「カフェ・ラズベリー」を出たマサシ達は次の目的地である「スターライト・ランド」という遊園地へ向かう事にした。遊園地に行った事のないジゼルにとってはある意味、未知の体験といえるだろう。
「ここが『スターライト・ランド』だな?」 「ああ、数週間前に完成したばかりらしいぜ」
マサシの問いに簡単な説明をするユウタ。そしてマサシはジゼルの方をチラッと見た、ジゼルは驚きの目で大きく遊園地の名前が書かれているゲートを見ていた。
「マサシ、ここがユウエンチっていう所なの?」 「ああ、でも俺達もこの遊園地には来た事がないから、どんなアトラクションがあるか分からないんだよな」 「アトラクション?」 「まあ、行ってみれば分かるさ。さあ、行こうぜ皆」 「OK、行こう皆!」
チケット売り場に歩いていくマサシにコンタがついて行った。しかしジゼル達はついていかなかった、チケットを買う為だけにマサシ達みたいに騒ぎたくないのだろう。
「まるで子供だな、あの二人・・・」
レイナがマサシとコンタの姿を見てあきれる様に言うと隣に立っているシオンが言った。
「コンタはともかく、マサシまであんなに騒がなくてもね」 「いいじゃないか、俺達も今日は思いっきり騒ごうぜ」 「・・・・・そうね」
ユウタとシオンが話しているとマサシとコンタが入場チケットを手にし戻ってきた。
「お待たせ♪」 「ほら、皆自分のチケット取ってくれ」
マサシに差し出されたチケットを一枚ずつ取ったユウタ達、そして残った最後の一枚をマサシがジゼルに手渡した。
「ジゼル、お前のチケットだ」 「ありがとう、これはどうすればいいの?」 「入口にいる遊園地の人に渡せばいいんだよ」 「それだけ?」 「ああ」
マサシがジゼルにチケットに付いて説明しているとユウタ達が呼ぶ声が聞こえた、四人は既に入口前に立っていた。
「お〜い、二人とも、早くしろよ、先に入っちまうぞ!」 「ああ、今行く!さあ、行こうぜ」 「う、うん」
マサシと一緒に走り出すジゼル。そして入口で改札に立つ女性にチケットを渡した。
「ようこそ、スターライト・ランドへ」
笑顔で歓迎してくれた女性に少し驚きながら遊園地に入っていくジゼル。そして彼女の目に飛び込んできたのは空へ飛んでいく沢山の風船、多くの客、そして遊園地のマスコットキャラと遊ぶ子供達だった。
「わあ・・・・」 「驚いたか、ジゼル?」 「うん・・・・驚いた・・・・でも、凄く楽しそう」 「さて、まず何に乗る?」 「え、乗る?」
マサシの言ってる事がうまく理解できないジゼルは彼に問い返した。
「ああ、この遊園地の乗り物やイベントに好きなように乗ったり参加したりできるんだよ。ほら、好きなの選びな」 「それじゃあ・・・・あれ」
ジゼルは一つのアトラクションを指差した。なんとそれはジェットコースターだった。
「ジェットコースター!?」
遊園地に始めてくるジゼルが一番最初に選んだのはジェットコースター、これにはマサシも驚いた。いや、彼の後ろにいたユウタ達も目を丸くしていた、レイナ一人を除いて。
「ジ、ジゼル?本当にあれに乗るのか?」 「どれでもいいって言ったじゃない」 「そ、それはそうだが・・・・」
マサシがなんとかジゼルを止めようとすると後ろからレイナが肩に手を置いて静かに言った。
「いいじゃないか、彼女が乗りたいと言っているのだから」 「・・・・・・そ、そうだな。じゃ、じゃあ行くか?ジゼル」 「うん、行こう、早く!」 「お、おい引っ張るなって!」
マサシの手を引き走っていくジゼルを見ているユウタ達。そんな中、コンタがシオンの手を引っ張っりながら口を開く
「僕達も行きましょう」 「そうね、ジゼル(あの子)の事も心配だし、じゃあ乗ろうか?」 「ハイ!」
コンタとシオンもマサシとジゼルの後を追って走って行った。それを見ているユウタとレイナも。
「行くか?俺達も」 「そうだな、たまには楽しむのも良いかもしれないな・・・・」
二人はマサシ達と違って慌てる様子もなくゆっくりと歩きながら四人の後を追った、いつもクールな二人もこの時だけは楽しそうな顔をしていた。
「どうだった?」
ジェットコースターから戻ったマサシ達。そしてマサシがジゼルに感想を聞いてみた。
「最初はどうなるか分からなくてソワソワしてたけど、一番高い所に着いたら一気に落ちいったんだもんビックリしちゃった」 「そうか、気に入ってくれたみたいだな」
マサシとジゼルの後ろ姿を見ているユウタ達は彼らに聞こえないような小さな声で話していた。
「ジゼルさん、最初はどうなるのか分からなくて周りをキョロキョロ見てたもんね」 「しかし、初めてジェットコースターに乗ってあんなに楽しんでるんなんて、彼女意外と神経図太いのかもな」
ユウタの発言を聞き、シオンが不機嫌そうな声を出した。
「ちょっと、レディに対して失礼な言い方じゃない?それ」 「同感だ・・・」 「ハハハ、ワリィワリィ」
同じ女性であるシオンとレイナにとって今のは聞き捨てならなかったのだろう。彼らが話をしているとジゼルが次のアトラクションを指定してきた。
「ねえ、今度はあれに乗ろう!」 「ん、どれだ?」
マサシがジゼルの指先にあるものを見ると、そこには「ウォータースライダー」と書いてある看板があった。
「OK。みんな〜、今度はあれに乗るぞ〜!」
マサシがユウタ達を呼び、再びジゼルと一緒にアトラクションの乗り場に走って行った。
「またアイツ等二人だけで走って行って・・・・」 「いいじゃない、今日の主役はジゼルちゃんなんだし♪」 「まぁ・・・・な」
ユウタとシオンが話していると後ろからコンタが話しかけてきた。
「ねえ二人とも、よく考えてみたら、あのウォータースライダーもジェットコースターと同じ絶叫マシンじゃない?」 「あ、言われて見ればそうだな」 「そうね。でも、それがどうかしたの?」
コンタは何かを心配するような目でゆっくりと口を開いた。
「こういうパターンだと次のアトラクションもその次も絶叫マシンっていうパターンになるんじゃないかと思って。さすがに連続で絶叫マシンになると気分が悪くなるから・・・・・ちょっとヤな予感が・・・」 「それは無いだろう、いくら彼女でもそう何度も絶叫マシンに乗ろうなんて考えないさ。それに何度も乗ってれば飽きるだろうし」 「そうよ、それに二回も乗れば彼女が先に気分を悪くすると思うわよ」 「私もそう思う、お前の考えすぎじゃないのか?・・・」
ユウタ達はありえないと考えているようだ。しかしコンタの予想は的中した。
「どうしたのみんな?次行こうよ!次!」 「ちょ、ちょっと休憩・・・・」
ウォータースライダーの後、ジェットコースターに2回、バイキングシップに2回、空中ブランコに3回という絶叫マシン「だけ」に乗っていた。しかしジゼルは顔色一つ変えずに次のアトラクションに乗ろうとしている、それに引き換えマサシ達は・・・・。
「あ〜気持ち悪い・・・・」 「俺もこれ以上はちょっと・・・・」 「私も、もうギブ・・・・」 「だから僕は言ったんだよ・・・・」 「しかし、あれだけの絶叫マシンに乗って顔色一つ変えないとは・・・・」
そう言ってジゼルを見ているレイナ、だがそんな彼女もいつもどおりのクールな表情をしていた。
「そういうレイナだって、いつもどおりの表情じゃないか・・・・」 「バカを言うな、これでもかなりしんどいのだぞ・・・・」
マサシに少し気分の悪そうな声で言い返すレイナ。そんな彼らを見てジゼルが次の行き先を指差した。
「みんなだらしないわね〜、じゃあ今度はあそこにしよう」 「ん?観覧車か?」 「そう、あの大きい乗り物!」 「あれなら大丈夫・・・・かな。皆はどうする?」
マサシがベンチに座っているユウタ達に聞くと彼らは無言で首を横に振った、どうやら限界のようだ。
「ジゼル、アイツ等は休んでるみたいだ、俺達だけで行こう」 「え、マサシと二人で・・・?」 「ああ、そうだけど、どうかしたか?」 「う、ううん!なんでもない」
ジゼルは慌てて首を横に振った。
「じゃあ、俺達ちょっくら行ってくる」 「いってらっしゃい・・・・」
コンタの見送りの挨拶を聞き二人は観覧車へ歩いて行った。二人は観覧車に乗り、景色を眺めている。周りはすでに暗くなっていたため街の明かりで綺麗な夜景が二人の目に入った。
「うわぁ、綺麗・・・・」 「気に入った?」 「うん、あっちの世界でもこんな夜景は見たことないもん・・・・」
「あっちの世界」、その言葉を口にした後、ジゼルが少し悲しそうな目をした、ラビリアンの事を思い出したのだろ。
「気になるか?あっちの世界の事?」 「・・・・・うん」 「大丈夫だよ、今の状況からしてヘルデストロイヤー(奴等)はまだラビリアンには足を踏み入れてはいない。だから今はまだ安全だ、準備ができたらすぐに戻ろう、そしてラビリアンの人達を守るんだ」 「・・・・・うん、ありがとう。ゴメンね、いきなり変なこと言って」 「全然変な事じゃないさ、心配して当然だよ。それに・・・・お前の悲しそうな顔を見たくないから」 「何か言った?」 「いや、なんでもない」 「??」
最後の辺りが小声だった為よく聞き取れなかったジゼル。マサシもマサシなりに彼女を気になっているのだろう。観覧車から降りた二人はユウタ達と合流し遊園地を後にした。
|
|