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作品名:ラビリアンファンタジー 作者:ディオス

第162回   第百六十二話 弱き生き方に強さあり
 
ディアボロスとルシフェルから今回の事件のきっかけが自分達にあると聞かされたマサシとジゼル。二人の目からはショックのあまりに光が消えてしまった。そんな二人にディアボロスとルシフェルはゆっくりと近づいていく。

「だからお前達にはこの世界と共に、消えてもらう!」

二人に別れを告げたディアボロスはBX(ブラックエクスカリバー)をマサシに向かって振り下ろし、ルシフェルも拳を作りジゼルに向かってパンチを放った。二人に攻撃が当たろうとした直後、ディアボロスとルシフェルの攻撃が何者かによって防がれた。

「二人とも、しっかりしなさい!」
「こんな奴等の言う事に耳を貸すな!」
「「・・・・!?」」

放心状態のマサシとジゼルの目に光が戻り二人は前を見た。そこには大剣を横にしてディアボロスとルシフェルの攻撃から二人を守るエミリアとゾークがいた。二人ともボロボロの姿のまま膝を付いてなんとか立ち上がっている。

「ほぅ、まだ立てるのかお前達」
「あれだけ痛めつけたのに、流石不老不死ね」

突然攻撃を防がれたにも関わらず、冷静な表情をしているディアボロスとルシフェル。エミリアとゾークは大剣を勢い振りディアボロスとルシフェルの剣と拳を振り払った。それと同時にディアボロスとルシフェルは大きく後ろに跳び四人から距離を取った。

「マサシ、ジゼル、あの二人の言っている事に惑わされないでください!」
「エミリア様・・・・」

力の無い声でエミリアの名を呟くマサシにエミリアは背を向けたまま語り続けた。

「確かに貴方達は一度強い者が生きる世界を望んだかもしれません。ですが、貴方達二人の望んだ世界は強い者だけではなく弱い者、つまり全ての人が幸せに暮らせる世界を望みました。ですが、あの二人の望む世界は自分達だけが幸せな暮らせる世界です。貴方達の考えと彼等の考えは全く違います、ですから自分達を責めないでください!」
「で、でも・・・・」

エミリアの言葉に、マサシと同じ様に力の無い声で話そうとするジゼル。すると今度はゾークが機嫌の悪そうな声で話し出した。

「まったく・・・・過去の事を何時までもネチネチと、聞いていてイライラする!」
「・・・・・・」

苛立ちを見せるゾークを黙って見るマサシ。今の彼にはゾークの言う事に反論する気力すらなかった。

「私とエミリアはお前達よりも長くこの世に生き多くの者達を見てきた。自分の過去に囚われた者、大きな罪を犯した者、数え切らないくらいにな。そして私とエミリアもその内に入っている。だが、私達も、そして私達が見てきた者達も決して自分達の過去に圧されて終わったりはしなかった、立ち直り前だけを見て生きてきたのだ」

突然説教の様な、もしくは後押しするような言い方で話し出すゾーク。そんな彼をエミリアは黙って隣で見ていた。

「例え進んだ道が間違っていたとしてもその者達は決して振り返らなかった。私もそうだ、ティアマットの呪いを受け、エミリアと対立する事になっても決して後悔せず前に進み続けた。過去の過ちを背負い、様々な事を学びながら未来へ進む、それこそが真の強い者ではないのか?」
「「!」」

ゾークの言った事に反応したマサシとジゼルは何かに気付いたのか、表情に少しずつ光が戻り始めた。

「お前達はどうなのだ!過去の自分の過ちに圧されてそのまま死ぬのか?もしお前達が自分達に責任があると感じるなら、生き延びて自分の過ちを未来へ伝え、同じ過ちを犯そうとする者達を止めろ!そんな事もできずに殺されるような者達に私の歩んできた過去を否定する権利があるのか?お前達はそれでも神竜隊なのか!?」
「ゾーク、そこまでよ」

言いすぎだと思ったのか、それとも時間が無くなったのかエミリアはゾークを止める。お互いの顔をチラッと見合ったエミリアとゾークはディアボロスとルシフェルの方を向いて大剣を構える。

「やっと終わったか」
「あんまり長いもんだから眠たくなってきちゃった・・・・ふあぁ〜」

腕を組んで退屈そうな顔をしていたディアボロスとあくびをしながら座り込んでいるルシフェル。そんな二人にエミリアは鋭い視線を向ける。

「さっきは油断しましたけど、今度はそうはいきませんよ」
「フゥ、一度負けた者が言いいそうな典型的な台詞ね」

ゆっくりと立ち上がったルシフェルは腕を回しながらエミリアとゾークの方を見る。その隣ではディアボロスが退屈そうな表情のまま口を開く。

「マサシとジゼルが来たのだからお前達と戦うつもりは無い。それにさっきの戦いで分かったはずだ、お前達では俺とルシフェルには勝てないと」
「今の二人では貴方達とまともに戦えません、彼等が立ち直るまで私達が貴方達の相手をします!」
「それに私達は不老不死だ、何度敗北しても死ぬ事は無い。そんな戦いを続ければいずれはお前達の気力が無くなり戦えなくなる」
「フッ、時間稼ぎって訳か・・・・だか、俺達には通用しない」

ディアボロスがニッと笑う。すると突然ディアボロスが二人の視界から消えた。その瞬間にエミリアは大剣を大きく横に振りながら後ろを振り向く、そこにはさっきまで前にいたはずのディアボロスが自分の斬撃をBXで止める姿があった。

「止めたか・・・・」
「貴方がマッハ4の速さで移動できるという事はユウタ達から聞いています。そしてそれは私達はさっきの戦いで何度も見た、見極めるのは当然です」
「さっきの戦いはお前達の速さがどれ程のものかまだ理解していなかった為、回避するのが困難だったが今度は前の様には行かんぞ!」

エミリアの斬撃を止めるディアボロスに向かってゾークが大剣で斬りかかろうとした。だが背後から気配を感じ、ゾークは攻撃を止めて自分の背後にデザートイーグルを向けて引き金を引いた。だがそこには誰もいない、するとゾークから少し離れた所にルシフェルが突然姿を現した。

「危なかったわ、もう少しで当たるところだった」
「引き金を引く瞬間に高速移動で私の銃の軌道から逃れたか・・・・」

実はさっきゾークの背後の気配の持ち主はルシフェル。彼女は背後からゾークに攻撃を仕掛けようとしたがゾークはいち早くそれに気付き銃で応戦したのだ。

「それにしても驚いたぞ、まさかお前もマッハ4で移動できるとはな」
「ディアボロス『だけ』がマッハ4で行動できるとは一言も言ってないわよ?」
「確かにそうですね」

ディアボロスと剣を交わり続けているエミリアは視点をディアボロスに向けたまま言うとディアボロスのBXを大剣で押してディアボロスから距離を取りゾークの隣まで跳んだ。

「貴方達の攻撃力と移動速度は確かに恐ろしいです、ですが対抗できないわけではありません」
「私達はまだ力の半分も出していないのだぞ?」

まだ全力ではない、そう言うゾークを見てディアボロスとルシフェルは小さく笑った。

「フフフフ、半分も出してない?この状況では強がりにしか聞こえないわよ」
「そうだな、もし俺達を本気で倒すつもりなら最初から全力で来るはずだ。だがさっきの戦いではお前達は防戦一方だった。あれがお前達の全力だったのではないのか?」

笑いながら最初の戦いの状況を話すディアボロスの言葉に今度はエミリアが笑いながら口を開いた。

「フフ、考え方が若いですね」
「何だと?」
「貴方達の考え方が子供っぽいと言っているのですと」
「言ってくれるな、では聞かせてもらおうか。お前達の考えを、そして見せてもらおう、お前達の全力を!」
「いいだろう」

エミリアに変わりゾークが答える。すると二人は大剣をゆっくりと下ろして目を閉じた。そして二人は大きな声で叫んだ。

「「解放!レベル・3!!」」

目を開いてレベル・3を解放した二人の体に光のラインが浮き上がってきた。エミリアの体には薄い黄色の、ゾークの体には灰色のラインがそれぞれ浮かび上がる。これで二人の戦闘能力はさっきとは比べ物にならない位高まっただろう。しかしそんな二人を見てもディアボロスとルシフェルは表情を変える事無く笑ったままだった。

「ホゥ、レベル・3か・・・・。成る程、読めたぞ。まず最初の戦いで普通の戦い俺達の戦い方や戦闘能力を調べる。その後、力を見極めた後にレベル・3を解放して戦闘能力を高めて一気に勝負をつける、という事か」
「つまり最初の戦いはあたし達の体力を奪うのと同時に攻撃パターンを見極める為の戦いって事だったのね」

自分達の考えを口にしながら話すディアボロスとルシフェル。そんな二人を見てエミリアとゾークは大剣を構えてそれぞれの相手を見る。

「私達は貴方達と違って何十年、何百年と戦いを繰り返してきたのです、始めて戦う相手への対処法は用意してあります!」
「しかも私達は不老不死であるため最初の戦いで敗れても次の戦いで自分の有利な状況へ持ってくることができる!」
「この方法は不老不死である私とゾークにしか取れない戦法です!」

自分達に掛けられている呪いを利用した戦術を説明しながらエミリアとゾークはディアボロスとルシフェルに鋭い視線を向けた。そしてディアボロスが突然拍手をしだした。

「見事だ、自分達の不老不死の呪いを利用し、最初に敗れて相手の力を分析して次の戦いで確実に自分達が勝てるようにする。普通の人間には絶対に真似できない事だ」

ディアボロスが拍手を止めると、突然BXを鞘に収めて腕を数回振り出した。そして今度は低い声を出しながら気の毒そうな目で二人を見た。

「だがお前達も一つ肝心な事を見落としてるぞ」
「何だと?」
「どういう意味ですか?」

エミリアとゾークがディアボロスの方を見て問い掛けると反対側に立っているルシフェルが変わりに答えた。

「あなた達、あたし達がマッハ4で移動できる、そしてそれを見極めたって言ったわよね?」
「確かに言いましたが?」
「・・・・・・一体何時、あたし達がマッハ4で移動していると言ったの?」
「「!!?」」

ルシフェルの言葉にエミリアとゾークの表情が急変した。確かに二人はディアボロスがマッハ4という超音速で移動できると知っていた。そしてルシフェルもまたマッハ4で移動できると言った。だがディアボロスとルシフェルの二人の内、どちらも「今」マッハ4で移動しているとは言っていない。そして次の瞬間、エミリアとゾークの視界からディアボロスとルシフェルが消えるのと同時に二人に大きな衝撃が伝わった。

「「なっ!?」」

二人が衝撃の伝わってきた方を見ると、そこには自分達にパンチを放つディアボロスとルシフェルが見えた。

「ば、馬鹿な・・・・全く反応できなかった・・・・・・」
「私達は今まで・・・・彼等の速さがマッハ4だと・・・・・・」

「思い込んでいた」と最後まで喋る事ができずに二人は謁見の間の壁に叩きつけられた。それと同時にディアボロスが両手をエミリアとゾークに向ける。

「ダークネスアロー!」

ディアボロスの両手から無数の黒い矢が放たれ、その矢はエミリアとゾークの両手両足に刺さった。

「うわあっ!」
「ぐおっ!」

二人は黒い矢に手足を刺され、まるで木に打ち付けられた藁人形のように壁に貼り付け状態になった。

「フッ、せっかくレベル・3を解放したのに空振りに終わったな。例え不老不死でも両手両足を使えなきゃ意味が無い」
「そこでゆっくりと休憩していて、全てが終わった後に貴方達二人の存在その物を消してあげる。それなら不老不死の呪いも意味無いでしょ」

壁に張り付いた二人を眺めた後、二人は振り返りマサシとジゼルの方を向いた歩いていく。

「さて、後はお前達を始末するだけだ」
「もうすぐゼロビッグクランチのエネルギーも溜まるから邪魔な貴方達を消してゆっくりと世界の消滅を見物したいの、だから早く消えて」

笑いながら近づいていくディアボロスとルシフェル。すると、さっきまで光を失っていたマサシとジゼルがゆっくりと立ち上がり光の戻った目でディアボロスとルシフェルを睨んだ。

「悪いが、俺達は死ぬ訳にはいかない!」
「体を張ったあたし達を守ってくれたエミリア様と自分の過去を話して大事な事を教えてくれたゾークの為にも!」

希望の宿った目で自分達を見るマサシとジゼルに一瞬驚きの表情を見せて立ち止まるディアボロスとルシフェルだったがすぐに余裕のある表情に戻った。

「おやおや、さっきまで抜け殻の様な姿だった奴等がこんなに早く立ち直るとはな」
「貴方達って意外と立ち直りが早く、神経も図太いのね」
「俺達は教えてもらったんだよ、エミリア様とゾークに俺達の考え方とお前達の考え方の違いをな!」
「何が違うというのだ?お前達も強い者が生き残る世界を望んだ、そして今俺達は矛盾、苦しみ、悩みの無い世界を創ろうとしているのだ。ラビリアンという脆弱な者達だけが生きる歪みだらけの世界を消してな」
「そう、そしてその世界を望んでおきながらそれを否定し、自分一人では何もできない、一人では生きていけない貴方達はこの腐った世界と一緒に消えるのが定めよ」

自分達の思っている事を、ラビリアンを侮辱する言葉をズバズバと口にするディアボロスとルシフェルにマサシとジゼルは次第に怒りが込み上がってくる。そして遂に二人の怒りが爆発した。

「ふざけるなっ!!腐っているのはお前達だ!!」
「そうよっ!!貴方達に世界をどうこうする資格なんか無いわ!!」

怒りの篭った声でディアボロスとルシフェルに言い放つマサシとジゼル。すると今度は睨んではいるが静かな声でマサシとジゼルは話し出した。

「確かに、俺もジゼルも両親を殺され、家族と引き裂かれたことで自分がもっと強かったらと、争いも無く、皆が平等に暮らせる世界を望んでいた。でも、さっきゾークに言われて思い出した、そして多くに人と出会って俺達は分かったんだ」
「人にはいろんな考え方、生き方があるわ。同じ人間なんて存在しない、矛盾や悩みの無い人間なんている筈ないわ。皆そんな弱さを背負って今日まで生きてきたのよ、それだけで人は十分強いのよ」
「それなのにお前達は強い者の事を中心に考え、自分達の考え方を理解しない人を弱者と決め付けて消そうとしている!!」
「自分達の事しか考えないくせに人を比べて差別するなんて、最低よ貴方達!!」
「弱い者はそうやって己を偽り生きているんだ」

マサシとジゼルの叫びをサラリと流して人の愚かさを言うディアボロス。

「どうやらこれ以上話しても時間の無駄ね、どうする?ディアボロス」
「決まってるだろう、退場してもらうのさ。」

ディアボロスとルシフェルの会話を聞きマサシとジゼルは悟った、遂にこの二人との戦いが始まると。

「それじゃあ、始めましょうか」
「待て、折角だ、場所を変えよう」

ルシフェルを止めて戦いの場を変更を告げるディアボロスはマサシとジゼルの意見も聞かずに指を鳴らした。すると、辺りが白い光に包まれ、光が治まった時には四人は謁見の間とは違う場所に立っていた。四人が立っていたのは宇宙空間、だが見えない床に立っているような感覚があり呼吸もできる。以前マサシとジゼルが見た虚無宇宙(ゼロスペース)に似ていた。

「なんだ此処は?」
「虚無宇宙に似ているね」
「違う、ここは虚無宇宙だ」
「アレを見て」

ルシフェルの指差す先、マサシとジゼルは自分達の下を見た。すると、そこにはラビリアンへ繋がる巨大な穴の前で主砲や対空機銃を撃つ天空魔導城が見えた。

「アレは、天空魔導城!?」
「もしかして、あたし達お城の外に出てきちゃたの?」
「そうだ、此処の方が広いし戦いやすいだろう?」
「これで思いっきり戦えるわ」

驚くマサシとジゼルを落ち着いた表情で見ながら説明するディアボロスと戦いを待ち望みクスッと笑うルシフェル。

「それじゃあ、始めようぜお二人さん」
「ああ、この戦いでケリを付けてやるぜ、この世界の戦いと俺達の過去に!」
「絶対に貴方達を倒してこの世界を救ってみせる!」
「できるかしら?フフフフ」

遂に始まったマサシとディアボロス、ジゼルとルシフェルの戦い。同じ顔を持つ光と闇の男女、勝利の女神は一体どちらに微笑むのか、世界はどうなるかの、いよいよ最後の死闘が始まる!


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