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作品名:ラビリアンファンタジー 作者:ディオス

第31回   第三十話 炎の遊び人 サヤカ

ブラスコルを全て倒し、依頼を完遂したマサシ達。しかし、マサシは生き残っていたブラスコルの毒針を受け、全身麻痺を起こしてしまう。更に、シェルメリン村の方から大きな爆発音が聞こえ、ユウタ、シオン、レイナ、シンディの四人は急いで村へ戻るのだった。

「急いで村に戻るぞ!」
「わかってる、急ぎましょう!!」

四人は急いで村へ向かった。そして、四人が村に戻ると、彼らは信じられない光景を目にした。村のあちこちが赤い炎に包まれていた。家は焼かれ、地面には壊れた食器や子供の玩具が転がっている。

「ひ、ひどい・・・・」
「一体何があったんだ!長老や村の人達は!?」

ユウタが周りを見て村人がいないか確かめるが、姿は見えなかった。目に入るのは全てを焼き尽くす炎だけだった。

「クソッ!みんな、手分けして村の人達を探すんだ!」
「わかった!」
「ああ・・・」

ユウタ達が村人達を探そうとした時、そこからか気の抜けるような声が聞こえてきた。

「その必要は無いわよぉ〜」
「「「「!!」」」」

四人はとっさに声のした方を向いた。なんと、そこにはヘルデストロイヤーの四大幹部「自然の四塔(フォースド・ガイア)」の一人、サヤカが立っていたのだ。

「こんにちはぁ、ライトシンフォニアのよ〜へ〜さん♪」
「お前は・・・・サヤカ」

レイナが冷静にサヤカの名を口にし、サヤカも相変わらず気の抜けるような声で返事をした。

「はぁ〜い♪ひ、さ、し、ぶ、り♪元気だった〜?」
「ああ、元気だよ・・・・・お前も相変わらずだな・・・・・」

久しぶりに再開した友達の会話のようだが、静かな会話の中、互いに強い気をぶつけ合っている。そんな光景を見ていたシンディも何かを感じたらしく、怯えるように下がった。

(な、なんなの?この感じ・・・・・もの凄い力と殺気を感じる・・・)

シンディがそんな彼らを見ている中、ユウタ達とサヤカの会話は続く。

「わかっていることだけど一応聞くわよ、この村に火を放ったのはアンタ?」
「ええ♪」

シオンが問うとサヤカは笑いながらアッサリと認めた。

「何でこの村を襲ったの?」
「退屈しのぎ♪」
「退屈しのぎ・・・?」
「ええ、ゼルキアスを制圧して国を手に入れてから社長はゼルキアスの残存兵狩りをしていたの。でもそれもほとんど終わっちゃってね、やる事がなくなったから遊んでたの♪」
「遊んでた・・・・?」

村を襲うという事を遊びと考えているサヤカの答えを聞き、シオンの声がだんだん低くなっていく。明らかにシオンは怒っている。

「アンタのそういう考え方、変わってないわね・・・・・昔のまんま」

シオンは昔話をするかのような言い方をした。そんなシオンを見てシンディがユウタに小声で話しかけた。

(ねえ、シオンとあのサヤカっていう人、昔に何かあったの?)
(・・・・・・シオンの家とサヤカの家は妖狐符術という呪術を使う家系同士で昔から対立し合ってるんだよ。つまり、アイツ等の家は犬猿の仲なんだよ)
(そ、そうだったんだ・・・・・)

シンディはシオンとサヤカの因縁を知り、再び二人を見るのだった。

「アンタは昔から人を傷つける事なんとも思っていない、私はアンタのそういうところがダイッ嫌いなのよ・・・」
「アンタもその正義感は昔と変わらないわねぇ。でも、そういうところ・・・・・好きよ♪」
「クッ・・・・・・」
「そういえば、秋円と『コンちゃん』は何処なの?」
「アンタには関係ないでしょ・・・・?」
「フフフ、そうね、ゴメンなさ〜い♪」
(・・・・・・なにがコンちゃんよ!)

シオンはサヤカのヘラヘラしている態度にますますイラついたようだ。そんな光景を見て再びシンディがユウタに質問した。

(ねえ、『コンちゃん』って?)
(サヤカが付けたコンタのあだ名だよ)

二人の話が終わり、今までシオンの後ろにいたユウタがシオンの隣まで歩いた。

「話は終わったようだな?」
「うん・・・・・」

シオンは低い声のまま返事をした、サヤカの「好き」というふざけた言葉が相当来たようだ、少しイライラしている。

「サヤカ、この村の人達はどうした?」
「ああ、ここの人達はほとんど殺しちゃった♪」
「「「「!!!!」」」」

村人達を殺害した事をユウタ達に伝えたサヤカ。ユウタ達の怒りがこみ上がった。

「てめぇ・・・・!」
「所詮、貴様もヘルデストロイヤーに魂を売った愚かな女か・・・・」
「絶対許さないわよ!!」
「サヤカ・・・・・覚悟しなさい!!」

ユウタ達が自分達の武器を取り攻撃態勢に入った。しかし、そんな光景を見ていたサヤカはニヤリと笑いながら・・・・。

「フフフ、あなた達。もう少し考えたほうがいいんじゃな〜い?」
「何が?」

サヤカの言ってる事を理解できずに問い返すシオン。するとサヤカが・・・・。

「私が一人でこんな遠くまで来ると思ったのぉ〜?」
「だから何言って・・・・・・!まさか!!」

シオンが気づいた時はすでに遅かった。酸素マスクをかぶり、耐火服を着た六人のヘルデストロイヤーの傭兵達が火炎放射器とショットガンを持って炎の中から飛び出し、ユウタ達を取り囲んだ。火炎放射器を持つ傭兵が四人、ショットガンを持つ傭兵が二人の合計六人だ。

「しまった!」
「今まであなた達と話してたのは囲む為の時間稼ぎよ♪」
「クソッ!みんな伏せろ!」

ユウタの言葉を聞き三人は伏せた、その直後ユウタはチャクラムを2つ取り出した。指で回しユウタはそれをサヤカに向かって投げるとサヤカはそれをかわした、だが2つのチャクラムはそれぞれ左右に曲がり再びユウタのほうへ戻ってきた。だがチャクラムはユウタのもとへ戻らずユウタ達を囲むヘルデストロイヤーの傭兵達に命中し、火炎放射器を持つ四人が倒れた。

「シオン!!」

ユウタの合図で伏せていたシオンが立ち上がり、残りの傭兵二人を投げナイフで攻撃し、敵に命中した。

「あらら〜、もうやられちゃったぁ」
「サヤカ、残りはアンタだけよ!」
「ウフフ、まだまだよ♪」
「?」

サヤカはまだ何かを隠しているようだ、ニヤリと笑う彼女をシオンが睨むと何処からか大きな音が聞こえてきた。

「何、この音!?」
「これは、足音だ!」
「足音?一体何処から・・・・・」

ユウタ達が周りを見回していると、サヤカの後ろの焼けた家が突然崩れて炎の中から一匹の怪物が姿を現した。その怪物は人間の姿をしているが、身体は灰色をしており、腕や足からいくつもの眼が付いており、顔の部分から角が3本生えている。更に手足の指からは鋭い爪が生えていた。

「な、何なんだコイツは・・・・・」
「こんなモンスター見たことないわ・・・・・」

ラビリアンの人間であるシンディも見た事がないモンスター、ユウタ達は驚いていた。しかもサヤカの後ろから出てきたという事は、彼女の部下だと考えられる。

「サヤカ、何なのコイツは?」
「この子?フフフ、この子はねぇ、『疑似魔封石』を埋め込まれた『人間』なのぉ♪」
「に、人間!?」

サヤカの言葉を聞き驚くシオン、そしてユウタ達。目の前にいる怪物がかつて自分達と同じ人間だったという事が信じられなかったのだ。

「そうよ♪」
「・・・・・・どうやって人間をこんな醜い怪物に変えたのかしら?」

シオンが再びサヤカを睨みつけて尋ねた。

「言ったでしょ?疑似魔封石を使ったって」
「疑似魔封石?」
「そんな物、聞いたこと無いぞ」
「そりゃそうよぅ、だってヘルデストロイヤー(私達)が開発したんだもの♪」
「お前達が開発した!?」

更に驚くユウタ達。

「疑似魔封石は本物の魔封石を作る技術を使ってこの世界のモンスターを封印して作った物なの、そしてそれを人間に使うことでその人間に契約者と同じ力を与える事が出来るのよ」
「契約者?」

何度も聞いた「契約者」という言葉に反応しユウタ達に問うシンディ。

「契約者っていうのはモンスターと契約して力を得た人間の事だよ、マサシから聞いてないのか?」

シンディは首を横に振った。

「まぁ・・・・仕方ないか・・・・実は、俺達神竜隊は全員契約者なんだ・・・・」
「そうだったの?」
「ああ、詳しい事は後で教えてやる。まずはコイツ等を倒してからだ!」

そう言ってユウタは怪物の方を向き直した。するとサヤカが彼らに驚くべき事を伝えた。

「それからもう1つ、疑似魔封石を使った人間は自分の意思を失ってしまうのよ♪」
「「「!!」」」

サヤカの言葉に驚く神竜隊の三人、いつも冷静なレイナですら驚きを隠せないでいる。

「意思を・・・・・失う?」
「ええ、多分これが疑似魔封石の代償なんじゃないかしらぁ?」

さらりと酷い事を言うサヤカにシオンは驚きから再び怒りの表情へと戻った。

「いい加減にしなさいよ・・・・・アンタ・・・・・」
「んん〜?」

ゆっくりとサヤカに近付くシオン。そしてそれを見たユウタとレイナはとっさに構えた。

「いい加減にしろって・・・・・言ってるのよー!!」

遂に怒りを爆発させたシオン、そしてシオンの周りの草や花が一瞬で灰になった。そして彼女が叫ぶの同時にシンディは何かに突き飛ばされたかのように3m先に飛ばされた、彼女の「気」で飛ばされたのだろう。ユウタとレイナは構えていた為、飛ばされずに済んだ。

「キャア!」
「クッ、シオン!」

レイナがシオンの名を叫ぶが、彼女には届いていない。

「ウフフフ、そんなに怒っちゃって、だいじょ〜ぶ?」
「うるさい!!」

シオンは怒りに包まれていた。彼女は完全に我を失っている、この戦い、どうなってしまうのだろうか?


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