先に4階に着いたマサシ達(αチーム)。学園長室へ向かおうとした彼等の前に、ハヤテ配下の忍者隊が行く手を阻んだ。敵をシオン、フランシス、チャンに任せてマサシとジゼルは学園長室へ向かうのであった。
「あそこが学園長室だ!」
廊下を走っているマサシが指差した。その先には1つのドアが有った。
「あそこに姉さんが・・・・」 「ああ、大丈夫か?」 「うん・・・・」
走りながらジゼルを心配するマサシ、やはりまだ抵抗があるようだ。
「・・・・・・」 「ジゼル・・・・」 「大丈夫!もうあたしは迷わない!」 「・・・・分かった。でも忘れるな、俺達はネリネを倒しに来たんじゃない、助けに来たんだという事を」 「うん・・・・」
姉を助けるという決意を胸にジゼルは走った。そして二人は学園長室と書かれているプレートの付いているドアの前に立っていた。
「ここが学園長室・・・・だよな?」 「うん、間違いないわ」 「フゥ、よかった・・・・」 「え?」 「実は自信がなかったんだ・・・・」 「・・・・・・?」 「プレートの字が読めないから・・・・」 「あ、そういう事・・・・」
そう、マサシはラビリアンの字を読む事ができないので学園長室かどうか分からなかったのだ。
「こっちの世界の字を勉強しないといけないな・・・・」 「そ、そうね・・・・・・そ、それよりも!行くわよ?」 「あ、ああ!」
改めて気合を入れる二人、愛用の黒龍刀を抜いたマサシに、ミカエルを手に取ったジゼル。マサシが空いている方の手でドアのノブを取り、目でジゼルに合図をした、ジゼルも頷き構えた。そして、一気にドアを全開して中へ入った。
「動く・・・・な?」
マサシが部屋へ突っ込むと、そこにはネリネの姿は無かった、ハヤテとリーズも。
「あれ?誰もいない・・・・」 「どうなってるんだ?」
部屋に入ったマサシとジゼルは部屋を見回したが、やはり誰もいない。
「一体何処に行ったんだ?」 「隠し通路か何かがあるかもしれない、部屋を調べてみましょう」 「ああ」
二人は部屋を調べ始めた。本棚、机の引き出し、飾ってある絵の裏など色々調べたが、隠し通路の抜け道などは何もなかった。
「どうなってるんだ・・・・」
マサシが学園長に机の引き出しを調べ終え、机の上を見ると、真ん中に分厚い本が置いてあった。
「ん、何だコレ?」
本を手に取り、調べてみるが字が読めないので何の本なのか全く分からない。
「おい、ジゼル!この本を見てくれ!」 「ん?」
呼ばれて、マサシが持っている本を見るジゼル。
「この本がどうかしたの?」 「いや、机の真ん中にドンっと置いてあったから、気になってな。何て書いてあるんだ?」 「コレは『聖天使人(せいてんしじん)の歴史』っていう本ね」 「聖天使人?」
これまで聞いた事の無い言葉を聞いて首を傾げるマサシ。
「200年前に突然姿を消した謎の民族よ。聖天使人は、たとえ斬られても矢で射抜かれたも、その傷は数秒で完全に治ってしまうほど回復力が早く、戦う時には背中から銀色の翼を出して空を飛び、一人で街を消滅させるほどの魔力を持っているって言われているわ」 「聖天使人・・・・・・そんな民族がこの世界にいたのか」 「うん、でも噂では数年前にその聖天使人の末裔(まつえい)が居たみたいだよ」 「え、本当か?」 「うん、ただ・・・・」 「ただ?」
突然黙り込んだジゼル。
「その末裔は・・・・・・ゼルキアスに居たみたいなの」 「ゼ、ゼルキアスに!?」
聖天使人の末裔がヘルデストロイヤーの支配しているこの国に居たと聞いたマサシは驚いた。
「しかし、少しヤバイかもな・・・・」 「ヤバイって何が?」 「もし、その末裔が生きていて、ゼルキアスに居たらヘルデストロイヤーがそれを利用しないわけが無い」 「あ!もし奴等がその末裔を見つけて味方につけていたら・・・・」 「奴等の強力な戦力になっちまう・・・・」 「「・・・・・・」」
嫌な事を想像してしまい、黙り込んでしまったマサシとジゼル。部屋を調べる事もすっかり忘れていた。マサシが黙ったまま本を開くと、1枚の紙が落ちた。
「マサシ、何か落ちたよ」 「ん?」
その紙はメモ用紙ほどの大きさで何かが書いてあった。
「何か書いてあるよ」 「これは俺の世界の字だ」 「何て書いてあるの?」 「『よく来たな、神竜隊。俺達はこの校舎の5階にある大訓練場にいる、待っているぞ ハヤテ』だとぉ!ここまで来させていて移動しやがったな!」 「ま、まあまあ・・・・姉さん達は5階の大訓練場にいるんだよね?」 「そのようだな・・・・・・行くか?」 「当然!」 「よし、行こう!」 「うん!」
マサシとジゼルは本と紙切れを机に置いて学園長室を出て、5階にある大訓練場に向かった。やって来た廊下とは逆の廊下へ走って行き、5階へ向かう階段の前に着いた。
「この先に姉さん達がいるんだね・・・・」 「ああ、早く行こう」 「待って!ここの階段にも罠が仕掛けてあるかも・・・・」 「いや、大丈夫だ、もし罠が仕掛けてあったら奴等が掛かっている。でも罠に掛かった様子は無い、つまり罠は仕掛けてないって事だ。そもそも自分達が4階の学園長室にいるのに4階より上に行く為の階段に罠を仕掛けるわけ無いだろ?」 「確かにそうだね・・・・」
確かに罠を仕掛けた様子は無く、C4もセットされていない。更にマサシの納得の行く説明を聞きジゼルは階段を見ながら言った。
「急ごう!」 「うん!」
二人が階段を上ろうとした時、二人の右側から声が聞こえてきた。二人が右を見ると、そこにはコンタ達βチームだった。
「マサシ!ジゼル!」 「コンタ!それに皆!」 「どうしたの、こんな所で?」 「ハヤテ達がこの上にある大訓練場にいるんだ」 「なんだって、本当なのか?」
驚いて訊き返すユウタ。
「ああ、学園長室にそう書かれたメモがあったよ」 「そう・・・・シオン姉さん達は?」
コンタはシオン達がいないことに気付きマサシに尋ねた。
「シオン達はこの先でハヤテの忍者隊と抗戦している」 「ええ!?」 「ちょっと待て!どうして会長達が抗戦してお前達二人がここにいるんだよ!?」
ダンが興奮しながらマサシとジゼルに尋ねると、ジゼルが悲しげな声で言った。
「シオン達は自分達が残るから先に行けって、あたし達を行かせてくれたの・・・・」 「それじゃあ、会長とチャンも・・・・」 「ああ、一緒に戦ってるはずだ」 「なんだと!だったら早く助けねぇと!行くぞ、アルト!」 「ああ!」
ダンとアルトはマサシとジゼルが来た方向へ走って行った。
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!」 「ったく!マサシ、ジゼル、俺達はこれからシオン達の所に行く、そっちは・・・・」 「大丈夫だ、俺とジゼルでなんとかする!」 「本当に大丈夫か?敵はハヤテとリーズの二人だぞ・・・・?」
レイナが少し心配そうに言うと、マサシはニッと笑って言った。
「大丈夫だ」
マサシがニヤリと笑いながら親指を立ててグーを作った。それを見たユウタは少し苦笑いをして口を開く。
「分かった、気をつけろよ」 「ああ」 「行くぞ!コンタ、レイナ!!」
ユウタはレイナとコンタを連れてダン達の後を追った。そしてマサシとジゼルは階段を上り5階の大訓練場へ向かった。そしてしばらく進むと、二人は大きなドアの前に立った。そのドアのすぐ隣にプレートが貼られていた。
「・・・・『大訓練場』。ここだね」 「ああ、じゃあ・・・・・・行きますか!」
マサシはドアを2つのドアをノブを握りゆっくり開けた。そこは体育館ほどの広さの部屋だった。壁は白く塗装されており、窓は無く、左右の壁際には木製の人形が立っていた、訓練用の人形だろう。そして、部屋の真ん中には鎧を着たピンクのロングヘアーの女性が一人立っていた、ネリネだ。
「待っていたぞ!」 「「!」」 「ん?・・・・お前達はサンドリアの城で会った」 「・・・・また会ったな、ネリネ・クリシェール」 「まさか、お前達が神竜隊だったとはな、まあいい、さっさと始めよう」
ネリネが腰に納めてある剣の抜いて構えると、マサシが手を上げて「待った」のサインを出した。
「なんだ?」 「戦う前に彼女から話しがあるんだ」 「なに?」 「話を聞いてくれないか?」 「・・・・・・いいだろう」
ネリネは構えるのを止めて剣を下ろした。
「いいぞ、ジゼル」 「なっ!!?」
マサシの口から出たジゼルという妹の名を聞いてネリネは驚いた。
「ジゼル・・・・だと?」 「・・・・・・姉さん」 「ば・・馬鹿な・・・・そんな事・・・・ウソ・・・・」 「ウソじゃないわ姉さん、あたしよ、ジゼル・クリシャールよ」 「ジ、ジゼル・・・・本当にジゼルなの?生きていたの?」 「うん!」 「ジゼル・・・・・・ジゼル!!」 「姉さん!!」
ジゼルとネリネがお互いに駆け寄っていく。生き別れになった姉妹がようやく再会できた、その喜びから二人はお互いを確かめる様に抱きしめあう。そして二人は溜め込んでいた悲しみを吐き出す様に泣いた。
「姉さん!姉さん!!」 「ジゼル!ジゼル!!」 「うわああああああ!」
マサシは遠くで涙目で二人を見ていた。すると、感動の再会をブチ壊すかの様に声が聞こえた。
「そこまでだ、ネリネ!」 「「「!!」」」
三人が部屋の奥の方を見ると、そこにはさっきまでいなかったハヤテとリーズが立っていた。
「まさかお前達が姉妹だったとはな・・・・」 「ハヤテ、リーズ・・・・」
二人を見てマサシは歯をギリッと鳴らした。
「折角の感動の再会を台無しにして悪かったな」 「全くだ!」
ハヤテの無神経な言葉を聞き、熱くなるマサシ。
「ネリネ、お前の役目を忘れたのか?」 「クッ!」 「お前が逆らえばロードグランにいるお前の部下は全員処刑されるんだぞ?」 「貴様等ぁ〜!」
相変わらず卑劣な手を使うヘルデストロイヤーにマサシは更なる怒りと憎しみを覚えた。
「・・・・・・!」 「姉さん・・・・」
ネリネはもう一度ジゼルを見てゆっくりと離れた。
「姉さん!」 「ゴメンね、ジゼル・・・・・・私は・・・・」 「・・・・・・ううん、分かってた」 「え?」 「姉さんと戦わなくちゃいけないって事を・・・・・・だから・・・・」
ジゼルはゆっくりと腰に納めてあるミカエルを握り構えた。
「姉さん、捕まってる仲間の為に戦って。あたしも神竜隊の一員、ジゼル・アルフォントとして戦うから!!」 「ジゼル・・・・・」
ネリネは泣きながら叫ぶジゼルを見て、泣きながら剣を構えた。再会は残酷な物だった、自分達の大切な物を守るために二人の戦いが始まる!
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