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作品名:ラビリアンファンタジー 作者:ディオス

第40回   第三十九話 迷いと偽り

コルヘルスの武術学園の三人の生徒。赤い髪をして十字槍(クロススピア)を持つ少年ガスト、茶髪でボウガンを持つ少年ハリュス、そして大鎌を持ち水色の髪をしている少女ネリーと出合った神竜隊。ヘルデストロイヤーの襲撃を受けて逃げてきたのだ。

「はぁ〜、食った食った」

食事を終えてゲップをするマサシ。

「んも〜、行儀悪いな〜」
「いいじゃねぇか」

ゲップをするマサシに注意をするコンタ、そんなコンタに笑いながら言い返すマサシ。そんな彼等のやりとり見ているジゼル達、そして少し驚きの表情をする。

「どうしたのあなた達?」

ジゼルが驚いている三人に問い掛ける。すると彼らは手にしているカップラーメンを見ながら口を開けた。

「いや、こんな物今まで食ったことがないから・・・・」
「ああ、確か、カップ・・・・なんとかだっけ?」
「カップラーメンだよ、お湯を入れただけでラーメンになるんだ」

カップラーメンを不思議に思っているガストとハリュスにカップラーメンを説明するユウタ。

「お湯を入れただけで食べれるようになるなんて、信じられないわ。それに・・・・・おいしい」
「ああ、なかなかいける。というか、ラーメンってどんな料理なんだ?」
「う〜ん、なんて説明したいいかなぁ」
「いや、説明すると長くなるからやめておけ・・・」

ラーメンという料理すら知らない彼等は理解できていないようだ。説明しようとするユウタだが、それを見て止めるレイナ。話が長くなると思ったのだろう。

「さて、飯も終わったし、今日はそろそろ寝よう」
「賛成〜♪」
「交代で3時間ずつ眠る事にしよう」

食事を終えて睡眠をとる事に賛成した一同。最初にマサシとジゼルが見張りをし、次にユウタとレイナ、最後にコンタとシオンという順番で見張りをする事になった。





食事を終えてから一時間、装甲車の中ではユウタ達が眠っている。外ではマサシとジゼルが装甲車の周りを歩いている。

「星が綺麗だね」
「ああ、真夜中でもこんなに明るいとは思わなかったよ」
「そうなの?」
「俺達の世界ではこんなに明るい夜空はなかなか見られないからな」
「でも、マサシの世界でしか見られない綺麗な物だったあるじゃない」
「ん?・・・・・・ああ、『アレ』な」

マサシは元の世界でジゼルと観覧車で見た夜の街を思い出したのだろう。

「あたしはあっちの方が綺麗に思うけど」
「そうか?」
「うん、きっと自分の世界で見た綺麗な物と比べると別の世界で見た綺麗な物がずっと綺麗に思えるんだよ」
「確かにそんな感じがするな・・・・」

二人は見張りを忘れて二人肩を並べて星空を眺めていた。すると、後ろから誰かが声をかけてきた。

「アンタ達、ちょっといいか?」

突然声をかけられ驚いて振り返ると二人の目に入ってきたのは逃亡してきた学生の一人ガストだった。

「な、なんだ・・・・お前か、え〜っと、ガストだったっけ?」
「ああ・・・」
「なんだ、眠らないのか?」
「いや、眠ってたんだだが、少し話があるんだ・・・」
「なに?」

二人が問うとガストは真剣な顔をして口を開いた。

「なあ、本当にコルヘルスに行くのか?」
「ああ、勿論」

ガストは再びコルヘルスへ行くのか尋ねるとマサシは迷うことなく行くと言った。

「さっきも言った様に、街は奴等に制圧されてしまったんだぞ?たったこれだけの人数で街に向かうなんて危険だ!悪い事は言わない、一旦アンタ達のいた街に戻ろう」

ガストはやはり僅か六人で敵地の向かうのは無謀だと思っているのだろう、考え直すように説得している。だがマサシとジゼルは・・・・。

「俺達は戻らない・・・・このまま街へ向かう」
「うん、急がないと多くの人が殺されちゃうもん」
「その前にアンタ達が殺されるぞ!そもそもアンタ達はどうしてそんなに自信があるんだ?絶対に無理だ!」

ガストは少し感情的になってマサシとジゼルに言った。しかし、感情的になるガストに比べてマサシは冷静なままだ。そして、マサシはこんな事を言った。

「・・・お前は本当にそう思ってるのか?」
「え?」

さっきまでとは雰囲気が違うマサシの顔を見て、少し驚きの表情をした。

「突然やってきて自分達の街を制圧した奴等から自分達の街を取り戻したいと思わないのか?」
「・・・・・・」
「・・・・自分が本当は何をしたいのか、正直になったらどうだ?」
「正直・・・・・?」

マサシの言葉を聞いてガストは心の中で何かを思い出した。本当は街の取り戻したい、街の皆を救いたい、そう心の中で思っていたのだろう、だがヘルデストロイヤーの強さを目にした事で恐怖を知り、その思いを心のどこかに封印してしまったのだろう。

「俺は・・・・」
「俺達の一緒に行かないか?コルヘルスを解放するにはコルヘルスの住人であるお前達に力が必要なんだ」
「お願い、一緒に来て」

マサシとジゼルは考え込むガストに協力を頼んだ。するとガストは・・・・・・。

「一晩考えさせてくれ・・・・」

ガストはそう言って装甲車の中に戻って行った。

「彼、どうするかな?」
「分からない、でも俺は一緒に来てくれると信じている・・・・」

夜風でマサシの茶色い髪のジゼルのピンク色の髪が揺れ、二人は心の中で呟いた「彼はきっと来てくれる」と・・・・。





そして夜が明けて、休憩を終えた神竜隊はコルヘルスへ向かう準備を始めていた。そんな中、コルヘルスから逃げてきた学生の三人は木にもたれながら何かを話している。

「よし、夜も明けたし出発しよう」
「OK、早くコルヘルスを解放しなくちゃね!」

マサシの言葉を聞きコンタも気合を入れた。そんな時、木にもたれていたガストがマサシに近寄ってきた。

「どうした?」
「・・・・俺達も行くよ」
「え、本当?」

ガストの口から出てきた言葉を聞いてコンタは驚いて聞き返す。





昨日の夜、ガストはハリュスとネリーを起こして話をしたのだ。

『おい、本気かガスト!?』
『彼等と一緒にコルヘルスへ行くって?』
『ああ・・・』

二人はガストの口から出た言葉を聞いて驚きを隠せないでいた。

『何でだよ?わざわざ殺されに行くようなもんだぜ!』
『そうよ!』

二人は必死でガストを説得している。するとガストは、静かに口を開いた。

『俺達は・・・・・・ウソをついてるんじゃないか?』
『え?』
『ウソ?』
『ああ、俺達はゼルキアス(ヘルデストロイヤー)の強さを目にして自分達の目的を見失っていたのかもしれない、街を解放しようとしていた本当の気持ちにウソをついていたのかも知れないそんな風に思ったんだ・・・・』
『だからって、少人数で街に行くなんて危険すぎよ』
『そうだぜ、それにあの連中だってまだ完全に信用したわけじゃねぇし』

確かに、マサシ達とは出会ったばかりの上にヘルデストロイヤーの同じ装備をしているのだ、信じるのは難しい。

『確かに、でも、アイツ等はゼルキアスの奴等とは何かが違う、だから信じてみよう、そんな風に思っちまうんだ』
『だけどよぉ』

ガストの言ってる事にまだ納得の行かない二人。

『勿論、俺も完全にアイツ等を信じたわけじゃない、だから用心はするさ。二人はどうする?』
『・・・・・・』
『・・・・・・』

二人は下を向いたまま考え込んだ。





「一緒に来てくれるんだな?」
「ああ・・・・」

マサシはガストがついて来てくれる事を確認するように訊き返す。

「でも先に言っておくぞ、俺達はまだアンタ達を完全に信じたわけじゃない。だからもし変な行動を取ったら・・・・」
「わかってるよ、その時はお前達の好きにしてくれ」

やはりまだ信じてもらえない。マサシは「それは仕方が無い」と心の中で呟いた。

「それじゃあ、詳しい事を装甲車の中で聞かせてくれ、どうやって解放するか作戦を立てるから」
「わかった、行くぞ二人とも」

ガストに呼ばれハリュスとネリーは装甲車に向かった。

「よし、出発だ!」

マサシ達は装甲車に乗り込み、装甲車を発進させた。コルヘルスから逃げてきた武術学園の生徒、ガスト、ハリュス、ネリー。彼らはマサシ達の小さな不信と期待を胸にコルヘルスへ向かった。


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