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作品名:ラビリアンファンタジー 作者:ディオス

第169回   最終話 未来を託された者

遂にディアボロスとルシフェルに勝利したマサシとジゼル。これでエクス・デストロとの激しい戦いも終わる、そう心に思いながらディアボロスとルシフェルに向って飛んで行く。

「アイツ等、生きてるのかな?」
「さぁな、俺達の最強の攻撃をまともに食らったんだ、死んでいなくても致命傷だろう」

二人がディアボロスとルシフェルの状態を話していると、爆発によって起きた黒煙が消えていき、中からボロボロになり腹部に大きな穴を開けたディアボロスが片腕で動かなくなっているルシフェルを抱えていた。二人とも変身する前の姿に戻っていた。

「やっぱり生きていたか」
「おかげ様でな。ルシフェルは先に逝っちまったし、俺もこれじゃあ長くはない・・・・」
「しつこい奴め、さっさと地獄へ堕ちろ!」
「・・・・フッ、フフフフフ」
「何が可笑しい?」

突然笑い出すディアボロスにマサシがジッと見て尋ねる。するとディアボロスはニッと笑いながらマサシとジゼルを見た。

「お前達、何か大事なことを忘れてるんじゃないか?」
「「?」」
「ゼロビッグクランチだよ」
「「・・・・!」」

マサシとジゼルはゼロビッグクランチのことを思い出して少しだけ表情が変わったが焦る様子は見せなかった。

「既にゼロビッグクランチを起す装置にエネルギーは100%に達している。あとは謁見の間にある装置を起動すれば良いだけだ」
「その状態でお前にできるのか?それに俺達がいる限り絶対にそんな事はさせない!」
「フフフ、それはどうかな・・・・」

ディアボロスは笑いながらルシフェルを抱えていない方の手を腰に回し何かを取り出した。それは小さなスイッチの様な物だ。

「これが何だか分かるか?これはゼロビッグクランチ発生装置の起動スイッチだ!」
「何だって!?」
「・・・・!」

起動スイッチを見て驚き声を上げるマサシと黙ったままディアボロスを見るジゼル。

「これを押せば300秒後、つまり五分後にゼロビッグクランチが起きてこの虚無宇宙(ゼロスペース)もろとも全てを収縮させ消滅させる。今から謁見の間へ行って装置を壊そうとしても今のお前達の力では壊す事はできないぜ。俺とルシフェルはもう終わるが、お前達も道連れだ!」

そう言うとディアボロスは起動スイッチを押し、スイッチを粉々に握り潰した。そして粉々になったスイッチを虚無宇宙に捨てた。

「先に行って待ってるぜ、闇の世界でな。・・・・・・・フフフフフ、ハハハハハハハハハハッ!!」

満足した様に笑い声を上げたディアボロスはルシフェルのと共に体が黒い霧へと変わり消滅した。そして残ったのは歯を食い縛るマサシと顔に焦りを見せるジゼルだけだった。

「クソッ!」
「マ、マサシ・・・・」

二人が悔しがり、焦りだしていると下のほうから声が聞こえてきた。二人がフッと下を見るとコンタ達が上がって来る姿が見えた。ディアボロスとルシフェルが死んだことにより見えない床も消滅して先に進めるようになったのだ。

「二人とも、遂にディアボロスとルシフェルを倒したんだね!」
「やったな!これで戦いも終わる!」
「ええ、ようやく平和な日常に戻るのね!」
「お前達ならやると信じてたぞ」
「ええ、二人とも、ありがとう!」

コンタ、ユウタ、シオン、レイナ、ネリネの三人が笑いながらマサシとジゼルに近寄り肩を叩くなどするが、マサシとジゼルの表情は暗いままだった。

「・・・・二人とも、どうしたの?」

シオンの言葉を聞き、他の神竜隊も笑顔を止めてマサシとジゼルの顔をジッと見た。すると、マサシがゆっくりと皆の方を向いて口を開いた。

「・・・・皆、落ち着いて聞いてくれ。ディアボロスがゼロビッグクランチ発生装置を起動させた」
「えっ!?」
「何だと!?」

突然のマサシの言葉に驚く神竜隊。マサシは神竜隊を見ながら、そのまま話を続ける。

「今から五分後にこの虚無宇宙でゼロビッグクランチが起きてこのラビリランを消滅しちまう、お前達は一旦ラビリアンへ行ってライトシンフォニアとヘルデストロイヤーの空中部隊と連絡を取って外で待機するように言ってくれ!」
「え、ええ?どう言う事なの?」
「説明している時間は無い、早く行くんだ!」
「お前とジゼルはどうするんだ?」
「俺達は謁見の間へ行って装置を壊してくる」
「だったら僕達も・・・・」

コンタは自分達も一緒に装置を壊しに行くと言おうとしたが、マサシはそれを許さなかった。

「馬鹿!お前達は魔人と親衛隊を相手にして限界が来てるじゃないか!これ以上力を使ったら命が危ない!」
「それはマサシとジゼルだって同じじゃ・・・・」
「俺達は大丈夫だ、ジゼルの力があればまだなんとかなる。そうだろジゼル?」
「え、ええ。少しくらいなら」
「だったらやっぱり僕達も行くよ!」
「お前達は空中部隊と合流して外で待っていてくれ。もし俺とジゼルの力で壊せなかったら、戦闘機とレベル・5の一斉攻撃で天空魔導城もろともぶっ壊す。その準備をしておいてくれ!」
「「「・・・・・・」」」

マサシの提案に神竜隊はしばらく黙った。そしてユウタが決心がついた目でマサシとジゼルを見た。

「分かった、俺達は虚無宇宙の外で空中部隊と待機している。その時が来たら連絡を入れてくれ」
「ありがとう、ユウタ」

マサシとユウタはパンと大きな音を立てて手を叩きあった。そしてユウタ以外の神竜隊員達も頷き、ユウタ達は一斉に外へ向かって飛んでいった。それを見送ったマサシとジゼルはお互いの顔を見合った。

「それじゃあ、俺達も行くぞ!」
「ええ!」

マサシとジゼルはマッハ4の速度で天空魔導城へ飛んで行った。そして二人は謁見の間へ着くとディアボロスが座っていた玉座の後ろにある部屋に入った。二人が中へ入ると無数の光を点滅させている大きな装置が二人の目に飛び込んで来た。

「これがゼロビッグクランチ発生装置か・・・・」
「大きいね・・・・」
「これをぶっ壊せばゼロビッグクランチを止めることができる。ジゼル、大丈夫か?」
「ええ、フォーチュンヒーリングで少しだけ力が戻ったから」

実はマサシとジゼルは謁見の間へ向かう最中にフォーチュンヒーリングを発動して傷と疲労を少しだけ回復させておいたのだ。コンタ達に言っていたマサシの策はこの事だったのだ。

「よし、さっさとコイツを・・・・」

マサシが喋っていると突然部屋が揺れだし天井から砂埃が落ちてきた。

「な、何?」
「多分ディアボロスとルシフェルが死んで天空魔導城自体が力を無くして崩れ始めたんだ。急いでコイツを壊して脱出するぞ!」
「うん!」

マサシとジゼルは両手を装置に向けて力を溜め始めた。そして力を一定まで溜まると技を装置に向って発動した。

「アストラルストリーム!!」
「エターナルバースト!!」

マサシの両手から水色の光線が、ジゼルの両手から桃色の光線が放たれ、装置に命中して爆発を起した。しかし煙が消えても装置には傷すら付いていなかった。

「クッ!ダメか・・・・」
「やっぱり戦闘機部隊とレベル・5の力で壊すしかないみたいね」
「ああ、仕方ない。一旦外に出て・・・・」
「そんな時間はありませんよ」
「「!?」」

突然部屋の外から聞こえてくる声にマサシとジゼルは振り返る。そこには傷だらけのエミリアとゾークが並んで立っていた。

「エミリア様!ゾーク!」
「無事だったんですか?」
「私達は不老不死ですよ?あの程度の攻撃で死ぬ事はありません」

エミリアの無事を確認したマサシとジゼル。だが二人は直ぐに鋭い表情に戻してエミリアに尋ねた。

「エミリア様、時間が無いってどう言う事ですか?」
「アレを見てください」

エミリアが指差す方を見ると、何かをカウントしている機械があった。この時カウントは148秒を表していた。

「アレって、もしかして・・・・」
「そうだ、アレはゼロビッグクランチ発生までの残り時間だ」

ゾークの言葉を聞いたマサシとジゼルの顔から汗が垂れた。そして二人はゆっくりとエミリアとゾークの方を向く。

「残り時間は既に140秒という僅かな時間。今外へ向っても外に出る頃には既にカウントはゼロになっています」
「そんなっ!それなら、俺達四人の力を合わせて攻撃すれば・・・・」
「無理でしょうね。実は貴方達が来る少し前に私とゾークもこの装置を見つけて攻撃したのですが、傷すら付けられませんでした」
「私とエミリアが攻撃した後にお前達が攻撃して傷を付けられなかったんだ、同時に攻撃しても無理だろうな」
「そ、それじゃあ、もう俺達にはどうしようもないって事か!?」
「そんな、ここまで来たのに・・・・・・」

追い込まれ俯くマサシと膝をついて絶望するジゼル。すると、エミリアが少し低い声で二人に言った。

「いいえ、まだ方法はあります」
「「えっ!?」」

方法があると聞いたマサシとジゼルはフッと顔を上げてエミリアの顔を見る。

「混沌の楔です」
「混沌の楔?それって確か、エミリア様とゾークの呪いを解いて二人を不老不死から元の人間に戻す儀式じゃ・・・・?」
「混沌の楔には呪いを解くだけではなく、周囲の全ての力を無にする力もあるのです」
「周囲の全ての力?」
「そうです。魔力、気力、電力、動力、そして生命力」
「え?」

生命力という言葉を聞いたジゼルは小さく声を出す。そしてエミリアは混沌の楔の真の力を口にした。

「混沌の楔を行うと周囲の全ての力が消滅し、このゼロビッグクランチ発生装置も停止するでしょう。そして、周りにいる全ての生き物も、死に絶える」

そう言った瞬間、エミリアはパチンと指を鳴らした。すると、大きなシャボン玉が現れマサシとジゼルを包み込んだ。

「エ、エミリア様、これか?」
「ここに居れば貴方達も混沌の楔の力にまきこまれた命を落とします。貴方達を虚無宇宙の外へワープさせます」
「で、でも、エミリア様達はどうなさるんですか?」
「・・・・・・混沌の楔を行えば、呪いを受けている私とゾークは儀式を行った直後に、命を落とします」
「「!!」」

混沌の楔を行うと自分達も死ぬ、そうエミリアから聞かされたマサシとジゼルは驚きを隠せなかった。儀式を行った後も今までどおり一緒に居られる、そう思い込んでいたマサシとジゼル。だがエミリアとゾークの命と引き換えに世界は救われる、その結果は二人にとってあまりにも残酷なものだった。そしてエミリアは笑顔で二人を見て言った。

「貴方達と出会えてとても楽しかったです。ユウタ達やライトシンフォニアの皆さん、そしてハイドリア陛下達にもよろしく伝えてください」
「な、何を言ってるんですか!?エミリア様、止めてください!!」
「マサシ・・・・」
「え?」
「・・・・・・」

シャボン玉の向こうで口を動かすエミリア。そして満面の笑顔を見せてエミリアは再び指を鳴らす。するとシャボン玉はゆっくりと浮かび上がり眩い光を放ち始めた。

「「エミリア様ぁーーーーーーーーっ!!」」

マサシとジゼルの叫びを残し、シャボン玉は光と共に消えた。残されたエミリアとゾーク。崩れかける部屋の中でゾークは低い声でエミリアに尋ねた。

「本当にこれでよかったのか?」
「・・・・他に方法があったの?」
「アイツ等はまだガキだ、別れも告げずに死ぬのもどうかと思うぞ」
「仕方が無いわ、あの子達なら分かってくれる・・・・」
「フッ、そうか。それにしても、私はあんな青二才どもに未来を託すのはどうかと思っているがな・・・・」
「よく言うわ、本当は彼等の事を認めているくせに。さぁ、時間が無いわ、始めましょう」

エミリアとゾークは装置の前でお互いに向き合い自分達の大剣を手に取り、それぞれ切っ先を相手の腹部に向ける。

「長かったわ。二百年も続いた呪いも遂に終わる」
「ああ、これで全てが終わる」
「ずっと私から逃げて儀式を受けようとしなかった人の言う事とも思えないわね」
「フフフ、そうだな・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」

お互いに黙って顔を見合うエミリアとゾーク。そしてエミリアは静かに口を開いた。

「ゾーク・・・・・・」
「エミリア・・・・・・」

お互いの顔を見合い名を呼び合った、次の瞬間、二人はお互いに自分の大剣で互いの腹部を貫いた。そして二人の間から白い光が回りに広がっていき、その光は天空魔導城を包み込んでいく。そして城全体が包み込まれると、まるで打ち上げられた花火の様に光は拡がり、花火の様にゆっくりと消えていく、天空魔導城も完全に消滅している。光の中心では二人の男女が幸せそうな顔をして抱き合っている、エミリアとゾークだ。

「・・・・・・ねぇ、ゾーク。小さい頃の約束、覚えてる?」
「・・・・ああ」
「私達・・・・」
「ずっと一緒だ・・・・」

ゾークの声には少しだけ明るさが出ていた。契約を交わす前のゾークに戻ったのだろう。そしてエミリアはゾークを力一杯抱きしめた、二度と離れることの無いように。そして二人は光の中へ消えて行った。





一方、虚無宇宙の外では数機の戦闘機と共に空中で待機していたユウタ達が天空魔導城の異変に気付き、ゆっくりと閉じていく虚無宇宙の入口をジッと見ていた。

「見て、天空魔導城が・・・・!」
「消滅した、入口も閉じていく。と言う事はゼロビッグクランチは・・・・・・」

天空魔導城の消滅に驚くコンタとユウタ。この時、地上や空中ではエクス・デストロの眷属達が天空魔導城の消滅と共に黒い霧となり消滅していったのだ。この瞬間に戦いは連合軍の勝利となり、空中や各国の町では歓喜の声が上がっていた。

「ゼロビッグクランチは防げたみたいだな」
「うん。・・・・・・ん?ちょっと待って!マサシとジゼルは!?」
「ッ!そうよ、あの二人はどうなったの?もしかしてまだ天空魔導城の中に居たんじゃ・・・・」
「「「!!」」」

シオンの言葉を聞き神竜隊は表情を凍らせた。天空魔導城が消滅したことでゼロビッグクランチを防ぐことができた。だが、それと同時にマサシとジゼルの死という結果が全員の頭を横切ったのだ。

「そんな、じゃああの二人は・・・・」
「「「・・・・・・」」」

コンタの言葉にユウタ達は最悪な結果を想像して俯く。そんな中、ネリネが閉じていく虚無宇宙の入口の前で浮いている物体を見つけた。

「・・・・?ねぇ、アレ何かしら?」
「え?」

シオンが目を凝らして浮いている物体を見る。ユウタ達もそれにつられてジッと見た。それはエミリアの力によって虚無宇宙の外に飛ばされたマサシとジゼルだった。

「マサシとジゼルだぁ!」
「アイツ等、生きてやがったぁ!」
「全く、心配させてぇ!」
「アイツ等!」
「皆、行きましょう!」

神竜隊全員はマサシとジゼルの無事に喜びの声を上げて二人の下へ飛んで行く。一方のマサシとジゼルはシャボン玉の中で悲しみの表情を表していた。

「・・・・・・エミリア様」
「・・・・・・」

俯き涙を流すマサシを隣で黙って見つめるジゼル。彼女の瞳も潤んでおり何時泣いてもおかしくなかった。

「・・・・俺は何もできなかった」
「え?」
「皆を助けると言っておきながらエミリア様とゾークを犠牲にしてしまった。俺は救えなかったんだ・・・・・・」

エミリアとゾークを死なせた事で自分を責めるマサシ。そんなマサシの手をそっと握りながらジゼルは優しい声で言った。

「ちがうわマサシ。貴方は救ったのよ」
「俺が・・・・?」
「貴方がこのラビリアンを多くの人の命を救ったのは紛れも無い事実。そしてエミリア様とゾークも呪いから解放された。二人は命を落としてしまったけど、あの二人は二百年も続いた『生』という苦しみから解放されたのよ。・・・・貴方は、あの二人を助けたの」
「・・・・・・」
「これで二人もきっと天国で幸せに暮らせるわ。だからマサシ、自分を責めないで。そして生きて、あの二人の為にも」

マサシはふとエミリアが最後に言った事を思い出しす。小さな声だったが、マサシには聞こえた。

『貴方の大切な人を守る為に、決して死ぬことを選ばないで。ジゼル(その子)の為にも、何があっても、生きて・・・・』

エミリアは確かにそう言っていた。マサシは涙を拭いジゼルの方を向き、小さな笑顔を見せた。

「ああ、そうだな。生きよう、エミリア様とゾークが教えてくれた事を胸に刻んで、そしてこの事多くの人に伝えるために」
「うん」

背後から聞こえてくるユウタ達の声に気付き、マサシとジゼルはシャボン玉の中で手を振った。エクス・デストロの戦いは終わり、長かったマサシとジゼル、そして神竜隊の戦いは遂に終わりを向かえたのであった。


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