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作品名:ラビリアンファンタジー 作者:ディオス

第32回   第三十一話 VS サヤカ

シェルメリン村の方からの爆発はヘルデストロイヤーの幹部「自然の四塔(フォースドガイア)」の一人「サヤカ」の仕業だった。人の命を玩具のように扱う彼女の性格に、遂にシオンの怒りが爆発する。

「今日でアンタとの因縁も終わりよ!」
「フッフッフ、私を殺すつもり〜?」
「ええ、殺すわ!今すぐに!」

シオンは完全に周りが見えていない。そんな彼女を必死で呼ぶユウタ達。

「おい!シオン!」
「シオン、落ち着け!自分を見失うな!」

ユウタとレイナは必死で彼女を呼ぶが、彼女に声は届いていない。

「いくわよ!サヤカ!!」

シオンは投げナイフを取り、それをサヤカに向かって投げた。しかし、ナイフはサヤカの目の前で何者かに弾き飛ばされた。それはさっきサヤカが呼びだした魔物だった。

「チッ、コイツ!」
「フフフ、この子を忘れちゃ可愛そうでしょ〜?相手してあげてよ♪」
「いいわ、先にコイツから片付けてやる!!」

シオンが新しい投げナイフを取ろうとした瞬間、魔物は大きな腕をシオンの真上で振り下ろした。シオンはとっさに攻撃をかわし、投げナイフを投げる。ナイフは魔物の腕に刺さったが魔物にはほとんどダメージはないようだ。

「チッ、ナイフじゃ無理か・・・・・。なら、これならどう!」

シオンは距離を取り、腰のバックパックから何かを取り出した。それは長四角の紙、その紙には無数の漢字を縦に書かれている、それは呪符だった。彼女は妖狐符術の使い手、常に呪符を持ち歩いているのだ。

「あら、お得意の符術?」
「そう、見せてあげるわ。私達、狐火家の妖狐符術の力を!!」

シオンは術符を2枚を魔物に向かって投げた。すると、呪符が魔物の左腕に貼り付いた、そしてシオンはぶつぶつ何か呪文を唱え始めた。

「界・陣・滅・罪・善!煉獄爆炎符(れんごくばくえんふ)!!」

シオンが叫ぶと貼り付いた2枚の呪符が爆発した。

「グオォォォォォ!!」

魔物は左腕に伝わる熱さと痛みに耐えられず断末魔を上げた。

「へぇ〜、腕は鈍ってないみたいねぇ」
「当たり前よ!」
「フフフ、ほらほら頑張って、ラモン」
「なっ!!」

サヤカの「ラモン」という言葉を聞き、シオンの顔が歪んだ。そしてシオンを見守るユウタ達にも驚いた。

「なんだって・・・・・・?」
「ま、まさか・・・・・・あれが長老・・・・なの?」

ユウタ、シンディは戸惑いを隠さなかった。

「じ、つ、は、ねぇ〜。ラモン、つまりこの村の長老さん、『自分はどうなってもいいから、村の者達には手を出さないでくれ』って言ったの、泣ける話でしょ?」
「・・・・・・」
「だから彼には疑似魔封石の実験体になってもらったの♪でも初めての実験だったから、見ての通り、こんな姿になっちゃった♪」
「アンタ・・・・・・本当に腐ってるわね」

シオンは改めてサヤカの残酷な性格に怒りを覚えた。それはユウタとシンディも同じだった。

「人をモンスターに変えるなんて、とても人間のすることじゃない!」
「分かっただろう?これがヘルデストロイヤー(奴等)のやり方なんだよ・・・・・」

二人は武器を取ってシオンと共に戦おうと彼女のもとへ走って行った。しかし、レイナだけは何もせずに魔物化したラモンを見ていた。

「・・・・・・」

ユウタとシンディがシオンの隣に着くとチャクラムと剣を取って構えた。すると魔物化したラモンが再び腕を上げて、振り下ろして攻撃した。三人はなんとか攻撃をかわした。

「クソッ、長老が相手じゃ迂闊に攻撃できねぇ!」
「すぐにサヤカを倒して元に戻しますから!」

シオンがラモンに語りかけ、サヤカに向かって走って行くがラモンが前に立ち塞がり行く手を阻んだ。そしてシオンに無傷の右腕でパンチを放った。シオンは攻撃を受けはしたが、当たる直前にガードした為、ダメージを最小限に抑えた。

「グワァ!!」

シオンはパンチで5m程後ろに飛ばされた。

「うう・・・・い、今のはちょっと効いたわ・・・・」
「大丈夫、シオン?」
「え、ええ・・・・」

シンディはシオンのもとへ走り無事を確認した。しかし、ラモンはそんな二人を見過ごさなかった、ラモンは大きな足音を立てる二人に近付いてきた。

「二人とも、危ない!!」
「あっ!」
「しまった!!」

ユウタの声でようやく気付いた二人だが遅かった、ラモンは大きな足で二人を踏み潰そうとした、覚悟を決めたシオンとシンディが目を瞑った瞬間、何処からか銃声が聞こえてきた。目を開けるとラモンが片足を上げたまま動かなくなり、そしてゆっくりと倒れた。

「ラ、ラモンさん!どうしたの!?」

シンディが倒れたラモンに駆け寄り大きな身体を揺さぶった。シオンが銃声のした方を向くと、目の先にはSAAを抜き、引き金を引いていたレイナがいた。銃口からは煙が出ていた。

「レ、レイナ・・・・・アンタが撃ったの?」
「ああ・・・・・」
「どうして!?どうして彼を撃ったのよ!!」

ラモンを撃ったレイナに怒りをぶつけるシオン。

「お前は長老をそんな醜い姿のまま生かしておくつもりか?」
「醜いままって、元の姿に戻す方法だってあるはずでしょう!?」
「無い・・・・」
「どうしてそう言いきれるの!?」
「サヤカ(奴)が言っただろう?『初めて実験した』と、どういう結果になるか奴等ですら分からないのに、元に戻す方法が手元にあると思ってるのか?」
「!!」

レイナが冷静な口調のまま、説得力のある答えを言った。

「冷静に考えれば、分かる事だろう・・・・・」
「・・・・・・」
「お前はサヤカの性格に熱くなって自分を見失ったんだ・・・・・」
「・・・・・・」
「ユウタとシンディもだ、お前達まで熱くなってどうする?」
「・・・・・ごめん」
「すまねぇ・・・・」

レイナに言われ気付いたユウタとシンディが謝った、ようやく三人は冷静さを取り戻した。

「元に戻れずモンスターのまま生きる位なら・・・・・・いっその事、死なせたほうがいい。マサシなら同じことを言うだろう・・・・・」
「・・・・・・そうね、ごめん」

ようやく冷静になったシオン。そんな彼女達の会話を見ていたサヤカが再び気の抜けるような声で話しかけてきた。

「お取り込み中、ごめんなさ〜い♪」
「クッ!」

サヤカの顔を睨むシオン。睨んではいるが、冷静さは失っていない。

「スズキの言うとおり、元に戻す方法はなかったの」
「そう、それで、何が言いたいの?」
「熱くなって状況を知る事が出来ないようじゃ、アンタもまだまだ未熟者って事♪」
「・・・・・・」
「さてと、今度は望みどおり、私が相手してあげるわ」

サヤカはそう言ってジャケットの内ポケットからシオンが使っていた呪符に似た別の呪符を取り出した。

「・・・・・・いいわ。ラモンさんの為にも、必ずアンタを倒す!」

シオンは再び呪符とナイフを取り出して構えた。ユウタとシンディ、そしてレイナも構えた、彼女も今度の戦いには参加するようだ。

「ウフフフ、せっかくだから、本気だ戦ってあげる♪」

サヤカは呪符を右手に持ち、空いている左手を腰の後ろに回し、1丁の銃を手に取った。

「『M10』・・・・・・」

シオンが小さな声で銃の名前を口にした。

M10
ゴードン・イングラムによって開発された短機関銃。拳銃と同じ9mmパラが使用されており、一般的には製作者の名前を取ってイングラムM10と呼ばれる。発射速度が非常に速く扱いにくい面もあったが、1970年頃、西側にはこのクラスの小型SMGはほとんどなく、アメリカ、イスラエルなどの特殊部隊でも少数ながら採用されていた。

「さあ、始めましょうか?」
「ええ・・・・・・」

サヤカとシオン達がそれぞれの武器を取り、相手の姿を見て構えた。互いに動かず、数秒の時が流れた。そして、最初に動いたのはシオンだった。

「ハアッ!!」

シオンは高くジャンプをし、サヤカに向かってナイフを投げつけた。しかしサヤカは持っていたM10の銃口を飛んでくるナイフに向けてトリガーを引いた。銃口から無数の9mm弾が吐き出され、次々にナイフを落としていく、しかしサヤカの本当の狙いはナイフではなくシオンだったのだ。弾がナイフを落とすのと同時に、ナイフに命中しなかった弾丸はそのままナイフを通過してシオンに襲い掛かる。それがサヤカの狙いだった、そしてその狙い通りになった。弾はシオンの投げたナイフに全て命中し、当たらなかった弾はシオンに迫って行った。

「やっぱりそう来たわね!」

シオンはサヤカの行動を読んでいたのだろう、ナイフを投げた後に呪符をサヤカに目掛けて投げていたのだ。そしてサヤカが銃口を向けた直後に呪文を唱え始めた。

「剛・連・印・立・対!霊滅結界符(れいめつけっかいふ)!!」

呪文を唱え終えると、投げた呪符は全て六角形の光の盾に姿を変え、弾を全て落とした。

「やるわね、フフフ♪」

サヤカが小さく笑っていると、ユウタ達がシオンの方を見ているサヤカに走っていく。

「俺達を忘れるな!」
「あっと、いけない・・・・忘れてたわぁ」

サヤカがユウタ達の方を向いたときにはすでにユウタ達はサヤカの2m近くにいた、そしてユウタがチャクラムで攻撃しようとした瞬間。

「ガッ!!」

ユウタは何かにぶつかり、そのまま仰向けに倒れた。レイナとシンディも彼が突然倒れた事に驚き、足を止めた。

「ユウタ、どうしたの?」
「テテテテ・・・・・な、何だ?」
「あら〜、どうしたのぉ〜?」

サヤカがユウタをバカにするような口調で問い掛ける。

「今、何かにぶつかったような・・・・・・」
「何かって、何もないじゃない。ふざけてないで早くコイツを・・・・・」

シンディが喋りながらサヤカの方を向き近付こうとすると、シンディも何かにぶつかり、しゃがみこんで鼻を押さえた。

「イッタタタタ・・・・・な、何これ、どうなってるの?」

シンディもサヤカの方を見るが、やはり何もない。実は、彼らとサヤカの間には見えない何かが存在しているだ。

「ウフフ♪これはねぇ、妖狐符術の1つ『幻陣防御符(げんじんぼうぎょふ)』。これは相手と自分の間に見えない壁を作り、相手の攻撃や侵入を全て妨げる防御符術よ」
「そんな!それの符術は妖狐符術の中でも上級の符術よ!私達の両親でも習得できなかった符術をどうしてアンタが!?」

着地したシオンがサヤカに問う。自分達の両親でも習得できなかった符術を習得したサヤカに驚きを隠せないでいた。

「・・・・私をパパやママ、そしてアンタの両親と一緒にしないでよぉ、気分悪くなるわ〜」

サヤカは相変わらず気の抜けたような喋り方をしているが、さっきまでとは少し違っている、不機嫌になったような感じだ。

「せっかくだから、アンタ達に見せてあげるわ〜、私の力をねぇ」

サヤカとの戦いが遂に始まった。シオン達はどのようにしてサヤカと戦うのか、そしてサヤカの力とはどれほどの物なのか!?


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