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作品名:ラビリアンファンタジー 作者:ディオス

第62回   第六十一話 決戦前の休息 No2

正午前、マサシ達は町にいた。エミリアからネリネの判決を聞かされた後、彼等はヘルデストロイヤーが動きを見せるまでの間、体を休めながら町を見て回っているのだ。

「随分作業が進んでるな?」
「ああ、お前達が独房に入っている間に作業の7割が終わったからな」
「7割も?」

マサシに作業内容を説明しているユウタの7割という言葉を聞き驚くコンタ。

「ああ、俺達(ライトシンフォニア)だけなら5割程度しか終わってないだろうけど、サンドリアの人達も協力してくれたからここまで作業が進んだんだ」
「そうなんだ・・・・」

サンドリアのサンドリアの人達も協力してくれた事を聞き少し驚きの顔をするコンタ。すると、ジゼルが作業をしている傭兵や町の人達を見ながら言った。

「彼等も自分達の世界を守ろうとしてくれるあなた達の力になろうとしているんだと思うわ」

ジゼルの話を隣で聞くマサシも町を見ながら言った。

「なら、俺達は力を貸してくれるこの世界の人達の為にも、絶対にヘルデストロイヤーとの戦いに勝たなきゃな」
「ええ」
「それが私達のやるべき事であり、私達にしかできない事だからな・・・・」

マサシに続いてシオンとレイナが町の見ながら言う。そんな時、マサシが話しを変えるようにユウタに尋ねた。

「ところで、サンドリア以外にもこんな風に作業している町はあるのか?」
「ああ、確か『ソルック村』と『ゼーラ』っていう町で同じ作業をしているらしいぜ。その2つはもう作業が終わったらしい」

ソルック村と聞いたマサシとジゼルは少し驚きの顔になった。

「ソルック村って言ったら、俺とジゼルが出合った日に初めてこっちの世界で受けた依頼で行った村だ」
「そう言えばそうだよね」
「そうなの?」

マサシとジゼルが過去を振り返り、それを聞き二人を見るコンタ達。

「ああ。あの時は初めて見たユニフォリアに驚いたよ」
「アハハ、そう言えばそうだったね」

笑いながら話し始めるマサシとジゼル。するとシオンが話しに割り込むように加わってきた。

「ちょっと、私達は蚊帳の外?」
「え?ああ、ゴメンゴメン」
「詳しく聞かせてよ」
「う、うん、酒場では話すからそこに行こう」

すっかり忘れていた四人を思い出し苦笑いするマサシとジゼル。そしてマサシ達は酒場へと歩いて行った。それから数分後、マサシ達は酒場についた。中に入ると、大勢の傭兵や酒場の店員がマサシ達の方を見て騒ぎ出した。マサシ達を知っている傭兵達はマサシ達の寄って来てマサシ達の世界の事などを聞いてきたり、この戦いには勝てるのかなどを聞いてくる。皆マサシ達に興味を懐いてしまったのだろう、依頼を受ける事を忘れてしまうほど。傭兵達を落ち着かせたマサシ達は奥にある空いている席に座った。座った後も皆が自分達の方をチラチラと見ている。

「お、落ち着かない・・・・」
「ま、まあ仕方ないな・・・・」

ジロジロ見られて情けない声を出すコンタとマサシ。しかし、そんな中でもシオンは周りを気にすることも無くマサシに話しかけてきた。

「そんな事はどうでもいいから、教えてよ、アンタとジゼルが初めて会った時のこと」
「ん?あ、ああ分かった・・・・」
「確か、あたしとマサシが出会ったのは・・・・・・」





話し始めてから十数分後、コンタ達は「成る程」という顔をして頷いた。

「そんな事が遭ったのね」

二人の話を聞いてネリネが言うと、それに続いてユウタも口を開いた。

「しっかし、ユニフォリアを倒した後、M1戦車にUrs(ウルス)との戦いかぁ」
「ああ、戦車はともかく、Ursと戦って勝てたのはラッキーだったよ」

マサシが笑いながら話していると、ジゼルが少し元気の無い顔で俯いていた。

「どうしたのジゼル?」
「え?ううん、何でもないよ姉さん」
「?」

ネリネを見て笑いながら首を振るジゼル、そして再び俯いてしまった。恐らく、Ursの話が出て黒竜に変身したマサシを思い出したのだろう。

「ジゼル、大丈夫か?」

俯くジゼルに気づき心配するマサシ。

「ええ、大丈夫よ」
「そうか、ところで、他の国はどうなっているんだ?」

マサシがユウタにユピローズ以外の国の事を聞くと、ユウタは表情を変えて答えた。

「同盟を結んだ他の国でもライトシンフォニアの1個旅団を送ってこの町のように作業が行われている、何時ヘルデストロイヤーが襲ってくるか分からないからな」
「そうか」

ユウタが説明し終わると、今度はレイナが説明し始めた。

「あとゼルキアス帝国だが、王都であるロードグランからヘルデストロイヤーがいなくなった事で他の街もすぐに解放されたらしい。完全に解放した後、ゼルキアス元老院の生き残りと話し合いが行われた。そして昨日正式に同盟国となったそうだ・・・・」
「ゼルキアスも仲間になったか」

マサシはゼルキアスとも同盟が結ばれた事を聞かされて腕を組み考え込んだ。ラビリアン侵略の為に最初に制圧したゼルキアスをたった数日で捨ててしまったヘルデストロイヤーの考えが気になっているのだろう。

「ゼルキアスを捨てて姿を消したヘルデストロイヤー、何処に行ったんだ?」
「しかも、ゼルキアスの各街の待機されていたヘルデストロイヤーの傭兵達もほとんど捕まえて兵器や武器も押収したから奴等の戦力は相当落ちてるはずだよ」

考え込むマサシの隣でコンタがヘルデストロイヤーの現状を話していると、黙っていたネリネが口を開いた。

「そう言えば・・・・」
「どうしたネリネ・・・・?」

突然口を開いたネリネを見て尋ねるレイナ、マサシ達もネリネの方に注目した。

「いや、ヘルデストロイヤーがいなくなった事に関係してるかどうかわからないけど・・・・」
「話してくれ・・・・」

レイナが静かな声で言うと、ネリネが話し出した。

「実は、私が奴等の言いなりになっていた時、ロードグランにいたゼルキアスの兵士達が次々に行方不明になっているっていう事件が起きていて・・・・」
「いなくなる?」
「神隠しか・・・・」

ネリネの話を聞き、聞き返すジゼル、その隣で独り言のように言うマサシ。

「数人って訳ではないの、何十人、何百人と大勢消えて行ったわ。少しずつだけど・・・・」
「う〜ん」

まだ腕を組んで考え込むマサシ。すると、ネリネがこんな事を言い出した。

「あと、私がコルへルスから連れ戻されて、処刑される直前にゾークが『コルヘルスでできなかった事はこの街の兵士達を使ったからよしとしよう』ってハヤテ達に話してたのを聞いたわ」
「ん?」

ネリネの話を聞き、コンタが声を出して考え込むマサシに言った。

「マサシ、そう言えば僕達がコルヘルスに侵入する時、ハヤテとリーズが言ってたよね?」
「アイツ等が?」
「そうだよ、思い出して。確か・・・・」





『恐れく『例の計画』のためにこの街の住人を使うつもりだろう』
『なに?では既に・・・・』
『ああ、この街を奪われたら折角の実験体を失う事になるからな』





マサシはイヴルの門でハヤテとリーズが言っていた事を思い出した。

「確か『例の計画』とか『実験体』とか、そんな事を言っていたな?」
「うん、もしかしていなくなった兵士の人達と関係があるのかも・・・・」

コンタの考えを聞いてマサシはしばらく黙り、ネリネに尋ねた。

「・・・・・・ネリネ、どうしてゾークはお前にコルヘルスを制圧するように命令したんだ?」
「わからないわ、詳しい事は何も聞かされていないの。『お前はただ命令に従えばいい』って」
「アイツ等らしいやり方だ」

ネリネの話を聞き、呆れるように言うマサシ。

「何れにせよ、奴等がゼルキアスの兵士達を連れて行ったのは確かだ。そのへんも調べてみよう」
「ああ、エミリア様に伝えておく・・・・」

話が終わり、少し落ち着いた神竜隊。するとマサシが立ち上がって言った。

「さ〜て!話はこれ位にして、町をブラブラしてくるかな」
「お前、たった今ヘルデストロイヤーの不審な行動の事を話したばかりなのに・・・・」

相変わらずチャランポランな性格のマサシに呆れるような声で言うユウタ。

「分からない事を何時までも考えたって仕方ないだろ?だったら何か情報が入るまでゆっくりして英気を養うのが一番じゃないか?」
「まぁ、確かにね」
「簡単に納得するなよ!」

マサシの言っている事に一理あると考え納得するコンタにツッコミを入れるユウタ。そんな彼等のやりとりを見て女性隊員達はクスクスと笑う。

「でも、マサシの言うとおりね。分からない事を考えても何も始まらないわ、ゆっくり体を休めましょう」
「そうだな・・・・」

マサシの考えに賛成するシオンとレイナ。

「それじゃあ、各自正午まで自由行動。正午になったらまたこの酒場に集合って事でどうだ?」
「「異議な〜し!」」

マサシの言う事に声を揃えて賛成するコンタとシオン。

「それじゃあ、俺は町を見回りながら何かいい店がないか探すよ」
「私も付き合おう・・・・」

ユウタの見回りに付き合うと言うレイナ。そんな二人を見てシオンが口を開く。

「アンタ達、相変わらず真面目ね。それじゃあ、私は美味しい食べ物屋でも探す」
「いいですね、僕も行きます!」

シオンとコンタはサンドリアの食べ物巡りをするようだ。

「俺達はどうする?」

マサシがジゼルとネリネにどうするか聞くと、ジゼルがマサシの方を見て言った。

「あたしはまずベルおばさん達に会って今後の事を話してくる、あとシンディにも会わなくちゃ」
「そうか、なら俺も付き合うぜ。ネリネも一緒に来いよ」
「え?私も?」

突然の事に驚くネリネ。すると、今度はネリネの方を見てジゼルが口を開く。

「姉さんに紹介したいの、あたしを世話してくれた人を。あと、あたしの友達も」
「・・・・・・いいの?私が一緒に行って?」
「うん!」

ネリネの顔を見て笑顔で頷くジゼル。そんな彼女を見てネリネは目を閉じて微笑んだ。

「ありがとう、じゃあ私も行くわ」
「よし!それじゃあ、解散!」

マサシの言葉と同時に一斉に酒場を出た神竜隊、これから始まるヘルデストロイヤーとの決戦に備えて彼等は英気を養うのであった。





その日の夜。ユピローズの北西にある同盟国「パラメドラ王国」の領土にある小さな村「サリム村」の近くにある林の中を歩いている八つの人影、彼等はライトシンフォニアの傭兵だ。そして彼等の手には「G36」が握られていた。

H&K G36
H&K社が製造した突撃銃。1996年にドイツ連邦軍に採用され、1990年のドイツ再統一に伴い計画自体がキャンセルされた。さらに小銃弾の規格が7.62mmNATO弾から5.56mmNATO弾に移行していたため、それに合わせた新型突撃銃の開発が急務となった。このためH&K社はG11の失敗を踏まえ、オーソドックスな技術を用いてG36を設計した。ライトシンフォニアの主力銃として採用された。

彼等はヘルデストロイヤーの襲撃からパラメドラを守るためにエミリアに派遣されたのだ。その内の1個中隊がサリム村に送られた。

「本当にこっちなの?」
「ああ、見張りの話ではこの林の中みたいだ」

男性傭兵に尋ねる女性傭兵。G36に付いているライトで辺りを照らし警戒しながら彼等は前進していく。

「だけど、一体何なんだ?」

二人の後ろで別の男性傭兵が喋った。実は1時間前に空から赤く光る物が降ってきたのを見張りが見つけ、彼等はそれを調べる為に林に入って行くのだ。

「それを確かめるために来たんだろ?」
「そりゃあ、分かってるだけどよぉ。何で俺達が行かなきゃいけねぇんだ?」
「文句言ってないで辺りをよく見なさい!」
「へいへい」

女性傭兵に注意され、めんどくさそうに返事をする男性傭兵。そしてもう一人の男性傭兵が無線機を取り出した。

「こちらαチーム、応答せよ」
「こちらサリム村」
「謎の落下物が落ちた林の中に入った、これから調査する」
「了解」

無線機を切ってバックパックにしまい、再びG36を構える男性傭兵は調査を始める。彼等は少しずつ調査範囲を広めて行った。

「皆!こっちに来て!」

少し離れた所から別の女性傭兵が呼び、全員がそっちへ向かった。

「何か見つけたの?」
「ええ、アレを見て」

傭兵が指差すと、10mほど離れた所に四角い物体が有った。なんとそれはコンテナだったのだ。

「アレは・・・・コンテナ?」
「しかもあのコンテナのマーク・・・・」

そのコンテナには、ヘルデストロイヤーのマークは付いていたのだ。

「ヘ、ヘルデストロイヤーのマーク!!」
「それじゃあ、アレは奴等の・・・・」
「い、急いで連絡を!」
「あ、ああ!わか・・・・」

無線機を取ろうとした瞬間、コンテナからドゴッという大きな音が聞こえ、驚いた傭兵達は銃口をコンテナに向けた。

「な、何の音だ?」
「わ、分からないわ」
「・・・・・・お前達、右側に回れ、お前達は左、俺達は正面だ」
「分かったわ」
「わかった」

男性傭兵に言われ、女性傭兵ともう一人の男性傭兵が銃を構えながらゆっくりとコンテナに近づいていく。セーフティを解除し、いつでも発砲できるようにした。八人の傭兵達はコンテナを囲むように近づき、あと3mという所まで近づいた、すると再びコンテナからドゴッと大きな音が聞こえてコンテナが少し揺れ、驚いた傭兵達は立ち止まった。

「何かいる・・・・?」
「多分な・・・・」

男性傭兵が1歩踏み出した、その時。

「キャアアア!!」
「「「!!」」」

別の女性傭兵の悲鳴が聞こえ、全員がそっちを向くと、彼女の足に1本の太い触手が絡みついているではないか。よく見るとその触手はコンテナの鋼板を破って出てきている。更に悲鳴と同時にコンテナから次々と触手が鋼板を破り傭兵達に迫っていく。

「ッ!!撃て!撃てーー!!」

傭兵達は迫ってくる触手に向かってG36を発砲。だが触手は次々にコンテナから姿を現し迫ってくるため、撃っても触手が動きを止める事はなかった。そして触手は一斉に傭兵達に襲い掛かった。

「グワアアアア!!」
「うわああああああ!!」
「キャアアアアア!!」

触手は傭兵達の体を貫いて次々に命を奪っていき、傭兵達は一瞬で全滅してしまった。その後、連絡が途切れて様子を見に来た別の傭兵達が見たのは、鋼板が剥がれて空っぽになったコンテナ、G36に無線機、そして大量の血だけ。傭兵達の遺体は何処にもなかった。


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