次元移動装置で急いでラビリアンへ向かったマサシ達。ヘルデストロイヤーの侵攻を食い止める為にも一秒も早くラビリアンへ戻らなくてはならなかった。ゲートを潜り、マサシ達はコンタが最初にラビリアンに来た場所へ足をおろした。
「着いたか・・・」 「うん、数時間しかあっちの世界にいなかったのに、すごく懐かしく感じる・・・・」
ゲートを潜る終え、再びラビリアンの景色を見たマサシとジゼル、それに続きコンタ達も潜り終えた。
「ふ〜着いた着いた」 「ここがラビリアンか・・・・」 「なんだかテレビゲームの世界みたいね」 「そうか・・・・?」
ラビリアンに戻って来たコンタは大きく息を吸った。ユウタ、シオン、レイナは初めてラビリアンに来たため少し驚いている。
「さて、急いで王宮へ行こう」 「王宮?」
マサシが口にした王宮という言葉にコンタは首を傾げた。
「ああ、急いで陛下にこの事を伝えないとな。ちなみに俺がコンタと再会した場所がその王宮なんだ」 「そ、そうなのか・・・・」 「マサシ、行こう!」 「OK!」
マサシとジゼルは急いで王宮へ向かって走り出し、コンタ達もその後について行くように走り出した。
王宮の城門前まで着いたマサシ達、急いでハイドリア王にヘルデストロイヤーの事を伝えなくてはならなかった。門を潜ろうとすると門番が二人、彼らの前に立ちはだかった。
「止まれ!」 「お前達、何者だ!」 「どいてくれ、ハイドリア陛下に伝えなくてはならない事があるんだ!」 「陛下に?どこの者かは知らんが、お前達のような庶民が陛下にお会いするなど認められん!さっさと立ち去れ!」 「待って、あたし達は・・・・」
ジゼルが門番と話をしようとしたその時、門番達の後ろから若い女の子の声が聞こえてきた。
「やめろ!」
声を聞き、門番が振り返ると、そこに居たのは護衛隊長のセリーナだった。
「セリーナ隊長!」 「その者達を通せ」 「し、しかし・・・・」 「いいのだ、彼らは私の知り合いだ」 「「ハッ!」」
門番達は敬礼をしマサシ達の前からどいて持ち場に戻った。
「助かったぜ、セリーナ隊長」
マサシがセリーナに礼を言うと彼女はゆっくり近付いてきた。
「お前達、どうしてここにいるのだ?元の世界に戻ったはずでは・・・」 「ああ、一度戻った。でも厄介な事になってな・・・・・・」 「厄介な事?」 「はい、ハイドリア陛下に合わせていただけませんか?」
マサシの説明とジゼルの頼みを聞き、セリーナは「何かあった」と思ったのだろう、目がとても鋭かった。
「わかった、陛下は今、謁見の間にいらっしゃる、着いてこい」 「ああ」
セリーナは王宮内へ走って行き、マサシ達もセリーナの後を走って着いて行った。そして彼らは謁見の間に着いた。
「陛下、マサシ達が戻ってきました!」 「なに?」
セリーナの後ろには神竜隊が横一列に並んで立っていた。
「おお、マサシにコンタ、戻ったか!」 「はい」 「そなた達が戻ったということは、ヘルデストロイヤーの連中が動き出したという事だな?」 「ええ・・・・・・・」
マサシ達はハイドリアの言葉を聞き、黙り込んだ。
「どうしたのだ?顔色が優れんな」 「陛下、実はお伝えしなくてはならない事があります」 「・・・・・・なんだ?」
マサシはヘルデストロイヤーが二日前にラビリアンに来たいたこと、彼らが四個師団という大軍隊で来ている事など、これまでのことを全てハイドリアに伝えた。
「なんということだ・・・・・」 「申し訳ありません・・・・・」 「いや、そなた達の責任ではない・・・・・」
ハイドリアは、静かにエミリアと同じ事を口にした。
「しかし、もしそなた達の言っている事が正しかったら少し変だな」
ハイドリアの言葉を聞きマサシ達は顔を上げた。
「陛下、それはどういう事ですか?」
マサシがハイドリアに問い返した。
「そなた達が一度ラビリアンから去った後、我々は国の警備を強化したのだが、大きな事件は一度も起きておらん」 「私も護衛隊と王宮兵でサンドリアの周辺を調べたが、怪しい奴は一人も見つからなかった」
マサシ達はサンドリア、いやユピローズが何の被害を受けていないことを聞き驚いた。
「どういうことだ?二日もたっているのに奴等はユピローズに手をだしていない?」 「確かに変だな・・・」
マサシとユウタが不審に思っているとシオンが自分の考えを口にした。
「もしかして、マサシとコンタが居たからじゃない?」 「俺と・・・」 「僕が・・・?」 「うん、アンタ達はこっちの世界で唯一アイツ等のことを知っている存在なんでしょ、奴等もまだ二人がこっちの世界に残っていると思って手が出せなかったんじゃない?」 「いや、それは無いだろう・・・」
シオンの考えにユウタはあり得ないと告げる。
「どうして?」 「考えてみろ、奴等は二日前に四個師団でこっちに来てるんだぜ、いくら二人が強くても、たったの二人だ、奴等が全部隊で攻撃すれば倒せるはずだ」 「あ、そっか・・・・」
ユウタの考えにシオンは納得した。
「つまり、奴等がこの国に手を出さなかった理由は別にある?」
レイナがその理由を考えていると、謁見の間に一人の兵士が駆け込んできた。
「陛下!陛下!!」 「どうした?騒々しい」
慌てて部屋に入ってきた兵士にハイドリアは問い掛ける。
「い、一大事です!!」 「だからどうしたんだ?落ち着けて話してみろ」
ハイドリアは座ったまま冷静に兵士を落ち着かせると、兵士がゆっくり話し始めた。
「た、たった今、ゼルキアスから通達がありました・・・」
兵士がハイドリアに話をしていると、マサシがジゼルに小声で話しかけた。
(ジゼル、ゼルキアスってなんだ?) (ゼルキアスはラビリアンで最も大きな国よ、人口がとても多くて領土も大きいの。でもユピローズとはここ数年間なにもなかったのに何で突然通達なんか・・・・)
二人が話を終えて再び兵士の方を向くと、兵士が驚きの言葉を口にした。
「ゼ、ゼルキアスの王都、ロードグランが・・・・・落とされました!」 「な、なんだと!?」
さっきまで冷静に話を聞いていたハイドロアは大声を出して立ち上がった。
「ロ、ロードグランが落とされるなんて!」 「う、うそ・・・・・」
兵士の言葉を聞き、セリーナとジゼルも驚いた。
「ジゼル、どうしたんだ?」
マサシが驚くジゼルに問い掛ける。
「ゼルキアスは軍事力も高いの、その中でも王都ロードグランは一番戦力が高い街、そのロードグランが落とされるなんて・・・・・信じられない事よ」 「そんな大国の街を攻める国があるのか?」 「ううん、ゼルキアスに戦争を仕掛ける国なんてこの世界には存在しないわ・・・・」
しかし、ゼルキアスの王都が落とされたのは事実だった。
「この世界?・・・・・・まさか!」
マサシがジゼルの「この世界」という言葉が引っかかり、最悪の答えが頭に浮かぶと、慌てて兵士に問い掛けた。
「おい、アンタ!その王都を落とした奴等はどんな連中なんだ!?」 「え?た、確か通達には・・・・・『地獄の破滅者』と名乗ったと書かれている」 「なっ!!」 「「「「!!」」」」
マサシの驚きに続いて、ジゼルを除く神竜隊のメンバー全員が驚きの顔を見せた。
「マサシ、その『地獄の破滅者』って・・・・」
ジゼルがマサシに少し脅えるかのように地獄の破滅者のことを聞いてきた。彼女も何かいやな予感がするのだろう。
「・・・・地獄の破滅者・・・・・ヘルデストロイヤーのもう一つの呼び名だ」 「!!」
マサシの答えにジゼルは両手で口を隠すように驚く。
「ヘ、ヘルデストロイヤー・・・」 「ヘルデストロイヤーというのは、確かそなた達の世界の・・・・」
ジゼルに続き、ハイドリアも驚いてマサシ達の方を向いた。
「・・・・・なるほど、ようやく分かったぜ、奴等がユピローズを攻めなかった本当の理由が」 「え?」
マサシがヘルデストロイヤーがユピローズを攻めなかった理由に気付き、ジゼルは首を傾げた。
「ジゼル、お前さっきゼルキアスはラビリアンで最も大きな国だって言ったよな?」 「う、うん・・・・」 「領土が大きく、軍事力も高い、そんな国に攻め込む国は存在しない・・・・」 「うん・・・・」 「例えば、いままで一度も戦争に負けた事の無い国を攻め落とした連中が現れたら、他の国の人達はその連中をどう思う?」 「え?え〜っと・・・・」 「いままで攻め落とされなかった国を落としたその連中にその国よりも強い、そんな連中には逆らえない・・・・」 「・・・・・・あっ!!」
ジゼルはマサシの言っている言葉の意味を考え、その答えに気付いた。
「その国よりも領土や戦力が劣る国はその連中に従わうしかない・・・・簡単に他の国の領土を手に入れることができる!」 「そうだ、さらに言えば・・・・・他の国の人達はその連中の力に恐れを出し、その国の戦力や士気にも影響を出す」 「戦いも楽になる・・・・」
マサシとジゼルの会話を聞き、謁見の間にいる兵士達はオドオドしている。
「静まれ!」
ハイドリアが大声で兵士達はハイドリアのほうを向いた。
「確かにヘルデストロイヤーはゼルキアスを攻め落すほどの戦力を持っている。状況は悪い、だが我々にはこの者達がついている!」
ハイドリアはそう言ってマサシ達のほうを向いた。
「マサシよ、このユピローズの為、いやこのラビリアンの為に力を貸してくれ」 「はい、俺達はその為に戻ってきたのですから!」 「そうですよ、僕達は必ずこの世界を守って見せます!」 「そして、それは俺達にできる事であり」 「私達の宿命でもある!」 「私達はヘルデストロイヤーを倒します・・・・」
マサシ、コンタ、ユウタ、シオン、レイナはそれぞれの思いを口にし、必ずラビリアンを救うと宣言した。
「マサシ、みんな・・・・・・ありがとう」
そんな彼らを見て感動し、改めて礼を言うジゼル。
「礼を言う。今日は戻ってきたばかりで疲れが溜まっておるはずだ、今後の事は明日に話すとしよう。今日は休むといい」 「はい」 「そなた達がよければ部屋を用意させるが?」 「そうですか、ではお言葉に甘えて」 「うむ、すぐに用意させよう」
ハイドリアの話が終わり、謁見の間を出たマサシ達。ユウタ達はハイドリアが用意させた部屋に向かい、マサシはジゼルを城門まで送ることにした。外はすっかり暗くなっている。
「これから、どうなるのかな?」 「まだ分からない。でも、近いうちに大きな戦いが起きるはずだ」 「・・・・・・」 「ジゼル、大丈夫だ。俺達でこの世界を守り抜こう」 「・・・・・うん、そうだね」
少し元気が出たジゼルを見ながら話していると、マサシは城門の前に着いていた事に気付く。
「それじゃあ、また明日な」 「うん、おやすみ」 「ベルおばさんによろしくな」 「その前に、黙って外出した事で怒られると思うけど」 「ははは」 「フフフ」 「じゃあ、おやすみ」 「おやすみ」
ジゼルはニコっと笑い施設へ戻って行った。マサシも彼女の姿が見えなくなるまでジゼルを見ていた。
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