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作品名:ラビリアンファンタジー 作者:ディオス

第39回   第三十八話 逃亡者

少し遅めの夕食をとるために車を止めたマサシ達。そんな中、ジゼルはシオンとサヤカの関係を知った、ジゼルは仲間の為、姉の為に戦う意志を強くした。

「みんな〜、出来たわよ〜」

シオンの呼ぶ声を聞き、焚き火の近くへ集まったマサシ達。彼らの目の前にはシオンとジゼルが作ったおかずとカップラーメンが置かれていた。

「はぁ〜お腹ぺこぺこ」

コンタが力の無い声で空腹を告げる、後ろにいたマサシもグ〜グ〜と腹を鳴らせていた。

「やっと飯か、待ちくたびれたぜ」

装甲車の整備をしていたユウタとレイナも戻ってきた。

「お、美味そうな匂いだな」
「しかしカップラーメンは外れてないな・・・」
「仕方ないでしょ、サンドリアから持ってきたのはおかず用の食材だけだったんだから」
「おかずだけじゃ足りないからカップラーメンも作ったんだから、文句言わないの」
「はぁ・・・・悪かった・・・」

全員が揃い焚き火を囲んで座ると、それぞれフォークと皿を取った。

「さてと、みんな食おうぜ」
「うん!」

マサシの声で食べ始めようとするコンタ。

「いただきま・・・」
「・・・・・・待て!」
「「「!!」」」

フォークを取ったコンタがラーメンを口に運ぼうとした瞬間、マサシが声を上げ、周りが驚きの顔をした。

「どうしたの?」
「シッ・・・・誰か近付いてくる」

突然声を上げたマサシを見てジゼルが問い掛けた。だが、マサシは指を口に当て静かにするよう伝えると、誰かが近付いてくると口にした。

「・・・・・・三人だね」
「え?」

ジゼルが隣を見ると目を瞑っているコンタ。耳をピクピク動かして近付いてくる者たちが三人だと告げた。

「・・・・敵か?」
「もうちょっと待って・・・・」

マサシが敵の情報を訊くとコンタはまだ詳しく分かっていないのか、もう一度耳を動かし始めた。

「・・・・足音からして、三人のうち二人は男の人、もう一人は女の人だね。それも三人ともマサシやジゼルと同じくらいの年だね」
「てことは、16から18歳くらいって事か?」
「うん」
「みんな、飯は一旦中止だ、武器を取れ!」

マサシに言われ、ジゼルたちは近くに置いてある自分達の武器を取、木の陰にマサシ、ジゼル、コンタが、装甲車の陰にユウタ、シオン、レイナが隠れた。数秒後、三人の男女が装甲車の近くに現れた。服装は黒と赤の服、高校生の着ている上着にネクタイ、二人の男子は長ズボンに女子はミニスカートをしている。

「おい、これ見てみろよ」
「アイツ等の物とよく似ている・・・・」
「それじゃあ、奴等の仲間かしら・・・?」
「分からない、近くに居るかもしれない、気をつけろ」

よく見ると、三人の手には武器が握られている。二人の男子のうち一人は十字槍(クロススピア)、もう一人はボウガン、そして女子は大鎌を持っている。

(ねえ、あの格好ってもしかして陛下の言っていたコルヘルスにある武術学園の制服じゃない?)
(どうしてそう思う?)

木の陰に隠れて覗いているジゼルが三人の格好を見てマサシに思っていることを伝え、マサシも小声で問い返す。

(だって、彼らの格好、同じ色と胸に何処かの学校のワッペンみたいなのつけてるし・・・・・)
(ん?・・・・・・ああ、なるほどね)

二人が話していると三人が周りを警戒しながら装甲車に近付いていく。だが装甲車の後ろにはユウタ、シオン、レイナが隠れいている。

(まずいよ、このままじゃユウタ達、見つかっちゃうよ!)
(大丈夫だ、アイツ等だってそれくらいは分かってるはずだ。それにコルヘルスの住民だったら話し合えるはずだ)
(じゃあ、今から声をかけて・・・・)
(それはマズイ、突然出て行ったらかえって驚かせてしまう、きっかけがないとな・・・・)

マサシとジゼルが小声で出るタイミングを考えていると、二人の後ろで・・・・。

「ハッ・・・ハッ・・・ハックション!!」
「「「!!」」」

コンタのくしゃみに気付いて三人はマサシ達が隠れている木の方を向いた。

(バッカァ!!)
(こっちに気付いたよ)
「誰だ!そこにいるのは!」
「出て来い!」

彼等は完全にマサシ達に気付いている。マサシ達は観念したのかゆっくりと陰から出てきた。

「誰だ、お前達は?」
「おいおい、人に尋ねる前に自分から名乗るのが礼儀ってやつじゃないのか?」
「俺達はコルヘルス武術学園の生徒だ。俺はガスト・シール、コイツはハリュス・ガイデル、その隣がネリー・ザーハッドだ」

十字槍を持つ少年はガストと名乗り、ボウガンを持つ少年をハリュスと大鎌を持つ少女をネリーと紹介した。

「こっちは名乗ったんだ、今度はお前達が名乗る番だぞ」

名乗り終えたガストはマサシ達に名を名乗るように言った。後ろにいる二人は武器を構えたまま警戒し続けている。

「俺はライトシンフォニアの特殊部隊、神竜隊の隊長、秋円マサシだ。俺の隣にいるのがジゼル・アルフォント、その隣が月本コンタ」
「ライトシンフォニア?聞いた事の無い街だな」
「いや、街じゃなくって・・・・・・」

マサシがライトシンフォニアのことを説明しようとすると、ガスト達はマサシとコンタの服装をジッと見ていた。ジゼルの服装は自分達の着ている服と、どこか作りが似ているので不審には思わなかったのだろう。すると、ガストがコンタの持つファイブセブンに目をつけた。

「おい、そいつの持ってる物・・・」
「え?これですか?」

コンタはそう言って腰に納めてあるファイブセブンを抜いてガスト達に見せた。

「ねえ、ガスト。あれってアイツ等が持っていた武器に似てない?」
「ああ、俺もそう思った」
「俺もだ」

ガスタ達はファイブセブンを見た後コソコソ話し始めた。

「おい、お前達。これから何処へ向かうんだ?」
「え?」

突然行き先を訊かれ意味も分からず行き先を答えた。

「コルヘルスだけど」
「コルヘルスに・・・・お前達はアイツ等の仲間なのか?」
「アイツ等?」
「突然俺達の街を襲ってきやがった連中だ、俺達の友達の多くが奴等に殺されちまった・・・・」

ガストの隣で街を襲撃され友人が殺されたことを告げるハリュス。彼の顔には悔しさと怒りが現れされていた。

「・・・・・・」
「マサシ、そいつ等ってもしかして・・・・」
「ああ、ヘルデストロイヤーだな」
「お前達、アイツ等を知ってるのか!?」
「やっぱりヘルデストロイヤーだったのか・・・・。詳しく聞かせてくれるか?」
「あなた達、一体何者なの?」

ネリーが自分達の敵の事を知っているマサシ達に改めに何者か尋ねた。すると、後ろの装甲車からユウタの声が聞こえた。

「俺達はヘルデストロイヤーを倒す為にコルヘルスへ向かうんだよ」
「な!う、後ろにいたのか!?」
「全然気配を感じなかったぞ!!」

後ろから突然顔を出したユウタ達に驚きを隠せない三人。彼らもそれなりに戦いの基本を身につけている、敵の気配を探る術くらいは知っていてはずだ。だがそれでも気配を感じ取る事が出来なかった。彼らはその瞬間理解した、彼らは強いと。

「教えてくれ、何があった・・・・?」





「と、言うわけだ・・・・」
「なるほど・・・・」
「俺達も謎の集団が王都を制圧したって事は聞いた。そいつ等が次々に街を制圧して行って、遂にコルヘルスにまで来やがったんだ・・・・」

焚き火を囲むようにして座り、ガスト達からコルヘルスの状況を聞いたマサシ達。

「私達も街を護る為に戦ったけどアイツ等の使っている武器の前になすすべも無かったの。それで先生達は奴等の隙をついて私達を逃がしてくれたの・・・・」
「それで助けを求める為にユピロースの街を目指していたんだ」
「ああ・・・・」
「・・・・・・俺達はこれからコルヘルスへ向かうんだが、お前達も一緒に来るか?」
「ええ!?あなた、今の話を聞いていなかったの?」

ネリーがサラッと「行くか」と言い出したマサシに声を上げて聞き返す。

「ちゃんと聞いてたぜ」
「だったらなんで行くのよ!?」
「そうだ、危険すぎる!そもそも、たったこれだけの人数で奴等に制圧されたコルヘルスに向かうなんて自殺行為だ!」
「俺達は反対だぜ!」

コルヘルスでヘルデストロイヤーの強さをその眼で見たガスト達は大反対した。だがマサシ達は・・・・。

「たとえ危険でも、俺達は行かないといけないんだ。奴等を倒す事ができるのは俺達だけなんだから」
「うん、人数が少ないからって目の前で苦しんでる人達がいるのに、見過ごすなんて、僕等にはできない」
「そんなの無謀よ!」
「それに、そんな誰かを助けたいって言う気持ちで戦いに勝てるほど、世の中は甘くない」
「確かにな、でも俺達はジッとしているのが嫌いでね」

マサシは笑いながらそう言うと、それを見ていたジゼルも笑って言った。

「うん、あたしもそう思う」
「お、ジゼル、言うようなったな」
「え、何が?」
「最初は俺達の考え方が理解できなくてよく戸惑ってたじゃないか、それが今じゃすっかり神竜隊という色に染まっちまって」
「慣れただけよ」
「ハハハ、そっか」

マサシが笑うとジゼルやコンタ達も笑い出した。ガスト達にはどうして彼らが笑ってるのか理解できず、口をポッカリ開けながら呆然としていた。

「それよりも、晩ご飯しよう、僕お腹空いちゃった」
「そうだな、そうするか。よし皆飯だ」

そう言って、彼らは置いてあるフォークや紙皿を取った。

「おい、お前達もどうだ?腹減ってるだろ?」
「え?あ、ああ」
「じゃあ、こっちで一緒に食べましょう」

コンタがガスト達に一緒に食べようと手招きする。

「お、おい!まだ話が・・・・」
「そんなの後々!早くこっち来いよ」

話を聞かずに食事を勧めるマサシを見て疲れきった顔をし、一緒に食事をとる事にしたガスト達。

「うわぁ〜、カップラーメンのびてる〜!!」

夜空にコンタの情けない声が響いた。


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