隠し扉から薄暗い廊下に入り歩くこと数分、長い一本道はまだ続いている。
「長いな〜どこまで続いているんだ?」
情けない声で文句を言うマサシ。
「情けない声を出すな、隊長なら隊長らしく冷静にしていろ。もう少し隊長としての自覚を持ってもらわないと困る・・・」
情けない声を上げるマサシに注意をするレイナ。
「へいへい、わかりました」 「それにしても、相変わらずレイナは冷静ですね」
マサシと違い常に冷静さを持っているレイナに感心しているコンタ。確かにレイナのほうが隊長らしさを持っている。
「冷静さを失ったら戦場で正確な判断が出来なくなる、常に平常心で行動しなくてはならない」 「そういえば、レイナはいつも冷静でマサシを叱ってばかりいるけど、レイナは副隊長なの?」
レイナに興味を持ったのかジゼルが話に加わり彼女に質問した。
「ううん、副隊長はユウタなんだ、レイナは参謀ってところかな」
レイナの変わりに彼女の隣を歩いているコンタが答えた。
「へぇ〜そうなんだ。でもレイナも大変だね、マサシみたいな人のお説教ばかりして」 「何か引っかかる言い方だな・・・・・」
ジゼルのさりげない失礼な言葉に目を細くして言うマサシ。そんなマサシを見てジゼル達はクスクスと笑う。ただしレイナはいつもどうりの表情だった。
「マサシが隊長、ユウタが副隊長、レイナが参謀ならコンタとシオンはなんなの?」 「シオン姉さんは切り込み隊長で、僕は偵察兵ってところかな?」 「そうね、まぁ別に私達はそういうのには興味はないけどね」
三人が話をしていると突然マサシ、ユウタ、レイナの三人が立ち止まり、ユウタが低い声をだした。
「三人とも、お喋りはそこまでだ」 「え?」 「どうやらゴールみたいだ」
ジゼル達が前を見るとそこには一つの自動ドアがあった、しかもカードロックシステム付きだ。
「さて、この先には何があるんだろうな?」 「それはドアを開ければわかるさ・・・・・レイナ、頼む」
マサシが腕を組み小さく笑いながらユウタに尋ねる、ユウタも表情を変えずにレイナにロック解除を頼んだ。
「わかった・・・」
レイナは膝を床に付けて背負っているリュックを降ろし、中から一台のノートパソコンを取り出し無数のコードをパソコンにつなげもう片方をロックシステムの隅についている端末につなげる、そして彼女は素早くキーを叩き始めるのだった。
「マサシ、レイナは何してるの?」
マサシの後ろから顔を出しレイナのやっている事を尋ねた。
「このロックシステムにハッキングしてるんだよ」 「ハッキング?」 「簡単に言えばシステムの中に入り込むってところかな」 「システムの中に入れるの!?」
ジゼルは驚きのあまり声を上げた。
「い、いや・・・・入るって言ってもそのパソコンからデータを流し込んでそのシステムのデータを書き換えるだけだよ・・・・」 「へぇ〜、本当にこっちの世界は凄いね・・・・」
ジゼルはマサシ達の世界に技術の凄さを改めて知った。そしてレイナのパソコンからピーッという音が聞こえてきた、どうやらロックを解除したようだ。
「ロック解除、これで入れるぞ」 「相変わらず凄い腕だな」 「本当!さすが神竜隊の参謀!」
マサシとジゼルの褒め言葉を聞いたレイナは何事も無かったかのようにパソコンをしまい始めた。
「・・・・・・・」
ジゼルは黙って作業を進めるレイナを見てマサシに小声で話しかけた。
(ねえ、あたしなにかまずい事言った?) (どうして?) (だってレイナ、黙ってあのパソコンっていう機械をしまい始めたよ、表情も変えずに。なにか彼女を怒らせるような事言っちゃったかな?) (大丈夫だよ、アイツはいつもああなんだ、表情は変えないけどアイツ本当は照れてるんだよ♪)
不安になるジゼルにマサシは笑いながら小声で答えるのだった。
(そ、そうなんだ・・・・・) 「おい二人とも、何をコソコソ話しているんだ?」
二人の小声で話をしているところを見てレイナが問いかけてきた。
「フフフ、内緒♪」 「ま、そういう事だ」 「・・・・・・そうか」
少し納得がいかない顔をしてレイナは立ち上がった。
「ところでマサシ」 「ん?」 「さっきのお前の説明なのだが・・・」 「さっき?ああ、ハッキングの事か?」 「そうだ、お前の説明・・・・・・かなり違ってたぞ」
レイナはそう言うと小さく笑って再び入口のほうを見直し、彼女の笑う顔を見てジゼルは少し驚きの顔をした。
「・・・・・・」 「どうしたジゼル?」 「う、ううん・・・・始めて見たから、レイナの笑った顔」 「ハハハ、そっか」
二人が会話をしているとユウタがドアに一歩近付いく、すると自動ドアゆっくりが開いた。部屋に入ると部屋の奥は暗く先が見えないくらいだ。
「なんか広い部屋に出たね」
今までの部屋とは比べものにならないほど広い部屋に入りジゼルは驚いている。その隣で部屋の広さを考えるマサシ。
「ああ、体育館ほどの広さだな」 「タイイクカン?」 「体育館っていうのは学校になんかにある運動をする所だよ」 「へぇ〜こっちの学校にはそんな所があるんだぁ」 「ラビリアンの学校にはないのか?体育館」 「うん、そういう所はないかな・・・・」 「おい二人とも!まだ任務中だぞ」 「あ、ワリィ・・・・」 「ごめんなさい・・・」
任務とは関係のない話をしていた二人を叱るユウタ、するとレイナが何かを見つけた。
「おい、みんな・・・・・前を見ろ」 「どうしたのレイナ?」
レイナに鋭い視線で問い返すシオン、周りの皆も視線を鋭くしていた。
「奥の方になにかいる・・・」 「奥に?」
首を傾げるコンタ、そしてレイナは引っかかる言葉を口にした。
「ああ、正確には『いる』ではなく『ある』と言ったほうが正しいかもな・・・」 「ある?」
レイナの言葉にマサシは腕を組み聞き返した。
「それじゃあ、まるで生き物じゃなくてなにか『物』が置いてあるみたいな言い方じゃないか」 「そのとおりだ・・・・」
レイナが言い終えた瞬間、暗くなっていた奥の方が急に明るくなった。天井についていたライトが付いたのだ、そして明るくなった所にはマサシ達が想像していなかった物があった。
「こ、これは・・・・・!」 「な、なにこれ・・・・・?」
マサシとジゼルが驚きの言葉を口にした。彼らの目の前にあったのはとてつもなく巨大なロボットだ、ただし、あるのは上半身の部分だけで腰からは床と繋がっている。高さは約8m、巨大な胴体に太い腕が二本、両肩には大きな大砲が取り付けられており、顔の部分にはリニアレンズで作られた目がサイコロの四の目のように並んでいる。
「な、なによこのロボット!」
シオンが怒るかのように叫んだ。
「どうして建物の中にこんな大きなロボットが?」
コンタも納得がいかず思わず思ってることを口に出してしまった。
「・・・・・・恐らくコイツもセキュリティーシステムの一つだろう」 「コイツがセキュリティーシステム!?」 「あくまで私の想像だ・・・・」
レイナは冷静に自分の思いついた意見を口にし再び黙り込んだ。
「でも、もしセキュリティーシステムなら、どうして隠し部屋においてあるの?」
シオンは誰もが第一に考える事を口にしレイナに問い掛けた。
「これも私の想像だが、これは恐らく・・・・・」 「セキュリティーシステムのマザーコンピュータ」 「「「「「「「!!」」」」」」
レイナの後を継ぐようにどこからか声が聞こえ神竜隊は全員驚きの表情を見せる。そして声の主を探すがどこにも人影は見当たらない、となると、あと考えられるのは・・・・。
「コイツが喋ったのか!?」
マサシが声を上げロボットを見ながら言った。
「その通りだ、よくここまで来たなライトシンフォニアの犬どもめ。私はGbs(ガバス)、このヘルデストロイヤー本社の警備責任者にしてこの本社のセキュリティーシステムそのものよ!」
「Gbs・・・なんかUrs(ウルス)と名前が似ているな?」 「Ursは私の兄弟機だ、先に言ったおくが私はUrsよりも後に作られた、つまりUrsよりも性能がいいという事だ」
なんとGbsはラビリアンでマサシとジゼルを襲った軍事総責任者のUrsの兄弟機だと言うのだ。しかも本人いわくUrsよりも高性能らしい。
「兄弟・・・・・それじゃあ、アンタの中のも・・・・・・あるの?」 「ん?」
ジゼルの質問に低い声を出し反応するGbs。
「アンタの中にも・・・・・人間の脳が入ってるの? 「ジゼル・・・・」
恐る恐る問うジゼルを見てマサシが少し悲しそうな声を出した。ジゼルが恐れながら訊くのはは当然だ、目の前にいるロボットはかつては自分と同じ人間だったのだから。
「勿論だ、そうでないと私は動けないからな」 「・・・・ッ!」 「・・・・ジゼル」
マサシがゆっくりジゼルの耳に口を近付け小声で言った。
(お前の気持ちも分かる、だが今はその事には触れるな) (え?) (そういう感情を戦場で見せたらすぐに命を落とすぞ・・・・) (で、でも・・・・・) (ジゼル・・・・)
マサシに名を呼ばれしばらく黙り込んだジゼル。そしてマサシの目を見て口を開いた。
(・・・・・わかった)
隠し扉の奥に入ったマサシ達。だが、彼らを待っていたのはヘルデストロイヤー本社のセキュリティーシステムの本体「Gbs」だった。Gbsと対峙した神竜隊はどうなってしまうのか!?
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