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作品名:ラビリアンファンタジー 作者:ディオス

第54回   第五十三話 恐るべき軍事力

陽動作戦が成功しロードグランに侵入に成功したマサシ達。西門を突破した後、装甲車をそのまま走らせて隠れる場所を探していた。マサシは西門から50mほど離れた広場まで装甲車を走らせ、広場の真ん中にある噴水の前で装甲車を止めた。

「なんとか突破できたな・・・・」
「マサシ、アレ見て・・・・」
「ん?」

マサシは助手席で前を指差すのをジゼルを見て、前を見るとマサシは目を疑った。街は酷い有様だった、広場の周りの建物は穴だらけだ。更にとても静かで、建物の壁には焦げ跡や切傷、銃創がついている。しかも人は一人もいない。

「酷いな・・・・」
「うん・・・・」
「多分奴等(ヘルデストロイヤー)が侵攻してきたときのままにしてあるんじゃない?」

辺りを見回すマサシとジゼルの後ろからコンタが顔を出して言った。すると、後ろの方がなにやら騒がしい。コンタは装甲車の天井にあるハッチを開けて外を見ると、走ってきたほうから大勢のヘルデストロイヤーの傭兵が向かってくる。西門の警備隊が軽装甲機動車に乗って追って来たのだ。

「マズイ!追って来やがった!」
「マサシ、どうしよう!?」
「勿論逃げるさ、あんな大勢の敵を相手にするのは分が悪い!コンタ、なんとか奴等に追いつかれないように迎撃してくれ!」
「分かった!」

マサシはアクセルを踏み、再び装甲車を走らせた。敵の軽装甲機動車は3台。それを確認したコンタは武器ケースの中からP90を取り出し弾倉をセットした。そしてコンタ再びハッチから顔を出して敵の軽装甲機動車に向かってP90の引き金を引いた。銃口から5.7×28mm弾が吐き出され、その弾は追ってくる軽装甲機動車のフロントガラスを貫通し、運転手の額に命中した。一番前を走っていた軽装甲機動車は蛇の様にグニャグニャと曲がり、そのまま壁に衝突した。衝突した軽装甲車を無視し、マサシ達の装甲車を追って行く。

「こちら西門警備隊、西門から装甲車1台が街内に侵入、塗装からしてライトシンフォニアの物と思われる。現在、中央広場から北門の方へ逃走中、機動車が1台敵の攻撃によって行動不能になった、増援を頼む」

2台目の軽装甲機動車を運転している傭兵が無線機で増援を要求している、助手席では別の傭兵がイングラムで応戦中だ。その後ろをついて来るもう1台の軽装甲機動車の助手席にいる傭兵もイングラムで攻撃している。傭兵はイングラムの弾を全弾撃ちつくすと新しい弾倉を叩き込み、再び引き金を引いた。

「うわっ!容赦ないね」

敵の銃弾がハッチの近くに命中したときに出た火花に驚き首を引っ込めるコンタ。それでも彼はひるむ事無く攻撃を続けた。

「クソッ!何処を走ってるのかサッパリ分からない!このままじゃ追いつかれちまう!」
「どうするの、マサシ!?」
「・・・・・・!」

前を見ると、なんと前からも軽装甲機動車が3台、自分達に向かってきた、敵の増援だ。マサシは装甲車を走らせながら街を見回している。すると、少し広めの路地を見つけた。

「二人とも、つかまれ!」

ジゼルとコンタはマサシに言われたとおり、椅子などにつかまった。マサシは一気にハンドルを回し路地に入った。路地の壁が装甲車を擦ったがたいした事じゃなかった。そして敵の軽装甲機動車は曲がる事ができずにぶつかり、爆発した後、大きく炎上した。擦りながらも装甲車を走らせるマサシ。そして路地を出て少し離れたところにある別の路地に止めて装甲車を隠した。

「フ〜、なんとか振り切ったな・・・・」
「う、うん・・・・」
「危なかったよ〜」

三人は緊張が抜け、大きく溜め息をついた。マサシとジゼルは運転席と後部をつなぐ小さな道を通ってコンタのいる後部へ移動する。

「さて、これからどうするの?」

椅子に座っているコンタはP90を置いてマサシに今後の事を尋ねる。

「まずはここが何処なのか、そしてネリネが何処にいるのかを調べる」
「うん、それに敵もあたし達を必死で探しているはずだから、歩き回る事はできないよね?」
「そうだ・・・・」

マサシとジゼルも後部の椅子に座って今後の事を話し始めた。

「しかし、だからと言って装甲車で行動すのはかえって目立つ・・・・」
「じゃあ、やっぱり外に出るしかないね」
「そっか・・・・」

装甲車の中にいては何もできないので危険を覚悟で外に出て調べる事にしたマサシ達は武器の確認をし始めた。少量の武器と保存食、水を持って装甲車の後ろのドアから出た三人、そしてマサシは装甲車についている小さなボタンを押すと、装甲車の塗装が路地の壁と同じ色に変わった。

「よし、これで目立たないな」
「す、凄い、周りの壁と同じ色になった、どうなってるの?」
「これは『フルプ迷彩』だ」
「フルプメイサイ?」
「周囲の色を分析してその色や模様をコピーする迷彩だ。これなら簡単には敵に見つからないだろう」

周りの風景と同化したように姿を消した装甲車を置いてマサシ達は路地の出口へ向かった。ちなみにフルプとは蛸(たこ)をフランス語で読んだ時の名前だ。装甲車から降りた後、マサシ達は敵兵に見つからないように隠れながら街を調べながら歩いている。周りは騒がしく、敵兵をあちこちで見かける。

「凄い人数だな、ここまでは敵に見つからずに来たが、いずれは見つかっちまう」
「まずはネリネさんが何処にいるのかを調べないと」

コンタはネリネの情報を手にいる事をマサシに伝える。

「分かってる、しかしここまで敵の兵士以外に誰も見かけないぞ、どうなってるんだ?」
「もしかして皆街から逃げちゃったのかな?」

ジゼルは周りを見ながら想像している事を話した。

「ありえるな、もしくは街にはいるが、皆奴等に怯えて家の中に隠れているのか、それとも・・・・」
「皆、殺されてしまったかのどちらかだね?」
「ああ・・・・」
「・・・・・・急いで姉さんを助けないと」

ジゼルは少し黙った後、改めてネリネを助ける為に気合を入れ、マサシとコンタもジゼルの方を見て頷き再び隠れながら歩き出した。そして歩き出してから数分後、マサシ達は城から少し離れたところにある広場の近くにやって来た。

「なんだろう、この広場?」
「周りを柵みたいなので囲んでるね・・・・」
「おい二人とも、アレ見てみろ・・・・」
「「・・・・・・!」」

マサシの指差した方を見たジゼルとコンタは驚いて目を疑った。柵の向こうには大量のコブラやM1戦車、そして10tトラックにその周りには沢山のテントとヘルデストロイヤーの傭兵が大勢歩いた。

「ここって・・・・」
「恐らく、兵器を置いておく場所だろう、しかも見てみろよ、奥の方には『ハリアーU』まで置いてあるぜ」

ハリアーU(AV-8B)
ハリアーUは、マクドネル・ダグラス社がホーカー・シドレー ハリアーを基にスーパークリティカル翼や揚力強化装置を組み合わせて開発した航空機。ロールス・ロイス ペガサス エンジンを装備し、胴体脇に計4ヶ所の排気口を持つ。前部2ヶ所の排気口は形状が変更され、ダクト形状となっているのだ。武装は25mm機関砲ポッド、両翼に対地ロケットポッドと対空中距離ミサイル、そしてクラスター爆弾を搭載している。

「まさかハリアーまで持ってきてたとは・・・・」
「ねえマサシ、そのハリアーって何なの?」

ハリアーを知らないジゼルはマサシにハリアーの事を尋ねる。

「ハリアーって言うのは飛行機って言う乗り物の一つだ、しかも戦闘用のな」
「ヒコウキ?」
「ヘリなんかよりもずっと速い、もしさっきの陽動作戦であのハリアーを出されていたらユウタ達も危なかったかもな」
「そ、そうなの?」
「ああ・・・・」

ハリアーの凄さを聞いて驚くジゼル。

「しかし、どうやってあんなに沢山の兵器をラビリアンへ送ったんだろう?」

首を傾げて疑問に思うコンタ、その後ろでマサシは広場を覗いて口を開いた。

「多分、用意しておいた大型の次元移動装置でこっちの世界に送ったんだろう、エミリア様たちもきっと同じ方法で送ったんじゃないか?」
「なるほど」

コンタは納得したのか手をポンっと叩いて頷いた。

「まっ、俺達の目的はネリネの救出だ、こんな所には用はない、先へ行こう」
「うん」

マサシ達は来た道を戻ろうとした時、広場の方から大きな爆発音が聞こえてきた。

「な、何だ?」

マサシ達が驚いて振り返ると、柵の向こうでヘルデストロイヤーの傭兵が何かを話している、マサシ達には気付いていないようだ。

「大変だ!また奴等が来やがった!」
「なんだと!奴等め、懲りずにまた来たか!今度こそ捕まえろ!」
「分かった!」

傭兵は爆発のした方へ走って行き、もう一人は近くのあるテントの中へ走って行った。

「何なんだ一体?」
「『奴等』って言ってたけど?」
「誰かヘルデストロイヤーに対抗する人達がいるって事かな?」
「多分な」
「ねえ、その人達に会ってみない?」
「え?」

ジゼルが口にした「会ってみないか」と言う言葉を聞き少し驚くマサシとコンタ。

「もし彼等がこの街の人達ならお城の事とか姉さんの事とか知ってるかもしれない」
「・・・・そうだな。よし、会ってみるか!」
「うん、行こう!」

マサシ達は適に見つからないように爆発のした方へ走って行った。そして彼等が爆発した場所の近くを走っていると、爆発場所から少しはなれた所に三人の男女が隠れて爆発を見ていた。三人のうち二人が男で一人が女だった、男のうちに一人は口髭を生やしていた。もう一人の男は短髪の青年、そして女は水色の髪をしたポニーテールの少女だった。

「こんなにうまく行くとはな」
「ああ、これで奴等は混乱する、そのうちに食料や武器を手に入れるんだ」
「ええ、行きましょう」

そう言って三人が回りこんで広場に近づこうとした、だが彼等の前にヘルデストロイヤーの傭兵が三人の前に立ちはだかった。

「いたぞ!ここだ!」
「しまった!」
「逃げるぞ!」

三人は傭兵に背を向けて逃げ出した。だが、ヘルデストロイヤーの傭兵達が腰の拳銃を抜き、彼等を狙って引き金を引いた。銃口から放たれた銃弾は二人の男の背中に命中した。

「グワァ!」
「アアッ!」
「キャア!」

前を走っていた女は撃たれて倒れた二人の男に押し倒されてそのまま倒れた。

「う、うう!動けない・・・」

女は必死で逃げようとしたが、倒れた男二人が彼女の動きを封じている。そんな彼女に傭兵達はゆっくりと迫ってくる。

「あ、ああ・・・・・・」

「殺される」、彼女は涙目をしながら心の中で呟いた。そして傭兵が拳銃を女に向けて引き金を引こうとした、その時、その銃が何者かの攻撃のよって弾かれた。傭兵達が攻撃のした方を見ると、そこにはシグザウアーを構えているマサシとその後ろにはジゼルとコンタがいた。

「き、貴様はライトシンフォニアの秋円と月本だ!それに注意人物のアルフォントもいるぞ!」
「な、なに!コイツ等が!?」

傭兵達がマサシ達を見て少し慌てながらお互いを見回している。

「ま、まずいぞ!俺達じゃコイツ等には勝てねぇ!応援を呼びに行くぞ!」

傭兵達はそう言ってその場から走り去って行った。敵がいなくなったのを確認したマサシは倒れている女に駆け寄った。

「大丈夫か?」
「え、ええ・・・・」
「立てるか?」
「ええ、でも二人が・・・・」

マサシは女を起こすとコンタが駆け寄り倒れている二人を見た。

「ダメだ、もう死んでる・・・・」
「そんな・・・・」

仲間が死んだ事を聞かされて悲しみの声を出す女。すると、ジゼルが近づいてくる声を聞いた。

「マサシ!奴等が戻ってきたよ!」
「まずいな!よし、一度ここから離れるぞ!」
「「うん!」」

マサシ達は女を連れてその場から急いで離れた。ロードグランに侵入はできたが、いきなり大きな騒ぎが起きてしまった。そしてマサシ達が出会った女は一体何者なのか!?

ネリネの処刑まで、あと6時間


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