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作品名:ラビリアンファンタジー 作者:ディオス

第33回   第三十二話 VS サヤカ No2

サヤカとの戦いは始まり、魔物化したラモンを倒し、遂にサヤカとの直接対決となった。

「せっかくだから、私の力、見せてあげるわぁ・・・・」

さっきまでと同じ気の抜けた喋り方だが、彼女からは笑顔が消えていた。

「どうしたのかしら、さっきまでと雰囲気が違う・・・・」
「ああ、まるで機嫌を悪くしたような、そんな感じだ」

ユウタとシンディがサヤカを見て話していると、シオンが再び投げナイフを取って構えた。

「シオン、アンタがどうやってその符術を習得したのかは知らないけど、上級符術が使えるからって調子に乗らないことね」

シオンがサヤカを挑発するような口調で言うと、サヤカは表情を崩さずにシオンを見て言った。

「元々才能が無く、人の数倍努力してやっと中級符術を習得した女の台詞とも思えないわねぇ」
「・・・・!」
「アンタの両親もそうだったわよねぇ?たいした力も無いくせに口だけは一人前で、本当に馬鹿な人達よ」
「・・・・アンタ、私の前で父さんと母さんを侮辱して、ただで済むと思ってるの?」
「あらあら、また熱くなって・・・・・本当に単純ねぇ?」
「クッ!」

再び熱くなりかかった自分に気付き、シオンはゆっくり目を閉じて心を落ち着かせた。

(落ち着きなさい、これじゃあさっきと同じようにアイツの思い通りになってしまうわ)
「落ち着いたかしらぁ?」
「・・・・・・・ええ」

目を開き、冷静さを取り戻したシオン。それを見たユウタ達はサヤカの方を向き、構え直した。

「さて、話はここまでで良いよな?」
「ええ、始めましょうか」

サヤカがユウタの方を見てそう言うと、五人の傭兵が自分達の武器を取った。そして、最初に動いたのはシオンだった。

「ハアッ!」

シオンはサヤカの側面に回りこむ様に走りながら投げナイフを投げた。しかし、ナイフはサヤカの手前で見えない何かにぶつかり弾かれた。

(あれは!まさか、幻陣防御符?側面からの攻撃はアイツには効かない、だったら背後から!)

シオンはそのまま走り続けてサヤカの背後に回りこんだ、そして持っていた呪符をサヤカに目掛けて投げつけた。

「風・刃・斬・音・零!戦塵斬刀符(せんじんざんとうふ)!!」

シオンは新たな符術を発動させた。すると呪符が一瞬で短刀に姿を変え、無防備なサヤカの背中に向かって飛んでいく。今度こそ当たると思われたいた、しかし・・・。

「甘いわよ、シオン・・・・」

サヤカを自分の背後にいるシオンに静かにそう言うと、短刀がサヤカの背中の数cm手前で弾かれ、そのまま地面に落ちて元の呪符に戻ってしまった。

「そ、そんな!どうして!?」

攻撃が効かなかった事に驚くシオン。サヤカをゆっくりとシオンの方を向いた。

「私が背後からの攻撃に何の対策もしていないと思ってたのぉ?背後にも結界が張ってあるに決まってるでしょう?」
「・・・・・・!」
「そんな単純な事も分からないなんて、やっぱりアンタは馬鹿ね」
「・・・・・・アンタもね」
「ん?」
「アンタも馬鹿って言ったのよ」
「言うじゃない・・・・私の何処が馬鹿なのかしら?」
「アンタのその幻陣防御符は一度攻撃を防ぐと結界が消えるのよ?つまり、同じところからもう一度攻撃すれば、攻撃は・・・・通る!」

シオンが最後に力強く叫ぶと、ユウタがサヤカに向かって走り出す。最初にユウタ達の方を向いていたサヤカは自分の後ろにいるシオンの方を向いたので今度はユウタ達に背中を向けている。しかもシオンの攻撃を防いだ為、背後の結界は消えている。今ならユウタ達の攻撃はサヤカに当たる。

「くらいな!ウインドグレネード!!」

ユウタの拳に突然風がまとい始めた。ユウタの契約相手は風の竜「ガルーダ」、契約者であるユウタも風を自由に操る事が出来るのだ。ユウタが風のまとったパンチを打った。

「・・・・・・インフェルノ」
「なに!?」

パンチが当たる直前にサヤカが小声で何かを口にした。すると、突然サヤカの周りが爆発し、近くに居たユウタとシオンが吹き飛ばされた。

「グワアアアッ!!」
「うわあああっ!!」

ユウタは4m近く飛ばされ、シオンは燃え尽きた家の中に突っ込んだ。

「な、なんなの今の!?」

シンディは何が起きたのかまるで理解できずパニックになっていた。

「落ち着け、奴も契約者だ、契約魔法を使ったのだろう・・・・」
「え、アイツも契約者なの?」
「ああ、しかし演唱を行わずに発動するなんて・・・・」

レイナがシンディを落ち着かせて再びサヤカの方を見た。

「なに言ってるのぉ?演唱はしたわよ、小声でね」
「フン、小声でか・・・・・ならば今度は演唱させる隙も与えん!」

レイナがSAAを二丁抜き、連続でトリガーを引き、弾を全て撃った。11発の弾がサヤカに向かって飛んでいく、しかし弾はサヤカの目の前で突然現れた炎に包まれ、全て地面に落ちてしまった。

「なに・・・?」
「今のは契約魔法じゃなくて、私の契約相手の元々持っていた力の1つよ」
「自分の意思と関係なく勝手に自分を護る力か・・・・・・」
「そう、これが私の契約相手、炎の精霊『イフリート』の力よぉ」

サヤカの契約相手は炎を操る幻獣種だったのだ。

「まずいな、幻獣種と契約した人間は他の2種と契約した人間よりも身体能力が増す・・・・・」
「どういう事?」
「つまり、肉弾戦では奴の方が上と言うことだ。それに妖狐符術と奴の妖狐としての本来の力が加われば・・・・・」
「勝てない・・・・?」

レイナは表情を崩さず頷いた。レイナは銃による遠距離攻撃を得意としている、接近戦に持ち込まれたら勝ち目はない。レイナは距離を取って体勢を立て直そうとしたが、既に遅かった。サヤカはレイナが目で追う事の出来ない位の速さで距離を詰め、すでにレイナの目の前にいた。

「・・・・ッ!速い!!」
「アンタが遅いのよぉ」

サヤカは右手で拳をつくり、レイナの腹部にパンチを打ち込んだ。

「グハァ!!」

レイナは直撃を受け、10m近く吹き飛ばされ、ガレキと化した家に突っ込んだ。

「ウ、ウソ・・・・・・」

あまりの速さと強さに驚きを隠せないシンディ。そして、サヤカはシンディの方にゆっくりと目をやった。

「ウッ!」
「あら〜、私が恐いのぉ?」
「だ、誰が・・・・ア、アンタなんか!」

シンディが震えながらも剣を取って構えると、サヤカはM10と呪符をしまい、両手を顔の高さまで挙げた、拳法の構えだ。シンディ一人ならもう武器や符術は必要ないと判断したのだろう。

「な、何のつもりよ?」
「アンタが相手なら素手で十分よ」
「わ、私も随分ナメられたものね・・・・・」
「そんなこと言って、本当はホッとしてるんでしょ?『これならまだ勝ち目があるかも』って、それに、まだ声が震えてるわよ?」
「こ、このぉぉ!!」

シンディはサヤカの挑発にのってしまいサヤカの斬りかかった。

「アイスブレード!」

シンディの剣に冷気がまとい、その刃がサヤカに迫った。しかし、サヤカは表情を崩さずにその攻撃を避け、無防備なシンディの脇腹にパンチが命中した。

「ウグッ!!」

手加減をしたのか、シンディは吹き飛ばされる事もなく、殴られた脇腹を押さえてその場にうずくまった。

「う、ううう・・・・・」
「なっさけないわね〜、アンタ達なんか所詮この程度よ」

サヤカがうずくまるシンディを見下ろしていると、後ろのほうから物音が聞こえてきた。サヤカがゆっくりと後ろを向くと、そこにはさっき吹き飛ばされシオンが立っていた。身体のあちこちに傷や汚れが付いている、かなりのダメージを受けているようだ。

「あら、まだ生きてたのぉ?」
「私だって契約者よ、そう簡単には死なないわ・・・・・」
「そう・・・・・でも、その方が楽しめるもんねぇ」





その頃、フォントニスの出入り口の近くでは毒を受けたマサシを看病しているジゼルとコンタがいた。

「マサシ、大丈夫?」
「ああ、大分痺れが引いた」
「よかった・・・・」

自分をかばってブラスコルの毒を受けたマサシの身体から毒が消えた事を確認し、一安心したジゼル。そんな二人を見て、邪魔をしてはよくないと二人に背を向けるコンタ。しかし、彼の頭の中にある事が浮かび上がった。

「・・・・・・それにしても、シオン姉さん達、遅くない?」

コンタの言った事を耳にして彼の方を向く二人。

「確かに、遅いな・・・・・・」
「うん、何かあったとしても誰かが戻ってきて知らせる事はできるはずなのに・・・・・誰も戻ってこない」

マサシとジゼルは誰も戻ってこない事に不安を抱き始めた。

「もしかして、戻ることすら出来ないくらい、ヤバイ何かが起きたのか・・・・・」
「何かって?」
「・・・・・・」

黙り込むコンタ、口にしたくない程ヤバイ状況を想像してしまったのだろう。

「・・・・・・行くぞ」

マサシがゆっくりと立ち上がる。ジゼルとコンタも立ち上がったマサシの顔を見た。

「マサシ、もう大丈夫なの?」
「ああ、もう動ける、心配かけたな」
「よかった・・・・・」
「コンタ、お前はあの爆発はヘルデストロイヤーの仕業だと思ってるんだろ?」
「え?」

マサシはコンタが想像していた答えを考えて尋ねた。そしてそれを聞いてマサシの方を向くジゼル。

「・・・・・・うん、シオン姉さん達が何も伝えてこないなんて、四人の身に何かが起きたとしか考えられないもん」

確かに、彼らの実力は折り紙つき、その四人から何の連絡もないなどおかしい、コンタはそう思っていたのだ。

「よし、行くぞ二人とも!」
「うん!」
「急ごう!」

三人はシェルメリン村に向かった、シオン達の身の安全を祈って。しかし、彼らの祈りは届かなかった。





「ウワアァァァ!!」

シオンがサヤカの攻撃を受けて吹き飛ばされ、彼女は地面を転がった。シェルメリン村ではシオンがサヤカと死闘を繰り広げていた。しかしシオンは押されていた。

「ハァハァ、え、炎帝よ、敵を飲み込み灰塵と化せ!クリムゾ・・・・」
「何度やっても無駄よ」
「!!」

シオンが契約魔法を発動しようとしたが、発動する前にサヤカがシオンに接近した。そして拳に炎がまとい、その拳がシオンに命中した。

「うぐっ!!」

彼女は攻撃が当たる直前に体に力を入れたため、吹き飛ばされる事はなかったが、ダメージは大きい。

「ハァハァハァ・・・・・」
「分かったでしょ?私はアンタや親達とは違うのよ・・・・。一緒にしないで」
「・・・・・・さっきからアンタの機嫌が悪そうに見えたけど、やっぱり怒ってたのね」
「ええ、アンタ達みたいな才能の無い奴等と一緒にされるとイライラするのよ」
「・・・・・・私や私の両親はともかく、自分の両親まで才能が無いなんて言うのはやめなさいよ」
「本当の事でしょう?」
「・・・・・・今のアンタを見たら、アンタの両親、きっと悲しむでしょうね」

シオンは悲しそうな声で言うと、サヤカは表情を崩さずに片手を上げた。

「言いたい事はそれだけ?じゃあ、消えて」

シオンに別れの挨拶をし終えるとサヤカは呪文演唱を始めた。そしてサヤカの上げた手に少しずつ炎が集まり始めた。

「炎帝よ、灰塵と化せ!クリムゾンブレイズ!!」

サヤカはシオンが使ったクリムゾンブレイズを使ってきたのだ。そしてサヤカは巨大な火球をシオン目掛けて投げつけた。

「クッ・・・・・ここまでね・・・・」

シオンはもう攻撃を避ける力も残っていなかった、彼女は覚悟を決めて目を閉じた。そして火球がシオンを飲み込もうとした、その時。

「邪念を阻む水の盾よ、聖者を護れ!アクアウォール!!」

何処からか声が聞こえ、シオンが目を開けると目の前には水の壁が現れサヤカのクリムゾンブレイズを止めた。火球は水壁に当たり、消滅した。

「大丈夫ですか!?シオン姉さん!」

声が聞こえ、隣を見るとそこにはコンタが立っていた。

「コ、コンタ・・・・・・」
「間に合ってよかったです」

コンタが助けに来てくれた事でシオンはようやく笑顔を見せた。そしてアクアウォールが消え、サヤカの姿が見えてきた。

「あら〜、コンちゃん。あなたも来たのねぇ」
「お久しぶりですね・・・・・」

コンタの姿を見たことでサヤカの声に少しだけ明るさが戻った。

「あなたが来てくれて、この戦いも楽しくなってきたわ〜」
「僕だけじゃないですよ・・・・」

コンタがそう言ってサヤカの後ろを指差し、サヤカが後ろを見ると、そこにはシンディのそばにいるジゼル。気絶しているレイナを背負い、ユウタに手を貸しているマサシがいた。

「やってくれたな、サヤカ」
「あら〜秋円もいたのねぇ、あと、始めてみる女の子、神竜隊が全員揃ってわねぇ」
「さて、どうする?こっちには水使いのコンタがいるんだぞ?」
「そうねぇ、流石にこれでは勝ち目は無いわねぇ・・・・・それじゃあ、私はこれで引き上げるわね」
「逃がすと思ってるのか?」
「思ってないわ。だから、逃げるわ、じゃあねぇ〜♪」

サヤカは最後に陽気な声を上げると、サヤカの周りに炎が現われて包み込んだ。そして炎が消えた時にサヤカの姿は無かった。

「チッ、逃げられたか・・・・・ジゼル、シンディの傷はどうだ?」
「大丈夫みたい、でも体中に酷い火傷を負ってるの」
「そうか、レイナも気を失ってるだけだ」
「すまない、俺が付いていながら・・・・」
「お前のせいじゃない、気にするな」
「すまん・・・・・」

謝るユウタにフォローを入れるマサシ、そしてジゼルもシンディに声をかけていた。

「大丈夫?」
「え、ええ・・・・でも、村の人達が・・・・・・」
「・・・・・仕方ないわよ、シンディ達は悪くないわ」
「でも・・・・・・」

ジゼルもシンディを励ましているが、やはりショックだったようだ。

「シオン姉さん、痛みますか?」

コンタが持っていた消毒薬や止血剤で応急処置をしている。

「大丈夫よ、ありがとうコンタ」

コンタの治療を受けて微笑みながら礼を言ったシオン。そしてしばらくすると馬に乗った集団が村に近付いてきた。その先頭にはセリーナがいた。騒ぎを聞き、サンドリアから救援に来てくれたのだろう。そしてマサシは今回の事件をセリーナに伝え、彼女達の護衛を受けながらサンドリアに帰還しのだった。


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