レジスタンスの協力を得て城への侵入口までデリィに案内してもらう事になったマサシ達。アジトを出て更に下水道の奥へ進んでいく、そして一番奥に着くと、行き止まりの所に一つのハシゴがある。
「この上がロードグラン城よ」 「この上が・・・・」
デリィがハシゴを指差し、ジゼルもハシゴの見上げた。
「この上は城の何処に通じているんだ?」 「おじいちゃんの話だと、食堂のキッチンに通じているみたいよ」 「キッチンか、コックや兵士達と出くわす可能性があるな」 「大丈夫だよ」 「ん?」
マサシがコンタの方を見て彼の手を見ると、その手には一つの手榴弾があった。しかし、よく見るとそれは手榴弾と形は似ているが、全く違う物だった。
「『スタングレネード』か」 「うん!」 「マサシ、スタングレネードって?」 「音響手榴弾さ」 「オンキョウシュリュウダン?」 「強烈な音で相手を気絶させる兵器だ」
スタングレネードに顔を寄せるジゼルとデリィ。
「これをキッチンに放り投げれば、少なくとも入口の近くにいる奴等は気絶させられる」 「コック以外の敵兵士達は無理?」
ジゼルが少し不安そうな声でマサシに尋ねとマサシは目を瞑り、ゆっくりと頷く。
「ああ、でもまずは入る事が大事だ」 「そうだね」
潜入が第一目的である事を確認するマサシを見て頷きながら言うコンタ。
「それじゃあ、私はアジトに戻るけど・・・・・・頑張って、必ず戻ってきてね、三人とも」 「ああ、任せておけ」 「あ、忘れるところだったわ、コレ」
デリィが懐から丸めてある紙を取り出してマサシに差し出した。
「これは?」 「城内の地図よ。おじいちゃんが騎士だった時に持っていた物なの、あなた達に渡してって」 「そうか、助かるよ、ありがとう」
マサシはデリィから地図を受け取って彼女に礼を言った。
「ジャンさんにもありがとうと伝えておいてくれ」 「分かったわ、じゃあ私は行くわね」 「ああ、ありがとう」
デリィはもと来た道を歩いていき、マサシ達は姿が見えなくなるまで彼女の背中を見ていた。
「それじゃあ、早速始めるぞ」 「うん!」 「早くネリネさんを助けないとね」
三人は再びハシゴを見上げると、マサシが一番最初にハシゴに登り、一番上まで上がるとゆっくりと、蓋を持ち上げて隙間から辺りを見回した。目の前には皿に料理を盛り付けているコック、奥にはフライパンで野菜などを炒めている別のコックがいる。
「・・・・・・」
マサシはゆっくりと蓋を下ろし、ハシゴを一番下まで下りてジゼルとコンタに状況を知らせた。
「コックは確認できるだけでも二人だ」 「他にもいるかな?」 「多分な。コンタ、スタングレネードを貸してくれ、俺がやる」 「OK」
コンタはマサシにスタングレネードを手渡しすと、マサシは再びハシゴを上り、一番上までつくと、蓋を少し開けてスタングレネードの安全ピンを銜えてピンを抜くとそれをコックに向かって転がし、すぐに蓋を閉めた。
「ん?おい、何だこれは?」 「どうした?」
料理を盛り付けているコックが転がってきたスタングレネードに気付き、近くにいるもう一人のコックに声をかけると、その瞬間スタングレネードは光と強烈な音を響かせた。コック達は驚くのと同時に耳を塞いだが、そのまま気を失った。しばらくしてマサシが再び蓋を少し開けて辺りを覗き、コック達が気絶している事を確認すると蓋を完全に開き、ゆっくりとマンホールから出た。
「いいぞ、二人とも」
もう一度辺りをも回してジゼルとコンタを呼んだ。ジゼルがマンホールから出ると、最後にコンタが持ってきた荷物をマサシに渡してマンホールから出て蓋を戻した。
「フウ、コレで第一目的はクリアだね」 「ああ、次はネリネの居場所だな、地図を見てみよう」
そう言ってマサシはデリィから貰った地図を床に広げた。
「かなり古い地図だね」 「そりゃあ数年前の城の地図だからな」 「でも、お城の中は改築とかはされていないみたいよ、デリィが言ってたわ」 「ならこの地図でも大丈夫だろうな。よし、行くぞ!」
マサシが地図を丸め、持ってきた荷物の入っているかカバンにしまうと、カバンの中からシグザウアーP220を一丁取り出しジゼルに渡した。
「マサシ?」 「ジゼル、念のためだ、お前もコレを持っておけ。撃ち方は分かるよな?」 「う、うん・・・・」
ジゼルはマサシからシグザウアーを受け取りと、タクティカルスーツのガンホルダーに納めた。マサシはカバンのチャックを閉めて持ち上げた。
「それじゃあ、まずは敵さんを捕まえてネリネが何処にいるか聞き出しますか」 「そうだね」
マサシ達は立ち上がり、自分達の武器を手にってキッチンを出るためにキッチンと食堂を繋ぐドアへと向かった。マサシがゆっくりとドアを少し開けてその隙間から食堂を覗いた、だが、そこには誰もいなかった。ヘルデストロイヤーの傭兵はどころかゼルキアスの兵士達もいなかった。
「誰もいないね」 「まあ当然だな、まだ午前6時50分だ、それに外で俺達が一騒ぎ起こしたんだ、皆外に行ってるはずだ、飯食ってる場合じゃないさ」 「それもそうね」
マサシの説明に納得するジゼル。マサシがドアを全開して食堂に入っていく。すると、食堂の入口が開いた事に気付き再びキッチンに戻りドアを閉めた。
「ったく!ヘルデストロイヤーの奴等、こき使いやがって!」 「仕方ねぇさ、俺達じゃ奴等には勝てねぇ、生き延びる為には従うしかないさ」
入ってきたのはゼルキアスの兵士だった。話し方からして、ヘルデストロイヤーを良くは思っていないようだ。
(ゼルキアスの兵士だ) (じゃあ、あの人達に聞いてみようか?) (そうだな、じゃあコンタ、頼めるか?) (まっかせて♪) (ハハハハハ・・・・)
ニヤニヤと小声で話しているマサシとコンタを見て苦笑いをするジゼル。コンタはゆっくりとドアから離れ、倒れているコックの一人に近づいた。その時、ゼルキアスの兵士達がカウンターに近づいてきた。
「お〜い、腹減ったぞ。飯はまだか〜?」 「へいらっしゃい!」 「は?へいらっしゃい?」 「ご注文は何でしょう!」
そう叫んでコンタはコックの帽子を被って顔を出した。
「な、何だお前は!?」 「侵入者で〜す♪」
コンタがニヤリと笑ったコンタが後ろを指差し、後ろを見た二人の兵士、そこにはコンタと同じようにニヤリと笑ったマサシが立っていた。
「い、いつの間に!」 「ク、クソッ!」
二人の兵士が剣を抜こうとした、だが鞘を見ると、そこには剣が無かった。二人がマサシの方を見るとマサシの両手には剣が握られていた。
「お探しの品はコレかな?」 「い、いつ剣を?」
マサシは剣を捨て、腰に納めてあるシグザウアーを二丁抜いて銃口を兵士達に向けた。
「ヒッ!」 「動くと撃つぜ」 「お、お前達は一体?」
銃口を向けられ怯える兵士達。それを確認しキッチンから出てきたジゼルとコンタ。
「アンタ達に聞きたいことがある、ネリネは何処だ?」 「ネ、ネリネ?近衛騎士のネリネの事か?」 「そうだ」 「し、知らねぇよ、数時間前にコルヘルスから戻って来たって話を聞いただけで、姿は見ていない」 「そうか、じゃあ処刑が行われる処刑場は何処だ?」 「と、闘技場の隣だ・・・・」 「ジゼル、地図を見て調べてくれ」 「分かったわ」
ジゼルがカバンから地図を取り出し、テーブルの上で広げて調べた。
「え〜と・・・・・・有ったわ!食堂を出て、右に曲がってから真っ直ぐ行けば闘技場よ」 「よし、行こう」
マサシはシグザウアーを納めて食堂の出入り口へ歩いていく。
「お、おい・・・・お前達はヘルデストロイヤーと同じ世界から来た連中か?」 「ん?ああ、そうだけど」 「そ、そうか・・・・」
二人の兵士はマサシがラビリアンとは違う別の世界から来たという事を確認すると、ゆっくりカウンターにもたれた。
「・・・・なあ、アンタ達はどうしてヘルデストロイヤーに従うんだ?」 「なに?」
マサシは振り返り、再び兵士達の方を見て口を開いた。
「自分達の国を襲った奴等にどうして従うんだと聞いているんだ」 「そ、そんなの、奴等に負けたからに決まってるだろう・・・・」 「だから言いなりになるのか?」 「・・・・・・」
黙り込む兵士達にマサシは表情を変える事無く話し続ける。ジゼルとコンタも兵士達を黙って見ていた。
「自分達を捨て駒のように扱い、奴隷同然の生活をして、アンタ達は満足なのか?」 「仕方ないだろう!奴等との戦いに敗れ、多くの仲間が殺された、逆らえば自分達も殺されてしまう!」 「そうだ、俺達にだって生きる理由がある、家族や子供の為にも生きなければならないんだ・・・・」
二人の兵士は少し感情的になり自分達の悔しさを言葉で訴えきた。するとジゼルは悲しそうな声で言った。
「自由を奪われて生きる事、それは生きているとは言えないと思います」 「「!」」
ジゼルの言葉を聞き、二人の兵士は驚きの表情を見せた。
「ただ生活する事が生きるという事じゃなりません、自分達の意思で行動する事が生きるというのではないのでしょうか?」 「そうですよ、例え勝ち目が無くても、自分の意思で戦いを挑む事も生きている証だと思います」
ジゼルに続き、コンタも自分の考えを兵士達に伝えた。二人の兵士はただマサシ達の言う事を黙って聞いていた。
「俺達はこれからネリネを救出しに行く、これから先、自分達の意思で生きる為にも・・・・」
そう言ってマサシ達は出入り口のドアをゆっくり開けて誰もいない事を確認し、食堂を後にした。食堂にはマサシ達の言葉を聞き考え込む二人のゼルキアス兵だけが残っていた。そして三人は食堂を出て隠れながら闘技場へ向かった。そして、遂に「闘技場」と書かれたプレートの張られたドアの前に着いた。
「ここが闘技場か?」 「うん、地図によると、この闘技場の中に処刑場へ続く通路があるらしいよ」 「そうか、よし、処刑時間まで処刑場に隠れてネリネが来たらすぐに救出だ!いいな二人とも?」 「「うん!」」
そう言ってマサシ達は警戒しながら闘技場へ入った。中へ入ると、そこは外に繋がっており、まるでローマ時代のコロッセオみたいな所だった。そこには誰も居らず、シーンとしていた。更にその奥には闘技場よりも少し小さい広場へ続く道が見える、恐らく処刑場への通路だろう。
「あそこが処刑場だ、行こう!」
マサシの合図で走り出した三人は処刑場へ向かった。そして10分後、三人は処刑場へ到着した。だが到着した三人は想像もしていなかった光景を目にした。なんと広場の真ん中で高さ4mほどの処刑台の上にある十字架にかけられ、大鎌を持った二人の処刑人に処刑されそうなネリネがいたのだ。
「アレは!」 「姉さん!!」
マサシとジゼルの声を聞き、マサシ達の方を向く処刑人とネリネ。
「ジゼル!?」 「姉さん!今助けるから!」 「コンタ!」
マサシの声を聞き、コンタはファイブセブンを抜いて処刑人の大鎌を狙って引き金を引き、大鎌を弾いた。処刑人は驚きのあまり、足を踏み外して処刑台から落ちて地面に叩きつけられ、そのまま気を失った。
「姉さん!」
ジゼルは処刑台に向かって走っていく。マサシとコンタもそれに続いた。ジゼルは処刑台の階段を駆け上がり、ネリネに近寄った。
「姉さん!大丈夫?」 「ジゼル、どうしてここに?」 「助けに来たのよ!ハヤテが姉さんを処刑するって言ってたから!」 「たった三人で!?無謀すぎるわよ!」 「分かってる!でも、姉さんを死なせたくないの!だって・・・・・・たった一人の家族だもん」 「・・・・!」
驚くのと同時に、この上ない喜びを感じたネリネ。彼女の目から一滴の涙がこぼれた。
「ジゼルー、鍵を投げるよー!」 「コンタ!いいわよ、投げてー!」
処刑台の下で気絶している処刑人の懐から鍵を取り、ジゼルに向かって鍵を投げた。鍵を受け取った、ジゼルは鍵で十字架の拘束具を解いていく。そして完全に拘束を解かれたネリネはジゼルに駆け寄り、彼女を強く抱きしめた。
「ジゼル・・・・ありがとう」 「姉さん・・・・」
泣きながら抱き合うジゼルとネリネの姉妹、マサシは近くで二人を優しく見守っていた。しばらくしてゆっくりと処刑台を下りる三人にコンタが駆け寄る。
「救出成功だね!」 「ああ!」
親指を立てて、笑うながらコンタも見るマサシにネリネが声をかける。
「シュウエンマサシ・・・・だったかしら?」 「ん?ああ」 「礼を言うわ、ありがとう」 「気にするなよ♪」 「そういえば、そっちの子供は?」 「ああ、紹介するよ、コイツは月本コンタ。俺の仲間だ」 「はじめまして、コンタです」
紹介されて頭を下げるコンタ。
「よろしく、しかし、こんなに幼いのにあなたと同じ傭兵とはね・・・・」 「ハハハ、さてと、ネリネも救出したし、早く城を出てジャンさん達と合流しよう」 「ジャン?教官を知っているの?」 「ああ、俺達がこの城に侵入できたのもジャンさんのおかげなんだ」 「そうだったの・・・・」 「ところで、どうしてこんなに早く処刑されかけてたんだ?確か処刑されるのは正午のはずだぞ。まぁギリギリで間に合ったから良かったけど」 「本当よ、どうして?」
マサシの疑問を聞き、ジゼルもネリネに問い掛ける。すると、何処からか声が聞こえた。
「お前達の侵入が社長の耳に届いたから処刑時刻を早めたのだ・・・・」 「「「「!!」」」」
マサシ達が入ってきた入口の反対の方から声が聞こえ、四人が振り向くと、そこにはリーズが腕を組んで立っていた。
「リーズ」 「まさか本当に来るとは思わなかったぞ、秋円・・・・」 「悪いがネリネは返してもらうぞ」 「フッ、返してやろう。だが、お前達はここで死ぬ事に変わりはない・・・・」 「・・・・?どういう事だ?」 「こういう事だ・・・・」
リーズがそう言って指をパチンと鳴らすと、リーズの後ろから三つの影が飛び出した、リーズの真上で高く飛んだその影は、彼女の前に降り立った。
「お前達は・・・・」 「ステルス・ヴァルキリー!!」
マサシの隣でコンタが大声で言った。そう、影の正体は体のいたる所が金属化していたステルス・ヴァルキリーだった。ネリネの救出にギリギリ間に合ったマサシ達。だが、彼等の前にリーズと変わり果てたステルス・ヴァルキリーが立ちはだかる。彼等はどうなってしまうのか!?
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