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作品名:ラビリアンファンタジー 作者:ディオス

第26回   第二十五話 地獄の破滅者(ヘルデストロイヤー)

神竜隊がラビリアンに戻った日から、遡る(さかのぼる)こと二日、ユピローズの空を、人型の鉄の塊が一つ飛んでいた。それはレベル・5を発動したマサシに破れ、退却したUrs(ウルス)だった。

「チッ、損傷が酷いな・・・・・まさか、先遣隊を倒したのがライトシンフォニアの秋円だったとは・・・・・・」

Ursはマサシによって破壊された自分の装甲を見ながら独り言を言っている。

「仕方ない、拠点に戻って修理するか、そろそろ社長達が着く頃だろう・・・・・」

Ursは先遣隊が使っていた拠点へ向かって飛んで行った。





数分後、Ursはサンドリアから数キロ離れた所にある拠点に着いた。そこには数個のテントが張られており、装甲車が一台止まっている。Ursは装甲車のすぐ近くに降り、一番奥のテントに向かって歩いていく、すると、何処からか声が聞こえてきた。

「あら〜、どうしたのUrs、ボロボロじゃな〜い」
「ん?」

Ursが声に反応し振り返ると、そこには、あの狐耳の女性が立っていた。

「サヤカ・・・・」
「な〜にぃ、その反応?も、し、か、し、て・・・・・驚いたの?」
「バカを言うな・・・・」
「つれないわねぇ〜」

Ursがサヤカと呼ぶ女性、グレーのジーパンをに赤いジャケット、ジャケットにはヘルデストロイヤーのマークのワッペンが貼られている。そしてコンタやシオンと同じように狐の耳を生やし、銀色の長い髪に尻尾、どうやら彼女も二人と同じ妖狐の血を引いてるようだ。

「お前がいるという事は、もう社長達は来ているのか?予定より少し早いが・・・」
「ま〜ねぇ、色々事情があるのよぁ。それから、社長達はこの国にはいないわ、ゼルキアスっていう国にいるわよぉ」
「そうか・・・・・なら、そのゼルキアスとやら向かうとしよう」
「ちょっと待ちなさいよ〜、そんなんじゃロクに飛べないでしょ〜?こっちにヘリがあるから、それに乗りなさい」
「フン、余計な事を・・・・・」

Ursはブツブツ言いながらサヤカの後をついて行った。そして、待機してあった輸送ヘリに乗りユピロースの地を後にした。





輸送ヘリで移動すること数十分、Ursとサヤカを乗せたヘリは山を越え、大きな湖を越え、そして国境を越えて大きな平原へ着いた。なんとそこには信じられない光景があった。大平原を埋め尽くすほどの人間とテント、そして大量の戦車やヘリ、10tトラックも数十台止まっている。Ursはヘリの窓からその光景を目にしていた。

「流石だな、まさか本当に4個師団で来るとはな・・・」
「そりゃそうでしょ〜世界を敵に回すんだもの、これくらいの戦力はないと、ね♪」
「そうだな・・・・・だが、今の状況では、4個師団でも足りないかもな・・・・」
「ん〜?」

ヘリは平原の真ん中で着陸し、ヘリを降りたUrsとサヤカを兵士達が敬礼しながら迎えた。二人はそのまま一番奥になる大きなテントへ向かった。中に入ると、そこには西洋甲冑を着たあの社長と呼ばれていた男と黒髪の忍者、ボディビルダー風の大男、赤い髪の女騎士が大きな机を囲むように立っている、作戦会議中のようだ。

「今戻ったよ〜♪」
「サヤカ、会議中だぞ」
「分かってるわよ〜、相変わらずマジメねぇ、リーズちゃん♪」

サヤカは赤い髪の女性をリーズと呼んでいる、どうやらそれが彼女の名前らしい。

「二人とも、それ位にしろ」

サヤカの後ろでUrsが二人を止めるように言った。

「おい、Ursどうしたんだ、その傷は?」

Ursの身体を見てボディビルダーの大男が尋ねる。

「・・・・・・Urs、説明しろ」
「ハイ、社長・・・・」

Ursは西洋甲冑の男に言われ、細かく説明した。マサシのこと、2個小隊の全滅のこと、彼は全て打ち明けた。

「まさか、あの秋円マサシがこっちの世界に来ていたとはな・・・・」
「それなら、Ursがボロボロになるのも、先遣隊がやられちゃうのも当然ねぇ」
「・・・・・・」

「ボロボロにされた」というサヤカの言葉に言い返すことのできないUrs。

「いかがいたしますか?社長」
「・・・・・・」

リーズが西洋甲冑の男に今後の事を尋ねると、男は黙ったまま考え込むように俯いた。

「作戦を変更してユピローズに一気に進撃してはいかがでしょ?」
「いや、このまま作戦は続行する。変更はなしだ」
「しかし、ライトシンフォニア最強の傭兵部隊の一人がこちらの世界にいるのです。野放しにするのは危険かと・・・・」
「一人だからほっとけばいいのだ、たとえ最強の傭兵の一人と言っても所詮一人だ、いつでも始末できる。今は作戦の達成が優先だ」
「ハイ・・・」
「作戦を確認するぞ、この大平原の先にある街、「ロードグラン」の東西南北の入口に自然の四塔(フォースド・ガイア)は一人ずつ囲むように攻める。そして各入口の制圧に完了したら、各自、1個大隊を率いて一気に侵攻しろ」
「「「「ハッ」」」」

甲冑の男の命令にサヤカ、リーズ、大男、忍者は敬礼した。どうやら、この四人がヘルデストロイヤー四大幹部「自然の四塔」のようだ。そして甲冑の男が各幹部に指示を出し始める。

「ハヤテ、お前の部隊は北口の制圧を担当しろ」
「ハッ!」

彼は忍者をハヤテと呼び担当場所を伝える。

「ゴードンは東口の制圧に就け」
「ああ、まかせてくれ」

ボディビルダーの体格の男はゴードンと言う名のようだ。

「サヤカ、お前は西口だ」
「は〜い、まっかせてぇ♪」

サヤカは西口の制圧に就いた、そして。

「残ったリーズは南口に就け」
「おまかせください」

各自、自分の持ち場を知らされテントを出て行く。

「・・・・・・」
「じゃあね、ウ、ル、ス、ちゃん♪」
「クッ!」

サヤカはボロボロのUrsをバカにするような言い方をしてテントから出て行く、Ursもサヤカの背中を睨むように見た。もっとも、ロボットなので睨む事はできないが・・・・。

「Urs、お前がそこまでやられたという事は、奴はレベル・5だったのか?」
「ハイ、修理が完了しだい再度ユピローズへ向かい、今度こそ・・・・」
「慌てるな、奴と戦う機会はいずれ来る、今はこのゼルキアスを完全に制圧するのが優先だ」
「ハッ・・・」
「俺は自然の四塔が入口を制圧し終えたらヘリで城に潜入する、お前はここで待機していろ」
「ハイ・・・・・・ゾーク様」

Ursは社長と呼ばれている男をゾークと呼び、テントを後にした。





数分後、自然の四塔は各入口の門に到着し、無線機でゾークに連絡を取っていた。

「こちらサヤカ、いつでもど〜ぞぉ♪」
「こちらハヤテ、準備完了」
「こちらゴードン、同じく完了だ」
「こちらリーズ、同じく・・・」

無線機で四人の合図を聞いたゾーク。しばらく黙りこみ、そして、ゆっくりと低い声で命令を下した。

「・・・・・・作戦開始」

そして彼は無線を切るのだった。

「フフフ♪作戦開始ね。じゃあ、ちょっと暴れてこよ〜っと!」

サヤカはご機嫌でロードグランの入口に歩いていく。そんなサヤカに入口に立つ二人の警備兵が気付き、彼女に声をかけた。

「おい、そこの君、何処から着たんだ?」
「ここは許可証がない通れないんだけどね」
「許可証?・・・・・フフフ、許可証は無いけどぉ・・・・これならあるわよ♪」

サヤカは笑いながらそう言って右手を近付いてきた警備兵の胸に当てた。すると彼女の右手がみるみる赤くなっていく。そして次の瞬間、サヤカの手から人の頭ほどの大きさの火球が吐き出された。そしてその火球は警備兵に命中、警備兵の一人は何が起こったのかを理解する事も出来ないまま、焼け焦げて息を引き取った。

「!!」
「フフフ・・・」

サヤカは残されたもう一人の警備兵に右手を向け、再び火球を放った。

「う、うわあああああああ!!」

西門から大きな爆発音と警備兵の断末魔が響きわたる。その頃、北門では爆発音を聞きに警備兵達が西門の方を向いた。

「おい、なんだ今の爆発音は?」
「西門の方からだ、何かあったみたいだ、こちらの兵力を少し送ろう!」

一人の警備兵が門の隣の小さなドアから中へ入ろうとした。だがその時、後ろから何かが倒れる音がした。警備兵が振り返ると、そこには背中に無数の手裏剣が刺さり、息絶えた仲間の姿があった。

「お、おい!どうした、何があ・・・・」

「何があった」と言おうとした瞬間、警備兵の後ろにハヤテが音も無く降り立った。そして警備兵の口を塞ぎクナイで喉笛を切り裂いた。一分も立たないうちに警備兵の始末が終わった。

「フン、他愛も無い・・・・」

その頃、東門ではゴードンが暴れていた。

「な、なんだ・・・・お前は・・・」
「なんだとは失礼だな、人間だぜ」

ゴードンの右手には既に息絶えた警備兵の頭が鷲掴みにされていた。しかもその警備兵の体のいたるところが凍っている。

「ば、化け物め!」

もう一人の警備兵が持っている槍を構え、ゴードンに向けって走っていく、だが、槍はゴードンの身体に刺さる前にカチカチの凍り付いて身体に刺さった瞬間、粉々に砕けてしまった。

「な、何なんだ、お前の身体は・・・・やはり化け物か!」
「違うと、言っているだろう」

そう言ってゴードンは警備兵の下まで走って行き、警備兵の頭を鷲掴み、そして掴んだ場所からみるみる凍り付いていく。

「あ、ああ!ど・・・どうなって・・・・・」

警備兵の頭は一瞬で凍りついた。そしてゴードンが手を離すと凍りついた頭も粉々に砕けた。そして南門ではリーズが愛剣で警備兵を相手にしていた。だが、もう戦いは終わっていたのだ、彼女の周りには警備兵の屍が転がっていた。

「まったく、弱すぎる・・・・・もっとマシな奴は居ないのか?」

リーズの剣は敵の血で刀身が赤く染まっていた。彼女の髪のように・・・・。各門の制圧が終わり、ゾークはヘリから無線機でそれを確認した。

「制圧したか、よし、各自1個大隊を率いて制圧していけ!」

ゾークはそう言って無線のスイッチを切った。

「さて、そろそろ俺も行くとするか、城へ向かえ!」
「ハッ!」

ゾークを乗せたヘリはロードグランの城へ向かって飛んで行った。しかし、ゾークの、ヘルデストロイヤーの制圧力はこんなものではなかった。


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