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作品名:ラビリアンファンタジー 作者:ディオス

第56回   第五十五話 レジスタンスの協力

レジスタンスの一員、デリィにネリネが処刑される処刑場が城の中にあると聞かされ、城への侵入口を聞く為に下水道のレジスタンスの隠れ家にやって来たマサシ達。

「ここが・・・・」

隠れ家に入ったマサシ達。中は意外と広かった、マサシ達が周りを見ると、そこには沢山の女子供や老人、そして怪我をしたレジスタンスの戦士達がいた。皆マサシ達をジッと見ている。

「デリィ、その者達は誰だ?」

声が聞こえて、聞こえる方を見ると、ベッドに横になっている老人がいた。マサシ達はゆっくりと老人に近づいた。

「おじいちゃん、ただいま・・・・」
「元気がないのう、バズー達はどうした・・・・?」
「・・・・・・」
「・・・・そうか、逝ってしまったか」

俯いたデリィを見た老人は仲間が死んだ事を察したのか、ゆっくりと目を瞑りながら言った。

「・・・・彼等は私を助けてくれたの」

涙を拭い、顔を上げたデリィはマサシ達を老人に紹介し始めた。

「そうか、孫を助けてくれて感謝しますぞ」
「い、いえ。俺はマサシです、こっちはジゼルとコンタです」
「はじめまして」
「どうも」

マサシに紹介されて頭を下げるジゼルとコンタ。老人もゆっくりと起き上がり挨拶をする。

「私はデリィの祖父でこのレジスタンスのリーダーを務めるジャン・ファリスといいます、孫を助けてくれて本当に・・・・ゴホッゴホッ!!」
「おじいちゃん、あまり無理しないで!」

突然咳き込んだジャンの背中を優しくさすって寝かせるデリィ。

「大丈夫ですか?」

咳き込むジャンを見て声をかけるコンタ。

「はい、戦場で少し敵の攻撃を受けましてな・・・・」
「戦場で?」
「ハイ」
「おじいちゃんはこれでも前までは王宮の騎士だったの。数日前までは外に出て私達と一緒に戦ってくれてたの」
「そうなんですか」

ジャンが騎士だったという事を聞き驚くコンタ。ジャンは笑いながらマサシ達の方を向き口を開いた。

「フォフォフォ、数年前の話じゃよ。このとおりの老いぼれじゃ、すっかり油断してやられてしまいました」
「・・・・・・すみません、ちょっと傷を見せてくれませんか?」
「え?」

突然傷を見せてくれと言い出したマサシを見ながら驚くデリィ。

「どうして?」
「もしかしたら、治せる傷かもしれない。頼む」
「・・・・・・」

「治せるかもしれない」という言葉を聞き黙り込むデリィ。するとジャンがゆっくりと口を開いた。

「構いませんよ、どうせ長くない命じゃ」
「おじいちゃん!?」

再び起き上がりマサシの方を向き、服を上げ、腹部の傷を見せるジャン。デリィそれを見て驚きの声を上げる。

「失礼します・・・・」

マサシはゆっくりと傷を隠している包帯をゆっくりと解いていく。

「ちょ、ちょっと!傷口が開いちゃうでしょ!」

包帯を解いていくマサシは少し興奮しながら止めようとするデリィ、その声を聞き周りの人達もマサシ達に視線を向ける。

「大丈夫よ」

止めようとするデリィの肩にそっと手を置き落ち着かせるジゼル。デリィはジゼルの顔を見て少しだけ静かになった。

「痛みはありますか?」
「ええ、少しだけですけど・・・・」
「う〜ん」

傷を見て少し考えるマサシの背中を見ながらコンタが声をかけてきた。

「マサシ、どんな状態?」
「多分拳銃で撃たれたんだろう、でもたいした傷じゃない、弾も抜けてる。コンタ、できるか?」
「任せて」

コンタは右手の親指を立ててマサシの隣に立った。そして傷口に両手をゆっくりと近づけると、ぶつぶつ何かを言い出した。契約魔法だ。

「彼は何してるの?」
「あたしもよく分からないわ、でもあなたのおじいさんの傷を治そうとしているのは確かよ」

ジゼルとデリィが会話をしていると、コンタの手が白く光り出した。

「聖なる光よ、癒しの詩で傷を包み込め!ハートレスキュア!!」

コンタが演唱を終えると両手から光が放たれ、ジャンの腹部の傷を包み込んでいき、みるみる傷を消してした。

「こ、これは!」
「傷が・・・・消えた!」

消えていく傷を見て驚きの声を上げるジャンとデリィ。周りの人々も驚いて騒ぎ出した。

「あ、あなた、魔法が使えるの?」
「ええ、一応」

契約者である為、魔法が使える事を素直に話したコンタ。だが契約者である事はやはり話さなかった。傷が治り、顔色がよくなったジャンはベッドから立ち上がり、もう一度頭を下げた。

「本当にありがとう、孫を助けてくれただけでなく傷まで治してくれて」
「ありがとう!」

ジャンに続きデリィも頭を下げた。周りの人も声は出さなかったが感謝の表情を表していた。

「いいえ、元気になってよかったです」
「何かお礼をさせてもらいたいのだが、何か望みがあるのでしたら言ってください」
「おじいちゃん、とりあえず着替えてきたら?」
「ん?ああ、そうだな。少々お待ちいただきたい」

ジャンは着替える為に奥の部屋へ歩いて行った。

「こっちに来て、お茶を出すから」
「ありがとう」

デリィに案内されて近くにある椅子に腰を下ろした。しばらくしてデリィがティーカップに紅茶を入れて運んできた。

「どうぞ」
「ありがとう」

目の前にティーカップを置かれ一言礼を言うマサシ、そしてマサシ達はカップを持ち、紅茶を口に運んだ。

「美味しい」
「香りも良いな」
「うん」

ゆっくり紅茶を飲んでいると、奥から銀色の鎧を着たジャンがやって来た。

「お待たせしました」

ジャンがマサシ達と向かい合うように机を挟んで椅子に座る。

「それでは、話を戻しましょう。あなた方にはデリィの事や私の傷の事など、お世話になりました。何かお礼をさせていただきたいのです」
「では、さっそく。実は城への侵入口があるとデリィから聞いたのですが、その侵入口を教えていただきたいのです」
「城への侵入口ですか?」
「ハイ」
「なぜ?」
「実は・・・・」

捕まったネリネの処刑を食い止めるために城内に侵入方法を探している事をジャンに話したマサシ。ジャンは目を瞑りながら口を開いた。

「なるほど、ネリネを救出する為に・・・・」
「ハイ・・・・」
「アイツは昔から正義感が強く、自分の命よりも仲間の命を優先するからのぅ」
「え、昔から?」

ネリネの事をよく知っているような口振りをしているジャンを見て訊き返すマサシ。

「おじいちゃん、ネリネさんを知っているの?」
「ん?ああ、アイツは私が王宮の騎士だった時の教え子の一人じゃ。誰よりも仲間思いで成績もよかった、私が騎士をやめる時にアイツに私の後を継がせたのじゃ」
「つまり、あなたはネリネの教官だったのですね?」
「ハイ、私はこの街と、部下のために奴等の言いなりになっているネリネとその仲間達を救出する為にこのレジスタンス組織を作ったのです。じゃが、なかなか奴等の戦力を削る事ができず、仲間だけが次々に倒されてしまったのです」
「・・・・・・」

ジャンのレジスタンス結成の理由を真剣な目で黙ったまま聞くマサシ達。すると、マサシがゆっくりと立ち上がってジャンに言った。

「我々とあなた方の目的は同じです。どうか協力してください」
「もちろん協力します。しかしこれからどうするお積もりですか?」
「まず城への侵入口を教えてください。そこから俺達三人が中に入ります。そしてネリネを救出して敵のボスを倒します」

マサシの作戦を聞いたジャンとデリィ、そして周りの人々やレジスタンスの戦士達が驚きの顔をした。

「さ、三人でですか!?それは無謀と言うものです!」
「そうだよ!自分から死にに行くのと同じよ!」

無謀な作戦にジャンとデリィが止めるように説得すると、ジゼルが静かに二人に言った。

「大丈夫ですよ、彼は今まで無謀な作戦をいくつも成功させてきたんですから」
「そうですよ、それにコルヘルスを解放できたのもマサシの無謀な作戦のおかげだったんですから」

ジゼルに続いてコンタがマサシの作戦の凄さと成功率を説明し始めた。

「あのコルヘルスを解放?本当ですか?」
「ええ」
「・・・・・・おじいちゃん、彼等に任せてみる?」
「うむ・・・・」

しばらく考えたジャンはゆっくりと口を開いて言った。

「そうじゃな。分かりました、侵入口は後ほどデリィの案内させましょう」
「「「ありがとうございます!」」」

頭を下げるマサシ達。いよいよネリネ救出のためにロードグラン城への潜入が始まるのだった。





その頃、ロードグラン城の謁見の間では、ゾーク、ハヤテ、リーズの三人が話をしている。

「確かなのか、その情報は?」
「ハイ、直接秋円を見た兵からの報告ですので間違いはありません」

ハヤテはゾークにマサシ達が侵入した事を知らせていた。

「まさか二重の陽動作戦とはな。流石は秋円マサシ、エミリアの弟子だ」
「社長、いかがいたしますか?」
「『例の実験』はこの街の住人で成功している」
「実験、コルヘルスで行うはずだった計画ですね?」
「そうだ、成功した以上もうこの街には用はない。聖天使人の力の分析も間もあと1時間程で終わる。ハヤテ、『ベンヌ』を呼んでおけ」
「ベンヌ?もうアレをお使いになるのですか?」
「ああ、最終チェックが完了したという報告があった。分析が終わり次第、主力部隊を例の大平原へ向かわせろ。それから分析が終わり次第、すぐにネリネ・クリシェールは処刑しろ。秋円達が侵入している以上、正午まで待っていたら奪還されてしまうからな」
「ハッ・・・・」

ハヤテは跪いて返事をする。その時、ハヤテの隣にいたリーズがゾークに語りかけてきた。

「社長、秋円はいかがしますか?」
「お前の直属部隊を使って殺せ。だが調整は済んだばかりだ、『薬』を忘れるな」
「ハイ」

レジスタンスの協力で城への侵入できるようになったマサシ達。だが、ロードグランへの潜入がゾークにバレてしまった為、処刑が早くなってしまった!果たしてマサシ達は間に合うのか!?そしてゾークは何を計画しているのか?「ベンヌ」とは何なのか?

ネリネの処刑まで、あと1時間15分


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