ロードグランの解放から2日後、処罰を受け収監から解放されたマサシ、ジゼル、コンタの三人はサンドリア城の正門から出てきた。2日ぶりに見る外の風景を見た三人は少し懐かしさを感じていた。
「う〜ん!やっと出られたね!」 「ああ、たった2日だったのに凄く長く感じたぜ!」 「独房はジメジメしてたからね」
コンタが大きく空気を吸いながら叫ぶと、その隣でマサシとジゼルも解放されたように空気を吸いながら言った。
「マサシ、これからどうするの?」
コンタがマサシの顔を見て今後の事を聞くとマサシはコキコキと肩を鳴らしながら空を見上げてコンタの方を見る。
「昨日ユウタが独房に来て、正門の前で待っていろって言ってたよな?」 「ええ、そろそろ迎えが来る頃だよね」
ジゼルが辺りを見回していると、マサシが城下の方から1台の軽装甲機動車が近づいてくるのに気づいた。そして軽装甲機動車はマサシ達の前でゆっくりと停止する。
「迎えか?」 「多分」
マサシとジゼルが軽装甲機動車を見ながら話していると、運転席のドアが開き中から一人のライトシンフォニアの傭兵が出てきた。
「エミリア社長の命を受けお迎えに参りました」 「ご苦労様」 「お乗りください、駐留基地へお送りします」
傭兵が後部と助手席のドアを開けるとマサシ達は軽装甲機動車に乗り、マサシ達がドアを閉めたのを確認すると傭兵は運転席に乗り込み、再び軽装甲機動車を城下へ向かって走らせた。城下へ下りて行くと、街のあちこちでライトシンフォニアの傭兵達を見かけた。傭兵達は皆街の人達と何かを話しており、建物の屋根に乗って何かを取り付ける作業をしている。
「おい、アレは何をやっているんだ?」
マサシが助手席で外を見ながら運転している傭兵に尋ねると傭兵はチラッと見た後再び正面を見て説明し出した。
「屋根に防弾の装甲板を取り付けているのですよ」 「装甲板?」
今度は後部席のジゼルが尋ねた。
「ハイ、いずれ来るヘルデストロイヤーの奇襲の備えて建物の中の人を守るために取り付けるようエミリア社長からの指示です。あの装甲板は機関砲の弾は勿論、対戦車ミサイルも止められます」 「ハイドリア陛下はこの事は知っているの?」 「ええ、一昨日あなた方が独房に入られた後にハイドリア陛下と話し合いが行われ、陛下も了承いたしました」
自分達が独房に入っている間に会議が行われ事を聞くジゼルは「へぇ〜」という表情をして外を見た。それからしばらく走っていると街を囲んでいる大きな防衛壁が見えてきた、防衛壁の見張り台や壁の上にある渡り廊下でもライトシンフォニアの傭兵やサンドリアの兵士達が何かの作業をしている。
「防衛壁の上でも何かやってるけど、何をしているんですか?」
コンタが防衛壁の上を見て尋ねると、傭兵が質問に答えた。
「見張り台の強化作業をしているのですよ、対空機銃の取り付けも行っています」 「迎撃の為ですか?」 「ハイ、その点についてもハイドリア陛下は了承されました」
会話をしていると、軽装甲機動車は外へ出るための門を通過し、駐留基地のある広場へ向かって走っていく。しばらく走っているとマサシ達の前に駐留基地の入口が見えた。その入口には三人の傭兵が立っており、入口の前で軽装甲機動車を止めると傭兵が一人運転席に近づいてき、運転席の傭兵が窓ガラスを下ろした。
「神竜隊の隊員三名をお連れした、通してくれ」 「ご苦労様です。おい、通せ!」
見張りの傭兵は入口を塞いでいたバリケードをどけて道を開けた。それを確認するとそのまま軽装甲機動車を走らせ基地の中に入っていく、そして中央にあるテントの近くに軽装甲機動車を止めた。
「到着しました」 「ありがとう」
運転した傭兵に礼を言ったマサシは助手席を降り、それに続くようにジゼルとコンタも降りた。
「それでは私はこれで失礼します」
挨拶をすると、傭兵は軽装甲機動車をバックさせてもと来た道を戻って行った。
「さて、行くぞ」 「うん」 「行こう」 「ああ」
軽装甲機動車が去るのを確認しマサシが二人を呼ぶ、そして三人がテントに歩いていくとテントの方から声が聞こえてきた。
「うむ・・・・」 「これはマズイな・・・・」 「ネリネ、勇気を出しなさい」 「え、ええ・・・・」
中からユウタ、レイナ、シオン、そしてネリネの声が聞こえてきた。だがその声は普通ではなかった、どこか緊張感がある。
「なんだろう?」 「さあ、でもネリネさんの声も聞こえたよ?」 「ああ、もしかして俺達が独房にいる間にネリネの刑罰が決まったのかもな」 「え?・・・・・・ッ!ま、まさか・・・・死刑?」 「「!!」」
ネリネが最悪の結果を想像し、マサシとコンタもそれを察したのか、表情が変わった。
「おいおい、冗談じゃねえ!俺達は何も聞いていないぞ」 「もしかして、勝手に話が進んでいるじゃ!」 「そんな!姉さん!!」
三人は慌てて走り出した。なんとかネリネの死刑を止めたい、その一心でマサシ達はテントへ向かっていく。
「皆!待ってくれ!!」 「僕達は何も聞いて・・・・」
マサシとコンタがテントに飛び込みユウタ達を説得しようとした、ところが。
「やった!四暗刻(スーアンコー)役満だわ!」 「クッソ〜!またネリネかよ〜」 「やるじゃない、ネリネ」 「たった2日で完全にルールを覚えたな・・・・」
四人はテーブルを囲み、のんきに麻雀をやっていた。
「「ダーーー!!」」
麻雀をやっている四人を見て、滑り込むようにコケるマサシとコンタ。そしてコケながらテントの奥にある電子機器に突っ込んで行った。そんな二人を見ながら驚く四人。
「ど、どうしたの二人とも?」 「大丈夫か?」 「何をやっているんだ・・・・」 「え、え〜っと」
四人が驚いていると、マサシとコンタに遅れてテントに入ってきたジゼル。彼女はそのままマサシ達の下へ駆け寄った。
「だ、大丈夫?二人とも」 「あ、ああ・・・・」 「なんともないよ・・・・イテテテ」
ゆっくりと立ち上がるマサシとコンタはユウタ達の所まで歩いていく。
「お、お前達・・・・麻雀やってたの?」 「え、ええ、アンタ達が出てくる間、ヘルデストロイヤーはなんの動きも見せないし、それまでしばらく体を休めとおくようにってエミリア様に言われてたのよ。それで麻雀をやってたのよ」
少しよろめいているマサシを見ながらシオンが話し出した。
「そ、そうなんですか。ところでネリネさんもやってるみたいですけど、ネリネさん、ルール分かるんですか?」
自分達の世界のゲームをやっているネリネを見てシオンに尋ねるコンタ、するとレイナが牌を混ぜながら言った。
「一昨日、お前達が独房に入った後、ユウタがやらないかと誘ってな、たった2日でるルールを覚えてしまった・・・・」 「コイツ才能あるぜ?なにせベテランの俺達三人と互角にやり合ってるからな」
レイナと一緒に牌を混ぜているユウタが苦笑いをしながら言った。ネリネを誘った事を少し後悔しているようだ。
「そうなの?姉さん」
マサシの隣でネリネに尋ねるジゼル。
「ええ、やってみると意外と面白いのよ。それにこれか一緒に戦う仲間としてコミニケーションをとっておかないといけないしね」 「そうなんだ・・・・・・え?一緒に?」
ネリネの口から出た「一緒に」言葉を聞き返すジゼル、その隣でマサシとコンタも驚いていた。
「どういう事だ?」
マサシがユウタの方を見て彼に聞くと、ユウタは苦笑いの顔から真剣な顔へと表情を変えた。
「・・・・・・ネリネの刑罰が決まった」 「「「!!」」」
刑罰の事を聞き、驚く三人。ジゼルは少し取り乱しながら尋ねる。
「決まったの?姉さんはどうなっちゃうの!?」 「ジゼル、落ち着け」
ジゼルを宥めるマサシ。そんな時、テントの外から女性の声が聞こえてきた。
「それは私が説明するわ」
マサシ達がテントの出入り口の方を見るとエミリアが立っていた。
「エミリア様」 「三人とも、おかえりなさい」
エミリアは処罰を終えて戻って来た三人を優しく迎えた。
「今後の事を話すから、皆席について」
エミリアに言われ、マサシ達は全員テーブルについた。全員が座ったのを確認すると、エミリアは話し始めた。
「まず、ネリネさんの事を話しておくわ、ジゼルも知りたいでしょ?」
エミリアがジゼルの方を見て尋ねるとジゼルはゆっくりと頷いた。
「ネリネさんの判決が下されたのは昨日の夜よ。彼女の宣戦布告、コルヘルスの制圧、この2つの罪を合わせると彼女の犯した罪はとても重いわ、もちろん片方だけでも重罪よ」 「・・・・・・」
重罪、その言葉を聞きジゼルは暗い顔をして俯いた。
「でも・・・・」 「え?」 「彼女の動機や私達ライトシンフォニアの弁護で死刑だけは間逃れたわ」 「よかった・・・・」
死刑を逃れた事でジゼルは一安心した。
「現在はヘルデストロイヤーとの戦争中、彼女の持っている情報や彼女自身の戦闘能力などを考え、彼女に出て判決は・・・・・・執行猶予10年、これが彼女に下された刑罰よ」 「執行猶予10年・・・ですか・・・・」
重罪を犯し、執行猶予10年で済んだのはエミリアがハイドリアを説得してくれたおかげでもあるのだろう。マサシ達の世界でも、普通だったら死刑もしくは終身刑だっただろう。
「そして、ハイドリア陛下にお願いしてネリネさんには神竜隊の一員として、あなた達と一緒に戦う事にしてもらったわ」 「あ、それでさっき姉さんが『一緒に』って」 「そういう事」
ネリネの言葉を思い出して少し笑顔が戻ったジゼル。そしてネリネがゆっくり立ち上がりマサシ達の方を向いた。
「よろしくね、マサシ、コンタ」 「ああ」 「よろしくお願いします」
そしてネリネがジゼルの方を向いた。
「ジゼル、今度はあなたと一緒に戦うわ。もう、あなたを一人にしない・・・・」 「姉さん・・・・・・うん!」
ジゼルは頬を少し赤くし、ネリネの顔を見ながら元気よく頷いた。二人の会話を暖かく見守るマサシ達だった。
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