巨人を倒したのは良いものの、木から落ちた二人は大きなしりもちをついた。幸い二人には怪我はなかったのでよしという事になった。
「イタタタ・・・・」 「大丈夫か?」 「なんとかね・・・・それよりも、あなた何者?」 「俺か?俺はただの傭兵さ」 「ウソ、ただの傭兵がオークをあんなにあっさり倒せるはずないわ!」
少女はマサシが巨人を蹴り飛ばした時の力を見て確信していたのだ。この男は只者じゃないと。
「オークって、この馬鹿デカイ巨人の事か?」
マサシは転がっているオークの死体を指差して言った。
「ええ、最近この辺りで暴れまわっていたモンスターよ・・・って、そんな事はどうでもいいのよ!質問に答えて!」 (やっぱりあれは本物の魔物だったのか・・・でも契約意外で魔物を召喚することはできないはず)
マサシは考え事をしており少女の声に気付いていなかった。
「ちょっと、聞いてるの!?」 「ん?ああ、ゴメンゴメン・・・で、なんだっけ?」
少女は大きく溜め息をついてもう一度マサシに問いかけた。
「もう一度聞くわよ?貴方は何者?」 「だから、ただの傭兵だって」 「ただの傭兵がオークを蹴り飛ばすなんて出来るはずないわ」 「ああ、俺は契約者だからな」 「契約者?」 「魔物と契約して大きな力を得た人間の事だよ。知らないのか?」 「ええ、ユピローズではそんな人見たことないわ」 「ユピローズ?それって何処の国だ?」 「どこって、ここがその王国よ」 (王国?どういうことだ?今の時代にそんな王国なんてあるのか?) 「どうしたの?」 「・・・・・なあ、聞きたいことがあるんだけど」 「?」 「ここって・・・・・パリだよな?」 「パリ?何よそれ?」
マサシは少女の返答に耳を疑った。
「何って・・・・・ここはフランスのパリなんだろ?」 「何言ってるの?ここはユピローズ王国の町はずれなある林よ」 「・・・・・・・・」 (なんだって?・・・・・ここはパリじゃない?ていうか彼女はフランスという国を知らない、つまりここは地球じゃないって事なのか?)
ようやく自分が自分の世界とはちがう世界に来てしまったという事に気付いたマサシ。
「どういう事だ?さっきまではフランスのパリにいたのに、どうしてこんな事に・・・・・あっ!まさかあの緑の光が・・・?」 「ね、ねぇどうしたの?いきなり独り言なんか言い出して・・・」 「・・・・・・」
「地球?」 「そう、俺は地球っていう星のフランスっていう国のパリって街に居たんだよ」 「信じられないわ!私達の世界と全く違う世界があるなんて」 「俺だって信じたくねぇよ。自分の世界とは違う所に来ちまったなんて」
マサシは自分が何者なのかを少女に伝えた。がやはり信じてもらえないみたいだ。
(・・・・・でも、彼の使ってる武器、オークを一撃で倒すほどの威力があるだもの・・・・・まさかね) 「さてと・・・」
マサシは腰を上げた。
「どうかした?」 「もう行くよ」 「行くって何処へ?何処に何があるかわからないのに?」 「う・・・・それは・・・・」
確かにマサシはこの世界のことはなにも知らない。一人で行動するのはコンパス無しで砂漠を歩くも同じだ。
「・・・・・一緒に来る?」 「え?」 「この先にサンドリアっていう町があるの。あたし達傭兵はそこで依頼などを受けているの」 「傭兵?君、傭兵だったの?」 「あ、当たり前でしょ!私をなんだと思っていたの?」 「アイドルの女の子」 「アイドル?」 「ああ・・・いや、なんでもない。でもさっきは巨人に押されてたみたいだけど?」 「う・・・そ、それは・・・」
真実を言われて言い返せない少女。
「と、とにかく!町に行くなら案内してあげるけど?」 「・・・・・そうだな、ここにいても仕方ないし、よろしく頼むよ」 「ええ」 「そういえばまだ自己紹介してなかったな。俺は秋円マサシだ、マサシって呼んでくれ」 「しゅうえんまさし?変わった名前ね」 「ほっとけ!それより、君の名前は?」 「ああ、ゴメン。あたしはジゼル、ジゼル・アルフォントよ。よろしく」 「こちらこそ」
マサシとジゼルという少女は改めてお互いの名を知り握手を交わした。そして二人はサンドリアに向かって歩き出した。しばらく歩いてようやくサンドリアの入口に着いた。
「着いたわよ、ここがサンドリア」 「へぇ〜ここが・・・ん、あの城みたいな建物は?」
マサシは城らしい建物を指差した。
「みたいじゃなくてお城よ」 「城!?本物の?」 「当たり前でしょう。サンドリアは城下町なの、時々王家の警備隊が町の様子を見に来るのよ」 「へぇ〜、初めてだよ、本物の城を見たのは」 「・・・・・」
しばらく歩き、酒場らしい店の前で二人は止まった。
「これから酒場へ行って依頼完遂を報告しなくちゃ」 「酒場?どうして酒場なんだ?」 「酒場は色々な人が集まるの、勿論、傭兵もね」 「つまり、そこで色々な人から依頼を受けるってわけなのか?」 「そういうこと」 「俺もついていっていいか?ここの事、なにも知らないし」 「ええ、私も貴方のこと色々聞きたいし」
マサシとジゼルは酒場に入ろうとした。その時、一人の女性が近づいてきた。見たところ剣士のようだ。
「ジゼルー」 「あら、シンディ」
シンディという女剣士はジゼルの知り合いのようだ。年はマサシとジゼルより少し上に見える。
「お帰り。あら、その子は?」 「ああ・・・彼はマサシ。オークに襲われている所を助けてもらったの」 「襲われてる所?アンタが苦戦してたの?オーク相手に」 「うう、今回は調子が悪かったのよ〜」 「おい、俺の事忘れてねぇか?」 「あ、ゴメンゴメン、紹介するね、彼女はシンディ・カルタリオ。あたしと同じ傭兵をやっている魔法剣士よ」 「よろしく、ええっと・・・マサシだっけ?」 「ああ、よろしく。それより、魔法剣士って・・・」 「シンディは数少ない魔法剣士の一人なの。実力も一流よ、王家の護衛隊からスカウトされる位だもん」 「まぁ、私は自由気ままに生きる傭兵(こっち)方が好きなんだけどね」 「なるほど」
マサシはこの世界は自分の世界と差ほど変わりない。と思っているのだろう。
「それより、酒場に報告に行かなくていいのか?」 「あ、そうだった!」 「そういえば、町外れで暴れてたオークは倒せたの?」 「オークなら俺が倒したぜ」 「ちょ、ちょっと!」 「アンタが?ジゼルじゃないの?」
シンディは疑うかのようにジゼルの聞いた。
「う、うん・・・」
ジゼルは少し頬を赤くして頷いた。
「まさか助けられたっていうの本当だったなんて・・・で、どうやって倒したの、まさか素手で?」 「それが彼、見たこともない武器を使ってオークを倒したの」 「見たこともない武器?」 「これの事か?」
マサシは腰にバックからP90を取り出し二人に見せた。ジゼルとシンディは顔を近づけた。
「そう、これよ。何なのこれ?」 「P90、短機関銃だよ」 「たんきかんじゅう?」 「何それ?」 (短機関銃を知らないのか?もしかしてこの世界には銃のような物はないのか?) 「これは・・・説明するより使ったほうが早いか」 「「?」」
マサシはバックの奥の方からサイレンサーを取り出しP90に装備した。
「何それ?」 「これはサイレンサーっていう銃声をけす物だ」 「?」 「・・・・これでよしっと。え〜っと・・・・あの壷を見てみろ」
マサシはそう言いながら店に並べられている白い壷を指差した。
「あの壷がどうかした?」 「今からこれであの壷を壊す」 「壊すって、ここから?」 「そうだ」 「無理よ。ここからあの壷まで5mはあるのよ」 「見てればわかるって」
マサシはそう言ってP90を構え壷を狙った。狙いをさだめ、引き金を引いた。サイレンサーを装備していた為、音もビュンという鈍い音がしただけで周りの人には気付かれなかった。そしてマサシが指差した白い壷は大きな割れ音をたてて粉々になった。
「「!!」」 「な、なんだ!?」 「と、突然壷が割れやがった!」 「どうなってるの!?」
壷の近くにいた人達は何が起こったのか理解できず騒いでいた。
「・・・・・・」 「ね、ねぇ・・・どうなってるの?」
ジゼルは目を大きく開いてマサシに問いかけた。
「これは遠くにいる敵を攻撃する武器なんだ。この本体から小さな弾、つまり鉄の欠片を飛ばして敵にダメージを与えるんだ。弾は人の目では見えないくらいの速さで飛んでいくから避ける事は不可能に近い」
「それじゃあ、あの時オークを倒したのもその弾がオークに当たったからなの?」 「そういう事」 「じゃ、じゃあ・・・本当に別の世界から来たの、貴方?」 「だからそう言っただろ?信じてくれてなかったのか?」 「そりゃあ、突然別の世界から来た、なんて言われても信じられないから・・・」 「ま、それもそうだな」 「ね、ねぇ話が見えてこないんだけど、何の話してるのアンタ達?」
さっきまで驚いていたシンディがマサシとジゼルに聞いてきた。
「あ、ゴメン。実は・・・」
ジゼルが説明しようとした時、壷が置いてあった店の主人が出てきた。
「何の騒ぎだ?・・・・・ああ!最高級の壷が〜!!誰だ!うちの売り物を壊した奴は!!」 「ヤッベ!おいここから離れるぞ。話はその後だ!」
マサシはそう言いながら走り出し店から離れて行った。
「あ、ちょっと待ってよ〜」
マサシはユピローズ王国でこれからどうするつもりなのか、そして元の世界に帰れるのだろうか?
|
|