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作品名:ラビリアンファンタジー 作者:ディオス

第38回   第三十七話 シオンの過去 サヤカとの決別

ヘルデストロイヤーに制圧された街「コルヘルス」の解放任務を与えられた神竜隊。コルヘルスに入るために、まず制圧されていない、女性専用の「イヴルの門」を目指す事になったのだった。

「すっかり暗くなったな・・・・」

装甲車の窓から外を見ているマサシ。サンドリアを出発してから半日が立ち、外はすっかり夜になっていた。

「あとどれ位でコルヘルスの着くの?」
「この調子ならあと一日で着くだろうな」

ジゼルが移動時間を訊き、運転しているユウタが予定時間を伝えた。

「あと一日か・・・・おいユウタ、今日はここまでにして何処かで休もうぜ」
「休む?」

マサシが突然休むと言い出し、聞き返すユウタ。

「でもマサシ、陛下からは急いでくれって言われてたじゃないか。やっぱり急いだ方がいいんじゃない?」

コンタが急ぐ事を勧めると、マサシがコンタの方を向いて言った。

「だからと言って、休まずに急いでいって解放の時に疲れを残したまま戦ったらマズイだろ?」
「確かにそうだね、あたしも少し休んだ方が良いと思う」

マサシの言ってる事に納得し、休む事に賛成するジゼル。

「う〜ん、まぁ、それもそうだね」
「私も賛成よ」

コンタもマサシの言っている事にナ納得し、休む事にした。シオンも休む事を選んだ。

「らしい、ユウタ、あそこの川の近くに止めてくれ・・・」
「OK」

レイナも休む事にしたらしい、ユウタも訊きはしたが本当は休むつもりだったらしい。迷わず装甲車を川の近くに止めた。装甲車から降りた神竜隊は少し遅めの夕食をとることにし、準備を始めた。マサシとユウタは川で水を汲み、コンタとレイナは薪を拾いに行き、ジゼルとシオンは調理を始めた。

「ジゼル、そこの袋を取って」
「これ?」

シオンの指先にあるビニールの袋を取り、それを見せて確認した。

「そうそう、それ」
「中身は何?」
「カップラーメンよ」
「カップラーメン?」

カップラーメンをはじめて見たジゼルはシオンに尋ねた。

「ええ、お湯だけでラーメンになの」
「お湯だけで?」
「ええ」

シオンがカップラーメンの袋を受け取ると、水を汲みに行っていたマサシとユウタが戻ってきた。

「どうだ、調理は進んでるか?」
「ええ、順調よ」
「そうか・・・・ん?その袋の中身は?」

ユウタがシオンの持っている袋を見つけて中身を尋ねる。

「カップラーメンだって」
「はぁ〜?カップラーメン?おいシオン、手を抜くなよ〜」

ジゼルからカップラーメンだという事を聞き、力の抜けた声でシオンに文句を言うマサシ。

「大丈夫よ、ちゃんとしたおかずも作るから♪」
「それなら良いけどさ・・・・」

ちゃんと調理するというシオンの言葉を聞き一安心したマサシとユウタ。そして薪を取りに行っていたコンタとレイナが戻ってきた。

「ただいま〜」
「今戻ったぞ・・・」
「ご苦労様、二人とも」

コンタとレイナの手には沢山の薪があった。その薪を平らな所に置き、火を付けた。

「とりあえず焚き火は用意できましたよ」
「ありがとうコンタ。じゃあ、すぐに作るから、ちょっと待っててね」
「わかった。それじゃあ俺は辺りを見回ってるよ」
「あ、マサシ僕も行く」
「じゃあ俺は装甲車の整備をしてくる。レイナ、手伝ってくれ」
「わかった・・・」
「それじゃあ、ジゼル始めましょう」
「まかせて。それで、あたしは何をすればいいの?」
「まずはね・・・・・・」

そう言ってシオンはジゼルに調理手順を説明し始めるのだった。





調理を始めてから数分後、ジゼルがシオンにある質問をした。

「ねぇシオン、訊いてもいいかな?」
「ん、なに?」
「うん・・・・サヤカの事なんだけど」
「・・・・・・!」

サヤカの言葉を聞いた瞬間、シオンは一瞬だが驚きの顔を見せた。ジゼルもその表情を見逃してはいない。

「あ、ゴ、ゴメンね・・・・・・やっぱり言いたくないよね。忘れて」
「ううん、いいのよ。それでなにを訊きたい?」
「え、いいの?」
「うん、別に訊かれたくない事でもないし」
「そ、それじゃあ・・・・・・サヤカも契約者なんでしょ?マサシから聞いたんだけど」
「ええ、そうよ」
「どうしてサヤカはシオンの事を覚えてるの?」
「え?」
「だって、シオンとサヤカは幼馴染なんでしょ?」
「別に幼馴染ってわけじゃないわ、ただ両親が昔から対立しあってるから、小さい時から知ってるだけよ」
「それなら、二人とも契約したのにどうしてお互いを覚えているの?だって契約したら同じ契約者以外の人達の記憶から自分の存在が消えちゃうんでしょ?」

どうやらジゼルはお互いに契約者なのに、どうしてお互いを覚えているのかを訊きたいようだ。確かに契約を交わしたら、同じ契約者以外の人間の記憶から自分の存在は消えてしまう、二人のどちらかが先に契約してしまったら相手のことは忘れてしまうはずだ。だが二人はお互いの事を覚えている。

「どうしてお互いを知っているのか・・・・・・そうね、話しておいたほうが良いわね。アンタももう神竜隊の仲間なんだから」
「??」
「今から話す事を知ってるのは神竜隊とエミリア様だけなの。アンタも神竜隊の仲間だから知っておいてほしいの」
「・・・・・・うん」

表情を変えたシオンの顔を見てジゼルも真剣な表情になった。

「・・・・・・あれは今から10年くらい前の話よ。私とサヤカは京都っていう所の出身なの」

シオンが語り始めた自分の過去とサヤカとの関係。それは契約者の力が招いた悲劇だった。





10年前、2011年。京都の山の中で二人の少女が風に揺られて木から落ちる枯葉の中を走っていた。

「サヤカ!こっちこっち!」
「待ってよ、シオン〜」

金色の髪と狐耳をした少女と銀色の髪と狐耳をした少女、幼い頃のシオンとサヤカだ。

「もっと奥に行かないとお父さん達に見つかっちゃうよ〜!」
「大丈夫だよ、ここまで来れば・・・・ハァハァ」
「大丈夫?かなり息切れしてるけど」
「ちょ、ちょっときついかな・・・・」
「ハイ」
「あ、ありがとう・・・・」

息切れをするサヤカに手を差し伸べるシオン。とても仲がいい、今の二人とは全然違う。

『昔の私とサヤカはとても仲がよかったわ・・・・・親同士の仲は最悪だったけど、私達は別だった、私達はお互いに話し合って親同士を仲直りさせよういつもコッソリ会って話し合ってたわ』

「今日はどこで話そうか?」
「この奥に小さな神社があったよね?そこで話そうよ」
「そうだね」

二人は山の奥に古くからあると言われている神社に向かった。歩き始めてから数分後、二人は古い神社に着いた。障子は破れ、屋根の瓦は所々が割れていた。

「何かちょっと不気味だね」
「うん、昔ここには『怪物が封じ込められた石』があるってお父さんが言ってた」
「怪物を封じ込めた?」
「うん、お父さんも詳しくは教えてくれなかった」

シオンは父親から聞いた石の事をサヤカに話した。サヤカも興味があるみたいだ。

『私は父から来た事を細かくサヤカに話したわ。でもそれが間違いだった、いいえ、それ以前にあの神社に行ったのが間違いだったのよ・・・・』

シオンとサヤカが話をしていると、神社の奥のほうで何かが光り出した。

「見て、サヤカ!」
「え、何あれ?」

シオンとサヤカが光っている方を見ると、彼女達の目には二つの石が飛び込んできた。なんとそれは魔封石だった。

「綺麗な石ね」
「うん・・・・・・ねぇシオン」
「なに?」
「あの石、お父さん達にお土産に持って帰ろうよ」
「え?」
「あれをお土産に持って帰ればきっと喜ぶよ」
「ええ?止めとこうよぉ」
「どうして?」
「なんだかやな予感がするんだもん」
「シオンは恐がりだね、大丈夫だよ」

そう言ってサヤカは魔封石の置いてある祭壇にゆっくり歩いていき魔封石に手を伸ばした。

「サヤカ!待って!!」

シオンはサヤカを止めようとした。だがサヤカは既に魔封石を二つ取り、一つをシオンに前に差し出した。その瞬間、二つの魔封石が光り出した。

「え?」
「な、なに!?」
「キャアーーーー!!」

魔封石が光り出した瞬間、シオンは悲鳴を上げて気を失ってしまった。





数分後、気を失っていたシオンは目を覚ました。

「あ、あれ?・・・・何が起きたの?」

周りを見るとさっきとなにも変わっていない。いや、変わっている事はあった、魔封石が二つとも無くなり、サヤカもいなかった。

「サヤカ?何処にいるの?」

シオンは改めて周りを見回すと彼女はあるものを見つけた。

「なにあれ、煙?」

彼女の目に黒く上がっている煙が見えた。しかも何か焦げ臭い、シオンはやな予感がして急いで煙の上がっている所へ走って行った。そしてシオンが煙の上がっている所に着いた時、彼女は目を疑った。彼女の目には炎に飲まれた自分の家があった。

「ウ・・・ウソ・・・・・・・」

彼女は絶望しその場に座り込んだ。そして彼女の後ろから声がした。

「どうしたの〜シオン?」
「え?」

シオンが振り返るとそこのはサヤカが立っていた。

「サヤカ!家が・・・・家が・・・・」
「分かってるわよぉ、だって私がやったんだもん」
「え・・・・?」

シオンは一瞬自分の耳を疑った。この火事はサヤカがやったというのが信じられなかった。

「今、何て言ったの・・・・・?」
「私がアンタの家を燃やしたの〜♪」
「なんで・・・・?」
「力を試してみたかったからよぉ。シオン、アンタの言うとおりだったわ〜あの石にはやっぱり怪物が封じ込められてたみたいなのぉ」
「え?ええ?」
「あの石はすごいわぁ、目が覚めたとき体の奥底から力が湧き出て来たのよぉ♪、この力があれば何でも出来る、そう思ってアンタの家に行って暴れてみたんだけど、アンタの両親、アッサリ死んじゃったぁ♪」
「!!」
「フフフ、それから一つ良い事教えてあげる、あの石の一つは私の物になったけど、もう一つはアンタの物になったのよぉ♪」
「・・・・・・」
「ウフフ、さ〜てと、私はこれから家に帰るから、じゃ〜ね〜♪」

そう言い残し、サヤカはシオンの目の前から去っていった。それからしばらくして消防車のサイレンが聞こえてきた。





「私はサヤカとほぼ同士に契約を交わしの、だからお互いに覚えていたのよ」
「そうだったんだ・・・・・でも・・・・・酷すぎる」
「多分アイツは契約して自分の力の虜になったんだと思う、だからあんな事に・・・・その後、私は身内や友達からも忘れられて行き場も無く途方にくれていた時、ライトシンフォニアに拾われたの。どうしてあの神社に魔封石が合ったのかは今もわからないわ。でも・・・・・・」
「シオン、ゴメンね・・・・そんな辛いことがあったのに、そんなこと聞いちゃって」
「良いんだってば、さっきも言ったでしょ?私は気にしてないって。だからそんな顔しないで」
「う、うん・・・・・ゴメ・・・ありがとう」
「よし!さぁ早く晩御飯の準備しよう、皆が戻ってきちゃうわ」
「うん!」

自分の過去をジゼルに話したシオン。彼女もマサシと同じように辛い過去を持っていた、そしてジゼル自身も。この事で更に神竜隊の隊員達の絆は深まった事だろう。


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