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作品名:ラビリアンファンタジー 作者:ディオス

第53回   第五十二話 陽動作戦

砦でネリネの処刑が8時間後に行われると聞かされたマサシ達。急いでネリネを救出する為にロードグランへ向かう準備を始めた。

「これで準備完了だ、いつでも行けるぞ」

装甲車に砦に有った武器や食料を積みながらマサシは侵入した入口の反対側に入口、つまりロードグランに続いている方の入口に立っていた。装甲車は砦の外側から回りこませて反対側に乗ってきたのだろう。すると、砦の中からコンタが無線機を持ってマサシに近づいてきた。

「ユウタ達はハインドでさきにロードグランの様子を見てくるって」
「そうか、準備が出来たら俺達もすぐ行くって無線機で知らせといてくれ」
「OK」

コンタは無線機の電源を入れて再び荷物を運ぶ為に砦の中に戻った。すると、今度はジゼルがプラスチックの大きな箱を持って砦から出てきた。

「マサシ、これはどうすればいい?」
「それはそこに置いといてくれ」
「分かった・・・・よいしょっと!」

ジゼルはマサシに指示された所に箱をゆっくりと下ろした。下ろした後、ジゼルは地図を見て作戦を練っているマサシに近寄ってきた。

「どうした?」
「マサシ、ロードグランについた後にどうやって侵入するの?」
「そうだな、そろそろ話したほうがいいな。その作戦ってのは・・・・
「・・・・・・」
「・・・・・・」

装甲車の前で作戦の説明し始めるマサシ。そこへコンタが残りの荷物を持って砦から出てきた。

「あれ?二人とも、何ベタベタしてるの?」
「「ベ、ベタベタァ!?」」
「違うの?」
「ち、違うよ!ロードグランに侵入するための作戦を聞いてただけだよ!」

顔を赤くしながら否定するジゼル、その後ろではマサシも少し顔を赤くしていた。

「そう言えばまだ作戦の事聞いてなかったね、どんな作戦?」
「あ、ああ、作戦はな・・・・」

コンタに作戦の内容を説明すると、空から何か音が聞こえてきた。ヘルのプロペラ音だ、ユウタ達のハインドが戻ってきたのだ。

「三人とも!今戻ったぜ」

戻ったユウタ達に砦の近くの広場を指差し、「着陸しろ」と指示を出す。ユウタはマサシの指示を理解したのかゆっくりと広場の方へハインドを移動させた。

「行くぞ、二人とも乗れ!」

マサシは運転席に乗り込むと、ジゼルとコンタも装甲車に乗り込んだ。二人が乗ったのを確認すると、マサシはアクセルを踏み装甲車を走らせ、ハインドの着陸する広場へ向かった。しばらく装甲車を走らせると、ハインドは既に着陸し、ユウタ達は降りていた。装甲車を止め、マサシ達も装甲車から下りユウタ達の下へ駆け寄った。

「どうだった?」
「思ったとおりだ、東西南北の全ての入口に警備隊とイレイザーが配置されている」
「イレイザー、ヘルデストロイヤーの偵察警戒車か・・・・」
「ああ、それでどうするんだ?打ち合わせどおりに陽動作戦で行くか?」
「ああ、でも普通の陽動作戦ではすぐに態勢を直されちまう」
「どうするんだ?」
「いいか・・・・」

マサシはユウタに作戦内容を話し始めた。ユウタと後ろにいたシオンとレイナも近寄り話を聞き始める。

「・・・・・・なるほど、それなら確かにうまく行きそうだ、でもそれだと作戦の準備に時間が掛かるぞ。時間は大丈夫なのか、タイムリミットは8時間なんだろ?」
「大丈夫だ、必ず成功させる。速やかに、そして短時間で・・・・」
「分かった」
「じゃあ、早速、ロードグランに行こうかね」
「ああ」

マサシはジゼルとコンタの方を向き、ユウタはシオンとレイナの方を向いて頷く。マサシ、ジゼル、コンタは装甲車に、ユウタ、シオン、レイナはハインドに乗り込み、出発した。

「二人とも、心の準備はいいか?」
「うん」
「大丈夫だよ」
「よし、行こう!」

マサシは装甲車を走らせ、操縦席から見たユウタはハインドを飛ばし、ゆっくりと装甲車の後を追った。砦を出発してから30分後、遂に目的地である王都ロードグランの「南門」が見えてきた。マサシは装甲車を止め、窓から顔を出しハインドのユウタに手を振り合図をした。マサシを見たユウタは無線機を取った。

「マサシ、打ち合わせどおりに行くぞ?」
「ああ、分かった、準備が終わるまでそこで待っててくれ」
「了解」

無線を切り、マサシは装甲車を走らせ、「東門」へ向かった。走っていく装甲車をハインドから見るユウタ、そんな時、銃座席に座っているレイナが話しかけてきた。

「どうだ、決まったか・・・・?」
「何がだ?」
「言っただろう、このまま帰るかをロードグランに着いたら言うと・・・・」
「・・・・・・」
「どうなんだ・・・・?」
「・・・・俺達は連れ戻す事を命じられた、俺達まで命令違反をするわけには行かない」
「そうか・・・・」

ユウタは静かに自分の考えをレイナに伝える。レイナは今までどおりに冷静に頷いた。





その頃、マサシ達の乗った装甲車は東門から少し離れた所にある茂みの中で何かをしている。作業を終えたマサシが装甲車に戻った。

「よし、東門は終わった。次は「北門」だ」
「分かった」

マサシは再び運転席に座り装甲車を走らせ北門へ向かった。そして北門での作業を終えたマサシ達は「西門」へ向かった。

「よし、これで準備完了だ」
「あとは作戦開始を待つだけだね」
「ああ。コンタ、無線機でユウタに知らせてくれ」
「分かった」

コンタはそう言って無線機を取り電源を入れ、ユウタと話し始めた。

「ユウタ、準備完了だよ」
「分かった・・・・・・コンタ」
「なに?」
「マサシと変わってくれ」
「・・・・分かった、マサシ」
「ん?」

コンタに無線機を手渡され、受け取ったマサシは無線機に向かって語りかけた。

「俺だ」
「マサシ、これから俺達はこれから作戦に入る。作戦を終えた後は・・・・」
「・・・・ああ、戻ってもいい。エミリア様には俺達の事をどんな風に伝えてもいい」
「・・・・マサシ、しつこく訊くが、考え直す気はないんだな?」
「ああ、変わらない。ユウタ、俺は自分の信じた道を進む、だから自分の道を信じ、その道を進むお前の考えを責める気はない。だから、俺を信じてくれ」
「・・・・まったく、お前は出会った時から無茶苦茶だけど、いつまで経っても変わらないな。分かった、もう何も言わないし、お前を信じるよ」
「・・・・ありがとよ」
「じゃあ、頑張れよ、じゃあな」
「ああ」

そう言ってユウタは無線を切り、ハインドを飛ばし、南門へ向かった。

「マサシ、これでよかったの?」
「ん?」

心配そうにジゼルがマサシに語りかけた。

「ユウタのこと・・・・」
「ああ、アイツはちゃんと話せば分かってくれる奴だからな」
「そう・・・・少しうらやましいな」
「え?」
「どんな時でも信頼し合える仲間がいて」
「なに言ってるんだ、お前にだっているじゃないか。シンディやコンタ、ユウタ達だってお前の仲間さ」
「うん、そうだね」
「それに、俺はお前を・・・・」
「え?」

マサシはジゼルに何かを伝えようとした。だが、後ろで目を細くして「今はそんな事してる場合じゃないでしょう?」と言いたそうにこっちを見ているコンタに気付き、途中で言うのをやめた。

「ま、まあ、その話はまた今度って事で!」
「?」

少し慌てる様子のマサシを見て、頭に?マークを浮かべるジゼルと呆れるように溜め息をつくコンタ。





ロードグランの中央にある大きな城、ロードグラン城の謁見の間では、国王を殺し、新たなロードグラン城の主になり、ゼルキアスの支配者となったゾークが玉座に座っていた。ソークの前ではコルヘルスから戻ってきたハヤテとリーズが立っている。

「ほう、やはりそうだったか」
「ハイ、あのネリネという女剣士、伝説の聖天使人の末裔だったようです」
「フフフ、そうか」

ハヤテからネリネの事を聞かされたゾークは腕を組みながら笑っている。そんな時、リーズがゾークに質問をしてきた。

「しかし、社長、なぜネリネを処刑されるのですか?奴がいれば我々の戦力になりますのに・・・・」
「あの女がいなくても聖天使の力を持つ兵士は自由に作り出せる」
「は?」
「今あの女の体を調べさせているところだ、あと3時間もあれば完了するだろう。それが終われば奴は用済みだ」
「疑似魔封石で強制的に洗脳してはいかがでしょう?」
「アレはまだ未完成だ、下手すれば、あの女の体や精神だけでなく、聖天使人の力まで崩壊してしまう」
「なるほど・・・・」

三人がネリネの事を話していると、一人の傭兵が謁見の間に飛び込んできた。

「社長!」
「何事だ?」
「ほ、報告します!東門と北門付近で突然、原因不明の爆発が!」
「なに?」
「現在、東門と北門付近の警備隊が警戒態勢に入っていますが、人手が足りず・・・・」
「だったら、西門と南門の警備も向かわせろ!」

ハヤテが声を上げて命令すると、ゾークが静かに止めた。

「待て」
「?」
「おい、爆発付近に誰かいたのか?」
「い、いえ・・・・付近には人影は見当たりません」
「・・・・・・」
「どうかなさいましたか?」

ハヤテが考え込むゾークに尋ねると、ゾークか考えるのを止めて顔を上げた。

「誰もいない所で突然爆発が起きる、不自然ではないか?」
「確かに・・・・・・ハッ!時限式、もしくはリモコンなどでの遠隔爆破!」
「そうだ、そしてそんな事が出来るのは、我々ヘルデストロイヤーを除いて・・・・」
「ライトシンフォニアのみ、ですね・・・・」

リーズが自分の考えをを口にすると、ゾークが立ち上がり、傭兵に命令した。

「そして、なぜ奴等がそんな事をしたのか理由を考えると、出てくる答えは一つだけ・・・・」

ゾークが説明していると、もう一人、別の傭兵が謁見の間に慌てて入ってきた。

「しゃ、社長!南門に大型の攻撃ヘリが現れました!塗装からして、ライトシンフォニアの物と思われます!」
「やはり陽動作戦だったか。北門の警備隊には爆発の処理をさせろ、西門と東門の警備隊、イレイザーを全て南門に集結させて迎撃させるんだ。それから対空砲とコブラを出せるだけ出せ!奴等を生かして帰すな!」
「「「「ハッ!」」」」

ゾークの命令を聞き、ハヤテとリーズ、二人の傭兵は敬礼して謁見の間を出た。





その頃、南門ではユウタ達がハインドに乗り攻撃を行っていた。ハインドは機銃と対地ミサイルで次々に敵を倒していく。

「よし、順調だ!」
「ん?ユウタ、12時の方角から反応が10、敵の戦闘ヘリ部隊だ・・・・」
「チッ!もうヘリを出してきたか!」

レイナがレーダーに映っている反応をユウタに伝えると、ユウタは舌打ちをした。そして、彼の目の前には10機のコブラ、そして地上には大勢のヘルデストロイヤーの傭兵とゼルキアスの兵士達、そして多数の対空砲があった。

「そろそろいいだろう!よし、引き上げるぞ!」
「「了解!」」

銃座席のレイナと後ろで狙撃銃を使い地上の兵士を狙撃しているシオンが返事をする。ハインドはコブラと対空砲に注意しながら旋回し、ロードグランから離れていき、コブラはハインドの後を追って行く。





「今だ!!」

マサシが装甲車のアクセルを深く踏み、全速力で西門の入口へ走っていく。

「な、何だ!?」
「こっちからも敵が!?」

西門にいた警備兵達は突然現れた装甲車に驚く。西門の警備が薄くなっていたので警備兵達は装甲車を止める事ができずにそのまま通してしまった。

「よし!侵入成功だ!」
「やったー!」
「凄い、こんなに簡単に侵入できちゃうなんて・・・・」

簡単に侵入できた事に驚くジゼル。すると、運転しているマサシがジゼルの方を見て口を開く。

「これが本当の作戦『二重陽動作戦』だ。北門と東門の爆発を囮にして敵がそっちに行く、だがその直後、南門でハインドが現れ攻撃をする、そうなると当然敵は陽動作戦だと思い込み戦力を南門に集中させる。そして警備が薄くなった西門から俺達が侵入、まさに二重の陽動作戦だ」

マサシは説明しながらアクセルを踏み続けた。ジゼルは真剣な目で前を見ている。

(ありがとう、ユウタ、シオン、レイナ・・・・・・待っててね姉さん、必ず助けるから!)

作戦は成功し、ロードグランに侵入に成功したマサシ、ジゼル、コンタの三人。だが、まだ安心はできない。本当の作戦はこれからだ!

ネリネの処刑まで、あと6時間45分。


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