エクス・デストロとの戦いが終わり、ラビリアンに平和が戻った。このラビリアン全てを危機に追いやった戦争は「ビッグバン大戦」と呼ばれて語り継がれていった。その中でラビリアンを救った異世界の戦士達、ライトシンフォニア、そしてヘルデストロイヤー。ライトシンフォニアの人間達はヘルデストロイヤーの件と今回の大戦の功績からラビリアンでの高い待遇が与えられた。かつて世界を支配しようとしたヘルデストロイヤーも今回の活躍で罪が減刑され、世界各国の要人達の会議の結果、ラビリアンからの追放が下される結果になった。
ユピローズ王国はビッグバン大戦の中で最も激しい戦いが行われており、ライトシンフォニアの協力を最も強く受け、エクス・デストロの主力部隊に勝利した事によりラビリアンの中心国となる。ゼルキアス帝国はヘルデストロイヤーとの戦いの中で皇帝が戦死した事により、元老院達の話し合いでゼルキアス帝国は「ゼルキアス共和国」へと生まれ変わった。更にライトシンフォニアの重役や幹部達の提案で次元移動装置による地球とラビリアンの行き来、そして地球の技術の一部をラビリアンへ与えることになった。しかし、全ての技術を与えるとラビリアンという世界その物が変わってしまう為、与えるのは一部の技術だけとなり、ラビリアンを手助けする形となった。
エミリアとゾークの死はマサシとジゼルの口から全ての傭兵達に伝えられた。ユウタ達神竜隊やライトシンフォニア、そしてヘルデストロイヤーの傭兵の一部は二人の死に大きな悲しみを抱き、泣き崩れた者も居たが、二人の為にも泣いてはいられないと気を強く者達の説得で立ち直り、今後の事を話し始めるのだった。話し合いの結果、ライトシンフォニアの傭兵達の多くは地球へ戻りライトシンフォニアの今後の活動の復興に務める者も居れば、ラビリアンへ戻り復興作業を支援する者もいた。ヘルデストロイヤーはエミリアとゾークの契約どおりライトシンフォニアの傘下として活動を再開するが、以前のように殺戮や暗殺などの依頼は一切受けることはなかった。
そして、今回の戦いで最も大きな活躍を見せた神竜隊には英雄としての名と最高の待遇が約束されたが、終戦後に神竜隊は解散し、隊員達は各々道を歩み始めるのだった。
ネリネ・クリシェール
終戦後、神竜隊を除隊し王都ロードグランに戻る。ヘルデストロイヤーの一件で一部の者達から冷たい目で見られるも、ビッグバン大戦の活躍により名誉を挽回する。 ロードグランに戻った後は再びロードグラン騎士団へ戻り騎士団長になるが、聖天使人の末裔である事からゼルキアス貴族の称号を手にする。貴族になった後に周りの人々の推薦でゼルキアスの大統領候補の一人になる。
月本 コンタ
ビッグバン大戦後、神竜隊を除隊すると同時にライトシンフォニアを退社。ラビリアンへ残り、復興作業を手伝うために国中を飛び回る。その性格の良さと契約者の力から世界中から復興作業の依頼を受けている。 だが、その幼さから地球を懐かしく思うこともあり復興作業の合間に地球へ戻りライトシンフォニアへの訪問や旅行などをしている。
金山 ユウタ
終戦後は神竜隊を除隊するもライトシンフォニアに残り地球へ戻る。その後、ラビリアンでの活躍を評価されてライトシンフォニアの幹部となる。毎日デスクワークやライトシンフォニアの復興活動、ヘルデストロイヤーの管理などの任務に明け暮れる。 次元移動装置の管理責任者も務め、ラビリアンへの物資配達などには必ずついて行き仲間達との再会を楽しみにしている。
狐火 シオン
戦後、ユウタと共にライトシンフォニアに残り、新人傭兵を育てる教官になると同時にライトシンフォニアの特殊訓練部隊の総指揮官となる。 新人達の間では異世界を救った英雄の一人や優秀な傭兵を生み出す「妖狐の鬼教官」とも言われている。彼女の育てた傭兵達は世界各地で必ず活躍する事から、何時しか「傭兵達の母」とまで言われるようになった。
レイナ・スズキ
終戦後、コンタと共にライトシンフォニアを退社しラビリアンに残りユピローズ王国の銃士隊の隊長となる。ラビリアンで初めて誕生した銃士隊での活躍を見せ、世界各国から銃士隊の育成及び結成を依頼されている。 更にその若さと美しさから多くの男性に交際を求められるが、そのクールな性格からなかなか交際を認めず、周りの人間達にとって高嶺の花となる。
そして・・・・・・。
ビッグバン大戦から数年後、ユピローズ王国の首都サンドリアの大通り。多くの人が買い物や散歩、近所の人達と会話、そして傭兵達が依頼を受けて町を出て行く姿などがあった。中には地球から技術を授かり、その技術で作られた物を売り、買う人もいた。町の彼方此方にはビッグバン大戦でエクス・デストロによって付けられた爪痕が少し残ってはいるが、少しずつ町は元の姿に戻ろうとしていた。そんな大勢の人々がいる大通りの中で一人歩く男の姿があった。
「フゥ、今日の仕事もこれで終わりだな」
その男は栗毛の髪をしており、ラビリアンで作られた革製の服を身につけ、腰には拳銃と聖剣アロンダイトが収めたあった。そう、その男はマサシだ。数年前と比べると少し背が伸びており、一段と成人に近づいていた。マサシは背負っている皮製の袋から手帳を取り出し明日からの予定を確認しようとする。すると、マサシの背後から男の声が聞こえてきた。
「団長ーっ!」 「ん?」
マサシが振り返ると、若い男女がマサシに向って走ってきた。どうやらマサシの事を団長と呼んでいたようだ、その男女は見た目からして傭兵のようだ。
「おう、お前達、どうしたんだ?」 「ハ、ハイ。実は西にあるレトナンスの村から盗賊を討伐してくれという依頼が来まして・・・・」 「その盗賊はとんでもない人数で組織されているらしいんです。どうしましょう?」 「・・・・盗賊の討伐って事は、ざっと2か3の危険度だよな?」 「ハ、ハイ」 「そうか・・・・よしっ!ここはお前達に任せる。お前達が指揮を取って考えたとおりに行動してみろ」 「え、ええっ?そ、そんな、俺達はまだ隊長になって間もないんですよ!」 「私達が指揮なんか取ったら、甚大な被害が・・・・」 「自分達を過小評価するな、お前達はもう立派な傭兵だ、昔のように何時までも俺に頼ってばかりじゃどうする事もできないぞ?」 「で、ですが・・・・」 「大丈夫だ、お前達は俺の見込んだ傭兵、絶対にうまくいく!」 「・・・・ハ、ハイ!」 「ありがとうございます!」 「よし、行って来い!」 「「ハイッ!!」」
若い男女は笑ってマサシに一礼すると来た道を戻っていった。二人の後姿を見送ったマサシは振り返り歩き出した。
秋円 マサシ
終戦後、神竜隊を除隊すると同時にライトシンフォニアを退社。ラビリアンに残りユピローズ王国のサンドリア傭兵協会に入会し「傭兵団 神龍(シェンロン)」を結成する。 世界を救った英雄としてサンドリア王家から将来を約束されるが、傭兵として生きることを決意する。英雄が作り上げた傭兵団と言う事から結成当初から入団希望者が殺到、更にライトシンフォニアの掟を受け継ぎ、報酬は依頼人の都合に合わせるといった事から人気も一気に上昇し他国から依頼に来る者もおり、今ではユピローズ王国一の大規模な傭兵団となった。
「さて、急いで帰ろう、ジゼルが待ってる」
マサシは少し早歩きで歩き始めた。しばらく歩くと、マサシは一軒の建物の前に着いた。その建物の看板には「天使達の家」とラビリアンの文字で書かれていた。すでに数年間ラビリアンで暮らしているマサシはすっかりラビリアンの字が読めるようになったのだ。マサシが庭に入っていくと、家の中から騒がしい声が聞こえ、それと同時に建物のドアが開いた。中から出てきたのは長いピンク色の髪をした美しい女性だった。ロングスカートをはき、籠いっぱいの洗濯物を抱え、建物の中に向って言った。
「コラァ!騒がないの、静かにしないとオヤツ抜きよぉ!」 「相変わらず元気みたいだな」
マサシの声に気付き女性はフッと振り返る。笑いながら手を振るマサシを見て、洗濯籠を下ろし彼の元へ駆け寄る。
「マサシ、おかえりなさい」 「ただいま、ジゼル」
そう、この女性は美しく成長したジゼルだったのだ、髪は昔のようにツインテールではないが面影はきちんと残っている。
「今日の仕事はどうだった?」 「いつもどおりさ、危険度4の依頼が入ってきたからそれを受けてきただけ」 「他の依頼は?」 「他のわざわざ俺が出るまでもないさ、優秀な部下達に残しておいたよ」 「そんな事言って、本当は簡単すぎて受ける気がなかったんでしょう?」 「あ、バレた?」 「バレバレよ、フフフ」 「でも、部下達の仕事を残しておいたって言うのも本当だぜ」 「ハイハイ、そう言う事にしておいてあげるわ」
ジゼルはマサシの言う事を信じているのかいないのか、笑いながら軽く流した。
ジゼル・A(アルフォント)・シュウエン
戦後、マサシと共に神竜隊を除隊しサンドリアの傭兵協会に入会しマサシと共に神龍を結成し一時の活躍を見せるが、その後は傭兵を引退しマサシと結婚する。 引退後は孤児院である天使達の家を建てて院長となり身寄りのない子供達を引き取りマサシと共に我が子のように育てる。自分達と同じ様な悲しみを背負う子供達を一人でも減らす為にジゼルがマサシと相談した結果、引き取る人が現れるまで子供達を養っていくと決意した。
「マサシのおかげで子供達が増えても生活には困らないし、手伝ってくれる人も雇えるし大助かりよ。ありがとう」 「俺はお前の考えが正しいと思ったからお前と一緒に子供達を育てると決めたんだ。礼を言う必要なんかないさ」 「それでも、貴方には感謝しているの。だから言わせて、ありがとう、あなた・・・・」 「どういたしまして」
お互いに笑顔で見合っているマサシとジゼル。するとマサシが何かを思い出し孤児院を覗き込んだ。
「そう言えば、『エミリア』どうしてる?」 「ん?エミリアなら中にいるわよ」
ジゼルが孤児院の方を振り向くと、ドアの置くから一人の小さな女の子が出てきた。年は3歳か4歳、ピンク色の髪とくりくりとした大きな目はジゼルに似ていた。その少女はマサシの顔を見ると突然笑顔になり彼の下へ駆け寄った。
「パパー!」
マサシは自分の下へ駆け寄ってきた娘をスッと自分の顔の前まで抱き上げた。
「エミリア、ママの言う事はちゃんと聞いてたか?」 「うん!さっきね、ママのお手伝いをしてたの」 「そうか、偉いな」 「それでねそれでね!また『ゾーク』のお話できるようになったんだよ」 「ほ〜、もう話せる様になったのか」 「早いわね、前にあの子と話したのは三日前なのに」
エミリアの言葉を聞きジゼルは少し驚き、優しくエミリアの頭を撫でた。エミリアという少女はマサシとジゼルの間に生まれた愛娘で、ゾークというのはエミリアの中に存在するもう一つの人格。二人とも嘗てマサシとジゼルを救ったエミリアとゾークと同じ名が付けられたのだ。エミリアは生まれた時は一つしか人格がなかったが、エミリアが物心つくと同時にもう一つの人格が覚醒したのだ。しかしマサシとジゼルはその事に何の不安も感じてはいなかった。
「それじゃあエミリア、ゾークに言っておいてくれ、しっかり喋れるようになったら話そうなって」 「ハーイ」
元気よく返事をする愛娘を下ろしたマサシは笑顔でエミリアの顔を見下ろした。
「ねぇねぇ、パパ、今日はもうお仕事無いんでしょう?皆と遊ぼう」 「コラ、エミリア、パパは疲れてるんだから休ませて上げなさい」 「大丈夫だよ。よし、遊ぶか!」 「わーい、遊ぼう遊ぼう!」
エミリアに引っ張られて孤児院へ入っていくマサシ。ジゼルもやれやれと言いたそうな顔をしながらも笑顔で二人の後を追う様に孤児院へ入っていった。
長かった戦いは終わり、マサシとジゼル、そして神竜隊員達はそれぞれの道を歩み未来へ向っていく。その先にどんな出来事が待ち構えているかはまだ誰にも分からない。だがこれだけは言える、例えどんな苦しい状況に追いやられても、彼らなら必ず乗り越えられると。
Fin
|
|