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作品名:ラビリアンファンタジー 作者:ディオス

第27回   第二十六話 地獄の破滅者(ヘルデストロイヤー) No2

「陛下!ダメです、敵の進撃を食い止められません!」
「弱音を吐くな!我が軍の戦力を出せるだけ出して迎え撃つのだ!それから、一番近くの街へ連絡し増援を出させろ!」
「ハ、ハイ!」

謁見の間、突然ロードグランに攻め込んできた謎の軍団を迎撃する為にゼルキアスの王が兵士達に命令を下している。

「くぅ・・・・一体何者なのだ、奴等は・・・・?」
「陛下、ひとまず安全な場所へ御移りを・・・・」

ゼルキアス王の身を心配し、大臣と思われる男がゼルキアス王に脱出を進める。

「馬鹿な事を言うな、我がゼルキアスはラビリアン最大の国家、何よりこの王都ロードグランの戦力はゼルキアス最大の戦力なのだ、負けるはずがない。何処の国の連中かは知らんが、我がゼルキアスに戦いを挑んだ事を後悔させてくれる!」





その頃、東門ではゴードンが部下を引き連れて制圧範囲を広げている。

「第4班と第5班は右から攻めろ!第6と第7は左だ!第1から第3は俺について来い!」

ゴードンは正確に指示を出し敵を次々に倒していく、彼の指揮能力はかなりの物だ。ゴードンが第1班から第3班を従え城の方へ攻めていく。彼らが通っている道は分かれ道もない一本道だ、左右は石の壁で出来ており、この状態で挟み撃ちに合うと逃げ場はない。すると、前から十数人のゼルキアス兵が現れ進路を塞いだ。

「ここから先は行かせん!構え!」

隊長らしき兵士の命令で他の兵士達が弓を構えた。

「フン、弓矢か。おい、アレを出せ」
「ハッ!」

ゴードンが後ろにいる兵士に「何か」を出すように指示をすると、兵士は無線機で何処かへ連絡をしている。すると、ゴードンの部隊とゼルキアスの部隊の間に、何かが石壁を壊して割り込んで来た。

「な、なんだ!?」
「ほう、意外と早いな」

ゼルキアス兵達が驚いていると、ゴードンはニヤリと笑いながら言った。どうやらヘルデストロイヤーの増援のようだ。石壁から姿を現したのは「イレイザー」だった。

イレイザー(HD-07イレイザー)
ヘルデストロイヤーの偵察装甲車。陸上自衛隊の87式偵察警戒車を改造した物で、主武装に20mm機関砲と大型マイクロ弾が装備されている。装甲はM1戦車よりも劣るが、機動力は最高速度120km/hにもなる。他にも暗視スコープ、赤外線センサーと敵の居場所を探る装置なども備わっている。地球ではRPG7などの対物火器で簡単に破壊されてしまうが、ラビリアンでは十分通用する兵器だ。

「な、なんだあれは!」
「て、鉄でできた怪物だ!」

イレイザーを見てゼルキアスの兵士達は驚いて逃げ出そうとしている。

「ひ、怯むな!放てー!」

隊長の命令で兵士達は驚きながらもイレイザーに向けて矢を放った。だが、鉄で作られた装甲に矢など効くはずがない、イレイザーは20mm機関砲の砲身をゼルキアス兵達に向け、砲身から大量の20mm弾は吐き出され、ゼルキアス兵達を蜂の巣にした。

「ぐわああ!」
「グフッ!」
「うわああ!」

兵士達の叫びが響き、十数人いたゼルキアスの兵士達はあっという間に全滅した。

「大人しく隠れていれば死なずに済んだものを・・・・・」
「ゴードン少将、第4、第5班から連絡がありました、敵兵殲滅完了との事です」
「第6、第7班の敵兵排除も完了したと連絡がありました」
「よし、俺達はこのまま進軍するぞ、続け!!」
「「「オオォォォォ!!」」」

ゴードンの号令で兵士達の士気も上昇し、彼らは進軍を再開した。その頃、南門ではリーズが自ら前線に出て敵を次々に薙ぎ払っている。彼女の速さにゼルキアスの兵士達はついて行けず、反撃する間もなく全員リーズの剣の餌食となっていく。

「弱すぎる・・・・もっと骨のある奴はいないのか?」

そう言って彼女は剣を鞘の収める。彼女の後ろには彼女の剣に斬られ、動かなくなったゼルキアス兵の死体が大量に倒れていた。そんな中、庶民達の家の屋根の上からゼルキアスの兵士が四人、弓でリーズを囲むように狙ってるた。兵士達が矢を放とうすると、彼らの後ろにタクティカルスーツを着た女兵士が突然姿を現した。ゼルキアス兵達は彼女達に気付くこともなく後頭部を拳銃で撃たれ、屋根から地面に落ち、四人は暗殺された。

「フッ、さすが『ステルス・ヴァルキリー』だな・・・・・姿を消し、背後から敵を仕留める、我が隠密部は優秀な奴ばかりだ」

ステルス・ヴァルキリー
リーズ直属の精鋭部隊。その特徴は全員が女性で、彼女達の着ているタクティカルスーツ全てに光学迷彩技術が施されている事にある。それゆえ、彼女達は暗殺やリースの護衛などを主な任務にとしている。

リーズが担当している南門のどんどん制圧範囲を広げている。西門ではサヤカが大暴れしていた。彼女の率いる大隊はほとんどが火炎放射器や焼夷弾などの炎が関係する兵器ばかりを扱っていた。

「いいわよぉ〜、みんな、どんどん燃やしちゃってぇ〜♪」

サヤカの楽しそうな表情なゼルキアスの兵士達を恐怖や絶望の淵へと追い込んで行く。進軍している彼女達を二人のゼルキアス兵が壊れた石壁の陰から覗いていた。彼らは体のいたるところに火傷を負っている。

(お、おい・・・・どうするんだよ、これから?)
(と、とりあえず、奴等がいなくなるまでの間、ここに隠れるんだ・・・・・奴等が離れたら本隊と合流を・・・・)
「ん?」

何処からか聞こえてくる小さな話し声をサヤカの狐耳がピクンっと聞き取った。彼女にはその話し声が何処から聞こえてくるのかがすぐに分かり、腰のバックパックから手榴弾を取り出し、安全ピンを抜き、声の聞こえたほうへ手榴弾を投げた。すると手榴弾は隠れていたゼルキアス兵の目の前に落ちた。

「ん、なんだこれ・・・・」

兵士が落ちてきたものを確認しようとした瞬間、手榴弾は爆発し二人のゼルキアス兵の命を奪った。

「うふふ、隠れても無駄よ、私の耳はどんな小さな話し声でも聞き逃さないわよ♪」

サヤカは爆発した場所を見ながら笑ってそう言った。悪魔が笑うように・・・・・・。そして、北門ではハヤテが直属の部下を連れた敵兵士を次々に倒している。彼の率いる部隊の隊員は全員が凄腕の忍者ばかりだった、音もなく敵の背後に忍び寄り、一瞬で命を奪う。ゼルキアスの兵士達はそんな彼らに恐怖していた。

「この辺りは片付いたな、次のエリアに向かうぞ!」
「御意・・・」

ハヤテは部下の忍者達と共に次の侵攻エリアに向かった。彼らの向かう先にはゼルキアスの兵士達が防衛拠点を囲むように守っている。

「隊長、東の防衛部隊はほぼ壊滅したとの事です・・・・」
「そう・・・・。私達はこの場所を死守するのよ、この先には城への入口があるのだから」
「ハッ!」

椅子に座りながら部下に指示を出している一人の女騎士。とても高貴な感じでジゼルと同じピンクのロングヘアーをしている。

「ネリネ隊長!図書館方面の防衛小隊が全滅しました!」
「なんですって!あそこの小隊は精鋭中の精鋭よ!」

隊長と呼ばれている女騎士はネリネと言う名前のようだ。小隊全滅の報告を聞き彼女は立ち上がった。

「あの小隊が全滅するなんて・・・・・敵は何者なの!?」
「そ、それが・・・・敵は既に姿を消しており、確認ができ・・・ぐわあっ!!」

突然、兵士が声を上げて倒れた。彼の後ろには、忍者刀を持ったハヤテの姿があった。

「なっ!き、貴様、何時からそこにいた!」

ネリネは気配を見せずに部下を殺したハヤテに驚くのと同時に剣を抜いた。周りにいた兵士も武器を構え、ハヤテを取り囲む。

「・・・・・・」
「まさか、図書館方面の防衛小隊をやったのもお前か?」
「・・・・・・」
「答えろ!」
「・・・・・フン、うるさい女だ」

ハヤテがそう言った瞬間、ハヤテを取り囲んでいるゼルキアス兵達の背後にハヤテの部下の忍者が一人ずつゼルキアス兵の背後に音もなく降り立った。

「な、なんだと!?」
「い、いつの間に!?」

兵士達が忍者達に気付き、振り返った時は既に遅かった。忍者達は背中の忍者刀を抜きゼルキアス兵達を背後から斬った。ハヤテを囲んでいたゼルキアス兵達は一瞬で全滅した。

「そ、そんな・・・・・」

ネリネは一瞬で部下達が殺された事に驚きを隠せないでいる。ハヤテがネリネに一歩ずつ近付いていくと、彼女は剣を構えハヤテに向かって走り出した。

「ハアァァァァァ!!」
「フン、真正面から斬りかかるとは、愚かな・・・・」

ハヤテはネリネの視界から消え、彼女の背後にまわり込み、剣を持っている腕を掴んだ。

「なっ!?」
「遅すぎる・・・・」
「は、離せ!!」

ハヤテが忍者刀を戻し、腰のクナイを取り、ネリネの喉に刃をつけると彼女は大人しくなった。

「クッ・・・・・殺せ」
「ほぉ、自ら死を選ぶか。しかし、敗者の分際で勝者に命令するとは、少し気に入らんな」

ハヤテはネリネを見た後、しばらく黙り込んだ。すると何かを思いついたのか、ニヤリと笑いながら再び口を開けた。

「よし、貴様には今から捕虜になってもらう」
「な、なにっ!?」
「貴様には何か利用価値がありそうだからな」
「ふ、ふざけるな!貴様等の捕虜になど誰がなるか!早く殺せ!!」
「本当にうるさい女だな、少し寝ていろ」

ハヤテは腰についている小袋から何かの粉を指でつまみ取り、彼女の鼻の前でそれを撒いた。

「い、一体なにを・・・・する・・・・・」

ネリネはその粉を吸った途端に眠りについてしまった。

「睡眠花粉だ、こんな微量でもまともに吸えば3時間は眠ったままだ。おい、この女を制圧した拠点へ連れて行け」
「御意・・・・」
「それから北門のエリアはほぼ制圧完了と本拠点に連絡しろ」
「わかりました・・・」

一人の忍者がネリネを抱え近くの拠点へ連れて行った。これで東西南北全ての門とエリアはヘルデストロイヤーに制圧されてしまった。





その頃、城の中庭では兵士達が迎撃の準備をしていた。神聖な城の中庭も、今では拠点の一つとなっている。

「おい、こっちにあった武器はどこだ?」
「ああ、そこにあった武器なら・・・・」

ゼルキアス兵達が武器や医療道具などの確認をしていると、空から何か大きな音が聞こえてきた。兵士達が上を見ると、無数のコブラが上空から兵士達を見下ろしていた。

「な、なんだあれは!」
「て、鉄の鳥だ!」

中庭にいた兵士達が驚きながら空を見上げていると、コブラの三砲身ガトリング砲から20mm弾が発射され、兵士達は20mmの鉄の雨を浴び、中庭は兵士達の血で染まった。

「フン、やはりコブラを使っては面白くないか・・・・」

無数のコブラの中に一機のブラックホークが飛んでおり、そこからゾークが顔を出していた。

ブラックホーク(UH-60 ブラックホーク)
シコルスキー・エアクラフト社製の中程度積載能力を持つ多目的または強襲用ヘリコプター。輸送や兵士を戦場は連れていく為などに使われている。自衛隊やアメリカ軍など、20ヶ国以上が採用している。民間型として武装を省略したS-70も販売されており、多目的ヘリの中ではとても性能がよい。またキャビン容積としては完全武装の歩兵1個分隊約10名が搭乗可能なスペースを要求されていた。

今回、ブラックホークに搭乗しているのはゾーク一人だけ。コブラが兵士達を一掃している間にブラックホークは中庭の広い所に着陸し、ゾークを降ろすと再び上昇した。

「さて、俺は王様に会いに行くとするか・・・」

ゾークはゆっくりと城の中へ歩いていった。そして、謁見の間ではゼルキアス王が玉座に座りながら下を向いて黙っている。

「陛下、やはり脱出をなさっては・・・?」
「その必要はない!我がゼルキアスが何処の馬の骨と分からぬ者達に負けるなど、あり得ないことだ!!」
「では、その馬の骨に殺されるのはどんな気分だろうな?」
「「!!」」

突然部屋の外から聞こえてきた声にゼルキアス王と大臣は驚き、入口の方を見た。そして入口が吹き飛び、煙の中からゾークが姿を現した。

「な、何者だ!」
「お初にお目にかかる、私はヘルデストロイヤー総帥、ゾーク」
「ヘルデストロイヤーだと?貴様等がわが王都に侵攻してきた者達か!」
「いかにも・・・この王都ロードグラン、いや・・・・この国、ゼルキアスは我等ヘルデストロイヤーがいただく」
「わ、我がゼルキアスをいただくだとぉ?ふざけたことを言うな!こやつを捕らえろ!!」

ゼルキアス王が近衛兵にゾークを捕まえるよう命令をだし、近衛兵達も剣を抜き、ゾークを囲んだ。

「たった六人で俺に勝てろと思ってるのか、馬鹿な奴等だ」

ゾークは腰に納めてある長剣と拳銃を抜いた。拳銃は大型の自動拳銃、デザートイーグルだ。

デザートイーグル
アメリカ合衆国のミネアポリスにあるM.R.Iリミテッド社が発案し、イスラエル・ミリタリー・インダストリーズ社(IMI)とマグナムリサーチ社が生産する大型拳銃。357マグナム版、.41マグナム版、.44マグナム版、などと様々な口径が存在し、自動式拳銃の中では世界最高の威力を持つ。

ゾークは剣と銃を構え、大きくジャンプした。その高さは8m近くあった、そして銃口を近衛兵に向けて引き金をひいた。デザートイーグルの大型の弾丸は近衛兵達の頭を撃ち抜き、近衛兵は全滅した。近衛兵達が倒れるのと同時にゾークは着地した。

「な、なんだと・・・・・」
「こ、近衛隊が・・・・・一瞬で・・・・」
「フフフフフ」
「お、おのれ!何をしている他の者はおらんのか!?」

ゼルキアス王が新たな兵士を呼んだ。しかし、いくら呼んでも兵士達は一人も来なかった。

「ど、どうなっている?」
「兵士達とは、アイツ等のことか?」

ゾークが入ってきた入口の方を指差すと、そこにはゼルキアスの兵士達が大勢倒れていた。どうやら謁見の間に来るまでの間にゾークが倒してきたのだろう。

「そ、そんな馬鹿な・・・・」
「さて、これでお前を守ってくれる兵士は誰もいなくなったな」

ゾークはそう言ってじわじわと間合いを詰めていく。

「う、うわあああああ!!」

大臣はゾークの恐ろしさに、とうとう謁見の間から逃げて行った。

「ま、まて!ワシを守らんか!」
「人望のない王様だな・・・・」
「ま、待ってくれ!命だけは・・・・・そ、そうだ!何かほしい物はあるか?ワシは国王だ、ほしい物があれば・・・・・」
「この国とお前の命だ・・・・」

ゾークはそう言って、ゼルキアス王の目の前まで近付き、剣を振り落とした。謁見の間にゼルキアス王の断末魔が響き渡った。ゼルキアスの王都、ロードグランはわずか一夜で制圧されてしまった。


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