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作品名:ラビリアンファンタジー 作者:ディオス

第34回   第三十三話 敗北から得た物

サヤカとの戦いを終えてサンドリアに戻ったマサシ達。しかし、あの戦いの後で彼らに残ったのは虚しさだけだった。シェルメリン村の人達を救うこともサヤカに勝つ事も出来なかった、彼らは敗北したも同然だった。

「・・・・・・」
「・・・・・・」

王宮の廊下で黙り込むマサシとジゼル。サンドリアに戻ったマサシ達はそのまま王宮に向かい、サヤカとの戦いで傷を負ったユウタ、シオン、レイナ、シンディを医務室へ運んだ。

「・・・・皆、大丈夫かな?」
「さあな、医師の話では命に別状はないようだ」
「そう・・・・でも、シオンは大丈夫なの?途中で意識を失っちゃったんだよ?」

実はシオンはサンドリアに戻る途中で意識を失ってしまったのだ。あの戦いで一番ダメージを受けたのは彼女なのだから。

「多分、戦いが終わって溜まってたダメージと疲れが一気に出たんだろう、まだ意識は戻ってないとさ」
「無事だといいね・・・・」
「アイツは大丈夫だよ、絶対に・・・・・」
「・・・・・・そういえば、コンタは?」

ジゼルはさっきから姿が見えないコンタの居場所をマサシに訊いた。

「コンタは医師の人達と一緒にユウタ達を治療してるよ」
「え、コンタって傷の治療が出来るの?」
「いや、正確には治療する魔法が使えるって言ったほうがいいかな?コンタは神竜隊の中で唯一回復系の魔法が使えるんだよ」
「へぇ〜、そうなんだ・・・・・」

マサシとジゼルが話をしていると医務室から医師とコンタが出てきた。

「二人とも」
「コンタ!どうだった?」
「なんとか大丈夫みたい、そうですよね、先生?」
「ええ、四人とも、ちゃんと意識もありますし、心配は無いでしょう」
「よかった〜!」
「フゥ〜」

医師の言葉にようやく安心したジゼル、そしてゆっくりと息を吐くマサシ。

「それにしても、彼女は信じられないほどの回復力ですな」
「え?」

医師の言った事に聞き返すマサシ。

「あのシオンと言う女性ですよ、運ばれた時に意識を失ったと聞き、体の傷を見て危険な状態だと思いました。ですが、ベッドに寝かせてからしばらくして突然意識が戻ったんです。」
「へ、へぇ〜そうなんですか・・・・」
「・・・・・・あまり驚いていらっしゃらないようですが?」
「え!?い、いえいえ・・・・お、驚いてますよ!ハイ!」
「そ、そうですか?」

取り乱すマサシを見て頭に?マークを浮かべる。マサシは彼等の内、三人が契約者であるため回復力を常人以上だという知らない医師を誤魔化したのだろう。彼としては自分達が契約者である事を周りの人達に知られてくないのだ。

「とりあえず、容体が悪化する事も無いでしょう、安心してください」
「あの、話をしてもいいですか?」
「ええ、どうぞ」

そう言ってマサシ達は部屋に入って行った。部屋の中にはベットで休んでいるユウタ、シオン、レイナ、シンディがいた。

「よう、四人とも、調子はどうだ?」
「ボチボチだよ」
「コンタのおかげで浅い傷はスッカリ治ったしな・・・・」

ユウタとレイナはいつもの調子に戻っていた。シオンは意識はあるがベッドに横になっている。

「シオン、大丈夫か?」
「ええ。それにしても、サヤカの奴・・・・・今度会ったら・・・」
「あまり喋るな、命に別状は無いといってもまだ完治してないんだぞ?」
「そうね・・・・」

シオンとマサシが会話をしていると、ジゼルもシンディと何かを話していた。

「シンディ、落ち着いた?」
「うん・・・・・何とかね」
「よかった・・・・」

マサシ達が会話をしていると、医師が声をかけてきた。

「あのぅ、コンタ君だったかな?」
「え?そうですけど?」

医師に呼ばれ振り返るコンタ。

「君のあの回復魔法には驚いたよ!あんなに早く傷が治る魔法は始めてみた!もしよかったら、その魔法の習得方法などを教えてくれないか?その魔法があれば大きくの患者や病人を救うことが出来るかもしれんのだ、たのむ!」
「え、ええ〜!?そ、そんな事、いきなり言われても・・・・・」
「たのむ!」

医師や周りにいる看護婦や助手などがコンタに寄ってくる。コンタは困った顔をしてマサシに助けを求めた、するとマサシが。

「あの〜、すみません・・・・・俺達、ちょっと大事な話があるんで・・・・・・席をはずしてくれませんか?」
「ん?ああ、そうだね・・・・・すまなかった、気付かなかったよ・・・・・・では、我々はこれで・・・・・」

そう言って、医師達は部屋を後にした。その直後、マサシ達の顔から明るさが消えた。

「・・・・・・あたし達、結局なにも出来なかったね」
「ああ、毒にやられて動けなくなり、ユウタ達にこんな傷を負わせて・・・・・・」
「マサシ、それは仕方が無い事だ」
「そうだよ、それに・・・・・マサシが毒なったのはあたしのせいだから・・・・マサシは悪くないよ」
「・・・・・・」

ジセルとユウタがフォローするも、マサシは暗い顔のままだった。

「私達がもっと早く村に付いていれば、村の人達も助かったのに・・・・・」
「情けないわよね、私達・・・・・・」

今度はシオンとシンディが暗い顔をしてしまった。

「み、皆!元気出してよ!」
「そうだぞ、確かに私達はなにも出来なかった、だがな、我々がここで落ち込んでも死んだ村の人達は帰ってこないんだ、私達に出来る事は早く傷を治してヘルデストロイヤーを倒し、村の人達の仇を取る事なんじゃないのか?」
「「「・・・・・・」」」

コンタとレイナが必死で彼らを立ち直らせようとするが、マサシ達は暗い顔のままだ。すると・・・・・。

「レイナの言うとおりよ、皆」
「「「・・・・!?」」」

何処からか聞き覚えのある声が聞こえ、入口の方を見たマサシ達。すると、ゆっくりとドアが開き、入ってきたのは・・・・。

「「「エ、エミリア様!!」」」

なんと、部屋に入ってきたのはエミリアだったのだ。

「エミリア様、どうしてこっちの世界に?準備が完了するにはあと1日はかかるって・・・・」
「ええ、だから準備が終わった戦力だけ連れて来たの」
「準備が出来た戦力?」
「4個大隊ほどの戦力だけどね」
「そうですか・・・・・」

マサシはエミリアが来た理由を聞くとまた暗い顔をしてしまった、他の隊員達も同じだった。

「ほら、またそんな顔をして。言ったでしょう?落ち込んでいてもなにも変わらないのよ。あなた達が心の底から申し訳ないと思っているのなら、次に同じ様な犠牲者を出さない為にもっと強くなりなさい。心も体も、あなた達にはそれができるのだから」
「エミリア様・・・・・はい」

エミリアの説教と励ましの混ざったような言葉を聞き、少しだけ明るさを取り戻したマサシ達。

「ね、ねぇ・・・」
「どうしたの、シンディ?」
「この人は?」
「ああ、シンディは初めて会うから知らないよね。この人はエミリアさん、マサシ達の組織のリーダーなの」
「そ、そうなんだ・・・・」

ジゼルに説明してもらい、エミリアを見て頭を下げるシンディ。

「よろしくね、シンディさん」
「は、はい!よ、よろしくお願いします」

微笑みながら挨拶をするエミリアを見て、少し照れるような表情を見せるシンディ。やはりエミリアには何か人の心を動かす特別な力があるようだ。

「ん?あの〜、ところで、エミリアさん」
「ん?どうしたの?」

ジゼルがある事に気づき、エミリアを呼んだ。彼女に呼ばれて振り向くエミリア。

「エミリアさん、何処から入ってきたんですか?」
「ん?」
「ここはお城ですよ?警備も厳重ですし、許可も無く正面から入ってくることは出来ないはずですけど・・・・?」

ジゼルが少し焦りのような表情を見せてエミリアに問うと、エミリアは表情を変えずに天井を指差した。

「空からだけど?」
「空って・・・・・・飛んできたんですか!?」
「ええ、私も契約者だから。城壁を飛び越える時に兵隊さん達が皆見ていたわ」

表情を変えずにサラリと言うエミリアを見てマサシ達は目を丸くした。

「エ、エミリア様、まずいですよ!それって不法侵入じゃないですか!今頃、城中大騒ぎですよ!」
「そ、そうですよ、それに4個大隊を連れてきて不法侵入なんかしたら、敵だと思われても仕方ないですよ!?」

マサシとユウタが慌ててエミリアに言うと、彼女は少し笑いながら言った。

「大丈夫よ、大隊の皆には少し離れた所で待機してもらってるから」
「あ、それなら大丈夫ですね」
「「「「全然大丈夫じゃなーい!!」」」」

マサシとエミリアがケロッとそう言うと神竜隊の全員が声を合わせてツッコミを入れる。すると、セリーナが慌てて部屋に入ってきた。

「おい!城内に侵入者だ!見た事のない服装で・・・・・・」
「ん?」

慌てて入ってきたセリーナに気付いてゆっくりと入口の方を見るエミリア。

「お、お前は!」
「セ、セリーナさん、どうしたの?」

ジゼルが興奮しているセリーナに尋ねると、セリーナはエミリアを指差して大声を出した。

「コ、コイツだ!空を飛んで城に侵入した奴は!」
(アッチャ〜、やっぱりダメか・・・・・)

マサシは心の中でそう呟いた。そして、セリーナは廊下に出て、再び大声を出した。

「衛兵!侵入者を発見した!」
「ちょ、ちょっと待ってくれ、セリーナ隊長!」
「なんだ!?」
「違うんだ!この人は俺達ライトシンフォニアの社長なんだよ!」

マサシは慌ててセリーナを止めて説明を始めた。

「シャチョウ?どういうことだ?」
「あ〜、つまりだな・・・・・簡単に言えば、この人が俺達のボスなんだよ」
「なんだと?それは本当なのか?」
「ホントホント!」
「そうか・・・・・わかった、信じよう。だが城への不法侵入は褒められたものじゃないな」
「ゴメンなさい、正面から入っても信じてもらえないと思ったから・・・・・」

エミリアは改めて勝手に城には言った事をエセリーナに謝った。そしてそんな中、ジゼルがマサシの肩を指で突付いた。

(エミリアさんってさぁ)
(ん?)
(マジメそうに見えてあなたと性格が似てるわね?)
(俺に似てる?)
(うん・・・・)

ジゼルは小声でマサシにエミリアの事を話していた。確かに、さっきの城への侵入といい、大隊の事といい、マサシと同じように少しチャランポランなところがある。

(そうか〜?普通に見えるけどなぁ)
(・・・・・自覚ないのね)


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