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作品名:ラビリアンファンタジー 作者:ディオス

第20回   第十九話 防衛装置(セキュリティーシステム)の牙

ヘルデストロイヤーの本社への潜入に成功した神竜隊。正面玄関から潜入したマサシ達は大きなホールの真ん中で立ち止まっていた。

「よし、ここから分かれるぞ。俺とジゼルは最上階から探してみる」
「わかった、僕とシオン姉さんは地下から探してみるよ」
「ユウタ達は裏口の方から探すはずだ、そっちの方はアイツ等に任せよう」

三人は黙って頷いた。

「よし、行くぞ!」

マサシの言葉が任務開始の合図となり、彼らはエレベーターに向かった。エレベーターのボタンを押すと二つのエレベーターの扉が同時に開き、マサシとジゼルは最上階行きのエレベーターへ、コンタとシオンは地下行きのエレベータに乗った。そしてエレベーターの扉は閉まった。





その頃、裏口近くでユウタとレイナは部屋を一つずつ調べていた。

「どうだ、そっちに何かあったか?」

棚を調べているユウタが床を探知機のような物で調べているレイナに問い掛けた。

「だめだ、探知機にはなんの反応も出てない・・・」
「この部屋にもなにも無いか・・・・・・でも変だな」
「何が変なんだ?」

探知機の電源を切りユウタに問い掛けるレイナ。

「俺達が潜入してから十数分、もうそろそろ敵がなにか動きを見せてもおかしくないだろう」
「ああ・・・」
「でも、敵はなにもしてこない、それどころか、ここまで警備員も見かけていない。おかしいと思わないか?」
「ここはヘルデストロイヤーの本社だぞ?こんな所に潜入しようとする奴等なんていない・・・」
「だから警備をする必要も無い?」
「私はそう思っている」
「でも俺達はこうして潜入しているぞ?」
「・・・・・・」

ユウタの言う事に考え込むように黙り込むレイナ。

「ヘルデストロイヤーが唯一恐れているのは自分達と同じ力を持つ俺達だ。いつか俺達がやってくると、アイツ等だって分かっているはずだ、しかし警備はとても手薄。その理由は・・・・・」
「・・・・・・・!」

レイナは何かに気付いたのか目を大きく開いてユウタの方を見た。

「罠(トラップ)か!?」
「多分な・・・・」
「敵が侵入してもそいつ等は罠が対処してくれる。それに社内にいるのが敵だけなら自分達が罠にかかる心配もない・・・」
「そう考えれば警備員がいないのも納得がいく」
「マサシ達に知らせなければ・・・」

レイナは通信機を取り、電源を入れた。

「マサシ、コンタ、私だ、この社内にはいたるところに罠が仕掛けられている可能性がある。気を付け・・・・・・」

レイナの通信機からなにやらジジジジッという変な音が聞こえてきた。そしてマサシやコンタとも連絡が取れない。ユウタがその原因を口にした。

「電波妨害(ジャミング)だ」
「もう私達は罠にかかっているというわけか・・・」





同時刻、マサシとジゼルは最上階にいた。彼らは「社長室」と書かれているプレートのある扉の前に立っている。

「やっぱり怪しいといったらここだろう」
「このプレートになんて書いたあるの?」

プレートの字が読めないジゼルはマサシに文字の意味を尋ねた。

「社長室、一番偉い人の部屋さ」
「一番偉い、確かにそこならなにか秘密があるかもね」
「そういうこと、早速入ってみるか」
「うん」

マサシはそう言ってドアノブに手をかけ、ゆっくりと回した。

「・・・・・・!」

マサシは一瞬なにかに気付いたような顔をして静かに扉を開けた。しかしそこには誰もいない、とても静かだった。ゆっくり部屋に入るマサシとジゼル、後から入ったジゼルは静かにドアを閉めた。

「・・・・・・」
「それで、どうする?」
「・・・・・・」
「マサシ、どうしたの?」

部屋に入ってからずっと黙り込んでいるマサシに声をかけるジゼル。

「おかしい・・・」
「何が?」
「社長室といったら一番警備が厳重のはず、だけど俺達が部屋に入ってからなにも起きていない、それどころかドアに鍵すら掛かっていなかった」
「あっ!そう言えば・・・」

マサシがドアノブを回した時に気付いたのはこの事だった。

「もしかしてこれって・・・・・」

ジゼルはいやな予感がしたのかマサシに自分の思っている事を伝えた。

「罠・・・?」
「かもな・・・・」

ジゼルのいやな予感は当たった社長室の扉の方からガチャという音が聞こえたのだ。

「!!」

ジゼルが慌てて扉を開けようとしたが開かない。オートロックが掛かっていたのだ。

「開かない!」
「クソッ、閉じ込められたか!」

すると今度は天井の一部分がゆっくり降りてきた。そこから、何かの機械が姿を現した。その機械にはカメラのような物が一つ、そしてリニアレンズが三つカメラを囲むように付いている。

「本社ノAD未登録者発見、侵入者ト判断、直チニ排除スル」

機械から声が聞こえてきた、どうやらセキュリティーシステムが起動したようだ。ちなみにADとは「アポ・デバイス」というヘルデストロイヤーオリジナルのIDカードの事である。

「セキュリティーが作動したか!」
「ゴメン、あたしがドアを閉めたから・・・・」
「気にするな、気付けなかった俺も俺だ」

謝罪するジゼルにフォローを入れるマサシ、するとカメラの周りについている三つのリニアレンズがゆっくりと赤く光り始めた。マサシはそれに気付き、ジゼルに飛びついた。

「危ない!」
「キャア!?」

その直後、リニアレンズから一本の赤い線が発射され二人の立っていた場所に命中した。二人はギリギリで回避に間に合った。

「な、なに?」
「レーザーシステムだ!ジゼル、あの机の陰に隠れるぞ!」

マサシとジゼルは社長の机と思われる大きな机に向かって走り出した。セキュリティー装置も回転し二人を追っている。そして再びリ二アレンズが光り始めた。そしてレーザーが発射された。二人は机の陰に滑り込むように隠れレーザーから逃れた。

「ふう、危なかったぜ・・・」
「はあ、マサシ、これからどうするの?」
「そうだなぁ・・・」
「さっきのツウシンキって言うのでユウタ達に助けに来てもらえばいいんじゃない?」
「いや、それは無理だろう」
「どうして?」
「おそらくセキュリティーシステムが作動した直後、もしくはその前から電波妨害装置が動いているはずだ」
「なにそれ?」
「通信機なんかを使えないようにしちまう装置さ」
「そ、それじゃあ・・・・・!」
「そう、助けは呼べない、俺達で何とかするしかない」

マサシは社長室の机の陰に隠れながら対策を考え始めた。





その頃コンタとシオンは一番下の階である地下3階の小部屋を調べていた。

「隠し扉とかそういった物は見当たりませんね」
「ええ、この部屋もハズレかしら?」
「かもしれませんね。次の部屋を調べましょう」

コンタとシオンが出口の方を向いた次の瞬間、出口のドアからガチャという音が鳴り響いた。

「今の音!」
「鍵が掛かったみたいですね・・・」

二人はとっさに自分達の愛用の武器を取り、出口のドアに背を向け武器を構えた。そして辺りを見回すと天井からマサシとジゼルに襲い掛かってきたセキュリティーシステムと全く同じ装置が姿を現し二人をロックした。

「侵入者発見、侵入者発見、直チニ排除スル・・・・」

装置から声が聞こえ、カメラの周りにあるリニアレンズが二人を狙い、レーザーを発射しようとしていた、しかし二人は慌てず目と目で合図しいる。するとシオンが腰に付いている筒状の物を手に取った。それにはグレネードに付いている安全ピンと似たようなものが付いており「chaff(チャフ)」と書かれていた。シオンが持っているのはチャフグレネードだ。

チャフ
日本語では電波欺瞞紙と書かれ、レーダーによる探知を妨害する物である。チャフを散布すると敵側レーダーの電波が乱反射されるため、自機の探知の妨害、レーダー誘導のミサイルの回避が可能になる。近年では軍用機や艦艇のレーダー警戒システムの一部として組み込まれ、レーダー照射を受けるとディスペンサーが自動的に散布するようになっている。シオンが使用するのは筒型のグレネードのなかに火薬ではなくそのチャフを詰め込んだ物で、爆発することでチャフを広範囲にばら撒き一定時間、全ての電磁兵器を無力化する物だ。

シオンが安全ピンを抜きチャフグレネードを投げた。するとチャフグレネードは小さな爆発音を立てチャフをばら撒いた。そしてセキュリティーシステムのカメラはコンタとシオンを見失ったかのようにあちこちを見回した。システムが異常を起こし二人をロックする事が出来なくなったのだ。その隙を見てコンタはファイブセブンでカメラとレーザーのリニアレンズを素早く撃ち無力化した。

「ふぅ、シオン姉さん、ナイス!」

コンタはシオンの方を向いて親指を立てた。

「コンタこそ、相変わらずの早撃ちね」
「いいえ。それよりも・・・」
「ええ、セキュリティーシステムが作動したって事は敵はもう私達の侵入に気付いているって事ね・・・・」
「マサシ達は大丈夫かな?」
「アイツ等は大丈夫よ、それは私達がよく知ってるでしょ?」
「そうですね」

話を終えた時、出口のほうから再びガチャという音がした。

「鍵が開いたわ」
「次の部屋へ行きましょう」
「他の部屋にもきっと罠が仕掛けてあるに違いないわ、慎重に行きましょう」
「はい!」

コンタとシオンは部屋を出て次の部屋を調べに向かった。だがそれらの罠はまだ序の口に過ぎなかった。本当の罠がマサシ達を襲おうとすぐそこまで迫ってきているのだ・・・・・。


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