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作品名:ラビリアンファンタジー 作者:ディオス

第50回   第四十九話 それぞれの信じた道

「・・・・・・」
「ジゼル・・・・」

ネリネがハヤテとリーズに連れ去られてしまった、大きなショックを受けるジゼル。マサシはジゼルの肩に優しく手を置いた。

「姉さん・・・・」

ジゼルの体から再び赤い光が放たれ、ジゼルの髪が元のピンク色に戻り、背中の翼も消えた。

「おーい!」
「大丈夫か!」

マサシとジゼルが振り返ると4階で戦っていたはずのコンタとユウタが駆け寄ってきた。

「随分派手にやったわね」
「本当だな・・・・」

コンタとユウタの後ろから今度はシオンとレイナが訓練場に入ってきた。その後ろからはフランシスと生徒会メンバーの三人が顔を出した。

「大訓練場がこんなにボロボロに・・・・」

フランシスが所々壊れている訓練場を見て唖然とした。コンタがマサシとジゼルに駆け寄って無事なのかを確かめる。

「大丈夫?二人とも」
「あ、ああ・・・・」
「・・・・・・」
「どうしたの?」

元気の無い二人を見て、コンタは顔を覗き込む。

「そういえば、ハヤテ達は?」

周りを見回すがハヤテ達の姿が見えないのでマサシに問い掛けるコンタ。すると、マサシはゆっくりと口を動かした。

「逃げたよ」
「逃げた?」
「ああ・・・・」
「そうか、だから僕達と戦っていた忍者達が突然逃げて行ったんだ」
「なるほど、大将が逃げたんじゃあ、奴等も当然逃げるわね」

コンタとシオンが4階で戦っていた暁忍者隊の事を話していると、マサシが再び口を動かす。

「そして奴等はネリネを連れて行った」
「ネリネを?」
「ああ・・・・」
「ちょっとお待ちください」

マサシ達の会話にフランシスが加わってきた。

「そのネリネって敵の司令官じゃありませんか?」
「ああ」
「つまり、奴等の仲間なのですから、連れて行くのは当然じゃありませんの?」
「ネリネは人質を取られて言いなりになっていたんだ、だから正確には奴等の仲間じゃない」

ネリネの事をフランシスに詳しく説明するマサシ。すると何やら外が騒がしい。

「な、なんですの?この音は!?」
「これはヘリの音だ」
「ヘリ?」

ヘリが何なのか分からずコンタに聞くフランシス。コンタはフランシスの横を通り廊下に出て窓から外を覗いた。彼の目の飛び込んできたのは白く塗装された輸送ヘリだった。そしてそのヘリにはライトシンフォニアのマークが付いていた。そしてヘリの窓から手を振っている人物がいた、エミリアだ。

「エミリア様だ!きっと向こう(元の世界)から来た増援を連れてきてくれたんだ」
「本当だわ!」
「なるほど、ハヤテ達が逃げ出したのも納得がいく・・・・」

コンタの後ろからシオンが覗き込み少し喜びの表情を見せ、レイナが覗く。続いてユウタ、そして生徒会メンバーも窓から外を覗いた。だが、マサシとジゼルはそこでジッとしていた。





その後、エミリアの連れてきた増援とコルヘルスの協力でヘルデストロイヤーの逃げ遅れや残存部隊の殲滅に取り掛かったマサシ達。それから約1時間程でコルヘルスは完全に解放された。

「・・・・・・」

解放の後、コルヘルスの周りの警備を任された神竜隊。コルヘルスの周りに張られたテントの中で椅子に座り考え込んでいるマサシ。恐らくネリネの事を考えているのだろう。

(・・・・あの時ハヤテの言った事)
『いや・・・・連れて帰って処刑する』

マサシの頭の中にハヤテの声が響いた。

(聖天使人の末裔であるネリネがいれば奴等の大きな戦力になるはずだ、どうして処刑する必要があるんだ?)

マサシの頭に再びハヤテの言葉が響いた。

『取り返したかったらロードグランまで来い!もっとも、来る根性があれば、だがな。ハハハハハ!』
(明らかに誘い出してるとしか言いようがない。処刑するって言ったのも、俺達を誘い出す為の嘘だとすれば納得がいく。だが・・・・)

マサシは何かに引っかかっている。

(本当に嘘なのか?もしかして本当に・・・・・・)

脅しではなく、本当に処刑するかもしれない。マサシはそう思っていたのだ。マサシはゆっくりと立ち上がりテントの外へ出た、そして空を見上げた。すっかり暗くなり星が光っている。そんな時、後ろからジゼルの声が聞こえてきた。

「マサシ・・・・」
「・・・・ジゼル、どうしたんだ?」
「うん、実は・・・・」





「お前、本気か!?」

テントの中でユウタが興奮しながらマサシに言った。周りにはコンタ、シオン、レイナ、そしてエミリアが折りたたみ式の椅子に座ってマサシを見つめていた。

「ああ、本気だ」
「馬鹿な!王都ロードグランに行くなんて、無謀にも程がある!!」

実はさっき、マサシとジゼルはテントの前でロードグランに行き、ネリネを解放しようと話していたのだ。最初は反対していたマサシだが、ジゼルの強い意思のマサシは折れた。そして二人は「絶対に無茶をしない」「マサシの側を離れない」「危険だと判断したらすぐに引き返す」と三つの約束をしてロードグランへ行く事になったのだ。マサシはロードグランに行く事をエミリア達に伝えに来たのだ。

「ハヤテ達は俺達を誘き出す為に処刑するのだと嘘をついたのかもしれない、ネリネの力を使えば大きな戦力になるんだからな、最初はそう思った。だが、俺達の世界の技術を使えばこの世界の力を作り出すこともできる、奴等は用済みになったネリネを殺すはずだ。そうなる前にネリネを助け出す」
「馬鹿を言うな!ただでさえヘルデストロイヤーに狙われてるって言うのに、わざわざ捕まりに行くようなものだ!敵の本拠地だぞ!?」

ユウタが興奮しながらロードグランのある方角を指を指しながら言った。

「分かってる!でも仕方ないだろう、ネリネはジゼルにとってたった一人の家族だ。彼女に俺達と同じ思いをさせたくないんだ」
「・・・・・・」

ユウタはマサシの無謀すぎる作戦に腕を組みながら黙り込んだ。そしてゆっくりと口を開いた。

「マサシ、俺は今までお前の考えてきた多くの無謀と言える作戦に付き合っていた。だが、今回はお前の作戦には賛成できない。俺はおりるぜ」

マサシの作戦に賛成できずに作戦の参加拒否をしたユウタ。彼はそう言ってマサシに背を向けた。

「マサシ、私も今回の作戦には参加できないわ」
「私もだ・・・・」

シオンとレイナも参加拒否をして目を瞑った。コンタは何も言わずに黙ったままだ。そんな彼等を見たマサシは取り乱す事もなく、静かに言った。

「分かってる、お前達は俺の戦友であって部下じゃない。だからお前達について来いとは言わない、でも俺は行く!ジゼルのために・・・・」
「・・・・・・」

強く決意するマサシをエミリアは座ったまま見ていた。

「エミリア様、ネリネ救出の許可をください」

マサシはエミリアにロードグランへ向かう為の許可を求めた、だが・・・・。

「許可できないわ」
「なぜですか!?」
「無謀すぎるからよ、普通にゼルキアスの兵士を相手にするだけならまだしも、今のゼルキアスはヘルデストロイヤーに占拠されているのよ?ヘルデストロイヤーとゼルキアス、この2つの戦力が相手になると、いくらあなたでも危険よ」
「しかし!」
「ジゼルには申し訳ないけど、私はライトシンフォニアの社長としてこの無謀な作戦を許可する事はできないの」
「・・・・・・」

エミリアは冷静に話し、マサシを黙らせた。

「・・・・分かりました。失礼します」

マサシはゆっくりと頭を下げ、テントから出て行った。そんなマサシの後ろ姿を黙って見ていたコンタ。





「マサシ、どうだった?」
「ダメだったよ、エミリア様は許可してくれなかった、ユウタ達も今回の作戦には参加しないってさ」
「そう・・・・」

許可が出なかったことで落ち込むジゼルを見てマサシは彼女に近づいて言った。

「ジゼル」
「なに?」
「出発の準備をしろ」
「え?でも許可は出なかったって・・・・」
「許可が出ないかったら勝手に行くつもりだったんだろ?」
「うっ!」

見抜かれて驚くジゼル。マサシは二ッと笑って言った。

「付き合うよ」
「で、でも勝手に行動したらマサシもエミリア様に怒られちゃうよ?」
「いいんだよ、お前とネリネの為に俺は行く」
「マサシ・・・・」

自分の為に一緒に来てくれる、ジゼルはマサシを見つめながらゆっくりと近づく、すると。

「あれ?お邪魔だった?」
「「!?」」

どこからか声が聞こえて声のした方を向くマサシとジゼル。そこいたのはなんとコンタだった。

「コ、コンタ!どうしてここにいるんだよ?」
「僕も一緒に行こうと思ってね♪」
「は?お前は作戦に参加しないって・・・・」
「いつ僕がそんな事言った?僕は一言も行かないなんて言ってないよ?」

確かに、コンタは黙っているだけで参加拒否はしていなかった。

「いいの?一緒に来たらコンタも怒られちゃうよ?」
「気にしないでよ、僕もマサシと一緒だよ。ジゼルとジゼルのお姉さんの為に行く」
「・・・・・・」

ジゼルは自分の為に一緒にいてくれるマサシとコンタを涙目で見た。

「二人とも、ありがとう・・・・」
「な、泣く事ないだろう?」
「グスッ・・・・ゴメンね、嬉しくて」
「さて、二人とも、ユウタ達に見つかる前にさっさと準備をしてロードグランに行こう!」
「ああ、ジゼル、行こう!」
「うん!」





「エミリア様!大変です!」
「どうしたの?」

突然テントに飛び込んできたライトシンフォニアの傭兵に冷静に対処するエミリア。

「秋円マサシ、ジゼル・アルフォント、月本コンタが装甲車を無断で使用し、アダリムの門を通過しました!」
「なんだと!」

傭兵から聞かされ、ユウタが声を上げる。シオンとレイナも驚きの目で傭兵の方を向いた。

「コンタも姿が見えないと思ったら、マサシとジゼルについて行ったのか・・・・」
「まったく、あの子ったら」

ユウタに続きレイナとシオンも口を開いた。少し呆れるように言った。

「あの二人なら必ず行くと思ったわ」

エミリアが両手を口の前で合わせ、まるで知っていたかのような口振りで言った。

「まったく!エミリア様、俺達が連れ戻してきます!行くぞ、レイナ、シオン!」

ユウタ達がテントから出て行くと、エミリアはジッとして目を閉じた。

(マサシ、あなたの選んだ道は正しく、そして間違ってもいるわ。でも、私にはそれを決められない。私はライトシンフォニアの社長として判断したに過ぎない、あなたがその道を信じているのなら・・・・・・行きなさい、そして、必ず戻ってきなさい)

マサシ、ジゼル、コンタの三人はネリネを救出する為に無許可で敵の本拠地に向かう準備に取り掛かった。そしてそれを追いかけるユウタ、シオン、レイナの三人。マサシ達は無事にネリネを助けられるのか?そして、マサシ達に追いついたユウタ達はどうするのか?


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