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作品名:ラビリアンファンタジー 作者:ディオス

第59回   第五十八話 蘇った意思と誇り

ステルス・ヴァルキリーと戦っている時、突然ユウタ達がハインドに乗って戻ってきた。マサシ達は驚くのと同時に嬉しさを胸に抱いた。

「大丈夫か!?」

操縦席から顔を出したユウタがマサシ達に向かって叫んだ。

「ユウタ!どうしてここに?」
「話は後だ、まずコイツ等を倒すぞ!」

ユウタはそう言うと、銃座席のレイナに合図をした。レイナは頷いて機銃の狙いをリーズに合わせた。

「チッ、レイナに金山か!お前達、ハインドを落とせ!」
「「ハイッ!」」

リーズの命令され、ロボットアームをハインドに向けて光球を放とうした。だが、レイナはヴァルキリー達が攻撃する前に機銃のスイッチを入れた。機銃から無数の弾が吐き出され、二人のヴァルキリーに襲い掛かる。しかし、弾が命中する前にヴァルキリー達はその場から大きく跳び攻撃をかわした。リーズも後ろの大きく跳びハインドから距離をとった。

「チッ!ハインド相手では流石に無理があるか、仕方ない!」

リーズは無線機を取り出して何処かへ連絡を取っている。そして、しばらく話した後リーズは無線機をしまいヴァルキリー達の方を向いた。

「スクルド、ベルダンディー!撤退するぞ!」
「「ハッ!」」

リーズの方を向き、返事をしたヴァルキリー達は処刑場マサシ達が入ってきた出入口とは反対にある出入口の方へ向かって走り出した。

「秋円、私達はこれで失礼するが、代わりに我がヘルデストロイヤーの傭兵達が相手をする。せいぜい頑張る事だな・・・・」

リーズはそう言ってヴァルキリー達が走って行った出口へ向かって走り出した。

「待て!」

マサシがリーズの後を追おうとした、その時、マサシの足元に突然小さな穴が生まれた。

「!」

驚いたマサシが辺りを見回すと、周りを大勢のヘルデストロイヤーの傭兵達が囲んでいる。その数は二十人を超えている。装備はMP5、マシェット、そして「スティンガーミサイル」持っている傭兵がいた。

スティンガーミサイル(FIM−92スティンガー)
米国が1970年代に開発に着手し1980年代後期に採用された携行式地対空ミサイル。主とする目標は低空飛行をするヘリコプター、対地攻撃機、COIN機などであるが、低空飛行中の輸送機や巡航ミサイルなどにも対応できるよう設計されている。このため、誘導方式には高性能な赤外線・紫外線シーカーが採用され、これによって撃ちっ放し能力を得て、発射後の操作が不要になった。

恐らくリーズが無線機でハインドの事を伝えたのだろう。完全に処刑場は傭兵達に囲まれてしまった、マサシは無線機でハインドのユウタに連絡を入れた。

「ユウタ!スティンガーを持っている奴がいる、一旦離れろ!」
「わかった!」

無線連絡を聞いたユウタは一気に操縦桿を上げてハインドを上昇させた。スティンガーを持った傭兵はハインドを狙っていたが、上昇したのを見て狙いをマサシ達に変えた。

「流石にマズイな・・・・」
「どうするマサシ?」

辺りを見て状況が最悪だと判断するマサシ、それを見てどうするか聞くコンタ。マサシは辺りを見回したまま言った。

「仕方ない、レベル・3で一気に勝負をつけるぞ!」
「うん!」

マサシとコンタはお互いの顔を見てニッと小さく笑った。そして、声を揃えて叫んだ。

「「解放!レベル・3!!」」

叫んだ瞬間、マサシの体に紫のラインが、コンタの体に青のラインが浮かび上がった。

「これで行くぞ!」
「ステルス・ヴァルキリーと戦う時にもこれを使えばよかったね」
「あのなぁ、今それを言うなよ・・・・」

コンタが痛いところを突くような言い方をして、それを聞き苦笑いをしながら言うマサシ。その時マサシの後ろでジゼルが真剣な顔をして言った。

「マサシ、あたしもやるわ!」

そう言った瞬間、ジゼルの体がゆっくりと光り出し、そして彼女の髪が銀色に変わり目も赤くなった。ジゼルも聖天使人の力を解放したのだ。それを見たコンタは驚きを隠せなかった。

「な、こ、これって・・・・まさか!?」
「ああ、ジゼルも聖天使人の末裔なんだ・・・・」
「どうして教えてくれなかったの?」
「言うきっかけがなかったんだよ」
「フゥ、まったくもう」
「悪い」

マサシが謝ると後ろでジゼルが話に加わってきた。

「コンタ、戻ったらあたしの口から皆に話すわ、だからマサシを責めないで」
「責めてるわけじゃないよ、でも、今度からはちゃんと言ってよね二人とも?」

コンタが笑って二人を見ると、マサシとジゼルも苦笑いをしてコンタを見た。すると三人にネリネが話しかけてきた。

「三人とも、話はそこまでよ!そろそろ奴等が来るわよ!」

ネリネの声を聞き、構える四人。そして敵の指揮官らしき傭兵が片手を上げて攻撃合図をしようとした、その時。

「グワッ!」

突然指揮官が倒れた。周りにいる傭兵が振り向くと、そこには長い木の棒を持ったゼルキアスの兵士がいた、しかもその兵士はマサシ達が食堂で会った兵士の一人だった。

「なんだお前は!」
「ゼルキアスの兵士が我々に逆らうとはいい度胸だな!ただで済むと思うなよ!」

傭兵達が兵士を見てMP5の銃口を向けながら言うと、木の棒を構えながら兵士が言い返した。

「う、うるせぇ!俺達がいつまでもお前達の言いなりになると思ったら大間違いだ!!」

兵士が大声で言うと、彼の隣に食堂にいたもう一人の兵士が剣を持って現れた。だがよく見ると、なんとマサシ達を囲むヘルデストロイヤーの傭兵達を囲むように何十人ものゼルキアスの兵士達が剣や槍、木の棒などの武器を持って囲んでいたのだ。

「な、なんだこれは!?」

傭兵達が驚いて周りを見ていると、兵士達が再び力強く言った。

「俺達はそこにいるボウズ達に言われて気づかされたんだ!ただお前達の言いなりになって生活しているだけでは生きている事にはならないと!自分の意思で行動して初めて生きている事になるのだと!」
「そうだ!俺達はお前達と戦ってこの街を取り戻す!俺達の意志で!俺達が、俺達として生きる為に!!」

二人の兵士の言葉に続き回りの兵士達も続いて武器を上げて大きく叫んだ。そう、マサシ達に言われて二人の兵士はあの後仲間達の話し合い、ヘルデストロイヤーへの反撃を決意したのだ。

「みんな!!行くぞー!!」
「「「オオーーー!!」」」

ゼルキアスの兵士達は叫びながらヘルデストロイヤーの傭兵達に攻撃を開始した。剣や槍で傭兵達に攻撃し、背後から攻撃を受けた傭兵達は次々に倒されていく、だが、傭兵達もマシェットやMP5で応戦し始めた。だが背後を取られ、数も自分達より上なため、ヘルデストロイヤーは押されている。その様子を少し驚きながら見ていたマサシ達。

「ア、アイツ等・・・・」
「助けに来てくれたんだ・・・・」
「・・・・この街の人の意志と誇りはまだ生きてたみたいだね」
「ええ、私達も彼等に負けていられないわ!」

マサシが再び無線機を取り出してスイッチを入れた。

「ユウタ!」
「どうしたマサシ?」
「戻ってきてくれ!ゼルキアスの兵士達が立ち上がって俺達と一緒に戦ってくれてるんだ!お前達は街の方へ行ってヘルデストロイヤーの部隊を一掃してくれ!」
「分かった、すぐ戻る!・・・・・・でも、街のほうは大丈夫だと思うぜ」
「?・・・・どういう事だ?」
「実はな・・・・」

ユウタが何かを言おうとした問い、街のほうから多いな爆発音が聞こえてきた。マサシ達は爆発のした方を向いた。

「な、なんだ!?」
「お、意外と来るのが早かった」
「どういう事だ?」
「実はな、サンドリアに待機していた1個旅団ををエミリア様が呼んでくれたんだ」
「い、1個旅団!?」

マサシの旅団という大きな声を聞き、ジゼル達はマサシの方を見た。

「更に、未確認だがロードグランにいたヘルデストロイヤーの主力部隊が街から出たって情報を手に入れたんだ」
「え?本当なのか?」
「ああ、だから今なら敵の戦力も落ちてるからロードグランを解放するチャンスなんだ」

無線機から聞こえてくるユウタの声を聞き、マサシ達は大きな嬉しさを感じていた。

「そうか、じゃあこっちに戻ってきてくれるか?」
「OK、すぐに行く、それまで持ちこたえてくれ!」
「ああ、任せてくれ!」

そう言ってマサシは無線機のスイッチを切った。無線機をしまったマサシはジゼル達の方を向き、目だ合図をしてヘルデストロイヤーの傭兵達に向かって走り出した。





一時間後、ユウタ達のハインドが戻って来た事でヘルデストロイヤーの傭兵達を一網打尽にでき、戦いはマサシ達とゼルキアス兵達の勝利に終わった。街の方もレジスタンスとライトシンフォニアの旅団の協力でヘルデストロイヤーの部隊に勝ち、捕虜となっていた貴族や兵士達も解放できた。

「よう!」
「ああ、アンタ達か」

マサシ達は食堂で会った二人の兵士と話していた。処刑場に来てくれた兵士達は街の方から来たライトシンフォニアの医療班から治療を受けたり非常食などを貰っていた。最初は兵士達もライトシンフォニアの傭兵を見て驚いていたがマサシ達の説明で大騒ぎにはならなかった。

「助かったぜ」
「ええ、本当にありがとう」

マサシとジゼルは二人の兵士に礼を言うと、兵士達が首を振った。

「いいや、礼を言うの俺達だ」
「ああ、お前達のおかげで俺達は人としての大事な物を取り戻すことができたんだ、本当にありがとう」

頭を下げる二人を見てマサシとジゼルは互いの顔を見て笑った。すると、マサシ達の下へ一人の男が走ってきた、ライトシンフォニアの傭兵だ。

「失礼します、神竜隊の秋円マサシ隊長ですね?」
「ああ、そうだ」
「私はロードグラン解放旅団の司令官を務める者です。今後の事でお話が」
「ああ、その事なんだが、レジスタンスのリーダーのジャン・ファリスさんと話し合ってくれるか?俺達はこれからコルへルスへ戻らないといけないんだ」
「分かりました、では失礼します」

司令官は敬礼をしてその場を走り去った。

「お〜い、マサシ、ジゼル!行くぞ!」
「ああ、分かった!」

マサシは着陸しているハインドの近くで手を振るユウタに手を振って返事をした。

「それじゃあ、俺達は行くよ、後はさっきの司令官とジャンさんが何とかしてくれるはずだ」
「ああ、分かった。世話になったな」
「いいや、それじゃあ」
「さようなら」

マサシとジゼルが軽く頭を下げてハインドへ向かおうとすると、何処からか声が聞こえた。

「マサシ殿!ジゼル殿!」

マサシが声のする方を向くと、そこにはジャンとファリスが笑って手を振っていた。マサシとジゼルも笑って手を振り、二人はハインドへ走って行った。

「話は終わったか?」
「ああ」

ユウタは話を終えたのかをマサシに尋ねてマサシの返事を聞くと、ゆっくりと頷いた。

「ところで、どうしてお前達がここにいるんだ?コルヘルスに戻ったんじゃなかったのか?」

マサシはどうしてユウタ達がロードグランにいるのか気になり尋ねる。

「その事なんだがな・・・・」

ユウタは突然苦笑いをして話し始めた。





3時間前、ユウタ達はコルヘルスに戻り、エミリアにマサシ達の事を報告していた。

「金山ユウタ、狐火シオン、レイナ・スズキ、ただいま戻りました」
「おかえりなさい」

帰ってきたユウタ達をテントの中で迎えるエミリア。そして戻った事を報告してすぐに黙り込んでしまったユウタ達を見た。

「その様子だと、連れ戻す事はできなかったようね?」
「申し訳ありません、俺達はマサシ達の考えが無謀だと分かっていながら、三人を見逃してしまいました」
「・・・・・・」
「如何なる罰でもお受けします!」

黙り込むエミリアにユウタは頭を下げた、シオンとレイナも続けて頭を下げる。ところがエミリアは予想もしなかった言葉を口にした。

「どうしてあなた達が罰を受けないといけないの?」
「え?いや、だって俺達はエミリア様から受けた命を失敗してしまい・・・・」
「私がいつ『マサシ達を連れ戻してきなさい」って命令を出したの?」
「「「え?」」」

エミリアの言葉を聞き間抜けな声を出す三人。そして三人はコルヘルスを出る前の会話を思い出した。





『あの二人なら必ず行くと思ったわ』

エミリアが両手を口の前で合わせ、まるで知っていたかのような口振りで言った。

『まったく!エミリア様、俺達が連れ戻してきます!行くぞ、レイナ、シオン!』

ユウタ達がテントから出て行くと、エミリアはジッとして目を閉じた。





「「「あっ!」」」

確かにエミリアはマサシを連れこいとは一言も言っていない、ユウタ達が勝手に話を進めただけだ。

「フフフ、おっちょこちょいね。つまり、私は何も命令してないから、マサシ達と一緒にロードグランを解放しに行ってもよかったのよ?」
「エ、エミリア様・・・・人が悪いですよ・・・・」
「あら、そんな言い方は酷いわね♪」
「ハァ・・・・」

溜め息をつくユウタ、そしてその後ろで疲れたような顔をするシオンとレイナ。

「それじゃあ、改めて命令を出します。ユウタ、シオン、レイナ、数分後にコルヘルスに到着する我がライトシンフォニアの1個旅団と共にロードグランを解放してきてください」
「い、1個旅団?」

あまりの大戦力を聞いて驚きの声を出すシオン。

「ええ、元々ロードグランは解放するつもりだったの。でもマサシが旅団が来る前にロードグランに向かうって言うから許可しなかったのよ?」
「ならどうしてあの時マサシにそう言わなかったのですか・・・・?」

静かにレイナがエミリアに尋ねる。エミリアはレイナの方を見て言った。

「あの子(マサシ)の性格よ?人が処刑されると分かっていて待っている性格だと思う?」
「いいえ・・・・」
「あの子は例え話しても絶対に待たずにそのままロードグランに向かうわ」
「そうですね」

シオンが納得したのか腕を組んで頷いた。

「それじゃあ、改めてあなた達にロードグランの解放、そしてマサシ達の救出を命じます!」
「「「ハイ!」」」
「それから、未確認情報だけど、ロードグランに待機していたヘルデストロイヤーの主力部隊が街から出たらしいわ、今なら解放するのは簡単かも知れないけど、油断しないように」
「分かりました!」

ユウタは敬礼し、シオンとレイナを連れてテントを出てロードグランに向かった出動した。





「あ、あの人は・・・・どうして言ってくれなったんだよ」
「言っただろう?あの人はお前の性格を知ってて言わなかったんだよ」

エミリアの話を聞いてガクリと肩を落として落ち込むマサシ。

「まあとにかく、ここは彼等に任せて、サンドリアに戻るぞ」
「サンドリア?エミリア様はコルヘルスに居るんじゃないのか?」
「いや、俺達が出た直後にサンドリアに戻ったらしいぜ」
「どうして?」
「さあな、それは帰ってから聞こうぜ。さあ、乗りな!」
「ああ」

ユウタに言われ、マサシ、ジゼル、コンタ、そしてネリネが乗り込んだ。

「その人がネリネか?」
「うん」

ユウタがジゼルと同じピンク色の髪をした女性をネリネなのかジゼルに尋ねた。

「姉さん、この人達はあたし達の仲間で、ユウタ、シオン、レイナよ」

ジゼルはそう言いながら仲間達を紹介していく。

「はじめまして、ジゼルの姉のネリネ・クリシェールです」
「ああ、はじめま・・・・ん、クリシェール?確かジゼルはアルフォントじゃなかったか?」

ジゼルの名字と違う名字を聞き首を傾げるユウタ達。

「マサシ、どういう事だ?」
「え、あ、あの、それは〜」

ジゼルを除く神竜隊のメンバーが細い目でマサシを見た。

「・・・・お前、知ってたな?」
「ギクッ!」
「まあ、その事は帰り道でゆ〜っくりと聞かせてもらうぜ?」

そう言ってユウタは全員がハインドに乗った事を確認し操縦席に乗り込んでハインドを飛ばした。ネリネの救出、ロードグランの解放に成功したマサシ達。ヘルデストロイヤーの本拠地は無くなり一安心するが、彼等はまだ知らなかった、ゾークの本当の目的、そして彼等の真の切り札「ベンヌ」の事を・・・・。


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