ハヤテ達と戦う為に5階の大訓練場へ向かったマサシとジゼル。ようやく再会できたジゼルとネリネ、だがハヤテとリーズによって戦う事になってしまった姉妹。彼女達はこの残酷を乗り越えられるのか?
「ジゼル・・・・」
マサシはジゼルをただ遠くから見守る事しかできなかった。そして、二人の戦いが始まった。
「ハァーーー!」
ジゼルはミカエルのストックを軽く持ち、もの凄い勢いで回してネリネへ向かって走り出した。ネリネも剣を構え、ジゼルの攻撃に対し、迎撃態勢にはいった。二人は涙目で向かい合っている。
「フッ!」 「タァーーー!」
ジゼルは回して勢いのついたミカエルの長い部位でネリネに攻撃した。ネリネはその攻撃を見て「危険!」と瞬時に判断し、後ろに大きく跳んだ。彼女のカンは正しかった、ジゼルの攻撃はネリネに当たりはしなかったが、その風圧が刃となりにネリネの頬を切り裂き彼女の頬から1本の切り傷が生まれ、血がにじみ出た。
(強い!まさか風圧で頬が切れるなんて・・・・ジゼル、強くなったわね、力も、心も) (姉さん、ゴメンなさい。あたしも大切な物を、大切な人達を守るために負けるわけにはいかないの!)
ネリネとジゼルはお互い、心の中で相手の事を思いながら戦っている。
「ハッ!」
後ろに跳んだネリネは腰に納めてある投げナイフを取り、ジゼルに向かって投げた。しかし、ジゼルはトンファーでそのナイフを弾いた。
(弾いた!?あのトンファー、鉄でできているのか?) 「フッ!」
ナイフを弾いたジゼルは再びトンファーを回して勢いをつけ、ネリネに向かって走り出した。
「それなら、これでどうだ!」
ネリネは剣を両手持ちに変えて目を瞑った、すると突然、剣が青く光り出した。
「な、何?」
ジゼルは回しているミカエルを止め、走るのをやめて大きく後ろに跳び、ネリネの攻撃に備えた。
「精霊剣術!ブルーズソニック!!」
ネリネが技の名を叫び、マントをなびかせながら剣を横に大きく振った。すると、剣から青い刃が放たれジゼルに向かっていく。ジゼルはその刃を2つのミカエルで防いだ。しかし攻撃は防げても、衝撃は防ぐ事ができず、その衝撃でジゼルは後ろに大きく飛ばされた。
「うわあっ!」 「ジゼル!!」
マサシは飛ばされ、倒れているジゼルの下へ駆け寄ろうとした。だが、ジゼルがそれを止めた。
「待って!」 「!!」
ジゼルに止められ、マサシは彼女の一歩手前で立ち止まった。
「これは・・・・あたしと姉さんの戦いなの。だから、マサシ・・・・手を出さないで」 「ジゼル・・・・」 「あたしは大丈夫、大丈夫だから・・・・」 「・・・・・・分かった」
マサシはゆっくりとジゼルから離れ、彼女を見守る事にした。ジゼルはマサシが自分を見届けてくれる事を確認するとゆっくり立ち上がり、再びネリネの方を向いた。
「ウッ・・姉さん・・・・」 「ジゼル・・・・」
さっきの攻撃が衝撃だけとは言え、ダメージはかなりのものだったようだ、ジゼルは少しよろけている。そんな妹を見て動揺を見せるネリネ。
「姉さん、あたしを傷付ける事に戸惑いを持たないで、それじゃあ、あたしには勝てないよ?」 「・・・・・・強いわね、ジゼル」
ジゼルの声を聞き、目つきを変えたネリネは剣を再び両手で持ち、ブルーズソニックを放つ準備を始めた。ジゼルは攻撃させない為に走り出し、一気にネリネとの間合いを詰め始めた。
「精霊剣術!ブルーズソニック!!」
ネリネの攻撃の方が早く、彼女はまたブルーズソニックを放った。しかし、ジゼルは放たれた青い刃を避け、一気にジゼルはネリネの手前にまで近づきミカエルで攻撃した。だが、ネリネは剣でジゼルのミカエルを止めた。
「甘いわよ、ジゼル」 「そんな事ないよ・・・・」 「え?」
少し余裕の表情を見せたジゼルの顔を見て、少し不思議に思ったネリネ。そして、ジゼルのトンファーのストックについているボタンに気付いた。
(これは・・・何かある!) 「いくよ、姉さん・・・・」
ジゼルはそう言ってミカエルのスイッチを押した。その瞬間、ネリネは大きく後ろに跳んだ。ミカエルの短い部位が黄色く光り出し、大きな音と衝撃が放たれた。
「なに、今のは・・・・?」
何が起きた分からず、ネリネはただジゼルのミカエルをジッと見つめていた。二人の戦いをマサシが遠くから見ている。
「ジゼル、本気で戦ってるな。実の姉にG36 バレットまで使うなんて・・・・」
G36 バレットまで使って自分の姉と戦うジゼルを見て、マサシは彼女が本気で戦っている事を改めて知った。
「凄い武器ね。でも、どんなに凄い武器でも攻撃を受けなければ恐れる事は無いわ」 「凄いのは攻撃だけじゃないよ!」 「・・・・?それはどう言う・・・・・・なっ!」
ジゼルの言葉を気にしながら剣を見ると、自分の剣が刃こぼれしている事に気付いた。
「い、いつの間に!」
いつ刃こぼれしたのか分からずに驚くネリネは必死で記憶の糸をたどった。そして、さっきのジゼルの攻撃を剣で止めた事を思い出した。
「あの時か・・・・」 「このトンファーはね、アストラル超合金って言う凄く硬い金属でできているの、簡単に傷は付けられないよ」 「クッ!そんな物まで持っていたの・・・・」
未知の武器を持つ妹に押されている、ネリネに少しだけ焦りが出てきた。
「仕方が無いわね・・・・・・それなら、こっちも奥の手を出すしかないわね」
ネリネは刃こぼれした剣を捨て、マントを脱ぎ捨てた。
「姉さん・・・・?」
突然武器を捨てたネリネを見てジゼルは驚く。
「ジゼル、あなたに見せてあげるわ。私達、クリシェール家の人間に隠された力を・・・・」 「え?どういうこと?クリシェール家の隠された力って・・・・」
全く理解できないジゼルはただネリネを見ていた。すると、突然ネリネの体がフワリと浮かび上がり、赤く光り出した、そしてピンク色だった彼女の髪が徐々に銀色に変わっていく。更に彼女の背中から銀色の翼が生えてきたではないか。マサシとジゼル、そしてハヤテとリーズは驚きを隠せなかった。
「なっ!なんだと・・・・!」 「あ、あれって・・・・」
驚いて声を上げるマサシとジゼル。
「な、なんだ、アレは?」 「分からない・・・・」
ハヤテとリーズも当然驚いていた。光が消え、姿を変えたネリネがゆっくりと降りた。
「ね、姉さん・・・・そ、それって・・・・まさか・・・・」 「あなたも知ってるでしょ?200年前に突然姿を消した謎の民族・・・・聖天使人の事を」 「ま、まさか・・・・数年前にゼルキアスで見かけたって言われていた、聖天使人の末裔って・・・・・・」 「そう、私よ」 「!!」
ネリネが伝説の聖天使人の末裔だと聞いたジゼルは驚きを隠せないでいた。それを遠くから見ていたマサシも、勿論驚いている。
「ネリネが聖天使人の末裔・・・・・・それじゃあ、ネリネの妹であるジゼルも・・・・・・」
マサシは驚きながら遠くにいるジゼルを見た。
「それじゃあ、あたしも・・・・聖天使人・・・・?」 「ええ、でも、まだあなたは覚醒していない。私がこの力を覚醒させたのは今から5年前、ある任務で致命傷を負った時、私の中に流れていた聖天使の血が覚醒したの。聖天使人の血を引く者は自分の命に危機が訪れると覚醒するの・・・・」 「・・・・・・」
突然明かされた秘密、ジゼルはただ黙って聞いている事しかできなかった。
「どうして私達の家系が聖天使人の末裔なのかは、今でも分からない・・・・でも、非常に残念よ」 「姉さん・・・・」 「小さい頃にユピローズで生き別れとなり、私はゼルキアスの人に拾われた。必ずあなたと再会できると信じて私は今日まで生きてきた、やっと再会できたのに、まさか敵同士として再会し、敵としてこの姿を見せる事になるとは思わなかったわ・・・・」
俯きながら悲しげな声で真実を伝え、ゆっくりと顔を上げるネリネ。顔を上げたネリネを見て、ジゼルもミカエルを構える。
「私はあなたと再会する為に奴等(ヘルデストロイヤー)の言いなりになってきた。でも、今は人質となっている仲間の為、部下の為に私は・・・・あなたと戦う!」
ネリネはそう叫び、右手を上げてジゼルに向けた。すると、右手から青い光球がジゼルに向かって放たれた。ジゼルは慌てて2つのミカエルを揃えて短い部位を光球に向け、G36 バレットのスイッチを入れた。だがG36 バレットの衝撃波では光球を止める事はできず、光球はジゼルに直撃した。
「キャアアアアアアア!!」 「ジゼル!!」
攻撃をまともに受け、訓練場の壁まで飛ばされたジゼルはそのまま壁に叩きつけられた。彼女はそのまま床に倒れた。マサシは慌ててジゼルの下に駆け寄った。
「・・・・・・ッ!ジゼル・・・・」
本意でないとはいえ、自分の妹を聖天使の力で傷付けてしまった事を悔やむネリネ。彼女は倒れているジゼルから目をそらし、歯を食い縛った。
「ジゼル!しっかりしろ!ジゼル!!」
マサシは倒れているジゼルを起こし、必死で何度もジゼルを呼ぶが、全く反応がない。マサシはジゼルが持っていたミカエルを見ると、なんと短い部位が粉々になっていた。
「なっ!アストラル超合金でできているミカエルが粉々に・・・・・・なんて威力だ」
ジゼルを抱きかかえ、粉々になったミカエルを見たマサシの前にハヤテ、リーズ、ネリネの三人がゆっくりと近づいてくる。
「フッ、ここまでだな?」 「お前達の負けだ・・・・」 「・・・・・・」
勝利を確信したハヤテとリーズ、そして黙って俯くネリネ。マサシはジゼルを抱きかかえたまま動けなかった。
(クソッ!まずい・・・・このままじゃ確実にやられる!どうするマサシ?)
マサシが必死で策を練っている。その時、突然ジゼルの体が光り出した。突然光り出したジゼルを見て驚く一同。
「な、なんだ!?」
マサシが驚いてジゼルを見ると、彼女の体の傷はみるみる消えていくではないか。そして、彼女の髪がピンク色から銀色に変わっていく。
「こ、これは・・・・まさか!」
マサシは思った、ネリネと同じように、体から出る赤い光、そして銀色の髪。彼女の中に眠る、聖天使人の力が覚醒したのだと!!
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