタクティカルスーツに着替えており、座椅子に座りながら自分の武器の手入れをしていた。
「パラメドラまであとどの位かかる?」
マサシが操縦士に時間を聞くと操縦士が前を見ながら言った。
「到着予定時間は5時間後のなっております」 「そうか」
到着予定時間を聞いたマサシは黒龍刀と白龍刀を鞘に収めた。
「大丈夫、姉さん?」
マサシの隣ではジゼルがタクティカルスーツに着慣れず体を動かすネリネを心配していた。
「な、なんだか着心地が悪いわね・・・・」 「あたしも最初はそうだったけど、今ではスッカリ慣れたわ。姉さんもすぐに慣れるわよ」 「そうかしら・・・・?」
いまいち体に密着しているタクティカルスーツに慣れないネリネを見ながらジゼルは笑っていた。マサシ達もそんなジゼルとネリネを見て小さく笑った。
「ところでマサシ」 「ん?」 「向こうに着いたらまずどうするの?」
コンタがマサシの顔を見てパラメドラ到着後の事を聞くと、ジゼル達もマサシの方を見た。
「まず輸送機は『トトロム平原』って所に着陸するんだ、そこにはパラメドラ方面師団の駐留基地があるからな。そこでパラメドラ方面司令官に挨拶してからサリム村に向かって中隊と合流するんだ」 「その後にコンテナの中に入っていた物を捜査するんだね?」 「ああ、数人とはいえ傭兵達を全滅させちまう程の奴だ、野放しにすると被害がどんどん大きくなる、村に到着しだいすぐに捜査を始める」
マサシ以外の神竜隊が同時に頷いた。しかし、到着まであと5時間もある、全員武器の手入れなどを終わらせてしまいやる事が無い。
「やる事がねぇな・・・・」
いつも真面目なユウタですらやる事が無いと口に出してしまう。
「仕方ない、到着するまで少し寝るか。ここ最近忙しくて寝不足だったんだよ、ふわぁ〜〜」 「よく言うぜ、収監中は独房の中でずっと休んでたくせに・・・・」 「それはそれ、これはこれ・・・・」
ユウタの言った事をサラリと流し、マサシは座ったまま腕を組んでゆっくりと目を閉じた。
「マサシ?」 「ZZZZZ・・・・」 「す、凄い・・・・もう寝ちゃった」
さっき目を閉じたばかりなのにもう鼾(いびき)を掻いているマサシを見て驚くジゼル。
「まったく、これから大事な任務だって言うのよく眠れるな・・・・」 「この緊張感の無さがトラブルを起こさなければいいがな・・・・」
マサシの寝顔を見て呆れるユウタとレイナ。しかし、そんな二人を見てシオンが笑いながら言う。
「大丈夫よ、コイツは本番では誰よりも真面目に任務をするから♪」 「真面目なのに考える作戦は無謀なものばかりだけどね」 「アハハ!確かに!」
マサシをフォローしているシオンに笑いながら言うコンタ。そんな二人を見てユウタとレイナも少し緊張が取れたのか小さく笑った。
「・・・・いつもこんな感じなの?」 「うん、まぁね」 「そ、そう・・・・」
コンタ達の会話を見て少し驚きながらジゼルに尋ねるネリネ。ジゼルも神竜隊の空気に溶け込み笑って答える。
「フフフ・・・・・・・ん?」
笑っていたジゼルが突然目を擦った。
「どうしたの?」 「う、ううん・・・・なんだか・・・・あたしも急に眠くなってきて・・・・」 「え?」 「あれ?・・・・・・さっきまで、全然眠くなかったのに・・・・」
突然の眠気にジゼルはゆっくりと目を閉じ、マサシの肩にもたれながら眠ってしまった。
「どうしたんですか?」 「それが、ジゼルも眠っちゃったのよ」 「え〜?」
ジゼルまで眠ってしまった事を聞き、コンタ達はマサシとジゼルの方を見た。
「おいおい、マサシならともかく、ジゼルまで眠っちまったのかよ?」 「どうしちゃったのかしら?」 「分からないわ、なんだか突然眠くなってきたって・・・・」
コンタ達は眠っている二人を座りながらジッと見ていた。
「それにしても、こうして見るとこの二人、恋人に見えるね」 「そう言えばそうね」
二人の寝顔を見てコンタとシオンが笑いながら二人を見て言った。ユウタやレイナ、そしてネリネも二人を見てそう思っているのだろう、小さく笑っていた。
暗い空間、そこは床も壁も天井も何も見えない真っ暗な所だった。その暗い空間にマサシが一人ポツンと立っていた。
「何処だここは?」
自分が何処にいるのかも分からない、マサシは辺りを警戒しながら1歩1歩ゆっくりと歩き出した。
「おーい!誰かいないかー?ユウタ!レイナ!」
暗い空間で仲間の名前を叫ぶマサシの声だけが響いた。
「コンタ!シオン!ネリネ!」
どんなに叫んでも誰も返事をしない。
「ジゼルー!!」
やはり誰の返事も返ってこない。それでもマサシは叫び続けた。
「ジゼルー!!皆どこだー!!」
すると、マサシの背後から声が聞こえてきた。
「マサシー!!」 「!」
マサシが振り返ると、遠くから誰かが走ってきた。よく見ると、それはジゼルだった。
「ジゼル!」 「マサシー!!」
マサシがゆっくりと走りジゼルに近づくと、ジゼルはマサシが近づいて来ても立ち止まらず、そのままマサシに抱きつきマサシを押し倒した。
「うわぁ!」 「よかった・・・・よかった・・・・!」 「ど、どうしたんだよ?」 「だって、気が付いたら突然真っ暗な所にあたし一人だけで立っていたから、心細くて・・・・」
悲しそうな声で訴えるジゼル。マサシはそんな彼女の頭をそっと撫でて落ち着かせた。しばらく頭を撫でていると、落ち着いたのかジゼルはマサシの上からどいた。
「落ち着いたか?」 「うん、ゴメンね・・・・」 「いや、謝る事ないさ。正直、俺もジゼルに会えてホッとしてる」 「・・・・・・」
マサシの顔を見てジゼルは微笑んだ。そして倒れているマサシの手を引っ張って起こした。
「それにしても、ここは何処だ?」 「分からないわ。あたし達さっきまで輸送機の中にいたのに・・・・」
必死で自分達が何処にいるのかを考えるマサシとジゼル。なぜか二人はこれは夢ではないかと考えようとしなかった。
「とにかく、もう少し歩いてみよう」 「うん」 「俺から離れるなよ?」 「分かった」
マサシは腰の黒龍刀と白龍刀を抜いて構え、ジゼルも腰に納めてあるスチール製のトンファーを手に取って構えた。
「行くぞ?」 「う、うん・・・・」 「そんな顔するな、お前は俺が守る」 「え?」
思わず声を出してしまったジゼル。一瞬聞き間違いではないかと思ったのだろう。
「どうかしたか?」 「う、ううん、なんでもない・・・・・・ありがとう」 「・・・・・・!」
ジゼルは頬を少し赤くして透き通るような目でマサシを見ていると、そんな彼女の顔を見たマサシは一瞬ドキッとした。
(な、なんだ・・・・・・一瞬、ジゼルが凄く大人っぽく見えた)
マサシはそんな彼女に見惚れてしまい、ジゼルも彼をジッと見ていた。その時、誰かが二人に話しかけてきた。
「何時まで見つめ合っているんだ?」 「「!!」」
突然誰かに話しかけられ、二人は驚き、声のした方を向いて武器を構えた。
「誰だ!」
マサシが叫ぶと、暗闇の中から足音が聞こえてた。足音は次第に大きくなってきた。そして暗闇の中から一人の男が姿を現れた。だが、その男の姿を見た二人は目を疑った。
「「!!?」」 「はじめまして、お二人さん」
なんとその男はマサシと同じ姿をしているのだ。双子の様な瓜二つの顔、同じ髪形。しかし違う所もある、髪はマサシと同じ茶色だが、目は血のように真っ赤だった。
「マ、マサシが・・・・二人・・・・?」 「・・・・・・」 「フフフフフフ」
驚くマサシとジゼルの顔を見て笑うもう一人のマサシ。そんな彼を睨み、マサシは愛刀を強く握った。
「誰だ!お前は?」 「俺か?」
名乗るのを黙って待つマサシとジゼル。その時、もう一人のマサシがゆっくりと口を開いた。
「俺は、ディアボロス」 「「!!!!」」
ディアボロスと名乗るもう一人のマサシ。それを聞いて驚く二人。
「マサシ、ディアボロスって、確かあなたの契約相手の魔物の名前じゃ・・・・?」 「ああ、確かに・・・・」 「そのディアボロスさ」 「何だって!?」
目の前にいるのは自分と契約を交わした神竜種の魔物、ディアボロスだと聞き、思わず叫んでしまうマサシ。
「そんなに驚く事じゃないんじゃない?」 「「!!?」」
また誰かに声をかけられて驚く二人、その声はディアボロスの背後から聞こえてきた。そしてディアボロスの後ろから、今度はジゼルと瓜二つの女が出てきた。髪はジゼルと同じツインテールだが、髪の色は銀色だった。
「ジゼルも二人?」 「あ、あなた、誰?」
度重なる驚きに動揺を隠せない二人。
「紹介が遅れたな、彼女は俺の伴侶『堕天使 ルシフェル』だ」 「こんにちは。ルシフェルよ、よろしくね」
ルシフェルを名乗るジゼルそっくりな女はニコッと笑いマサシとジゼルに挨拶をした。しかし、その笑顔から、ほんの少しだが恐怖を感じた。
「どうなってるんだ、これは・・・・」
突然何も無い暗い空間にやって来たマサシ。その空間でマサシと会ったジゼル。そして二人の前に現れた自分達と瓜二つの男女、ディアボロスとルシフェル。彼等は何者なのか?どうして輸送機の中で眠っていた二人がそんな所にいるのだろうか?
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