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作品名:ラビリアンファンタジー 作者:ディオス

第30回   第二十九話 沼地の狩人 ブラスコル

ラビリアンに戻り、依頼を受けたマサシ達。彼らが受けたシェルメリン村の近くに住み着いている毒モンスターの「ブラスコル」を退治するためにシェルメリン村の近くの沼地「フォントニス」へ向かった。

「じゃあ、行くぞ!」

マサシ達は霧と湿った空気に包まれたフォントニスへ足を踏み入れた。彼らは不気味な沼地を歩いてブラスコルの群れを探している。

「しかし、改めて見ると本当に気味の悪い所だなぁ」

マサシは周りを見て言うと、コンタが真剣な視線でマサシを見て言った。

「マサシ、さっきから誰かが僕達を見ているような感じがするんだけど・・・」
「なんだって?」

コンタの言葉を聞き、マサシの鋭い視線でコンタを見た。周りのジゼル達も自分達の中で一番背の低いコンタの方を向き、彼を見下ろす。

「コンタ、本当なの?」
「間違いないよ、さっきから視線を感じる・・・」

ジゼルの質問に答えると、彼の後ろでシオンが五感を働かせた。

「確かに、視線を感じるわ」
「お前達が言うなら間違いないだろうな。数は分かるか?」

コンタとシオンが自分達の頭に生えている狐耳をピクピク動かして周りの音を聞き状況を探り始めた。

「マサシ、二人とも何してるの?」
「シィー・・・・」

話しかけてきたジゼルの口に指をあてるマサシ。

「んんっ?」

状況が理解できずジゼルは少し驚きの入った声を出した。

(静かに)
(・・・・・どうしたの?)

マサシはジゼルの口から指をどかし、小声で言った。しかし、まだ理解できず聞き返すジゼル。

(アイツ等はいま五感をフルに使って周りの状況を探ってるんだ、二人が集中できるように静かにしてるんだよ)
(そ、そうだった・・・・・)
(だから今は静かにしててくれ)
(うん、わかった)

ようやく状況が分かったジゼルは小声で答えた。そもそも五感とは動物や人が持っている五つの感覚の事。その五つの感覚には「視覚」「聴覚」「触覚」「味覚」「嗅覚」とある。コンタとシオンはその五つの感覚のうち「聴覚」と「嗅覚」を活発的に働かせているのだ。

「二人は何してるの?」

今度はシンディが尋ねてきた。彼女の隣にいたユウタがマサシと同じように小声で止めた。

(シィ、静かに・・・)
「・・・・?」

訳も分からず、黙って二人を見るシンディ。二人が調べ始めてから数十秒後、コンタとシオンはお互いを見て頷くと、二人はマサシの方を見た。

「わかったよ」
「そうか。で、状況は?」
「数は8、動く時の音や空気の流れからして、まず人間じゃないわね・・・・・」
「うん、しかも同じ音がしたから、全部同じ生き物だと思う・・・・」
「同じ生き物・・・・・全部同じ種類の生き物って事か?」
「ええ、あの音だと多分奴等は虫ね。「ブラスコル」かもしれない」
「ブラスコル!?」

シオンが想像した正体の名前を聞き、ジゼルは声を上げた。

「静かに、大声を出すとアイツ等が何かして来るかもしれないでしょ・・・?」
「ゴ、ゴメン・・・・」

シオンに注意されて小声で謝るシオン。

「それに、これは私の想像だから本当にブラスコルだとは限らないわ・・・」
「ああ、とにかく、もう少し様子を見よう。それと、奴等がいつ襲って来ても対処できるように円陣を組むぞ・・・」
「「「「了解・・・」」」」

ジゼルを除く神竜隊のメンバーは隊長のマサシの指示を聞き、少し小さな声で返事をする。ジゼルは入ったばかりの為、まだ慣れていないのだろう。気配を感じ取ってからしばらく歩くと、気配は更に多くなった。

「数が増えたな・・・」
「うん、しかも奥に行くと臭いが酷くなってきた」
「もう鼻は大丈夫なのか?」
「ええ、もう慣れたわ」

だいぶ鼻が沼地に慣れてきたコンタとシオン。しかし、鼻が慣れても状況は変わらない、マサシ達は沼地の中心で正体不明のモンスターに囲まれている、はっきり言って危険だ。すると、ジゼルが何かを見つけてマサシに声をかけた。

「マサシ、あそこ」
「ん?」

マサシがジゼルの指差す方向を見ると、茂みの中から黄色い点が四つ、こっちを見ている。

「何かな、あれ?」
「・・・・・・・ありゃあ、目だな」
「へぇ〜、目なんだ・・・・・」

黄色い点を目だと知ってしばらくジゼル達が黙っていると。

「「「目ぇー!!?」」」

ジゼル達が大声を出した瞬間、茂みの中から黒い物体が飛び出した。黒い甲殻で包まれた丸い体に付いている四つの黄色い目、体には鋏(ハサミ)が付いており、さらに六本の脚、体から生えた尻尾、そしてその尻尾の先に付いている針。想像するならサソリだ。

「何なんだ、コイツは?」
「コイツがブラスコルよ!」

マサシの後ろでシンディが黒いサソリのようなモンスターの正体の名を叫ぶ。そう、コイツこそが今回の依頼の討伐ターゲットのブラスコルだ!

「コイツ1匹だけかな?」

ジゼルが周りを見るが目の前にいる1匹以外に姿は見えない。

「いや、他にも隠れてるだろう。まず1匹が戦って、敵を弱らせた所を全員で襲うって戦法だろう、賢い奴等だよ」

マサシが敵の行動パターンを想像していると、周りの茂みや岩の陰からブラスコルが一斉に飛び出した。数が15匹、村人の目撃数も15匹、どうやら全部出てきたようだ。

「・・・・・・・・」
「それほど賢くなかったみたいだね・・・・」
「うるさい・・・・」

予想がはずれ、マサシに追い討ちをかけるような一言をコンタが口にする。

「それ位にしておけ」

ユウタ言われてマサシとコンタは周りを見た、15匹のブラスコルはマサシ達を取り囲んでいた。

「完全に囲まれてるな・・・」
「どうするマサシ?指示を頼む・・・」

レイナが隊長のマサシの指示を待つ。

「よし、俺が正面をやる!ユウタとコンタは右!シオンとレイナは左だ!」
「「「「了解!」」」」
「ジゼル、シンディ」
「「は、はいっ!」」

マサシの強い意志のこもった声を聞き二人は慌てて返事をする。

「お前達はしんがりを頼む!」
「わ、わかった!」
「まかせて!」
「よし、行くぞ!!」

そう言ってマサシ達は一斉にブラスコルの群れに向かって走って行った。マサシは正面にいる4匹のブラスコルに向かって走りながらP90を取り、トリガーを引きながら間合いを詰めていく。

「ブギャ!!」
「ビギュア!!」

2匹のブラスコルはP90の弾丸をくらい鳴き声を上げながら動かなくなった。すると、残りの2匹は仲間がやられたことで怒り出したのか同時にマサシに向かって飛び掛かり、尻尾の毒針をマサシに向ける。ブラスコルはマサシの右と左から同時に襲い掛かってきた。

「フン、甘いぜ!」

そう言うと、マサシはP90で右のブラスコルを撃ち落し、敵のいない右へ跳び、左のブラスコルから距離を取ると腰に納めてある小さなナイフ取り、ブラスコルに向かって投げた。ナイフはブラスコルの目元に命中し、跳んでいたブラスコルはそのまま地面に落ちて動かなくなった。一方、ユウタとコンタは右にいる5匹のブラスコルを相手をしていた。

「コンタ、援護してくれ!」
「オッケー、任せて!」

ユウタはコンタに援護を頼みブラスコルに向かって走り出した。コンタはファイブセブンと二丁抜いてブラスコルに向かってトリガーを引く。ファイブセブンの銃口から弾が吐き出され、その弾はユウタの右にいるブラスコルに命中し、ブラスコルは動きを停止させた。続けてコンタはユウタの左にいるブラスコルを狙い発砲、ブラスコルに全弾が命中し、左のブラスコルは息絶えた。

「ブギャアアア!!」

ユウタの斜め右にいるブラスコルがユウタに向かって走り出し、毒針の付いた尻尾で襲い掛かる。しかし、ユウタは慌てず、腰からチャクラムを取りそれを指で回し始めた、そしてそれをブラスコルの尻尾に向かって投げる、チャクラムは尻尾を切断し、毒針の付いている部分が地面に落ちた。

「ギギャギーー!!」

痛みに鳴き声を上げながら動きを止めたブラスコル。ユウタは左手で腰に納めてあるサバイバルナイフを取り、ナイフをブラスコルの額に刺し込んだ。ブラスコルは断末魔を上げ、そのまま息絶えた。すると、残りの2匹がユウタに鋭く光った鋏を向けて襲い掛かろうとする、だが、ユウタは余裕の表情をしていた、ユウタの後ろからコンタが姿を現し、ファイブセブンのトリガーを連続で引いた。

「ギャギャギャ!!」
「ギギギッ!!」

弾は全て命中し2匹のブラスコルは同時に倒れた。ユウタとコンタの方も一瞬で片付いた。

「行くよ!シオン」
「分かっている・・・」

シオンとレイナは左にいる3匹のブラスコルを相手していた。シオンは得意のナイフ戦術でブラスコルに戦いを挑んでいる。両手の指で小さな投げナイフを3本ずつ持ち、自分の前にいる3匹のブラスコルの中、右と左にいるブラスコルにナイフを投げつけるとナイフは3本ずつブラスコル達に命中した。残りの1匹がシオンに襲い掛かろうとした次の瞬間、ブラスコルの体に無数の弾傷が生まれた。なんと、レイナが3mほどの高さにジャンプし、SAAを撃っていたのだ。3匹のブラスコルはなにも出来ずに死に絶えた。

「シンディ、左をお願い!」
「分かったわ、こっちは任せて!」

最後にしんがりを任されたジゼルとシンディは残り3匹のブラスコルと戦いを始めていた。ジゼルが右のブラスコルにミカエルで攻撃するとブラスコルは鋏でジゼルの攻撃を防ごうとした、だが、アストラル超合金で出来たミカエルはブラスコルの鋏に当たった瞬間、鋏に罅(ひび)を入れた。ブラスコルは空いているもう片方の鋏で攻撃してきた。ジゼルも空いているほうのミカエルで攻撃を防いだ、ブラスコルの鋏はミカエルを挟んで壊そうとしたが、あまりの硬さに逆に鋏がかけてしまった。

「残念だけど、あたしのミカエルはそう簡単には壊れないわよ!」
「ギギャーーー!」

ジゼルの挑発を理解したのか、ブラスコルは頭に血が上り、尻尾で攻撃してきた。ジゼルは毒針が身体に触れる直前に後ろに跳び、ミカエルを右手のミカエルを回し、勢いをつけながらブラスコルの側面にまわり込むと、超合金で出来たトンファーをブラスコルの体に叩き付けた。すると甲殻は罅割れ、ブラスコルは大ダメージを受けてその場に倒れ動かなくなった。

「よし、次!」

ジゼルが残った2匹の方を向くと、残りのブラスコルは黒焦げになって死んでいた。そしてその2匹の間には剣を抜いたシンディが立っていた。

「ふう、『フレイムブレード』で黒焦げにしてやったわ♪」
「あらら、最後の1匹もシンディに倒されちゃったか」

ジゼルは笑いながらシンディの方を見て言った。ちなみに「フレイムブレード」はシンディの魔法剣の一つでユニフォリアと戦った時に使った「アイスブレード」の正反対の炎属性の剣である。

「意外とあっけなかったな・・・・これで、全部か?」
「村長は15匹って言ってから、間違いないと思うけど・・・・・」

戦いが終わり、周りを確認するマサシ達。

「もしかしたら、まだ奥のほうにいるかもしれない、二手に分かれてもう少し探してみよう」

マサシ達はそう言って奥のほうへ二手に分かれて探しに向かった。





数十分後、マサシ達は合流し、互いに得た情報を話し合った。

「ユウタ、そっちはどうだった?」

マサシはユウタ、シオン、レイナ、シンディのチームが掴んだ情報を聞いた。

「いや、こっちにはブラスコルはいなかったしこれと言って目立ったものは無かった」
「村長が言ってたポイズンリザードやデスレシアがいたくらいよ」
「そうか、こっちもだよ」

マサシ、ジゼル、コンタのチームもなにも情報を得ることはできなかったようだ。

「それじゃあ、討伐も済んだことだし、村に戻ろう」

ジゼルが村へ戻ることを提案し、みんなも賛成した。そんな時、後ろのほうからガサガサと草が揺れる音がコンタの耳に入った。

「ん?」

コンタが振り返ると、なんと、彼の目にはさっきの戦闘で倒されたはずのブラスコルがいたのだ。

「ッ!みんな!」

コンタの声を聞きマサシ達が振り返ると、彼らの目に濃い黄色の血を体中に浴びているブラスコルが飛び込んできた。

「コイツは?」
「恐らくさっきの生き残りだろう・・・」

マサシがブラスコルの傷から、さっきの戦いの生き残りと判断した直後、ブラスコルが毒針をマサシ達のほうへ向けた。

「何をする気だ?」

ユウタがブラスコルの意味不明の行動に首を傾げていると、次の瞬間、尻尾についていた毒針がもの凄い勢いで発射された。

「なに!?」
「は、針が飛んだ!」

そしてその毒針はジゼルに向かっていた。突然の事なのでジゼルは回避行動を取れなかった。

「あっ!」
「ジゼル!!」

当たる瞬間マサシがジゼルに飛びつき、毒針はジゼルに当たることなく木に刺さった。

「マサシ!ジゼル!」
「大丈夫か!?」

コンタとユウタが二人の下へ駆け寄り、レイナはブラスコルに銃口を向け、トドメを誘うとしたがブラスコルはそのまま息絶えた。

「チッ・・・」

レイナは舌打ちをしSAAをしまい、マサシ達の下へ走った。

「二人とも、大丈夫!?」
「う、うん・・・・・あたしは大丈夫」

マサシのおかげで毒針を受けずに済んだジゼル。しかし、その隣でマサシがうつ伏せのまま動かない。

「マサシ?どうしたの?」
「うう・・・・」
「マサシ?大丈夫!?」

マサシの異変に気付いたジゼルはマサシ手を伸ばそうとした。すると、マサシの腕に何かに斬られたような跡がある。

「これって・・・・まさか!」

シオンがさっきブラスコルが放った毒針を見た。

「もしかして、あたしをかばった時に・・・・」
「ハハハ、そうみたいだ・・・・・」
「マサシ!」
「か、身体が痺れて動かない・・・・まさか、こんなに毒の回りが早いとはな・・・・」
「ゴメンね!あたしのせいで・・・・・ゴメンね・・・・・・」

ジゼルは自分のせいでマサシが毒を受けたことで責任を感じ涙声で何度も謝った。

「な、泣くなよ、この毒で死ぬ事は無いんだからさ。それに七星草だってあるんだ、すぐ治るよ」
「そうよジゼル、だから泣かないで。ね?」
「ぐすっ・・・・・うん・・・」

シンディに慰められようやく泣き止んだジゼル。

「シオン、七星草をくれ」
「分かった、ちょっと待って」

シオンがカバンから七星草を取ろうとした、その時、沼地の外から大きな爆発音が聞こえてきた。

「な、何だ!今の音は!?」
「爆発音だよね?」
「さっきの音、シェルメリン村の方からだよ!」
「まさか村で何かあったのか!?」

ユウタ達は爆発音が気にしていると、マサシが口を開けた。

「ユウタ、村へ行ってくれ」
「なんだって?」
「俺はしばらく動けそうに無い、お前達で村を見てきてくれないか?」
「バカを言うな、こんな危険な所にお前だけ置いていけるか!」

ユウタがマサシの身の気にして反対していると、ジゼルが立ち上がった。

「ユウタ、行って。マサシはあたしが見てるから」
「僕も残るよ」
「ジゼル、コンタ・・・・・」

二人がマサシに付いていると言いだし、ユウタはしばらく考え込んだ。

「わかった、マサシの事は頼んだぜ、二人とも」
「「うん!」」
「よし、三人とも!村へ戻るぞ、何か嫌な予感がする、急げ!!」

ユウタ、シオン、レイナ、シンディの四人は毒で倒れたマサシをジゼルとコンタに託し、急いでシェルメリン村に戻った。果たして、あの爆発音は何だったのだろうか!?


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