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作品名:ラビリアンファンタジー 作者:ディオス

第52回   第五十一話 砦攻略作戦

王都ロードグランへ向かうマサシ達。途中で後を追ってきたユウタ達と少し言い合いをしてしまったが、マサシのいい作戦とやらを聞いて様子を見る事にしたユウタ達。だが、ロードグランを目指すマサシ達の前に一つの砦が行く手を阻むのだった。

「もう少しで砦だ」

装甲車を走らせながらマサシは言った。その隣の助手席にジゼル、後部座席にはコンタが座っている。装甲車の上空ではユウタ達の乗るハインドがゆっくりとついて行く。

「ねえ、マサシ」
「ん?」

助手席のジゼルがマサシに声をかけると、マサシは前を向いたまま返事をした。

「ロードグランに侵入する作戦でユウタ達に協力してくれるように頼んだでしょ?」
「ああ」
「どんな作戦なの?」
「それはまだ秘密だ。あっち(ロードグラン)に着いたら教えるよ」
「フゥ・・・・・・ねえ、ユウタ達に最後まで協力してくれるように頼んでみようよ」
「・・・・・・」

ジゼルの言葉を聞いてはいるが返事を使用としないマサシ。その時、後ろにいたコンタがマサシの代わりに答えた。

「それは無理だよ」
「どうして?」
「ユウタ達は多分エミリア様の命令で僕達を連れ戻しに来たんだと思う。あの三人は真面目だからね、エミリア様の命令には絶対に逆らわないんだ。隊長であるマサシの『頼み』より、社長であるエミリア様の『命令』を優先するんだよ」
「・・・・・・」

コンタから聞かされたユウタ、シオン、レイナの真面目さをジゼルは黙って聞いていた。

「でも俺はそんな事は気にしていない」

さっきまで黙って運転をしていたマサシが突然口を開けた。

「俺はアイツ等の事を部下じゃなく、戦友と思っている。アイツ等が『やりたくない』って言えば無理強いはしない、アイツ等の考えを聞き、そしてアイツ等の身の安全を考える。それが隊長である俺の役目だからな」
「・・・・・・優しいのね、マサシ」

ジゼルが優しい声でマサシに言うと、マサシはニヤニヤ笑いながら言った。

「そんな事無いさ、だってコンタがついて来る時、コイツには『考え直せ』とか言わなかったからな」
「あ!言われて見れば、マサシ酷いよぉ!!」
「ハハハハッ!ワリィワリィ♪」
「フフフ」

マサシとコンタの話を聞き小さく笑うジゼル。そして数分後、遠くから小さな明かりが見えてきた。

「ユウタ、俺だ。一度装甲車を止める、お前達も止まってくれ」
「分かった」

無線機でハインドのユウタに連絡を入れ、装甲車を止めたマサシ。、その後ろの上空ではユウタ達の乗るハインドがホバリングに入った。幸いまだ距離はあるので敵には気付かれていない。

「さてと、敵さんの様子は・・・・」

装甲車から降りたマサシは暗視スコープを取り出し砦を見た。真っ暗な夜でも暗視スコープではハッキリと見える。スコープを覗くと砦の入口にガスマスクをつけ、ヘルメット被りタクティカルスーツを着たヘルデストロイヤーの傭兵が二人、見張り台に一人、全部で三人いる。

「ここから確認できるだけでも三人、武装はMP5に閃光弾か」

マサシが暗視スコープを覗くのを止めて無線機を取り出しユウタに状況を知らせる。

「ユウタ、確認できる敵は三人だ、全員軽武装だ普通に戦う分には問題ない。だが中にまだ敵が居る可能性もある、俺達が砦に近づいて調べる、お前達はここで待機しててくれ」
「分かった、無理はするなよ?」
「ああ、じゃあ、一旦切るぞ」

マサシは無線を切って再び装甲車に乗り込んだ。

「これから敵の砦に近づいて偵察する。だが、もしかすると戦う事になるかもしれない、念の戦う準備をしておけ」

ジゼルとコンタは頷き、戦う準備を始めた。コンタはファイブセブンの弾層を確認し、ジゼルは壊れたミカエルの代わりにとマサシが用意してくれたスチール製のトンファーを取り点検した。

「よし、行くぞ!」

武器を点検している二人を見たマサシは装甲車を走らせ砦へ向かった。装甲車が走って行った後、ハインドは着陸し、ユウタとレイナは装甲車を見て話していた。

「連れ戻さなくていいのか・・・・?」
「ああ、もう少し様子を見る事にした」
「そうか、ところでどうするつもりだ・・・・?」
「何がだ?」
「マサシの言っていた作戦だ。あの作戦を終えた後、どうするつもりなんだ・・・・?」
「・・・・・・」
「『マサシ達を見つけはしたが、説得できなかった』とエミリア様に伝えるのか・・・・?」
「それはロードグランについてから考える、今はあの砦をどうやって攻略するが問題だ」

ユウタは腕を組みながら砦を見てマサシ達が無事である事を願うのだった。





その頃、砦の近くでマサシ達の乗った装甲車が止まっていた。車内にマサシ達の姿は無い、少し離れた茂みの中で砦の入口を覗いていたのだ。

「ここからでも確認できる人数は三人か・・・・」
「まだ見えない所にいるのかな?」
「分からない、コンタ、何か聞こえるか?」
「・・・・・・」

コンタは目を瞑って耳を動かし音を聞いて敵を探っていた。

「あの三人の以外は入口にいないみたいだよ」
「そうか、となると、残る問題は・・・・」
「砦の中だね?」
「そうだ」

ジゼルの答えを聞き頷くマサシは再び暗視スコープを取り砦の入口を見た。

「さて、作戦は三つ。一つ目は強行突破。二つ目は敵を誘き寄せて奇襲を掛けるか。三つ目はユウタ達に連絡してハインドで一掃してもらうか」
「どの作戦がいく?」

ジゼルはどの作戦を取るかマサシとコンタに尋ねる。

「奇襲作戦だと時間が掛かる、ハインドで一掃すると騒ぎがロードグランまで伝わって敵が俺達が来る事に気づいちまう。ここはやっぱり強行突破で砦に突っ込み、敵の隊長を捕まえて勝負をつける」
「分かった」
「ちょっと危ないと思うけど、分かった、OK!」

強行突破に決まりマサシ達は武器を手に取った。マサシはシグザウアーP220を両手に持ち茂みから飛び出して砦の入口に走って行く。

「ッ!敵だ、撃てぇ!」

門前にいた二人の傭兵は突然目の前に銃を持って出てきたマサシに驚き、警告をすることもなくMP5をマサシに向けて引き金を引いた。無数の9mm弾がマサシに向かって放たれたがマサシは二丁のシグザウアーの引き金を引きながら横に大きく跳び銃撃をかわした。マサシの銃弾は敵のMP5を弾き、それと同時にジゼルが茂みから飛び出しトンファーを回しながら敵に向かって走っていく。見張り台にいたもう一人の傭兵がジゼルにMP5の銃口を向けたが、茂みに隠れていたコンタがファイブセブンで見張り台の傭兵を攻撃した。

「グワア!」

傭兵はコンタの攻撃を受け、見張り台から落ちた。見張り台の仲間がやられた事に驚く門前の傭兵は再びジゼルの方を向いた、だが彼女はすで目の前にいたため、回避行動に移れなかった、ジゼルはスチール製のトンファーの長い部位で傭兵の頭を攻撃、敵の傭兵は砦の壁に叩きつけられ動かなくなった。

「ク、クッソォ!!」

最後の一人が閃光弾で目くらましをして逃げようとしたが、安全ピンを抜こうとした時、マサシがシグザウアーの銃口を敵のヘルメットにつけた。そして引き金を引き敵の頭をヘルメットごと撃ち抜き、そん場に倒れた。

「終わったか」
「大丈夫?」

コンタが茂みから出てマサシの下へ駆け寄ってきた。マサシとコンタが銃をしまうと、ジゼルが敵の死体を見ていた。マサシはゆっくりと歩き出しジゼルの隣に来た。

「ジゼル」
「・・・・・・」

ジゼルは自分の攻撃で命を失った敵の見ていたのだ。彼女はゆっりとマサシの方を向いた、その表情はとても悲しそうで、とても辛そうだった。

「マサシ、あたし・・・・」
「辛いか?」
「・・・・・・」

今までのようにモンスターを倒すのとは全く違う。人の命を奪ってしまったのだ、彼女は大きく傷ついたいた。

「分かってた、戦っているんだから、いずれ誰かを殺す事になるんだって、でも・・・・」
「ジゼル、俺が前に言った事を覚えているか?」
「え?」
「『人を殺してショックを受けないのは異常者だけだ』って言ったときのことだ?」
「うん、覚えてる・・・・」
「俺達はこれまで何人もの命をこの手で奪ってきた、だからもうショックを受けない、人を殺す事に慣れちまった異常者だ。でもお前はそうやってショックを受けてる、お前は異常者なんかじゃない。いいか、絶対に人を殺す事に慣れるんじゃないぞ?」
「うん・・・・」

ジゼルは頷きマサシの胸に顔を当てた。マサシも彼女の頭を優しく撫でた。

「あ〜、オッホン!」
「あ・・・・」
「まだ作戦は終わってないよ?」
「す、すまん・・・・」
「ゴメンね・・・・」

コンタに注意されゆっくりと離れる二人。そして三人は砦の入口の前に立った。中のほうでは何やら騒がしい、銃声に気付いた敵が戦闘態勢の準備に入っているのだろう。

「騒がしいな・・・・・・敵も戦闘態勢に入ったか」
「そうみたいだね・・・・」
「二人とも、どいて」

コンタの声を聞き後ろを向くマサシとジゼル。そこには『カールグスタフ』を構えていたコンタがいた。

カールグスタフ(FFV M2)
スウェーデンのFFV社が1950年代に開発した無反動砲。この種の無反動砲は、主な目標である装甲車両の進化について行けず、今では多くが第一線から退いているが、M2は各種の改良により生き残った。特に大きかったのはロケットアシスト式の新型HEAT弾・FFV551の開発で、これによってM2は新世代の装甲車両にも対抗可能となった。自衛隊では「84mm無反動砲」と言われている。

自衛隊で使われている対物火器で子供が使いこなす事なんて無理だが、契約者であるコンタは別だった。

「ジゼル、跳べ!」
「え?・・・・う、うん!」

マサシの合図でジゼルは跳び、砦の入口から離れ、マサシも同時に跳んで入口から離れた。そして、それと同時にコンタはカールグスタフの引き金を引いた。カールグスタフから吐き出された84mmのHEAT弾が扉に命中し、爆発と同時に扉が吹っ飛んだ。

「派手だねぇ・・・・」
「本当だ・・・・」

爆発を目にして驚くマサシとジゼル。そして扉から生まれた大きな穴から中へマサシとカールグスタフを捨て、ファイブセブンを抜いたコンタが突っ込み、それに続くジゼル。三人が中に入ると、そこにはMP5とマシェットを持った傭兵が数人構えていた。

「来たぞ!撃て!」

隊長らしき傭兵の合図でMP5を持った二人の傭兵が引き金を引き、マシェットを持った傭兵が二人走ってきた。数は隊長を含めて五人、マサシは黒龍刀と白龍刀を抜き、MP5の弾を次々に弾いて行く、敵の傭兵は驚き銃撃を止めた。そしてマシェットを持つ二人の傭兵がマサシに斬りかかってきた。だが、その二人はマサシの後ろにいたコンタの銃撃を受け、何もできずに倒れた。

「グハァ!」
「グフォ!」
「な、何をしている!撃ちまくれ!」

隊長の命令で、再び引き金を引こうとする傭兵。だが、マサシは既に自分達の目の前にいた為、攻撃できず、マサシの斬撃を受けた。

「は、速い・・・・!」
「ば、馬鹿な・・・・!」

そのままMP5を落とし、残りの二人も倒れた。愛刀を納めたマサシはゆっくりと隊長に近づいていく。隊長は怯えながら腰の拳銃を抜いたが、その瞬間、コンタがその銃をファイブセブンで弾いた。

「ウッ!」
「抵抗しないでください・・・・」
「き、貴様等は・・・・」
「ライトシンフォニアの神竜隊だ」
「し、神竜隊!?そ、それじゃあ、勝てるわけねぇ・・・・」

隊長は完全に士気を失いその場に座り込んだ。マサシは座り込んだ隊長と顔を合わせ、襟元を掴み顔を近づけた。

「素直に質問に答えれば命は助ける、いいな?」

隊長は「うん、うん」と頷いた、完全に怯えている。

「ロードグランにハヤテとリーズが戻ったはずだ、その時、この世界のネリネっていう女剣士も一緒だったろ?」
「あ、ああ・・・・」
「彼女は今何処だ?」
「し、知らねぇよ・・・・」
「ふ〜ん」

マサシはゆっくりと腰のシグザウアーを抜いた。

「素直に言えば助けてやると言ったが、嘘をつくなら・・・・」
「ま、待て!本当だ!た、ただ・・・・ハヤテ准将とリーズ准将が戻った時、明日の正午に一人の女が処刑されるって聞かされてる」
「なに!?」

マサシは襟元の手を離し立ち上がり、ジゼルとコンタの方を向いた。

「処刑される女は多分ネリネだろう、明日の正午に処刑されるみたいだ」
「う、嘘・・・・!」
「た、大変じゃないか!」

ジゼルは顔が青くなり、コンタがタラッっと汗を一滴落とす。

「明日の正午って事は・・・・」

マサシは部屋の中にかかってある振り子時計を見た。その時、時計の針は午前4時を指していた。

「あと8時間・・・・!」
「大変だ!」
「マサシ、早くしないと姉さんが!」
「分かってる!コンタは無線で砦の制圧した事をユウタに知らせてくれ!」
「分かった!」
「ジゼル、お前は反対側の入口を見てきてくれ」
「うん!」

ジゼルとコンタはお互いに反対側の入口へ走って行った。ネリネの処刑までもう時間がない、マサシ達は間に合うのだろうか!?

ネリネの処刑まで、あと8時間。


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