隠し部屋に入り、奥へと進んだ神竜隊。そこで彼らを待っていたのはヘルデストロイヤー本社の警備を勤めるセキュリティーロボ「Gbs(ガバス)」だった。そして、今まさにそのGbsとの戦いが始まろうとしていた。
「お前達をこのまま見過ごす事はできん、悪いが死んでもらうぞ」 「悪いが俺達はこんな所で死ぬ気はない、ここでお前を倒す!」
Gbsの死刑宣告を聞いてマサシは大きな声で言い返した、するとそれを聞いていた他のメンバー達の士気も高くなる。
「ああ、俺達をなめてもらっちゃ困るぜ、Gbsさんよ!」 「僕達は神竜隊、あなた達には絶対負けません!」
ユウタとコンタは自分達の思いをGbsにぶつけ武器を抜く、シオン、レイナもそれに続いた。
「アンタみたいに自分の力を過信するような奴は一回痛い目にあわせてあげる!」 「私達に戦いを挑んだ事を後悔させてやろう・・・」
マサシの隣でジゼルがミカエルを構えるとマサシがまた小声で話しかけてきた。
(ジゼル・・・) (なに?) (俺はアイツに正面から攻撃を仕掛ける、お前は俺の後ろから続いて、奴のスキをみて攻撃してくれ) (え、それって囮になるって事?) (そうだ) (危険よ!アイツUrs(ウルス)の兄弟なんでしょ?そんな奴に正面から攻撃を仕掛けるなんて自殺行為よ!) (大丈夫だ、俺を信じろ) (信じろって言われても・・・) (忘れてのか?俺は契約者、こんな奴に殺される気はない) (でも・・・・・)
マサシの根拠のない自信に戸惑い続けるジゼル。そんな時ユウタと目が合い、彼はジゼルの顔を見て彼女が不安を抱いている事を悟ったのだろう、真剣な眼差しでゆっくり頷いた、ユウタは「マサシを信じろ」とジゼルに視線で伝えていた。そんなユウタを見たジゼルは・・・・・。
(・・・・・わかった、そのかわり死んだりしたら許さないからね) (任せとけ!)
二人の話が終わり再びGbsの方を見るマサシとジゼル。Gbsも再び自分のほうを見た二人を見て低い声を出した。
「作戦タイムは終わりか?」 「何のことかな?」
Gbsの質問を聞いてとぼけるマサシ。
「まぁいい、どんな作戦であろうと、私には勝てん」
Gbsは勝利を宣言するようにマサシ達に言葉をぶつけた、その直後Gbsの胸の装甲がゆっくり開きだした。完全に装甲が開くと、中から大きなバルカン砲が二つ姿を現し銃身が回転し始めた。
「ッ!散れ!!」
マサシはとっさに「危険」だと判断、大声で叫びジゼルの手を取って高くジャンプし、他のメンバー達もマサシの声を聞いて瞬時にそれぞれ違う方向へ跳ぶ、その直後マサシ達の立っていた場所にバルカン砲の弾が大量に放たれた。
「危なかったぜ、もう少しで蜂の巣だった・・・ジゼル、大丈夫か?」 「だ、大丈夫・・・・でもあれじゃあ正面から攻撃できないよ?」 「ああ、こうなったら別の作戦で行くか・・・・」 「どんな作戦?」 「それはな・・・・・」
マサシはまたジゼルに小声で何かを伝えている。そして着地と同時に話が終わった。
「いいな?」 「うん、やってみる!」 「よし、みんな!『オペレーション・フォース』!」 「わかった!」 「任せて!コンタ、レイナいいわね?」 「はい!」 「承知した・・・」
コンタは腰のファイブセブンを抜き、レイナもSAA(シングル・アクション・アーミー)を抜いて構えた。
SAA(シングル・アクション・アーミー) 1873年に作られたコルト社製シングルアクション式回転式拳銃。保安官が愛用していたことから、「ピースメーカー」という愛称で呼ばれることが多い。西部劇ファンに親しまれ、今なお生産が続けられている。生産時期では、1st.、2nd.、3rd.、4th.の年代に区別されている。口径は.22口径〜.45口径まで36種類もある。現在ではコレクションなどの観賞用として作られる事が多い、実戦で使われる事はほとんどない。
コンタとレイナは銃口をGbsに向け引き金を引いた。コンタはGbsの左側面へレイナは右側面まで撃ちながらの走りだす、だが弾はGbsの装甲に当たってはいるが傷が付いていない。
「無駄だ、私の装甲はUrsと同じアストラル超合金でできている、そんな玩具では傷は付かん!」
Gbsは両手の指を二人に向け、指先から銃口が姿を現し、大量の弾丸が発射された。コンタとレイナは攻撃をやめ、側面まで走り続けた。すると今度はユウタが正面からGbsに向かって走り出す、Gbsは再び胸の装甲を開きバルカン砲で攻撃、ユウタは蛇が移動するようにクネクネと動き弾丸を回避し徐々に間合いを詰めていく。
「甘いぜ、そんな攻撃は俺には当たんねえよ!」
ユウタはそう言って腰に納めてある鉄のリング状の物を取り、指で回し始めた。ユウタの愛用の武器、チャクラムだ。
チャクラム 古代インドで用いられた投擲武器の一種。戦輪、飛輪や、円月輪とも呼ばれる。真ん中に穴のあいた金属製の円盤の外側に刃が付けられており、その直径は12-30cm程。投擲武器としては珍しく斬ることを目的としている。彼の使うチャクラムは指で回すサイズ、腕で回す大きなサイズなどユウタ専用のチャクラムが作られている。
ユウタは弾丸の雨を回避しながらGbsの3m近くまで接近しバルカン砲目掛けてチャクラムを投げた。
「愚かな、そんな物で私の装甲に傷を付けられると思っているのか?」
Gbsがユウタを挑発すると、チャクラムはバルカン砲に命中、砲身を切り落としブーメランのようにユウタのほうへ引き返し、チャクラムは彼の指に舞い戻った。
「そ、そんなバカな!鋼鉄製の砲身がチャクラムごときに、なぜだ!?」 「教えてやるよ、俺のチャクラムもお前の装甲と同じアストラル超合金でできているんだ、鋼鉄の砲身なんかへでもねえ!」 「なんだとぁ!?」
ユウタ達の攻撃を彼らの後ろから見ているマサシとジゼル。二人は待っているのだ、攻撃のタイミングを。
数分前、マサシがジゼルに小声で「オペレーション・フォース」について話していた。
(どんな作戦?) (まずコンタとレイナが敵を挟むように攻撃して気をそらせる、そして正面からユウタとシオンが攻撃して敵にダメージをひるませる。そして止めを俺とジゼルが刺す) (大丈夫なの?) (心配するな、コンタ達はメチャクチャ強い。それに、今回はお前が一緒にいるから成功率も高い、だから大丈夫だ。期待してるぜ、ジゼル) (うん、やってみる!)
そして現在、ユウタがGbsのバルカン砲の破壊に成功した事を確認したシオンは高くジャンプし小声でブツブツ何かを言っている。そう、彼女も契約者、契約魔法の演唱をしていたのだ。
「炎帝よ、敵を飲み込み灰塵と化せ!クリムゾンブレイズ!!」
シオンが空中で呪文を唱え終え、両手を高く上げると彼女の頭上に大きな火球が姿を現した。そしてシオンがそれをGbsの胸元に投げつける。装甲が開いて防御力が劣っている鋼鉄の部分に命中し大きく爆発した。
「グガアアアア!!」
Gbsは断末魔を上げる。Gbsの胸元はアストラル超合金で守られていた、装甲は頑丈だったが、その下は非常に脆かったため、そこに火球が命中して大ダメージを受けたのだ。
「グ・・・ガガ・・・・オ・・・オノレェェ!」 「ジゼル、今だ!」 「うん!」
Gbsがひるんで動けなくなった瞬間、マサシとジゼルは走りGbsに向かっていく。しかしGbsもやられるわけには行くまいと迎撃してきた。肩の大型砲からマイクロ弾を連射してきたのだ、だがマサシとジゼルはマイクロ弾に意識を集中させ正確の避けて間合いを詰めていく。
「バ、バカナ!」
Gbsが驚いて攻撃をやめた瞬間、マサシはGbsの顔の高さまでジャンプして黒龍刀と白龍刀を抜いた。
「くらいな、双竜剣奥義!魔神轟来斬(まじんごうらいざん)!!」
日本の刀を揃え、同時に振り下ろしGbsの顔に斬撃を与え、Gbsの顔に二本の縦線が生まれた。
「グオオオッ!!」 「ジゼル、今だ!」 「うん!」
ジゼルはマサシの合図と同時にミカエルを構えGbsの腹部まで全力で走っていき、ミカエルの先端でGbsの腹部を強打、それと同時にボタンを押した、するとミカエルの先端が黄色く光だし大きな衝撃がGbsを襲った。
「ナ、ナンダ・・・・・?」
Gbsは状況が飲み込めずにそのまま前に倒れた、ジゼルもGbsが倒れる直前にその場から離れていた為、下敷きにはならなかった。
「す、すごい・・・・」
ミカエルの破壊力をその目で見て驚くジゼル。
「ああ、これが『G36 バレット』、密着した相手に強力な衝撃はをぶつけて内部破壊ができる兵器か・・・・」
ジゼルの隣でマサシもミカエルに内蔵されている兵器の威力に驚いていた。するとコンタ達がマサシとジゼルの元へ走ってきた。
「やったね、二人とも!」 「ああ、いいコンビネーションだったぜ」 「始めてこっちの世界で戦ったのに凄いわよジゼル!」 「私も正直驚いた」 「みんな、ありがとう」 「ハハハハ」
ジゼルとコンタ達の会話を見て小さく笑うマサシ、すると倒れたGbsが再び起き上がり、マサシ達は慌ててGbsの方を振り向いた。
「フ、フフフフ・・・・痛いじャナイか、こんナニボロボロにシテ・・・」 「しつこい奴だな、でも丁度いい、教えてくれないか?次元移動装置がどこにあるのか」
マサシは目的の次元移動装置の設置場所をGbsに訊くと、Gbs笑いながら言った。
「フフフ、教エテヤってモイいガ、モう遅イゾ?」 「?・・・・どういう事だ」
マサシが訊き返すとGbsは思いもよらない言葉を口にした。
「社長と自然の四塔(フォースド・ガイア)ハ既にラビリアンへ向カッタ!」 「なに!!?」 「「「「「!!」」」」」
予想もしていなかったGbsの答えに神竜隊のメンバーは全員表情が凍りついた。
「貴様等のスパイが我ガ社に侵入しテイたのをシッタ社長はソイツヲ処刑し、私に偽りノ情報を流サせタのダ・・・」 「な、なんだと・・・・・・」 「社長ハ自然の四塔と4個師団を率いテ異世界ラビリアンへ向かッた、2日前にナ!」 「2日前?」
ジゼルは2日前という言葉を聞き視線を変えた。
「二日前って言ったら、あたしがコンタと出合った日じゃない!」 「じゃあ、あの時既にヘルデストロイヤーはラビリアンに来ていたのか!?」 「そんな、僕達はなにも気付けなかったなんて・・・・・」
マサシ達は気付く事ができずに戻ってきてしまった事にショックを抱いた。
「フフふふフ、まあ、せいゼイ・・・頑張ってクレ、ライトシンふぉにアの・・・・・諸君・・・・・・・・・」
最後にあざ笑いをしてGbsは機能を停止した。
「大変、早くこの事をエミリア様に伝えないと!」 「ああ、分かってる!みんな、急いで支部に戻るぞ!」 「「「「了解!!」」」」 「ジゼル、行くぞ!」 「う、うん!」
マサシ達は着た道を走り、戻って行く。そしてジゼルは心の中で呟いた。
(お願い、みんな・・・・無事でいて!)
Gbsを倒した神竜隊、だがヘルデストロイヤーの軍隊は既にラビリアンへ向かっていた。絶望の中、マサシ達はどうするのか?そして、ラビリアンはどうなってしまうのか?
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