20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:ラビリアンファンタジー 作者:ディオス

第51回   第五十話 対立する意見

エミリアの許可を得ずに無断でネリネの救出に向かうマサシ、ジゼル、コンタの三人。しかし、敵の本拠地である王都ロードグランをたった三人でどうやって攻略するのだろうか。コルヘルスを出てから数十分、マサシ達の乗る装甲車は大きな橋を渡っていた。辺りは暗くなり、人一人歩いていない、とても静かな夜だった。

「フランシスから聞いた話ではこのまま真っ直ぐ進んで行くと小さな砦があるみたいなんだ、まずはそこに向かおう」

運転しているマサシが助手席に座っているジゼルと後部座席に座っているコンタにコルヘルスからロードグランまでのルートを説明していると、コンタが話しかけてきた。

「砦か・・・・・・やっぱり、そこにもヘルデストロイヤーの連中がいるのかな?」
「多分な、未制圧だったコルヘルスを占拠する為にロードグランから真っ直ぐ向かうと兵士達の体力も士気も落ちちまう、そうさせない為にも近くにある砦から一度休んで攻め込むのが一番いい」

マサシとコンタが砦の事を話していると、今度はジゼルが話に加わってきた。

「ねえ、二人とも、本当によかったの?あたし勝手な考えに付き合って、もし無事にロードグランから戻ったとしても、あなた達はエミリアさんに怒られるんじゃ・・・・」

ジゼルが申し訳なさそうな言い方をすると、マサシが片手でジゼルの頭に軽くチョップをかました。

「アタッ!」
「しつこいぞ、ジゼル。行く前にも言っただろう?俺もコンタも自分の意思で行くって決めたんだって、俺達はお前とネリネの為にロードグランに行くんだ。俺もコンタも自分で選んだ道を進んだんだ、その後なにが遭っても後悔しない。そうだろ、コンタ?」
「うん、僕達は自分の信じた道を進む。例え周りの人達がその道を否定しても僕達はそれを誇りに思う」

マサシとコンタが優しく笑ってジゼルを見ると、彼女の顔にも笑顔が戻ってきた。

「二人とも、ありがとう!」
「よし!このまま砦に向かうぞ!」
「うん!」
「OK!」

マサシの言葉を合図に二人は力強く返事をし、マサシもアクセルをふかし、一気にスピードを上げた。すると、後ろの方から何やら聞き覚えのある音が聞こえてきた。

「何の音だ?」
「この音・・・・何処かで聞いた事あるような・・・・」

音の事を必死で思い出そうとするマサシとジゼル。そんな時、コンタが耳をピクピク動かして、音の正体が分かったのか、少し慌てた様子で二人に言った。

「これはヘリのプロペラ音だよ!」
「ヘリだと!?」
「うん、しかもこの音は・・・・・・『ハインド』!!」

ハインド(Mi−24)
ハインドは、ソ連のミル設計局で開発された重武装攻撃ヘリ(ガンシップ)である。1978年以来、ソ連国内で約2000機が製造され、30ヶ国以上に約600機が輸出された。ソ連のパイロット達の愛称は「ワニ」であった。また、北大西洋条約機構はMi−24に対し「ハインド」というコードネームを割り当てたと言われている。武装は12.7mm4銃身機銃、対戦車ミサイル、空対空ミサイル、そしてロケット砲などの様々な兵器を搭載している。

コンタが装甲車の後部にあるハッチを開けて上を見ると、ハインドがライトで装甲車を照らしている。しかも、よく見るとそのハインドは青と白の塗装が施されていた、ライトシンフォニアのハインドだったのだ。

「マサシ!うち(ライトシンフォニア)のハインドだよ!」
「なに!?クッソー!行動がバレて連れ戻しに来たか!」
「どうするの?」

三人が話していると、ハインドのスピーカーから声が聞こえてきた。

「お前達!装甲車を止めろ!」
「この声!ユウタの声だ!」
「アイツ等が追ってきたのか!」

ユウタの声を聞き、驚くジゼルとマサシ。空を飛ぶハインドが相手、しかも乗っているのがユウタではさすがに分が悪い、マサシはそう判断して広い草原のような場所に装甲車を止め、三人は装甲車から降りた。ハインドも装甲車から10m程離れたところにゆっくりと着陸し、操縦席からユウタが銃座席からレイナが、後ろのドアからシオンが出てきた。

「よう」
「『よう』じゃねえだろう!どういうつもりだ?」
「何が?」
「命令無視に決まってるだろう!エミリア様はネリネの救出作戦を許可していなかったぞ!」
「ああ、分かってる」
「分かってるなら、どうして無視をした!?」

ユウタが目くじらを立てながらマサシに尋ねると、マサシは表情を変えずに口を開いた。

「助けたいからさ」
「な!なんだその理由は?」
「俺はジゼルの、仲間の大切な人を助けたい。ただそれだけだ・・・・」
「お前なぁ・・・・」

ユウタが力の無い声でマサシを説得しようとした時、今度はマサシがユウタに質問をした。

「逆にお前に訊くが、お前はどうしてネリネを助けに行かず、命令に従うんだ?」
「当然だろ?俺達はエミリア様の直属の特殊部隊だ、彼女の命令に従うのは当たり前。それに敵の本拠地に立った数人で向かうなんて、無謀すぎるからだ」
「無謀だったら仲間を見殺しにしていいって言うのか?」
「なに?」

マサシはユウタの方を見て少し声を低くして言った。しかもほんの少しマサシは睨む様な目で見ていた。

「たとえ、どんなに不利な状態であっても、どんなに危険であっても仲間の為に命を掛けて仲間を救う。これが本当の絆なんじゃないのか?」
「違う!そう言うのを無謀と言うんだ!仲間を助けたくても闇雲に突っ込んでいったら自滅するだけだ!」
「俺にはネリネを見殺しにする事はできない!仲間の家族を助ける事もできないのに、ヘルデストロイヤーを倒す事なんてできるわけないだろう!!」
「マサシ・・・・」

ユウタと言い合い、珍しく感情的になるマサシを見て悲しそうな表情をするジゼル。自分のせいで仲間達が争っている事に心を痛めているのだろう、その時、ユウタの後ろに立っているシオンが二人の間に入った。

「そこまでよ!二人とも止めなさい!」
「「・・・・・・」」

注意されて黙り込むマサシとユウタ。

「二人の言ってる事は、きっとどちらも正しくて、どちらも間違っているわ。私にはそれを決める事はできない・・・・。でも、これだけは言える、アンタ達が今ここで争ってても何も変わらないわ。まずお互いに冷静になって話し合いましょう?」
「・・・・そうだな」
「ああ、悪い・・・・」

知らず知らずのうちに、シオンもエミリアと同じ事を考えていたのだろうか、シオンのその言葉は二人を冷静にさせた。シオンの言うとおり冷静になり、改めて話し合いを始めるマサシとユウタ。

「改めて訊くが、引き返すつもりは無いのか?」
「ああ、俺達はロードグランに行く」
「なんの作も無いのに、どうやって王都ロードグランを攻略するつもりなんだ?」
「作はある」
「え?」

マサシの口から予想もしていなかった言葉が出て、驚いて声を出すユウタ。黙ったまま驚きの表情を見せるジゼル達。

「マ、マサシ、それ本当なの?」

マサシの後ろで黙っていたコンタがマサシに尋ねる。

「ああ、俺がなんも考えずに敵陣に突っ込むと思ったか?」
「思ってた」
「あらっ!」

コンタも即答にクラッとよろけるマサシ。

「俺だって馬鹿じゃないさ、ちゃんと考えてるよ」
「それで、どんな作戦なの?」

ジゼルがマサシに作戦の内容を聞くと、マサシは装甲車の方を向いた。

「ちょっと待っててくれ」

マサシはそう言って装甲車のほうへ走っていく。しばらくして、マサシが装甲車から戻ってきた。その手には丸めた大きな紙が握られていた。

「これを見てくれ」

マサシが地面に紙を広げると、ジゼル達はその紙を囲むようにしゃがんで見た。そこには何かが細かく書かれていた。

「これって・・・・・・地図?」
「正解、王都ロードグラン周辺の地図だ」
「周辺の?よく手に入ったね?」

ジゼルが驚くと、マサシはニッと笑った。

「コルヘルスはゼルキアスの領域のある街だぜ?ロードグラン周辺の地図を手に入れることなんて簡単さ♪」
「なるほど!」

納得して手をポンっと叩くコンタ。説明を終えたマサシは地図を見て指を指した。

「ここを見てくれ」
「「「「「?」」」」」

マサシの指の先を見るジゼル達。そこにはラビリアンの字で何かが書かれていた。

「なんて書いてあるんだ?」

ユウタがジゼルに訊くと、ジゼルは地図に顔を寄せて小さな字を見た。

「『ロードグラン北門』って書いている」
「そうだ、その隣が『ロードグラン東門』、次が『ロードグラン南門』、そして最後が『ロードグラン西門』だ」
「読めるの?」

コンタがラビリアンの字をスラスラと呼んでいくマサシを不思議に思って尋ねた。

「ああ、シュルツさんから地図を貰う時に教えてもらってんだ」
「なるほど、それで、この門がどうかしたのか?」
「いいか、見ての通りロードグランには四つの入口がある。北門、東門、南門、西門の四つだ。四つも入口があれば当然その四つの入口全てを警備をする」
「うん・・・・」

マサシの説明を聞き、頷くジゼル。

「もし、俺達がこの四つの入口のどれか一つから侵入しようとしたら、敵はどう出ると思う?」

マサシが正面でしゃがみこんでいるユウタを見ながら尋ねる。するとユウタがマサシの顔を見て言った。

「当然、その入口の警備を固め、増援を送るだろうな」
「そうだ、そうなったら俺達は侵入できない」
「じゃあ、どうするんだよ?」
「その入口の警備が固くなるという事はそこに敵の戦力と守備隊が集中するという事だ、そうなると、他の入口の守りはどうなる?」
「そうなると、他の・・・・・・あっ!」

ユウタが何かに気付いたような顔をし声を出した。

「その入口に戦力と守備隊が集中すれば、他の入口の警備もそっちに向かうから、守りが手薄になる・・・・陽動作戦か!」
「正解!」

答えを出したユウタを見て指を指しすマサシ。

「つまり、一つの門で騒ぎを起こした後、あたし達は別の入口から侵入すれば・・・・」
「うまく行きそうね!」
「うん!」

ジゼルとシオンが少し嬉しそうに話した。すると、ずっと黙っていたレイナが口を開いた。

「そんな簡単に行くとは思えないな・・・・」
「え、どういう事?」

レイナの声を聞きジゼルが彼女の顔を見て尋ねる。

「確かにこの作戦なら他の門の警備は薄くなるだろう。だがもし、敵がこの陽動作戦に気付いて、戦力を残しておいたとしたら、敵がその侵入する為の入口に戦力を送り込むかもしれないぞ・・・・?」
「ああ、そうだよね・・・・・・マサシ、どうするの?」
「そっちの方もちゃんと考えてある」

ジゼルが心配そうにマサシに尋ねるとマサシは笑って立ち上がった。

「ユウタ、一つだけ頼まれてくれないか?」
「ん?」
「救出作戦に参加してくれとは言わない、ちょっと手を貸してくれるだけでいいんだ」
「・・・・どんな作戦だ?」
「ああ、それはな・・・・」
「・・・・・・」

マサシ達の追いつき、連れ戻そうとしたユウタ達。時にはぶつかり合い、自分達の意見を言い合う、これが本当の友情なのかもしれない。果たして、マサシの考えた侵入作戦とはどんな作戦なのだろうか?


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 185