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作品名:ラビリアンファンタジー 作者:ディオス

第35回   第三十四話 悲しき再会

エミリアの不法侵入で場内は大騒ぎ。しかし、マサシの説明でなんとか騒ぎは治まった。あの後、不法侵入のことでハイドリアから少し叱られたが、これから共に戦う者ということで大目に見てくれたのだ。

「いや〜、さっきはまいったよ」
「エミリアさんの事?」

城の廊下で騒動の事を話しながら歩くマサシとジゼル。

「ああ、いきなりやって来たと思ったら空から不法侵入と来たからな」
「それで、エミリアさんはどこに行ったの?」
「今後の事を決めるために軍事会議に参加されてるよ。他国の王様も来てたから、いよいよみたいだぜ」
「そう・・・・・ところでコンタ達はどうしたの?」
「ユウタ達はもう少し安静にしてるとさ、コンタは回復魔法の事で医師の人達に追いかけられてるよ」
「追いかけられてる?」

おそらく、コンタは魔法の事を聞こうと追いかけて来る医師達から逃げ回っているのだろう。

「フフフ、大変ね、コンタも」
「そうだな、ハハハハ」

二人が笑いながら歩いていると、後ろから足音が聞こえてきた。二人が振り返ると、そこにはコンタが息を切らせながら走ってくる姿があった。

「ふ、二人ともー!」
「よお、コンタ。医師の人達からの逃げてきたのか?」
「大変ね」

二人が笑いながらそう言うと、コンタは取り乱すように大声を出した。

「そんな事はどうでもいいんだよ!大変だよ!」

コンタの表情を見たマサシとジゼルはお互いの顔を見て再びコンタの方を見た。

「どうしたんだ?」
「こ、この城に・・・ゼルキアスの使者が来たんだよ!」
「え!?」

コンタの口から出てきた言葉は予想もしていなかった言葉だった。

「ゼルキアスと言ったら、ヘルデストロイヤーが侵略したあの軍事大国か?」
「そうだよ!急いで謁見の間に来て!エミリア様も他の国の王様も、もう来てるから!僕は医務室に行ってユウタ達に伝えてくるから!」

コンタはそう言ってもと来た道を走って行った。残されたマサシとジゼル、マサシは腕を組み、下を向いた。

「・・・・・・」
「・・・・・・」

しばらく黙り込む二人。先に口を開いたのはジゼルだった。

「宣戦布告・・・・・・かな?」
「多分・・・・・・」
「いよいよ、戦争が始まるんだね・・・」
「ああ、覚悟はしていた・・・・・・」
「・・・・・・」
「とにかく、謁見の間に行こう、まずはそれからだ」
「うん!」

二人はコンタが走って行った方向へ走り出し、謁見の間へ向かった。





二人が謁見の間へ着いた時、すでにハイドリアは玉座についていた。その近くに他国の王達が横一列に並び、そこから少し離れたところにエミリアが立っている。そして、部屋の中央には赤い髪の女剣士、そう、リーズがいたのだ。その隣にはハヤテが捕虜にしたあのゼルキアスの女剣士、ネリネがいる、リーズの付き添いで来たのであろう。マサシとジゼルがゆっくりと歩きながらリーズに近付いていく。

「リーズ、ゼルキアスの使者ってお前だったのか」
「・・・・・・」

マサシの言葉を聞いてはいるみたいだが、リーズはなにも答えなかった。

「ゼルキアス帝国の使者として参った。あなた方、ユピローズ王国とここにお集まりの他国の王の方々、是非とも我々と同盟を結んでいただきたい」

リーズの丁寧な言葉遣いと聞き、後ろに立っているジゼルが小さな声でマサシに話しかけた。

(マサシ、あの人もヘルデストロイヤーの人なの?)
(ああ、ヘルデストロイヤー 自然の四塔(フォースド・ガイア)の一人、リーズだ)
(ヘルデストロイヤーの人だって言うからサヤカみたいな人かと思った)
(リーズは自然の四塔の中で一番話の分かる奴なんだ、ボスに対する忠誠心も高く、実力もある)
(そうなんだ・・・)

二人が小声で話しているとハイドリアの隣に立っている大臣が返答をした。

「あなた方ゼルキアス、いやヘルデストロイヤーはゼルキアスに奇襲を掛け、ゼルキアス王を殺害したと聞いた。あなた方のやり方に我々は納得ができません。よって、あなた方ヘルデストロイヤーの申し入れはお断りします」
「それは、我々に対する宣戦布告と取ってよろしいのか?」

リーズが問い返すと、近くに立っていたエミリアが口を開いた。

「あなた達のやり方では、誰もあなた達と共に歩む事を選びません。ここにいる全ての人達も同じです。もし、あなた達が他国の人達を力で押さえつけようとするのなら、私達ライトシンフォニアが全力で阻止します。そう・・・・・・ゾークに、あなた達の社長に伝えてください」
「・・・・・・わかった」

リーズはエミリアの答えを聞き、ゆっくりと振りかえり、出入り口へと歩いていく。その後ろをついて行くネリネ。リーズがマサシの隣を通り過ぎようとした瞬間、マサシが口を開いた。

「お前の後ろにいる人、ヘルデストロイヤーの人間じゃないな?」

マサシの声を聞き、リーズがマサシの隣で足を止めた。

「なぜそう思う?」
「俺は今まで多くのヘルデストロイヤーの人間と会い、そして戦ってきたが、その人は見た事が無い」
「お前の知らない間に入った新人かもしれないではないか?」
「普通、宣戦布告をする時にまだなにも知らない新人を同行させるか?」
「・・・・・・」
「それに、その人は俺達の世界では見かけないピンクの髪をしている。その人はこの世界、ラビリアンの人間だ」

マサシがネリネを見てそう言うと、リーズは小さく笑いマサシを横目で見た。

「お前達はゼルキアスの人間をも仲間に引き込みやがったのか?」
「違う!」

リーズの後ろでネリネが大声を上げて否定した。

「コイツ等は私に・・・・!」
「黙っていろ!」

リーズが怒鳴りながらネリネを睨むと、ネリネは狼に睨まれた羊のように怯えて、一歩下がった。

「う・・・・・・」
「お前は黙って私達に従っていなさい・・・・・・」
「うう・・・・・・」
「お前が私達に協力しなくても、別に私達は大して困らない。むしろ困るのはお前だと思うが?」
「・・・・!!」

リーズの言葉を聞き、ネリネは表情が変わった。

「お前が私達に協力しなかったら、お前の部下は全員処刑される。そしてお前も処刑され、生き別れになった妹と二度と会えなくなるのだぞ?」
「クッ・・・・・!」

すると、マサシの隣で黙って話を聞いていたジゼルも表情を変えた。

(妹?)
「・・・・・・わ、わかった」
「それでいい、行くぞネリネ」
(ネリネ!?)

ジゼルはネリネの名前を聞き、謁見の間を出ようとするネリネに思い切って問い掛けた。

「あ、あの・・・・・」

ジゼルの声を聞き、ネリネが立ち止まった。

「・・・・・・何?」
「あ、あなたの名字(ファミリーネーム)はなんですか?」
「どうしてそんな事を聞くの?」
「教えて!お願い!」
「・・・・・・クリシェール、ネリネ・クリシェールよ」
「!!」

ジゼルはネリネの名字を聞いて、更に驚きの顔をした。そして、リーズ達は謁見の間を後にした。リーズとネリネが謁見の間を去ったあと、ジゼルは悲しそうな表情をした。それを見たマサシがジゼルに問い掛ける。

「どうしたんだ、ジゼル」
「・・・・・・」
「あのネリネって言う人、お前の知り合いか?」
「・・・・・・あたしの・・・・・姉さん」
「なんだって!!?」

マサシがジゼルの答えを聞き、大声を出した。そして彼はハッと周りを見て、ハイドリア達がいることを確認すると。

「あ、あのぅ、そ、それじゃあ・・・・・私達はこれで・・・・・」

そう言ってマサシはジゼルを連れて謁見の間を後にした。そして謁見の間を出た二人は城の二階のバルコニーで話の続きを始めた。

「・・・・ジゼル、教えてくれ、あのネリネって言う人がお前の生き別れになった姉さんなのか?」
「うん、間違いない。ネリネ・クリシェール、あの人が・・・・」
「でも、お前の名字はアルフォントじゃなかったのか?」
「アルフォントはベルおばさんの名字なの。あたしの本当の名前はジゼル・クリシェール」
「クリシェール・・・・・あのネリネって人と同じ・・・・」
「ゴメンね、ずっと黙ってて・・・・・」
「いや、いいよ。誰にだって言いたくない事の一つや二つはあるさ」
「うん・・・・・・」

ジゼルがそう言ってバルコニーから下を見ると、彼女に目に城の正門を通ろうとするリーズとネリネの姿が入った。

「・・・・・ッ!姉さん!!」

ジゼルは振り返り、バルコニーを出ようとした。

「待て!!」

マサシがジゼルの前に立ち、道を塞いだ。

「何処へ行く気だ!」
「決まってるでしょ!」姉さんのところよ!」
「行ってどうする!?」
「助けるのよ!ヘルデストロイヤーの幹部と姉さんの会話を見て解ったわ、姉さんは奴等に無理矢理・・・・・」
「それは俺にも解る」
「だったらすぐ助けてあげないと、今ならまだ間に合う!」

ジゼルはマサシの横を通ってバルコニーを出ようとしたが再びマサシが道を塞いだ。

「どいてマサシ!!」
「ダメだ!!」
「どうしてよ!?」

珍しく熱くなり、対立し合うマサシとジゼル。

「このまま姉さんを助けずに見逃せって言うの!?」
「落ち着いて考えろ、リーズは言っただろう『お前が逆らえばお前の部下は死ぬ』って!もしここでネリネさんを助けても、彼女は裏切り者扱いされて部下は殺されるんだぞ?」
「・・・・ッ!!」
「それに、部下が殺されると解っていて彼女が逃げると思うか?」
「・・・・・・」
「気持ちは解るが、今は耐えろ。助けるチャンスは有る、だから・・・・」
「・・・・・・うん、ゴメンなさい熱くなって」
「いや、俺も少し熱くなった、悪い・・・・・」
「ねえ、あたしの本当の名前なんだけど・・・・」
「わかってる、誰にも言わない。俺とお前の秘密だ・・・・」
「ありがとう・・・・」

ジゼルはそう言って再びバルコニーから城を去っていくネリネの後ろ姿は見続けた。彼女の姿が見えなくなるまで。


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