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作品名:ラビリアンファンタジー 作者:ディオス

第63回   第六十二話 休息の終わり

清清しい朝、雲一つ無い青空の下でマサシがテントから出て背を伸ばしている。

「ん〜っ!今日もいい天気だな、これでヘルデストロイヤーとの戦いが無かったら素直に喜べるのに」

頭を掻きながら愚痴る様に言うマサシ。ロードグランの一件以来、ヘルデストロイヤーは動きを見せていない。マサシはそんな彼等の行動を不審に感じている。

「アイツ等、一体何を考えているんだ?」

腕を組んで考え込んでいると、後ろから声が聞こえてきた。

「何一人で考え込んでるんだよ?」
「ん?ユウタか、おはよう」
「ああ、おはよう」

後ろを向くと、ユウタがタオルを首にかけながらテントから出てきた。さっきまで顔を洗っていたのだろう。

「アイツ等が何時まで立っても動きを見せないから少し変だと思ってたんだよ」
「ああ、その事か。俺も気になってたんだ、あれからもう3日も経ってるからな」

ヘルデストロイヤーの事を考えていたマサシ、ユウタもマサシと同じ事を考えていたようだ。すると、またテントの中から声が聞こえてきた。

「何を話してるの?」

二人が後ろを向くと、スチール製のマグカップを持っているコンタが立っていた。

「おはよう、コンタ」
「うん、おはよう二人とも」
「何飲んでるんだ?」
「コーヒーだよ、二人も飲む?」
「ああ、貰うよ」
「俺も」
「OK。ちょっと待ってて」

コーヒーを飲んでいるコンタを見て頷くマサシとユウタ。コンタはコーヒーを淹れるためにテントの中に戻って行った。

「ところで、今日はどうするんだ?」
「どうするって?」
「ヘルデストロイヤーが動かない以上、俺達はしばらく休暇なんだろ?」

ユウタが今後の事を含めて今日の予定をマサシに聞くと、マサシは肩を回しながら言った。

「とりあえず、ジゼル達を呼んで相談してから考えよう」
「その前に朝飯だろ?」
「そうだった♪」
「ハハハハ」

笑いながら話しているとコンタがマグカップを2つ持ってテントから出てきた。

「お待たせ」
「「サンキュ」」

二人が声を揃えて礼を言いながらマグカップを受け取り、コーヒーを飲もうとすると。

「おはよう、マサシ!」
「ブブーー!!」
「うわぁ!汚いな〜!」

突然後ろから誰かに声をかけられ、驚いてコーヒーを吹き出してしまったマサシ。そのコーヒーは見事に目の前にいたコンタの顔にかかった。

「大丈夫か?マサシ」
「ゲホッゲホッ!だ、誰だよ突然?」

マサシが振り返ると、そこにいたのはなんとジゼルだった。

「ジ、ジゼル?」
「ゴ、ゴメンね、大丈夫?ちょっと脅かそうとしただけなんだけど・・・・」
「い、いいよ。で、でも何時から俺の後ろに?全然気配を感じられなかった」
「飛んできたのよ」
「飛んできた?」
「うん、これでね」

ジゼルはそう言って背中から翼を出してマサシ達に見せた。

「聖天使人の翼で飛んできたのか」
「そう、家からたったの3分で着いちゃった♪」
「空から来たんじゃ気配を感じられないよなぁ」

マサシとジゼルが話していると、ジゼルの後ろにネリネが降り立った。彼女もジゼルと同じように聖天使の力で飛んできたのだ。

「おはよう、三人とも」
「おはよう、ネリネ」
「おはよう」
「おはようございます・・・・」

マサシが挨拶すると、マサシの後ろでユウタと顔にかかったコーヒーをタオルで拭きながら挨拶をするコンタ。

「でも、大丈夫だったのか?その姿で町の中を飛んできて」
「大丈夫よ、町の人達からはあたし達の姿は見えないように高めに飛んできたから」
「そっか、ところで昨日はゆっくり休めたか?」
「ん?」
「そのぉ・・・・・・ベルさんはどんな感じだったかって・・・・」

マサシが何かを遠まわしに言おうとしていると、ジゼルが笑って言った。

「大丈夫よ、ベルおばさんは優しいからすぐに姉さんを受け入れてくれたわ」
「そ、そうなのか・・・・」
「心配してくれてたんだね?姉さんがおばさん達とうまくやっていけるかどうか」
「・・・・・・」

黙り込むマサシを見てネリネが小さく笑って口を開いた。

「心配かけてゴメンなさい、大丈夫よ。最初は少し動揺してたみたいだけど、すぐに打ち解けあえたから」
「そうか、よかった・・・・・・」

笑いながら二人の顔を見て笑うマサシ。その時、後ろでコンタとユウタがニヤニヤしながら見ていた。

「な〜にらしくない顔をしてるんだよ?」
「マサシがそんな顔をするなんて珍しいね♪」
「なっ!?」

二人に言われて少し顔を赤くするマサシ。

「お、お前等なぁ!俺が人の心配するのがそんなに変か!?」
「別にそういう訳じゃないよ。ただ、あんな落ち着きの無い顔のマサシ見たこと無いから♪」
「ハハハハ!そうだな♪」
「お、お前等〜!!」

顔を真っ赤にして二人を追い回すマサシ、コンタとユウタは笑いながら逃げ回っている。そしてそんな三人を見て笑うジゼルとネリネ。その時、何処からか女性の声が聞こえてきた。

「朝っぱらから何やってるの?」
「何を騒いでいるんだ?」

ジゼルとネリネが声のした方を見ると、シオンとレイナが呆れるようにマサシ達を見ながら歩いてきた。

「シオン、レイナ、おはよう」
「おはよう二人とも」

挨拶をするジゼルに笑いながら返すシオン。

「何時こっちに来たの?」
「たった今よ、飛んできたの」
「飛んできたって、空を?」
「うん、聖天使の翼でね」
「成る程ね」

頷きながら納得するシオン、そんな彼女の後ろでコンタとユウタを追い掛け回すマサシ。それを見るレイナ。

「お前達、何時まで鬼ごっこをしているつもりだ?」
「ん?おお、レイナ。それにシオンも」

シオンとレイナに気づき立ち止まるマサシ達。

「何時からそこにいたの?」
「ハァ・・・・ついさっきだ」

気づかず首を傾げるコンタの見ながら溜め息をつき答えるレイナ。

「エミリア様が呼んでいる、朝食を済ませて集会テントまで来い、私とシオンはもう朝食を済ませたぞ」
「いつも朝は速いな、お前達」
「お前達が遅いんだ・・・・」

朝に弱いマサシ達を見て目を閉じて言うレイナ。その顔は「相変わらずだな」と言いたそうな顔だった。

「それじゃあ、私とレイナは先に行くけど、ジゼルとネリネはどうする?」
「じゃあ、あたし達も一緒に行くわ、朝ご飯は済ませてきたの」
「そう、じゃあ私達は行くから、早く済ませてきてよ」
「分かった」

マサシ達は集会テントに向かうジゼル達を見送り、朝食を取る為にテントに戻っていく三人。





十数分後、朝食を終えたマサシ、コンタ、ユウタの三人が集会テントに入った。テントの中では大きなテーブルを囲むようにエミリアと数人の幹部、そしてジゼル達が座っていた。

「おはようございます、エミリア様」
「おはよう、ミーティングを始めるから座って」
「「「ハイ」」」

声を合わして返事をした三人は空いている席に座った。そしてエミリアがマサシ達を見て話し始める。

「それじゃあミーティングを始めます。まず知らせなければならない事があるの」
「何ですか?」

マサシが尋ねると、エミリアの顔が急に真剣な表情になり目も鋭くなった。だが声には悲しみがあった。彼女は表情を変えずに悲しそうな声で言った。

「ユピローズ王国と同盟を結んだパラメドラ王国にあるサリム村に派遣されていた我がライトシンフォニアの1個中隊の隊員達がヘルデストロイヤーに襲われたの・・・・」
「え!?」

仲間がヘルデストロイヤーに襲われてという事を聞かされ声を出すマサシ。マサシ以外の隊員達や幹部達も驚いた。

「何時ですか?」
「昨日の夜よ。報告によると、サリム村の近くの林に赤く光る物体が空から降ってきたらしいの。それを調査しに向かった数人の隊員が襲われて遺体が無くなったらしいわ」
「遺体?・・・・という事は」
「ええ、隊員は全員殺されたわ」

殺されてと聞かされ、全員が黙りテントの中が静かになった。その時ジゼルがその沈黙を破った。

「あの・・・・」
「何、ジゼル?」
「さっき遺体が無くなったって言いましたけど、どういう事ですか?」
「言ったとおりよ、遺体が消えたのよ林の中を捜索したけど見つからなかったわ。恐らく襲った奴が遺体を持って行ったんだと思うわ」
「・・・・・・もう一ついいですか?」
「どうぞ」
「どうしてヘルデストロイヤーの仕業だって分かったんですか?」
「隊員達が襲われたと思われる場所にヘルデストロイヤーのマークが書かれたコンテナがあったの」
「コンテナ?」
「物を運ぶ時に使う大きな箱みたいなものだ」

コンテナを知らないジゼルに説明するマサシ。そのままマサシはエミリアに質問をした。

「そのコンテナには何が入ってたんですか?」
「それが、空っぽだったのよ。中には何も残ってなかったらしいわ」
「そうですか・・・・」

中身が気になっていたマサシは再び黙った。

「そこで神竜隊、あなた達に新しい任務を与えます。パラメドラ王国に向かってパラメドラ方面師団と合流し、共に調査してほしいの。そしてコンテナの中身が危険物だったらそれを破壊してほしいの」
「分かりました、準備ができ次第出発します」
「パラメドラまではかなりの距離があるからC-1輸送機を使って」
「ハイ!」
「それではミーティングはこれで終了、神竜隊はすぐに準備にかかって、神竜隊以外はこのまま残って」

幹部達は頷き、神竜隊は全員立ち上がり一礼してテントを後にした。遂に動きを見せたヘルデストロイヤー、そして神竜隊に与えられた新しい任務。果たしてパラメドラ王国では何が待ち構えているのだろうか。


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