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作品名:ラビリアンファンタジー 作者:ディオス

第160回   第百五十九話 仲間との再会と未来を賭けた誓い

天空魔導城へ侵入したマサシとジゼルはディアボロスとルシフェルの待つ最上階の謁見の間へ向かっていた。だが、この時の二人はエミリアとゾークが城内に居ることを知らなかった。

「よし、これで片付いたな」

マサシは霧状となり消えていくミイラ兵達を見て汗を拭いながら一息ついていた。少し離れた所ではジゼルが辺りを見回しながら敵の気配を探っている。

「どうやらこの階にはもう敵は居ないみたいね」
「よし、次の階へ行こう。ディアボロスとルシフェルはまだ先のはずだ」
「ええ」

マサシとジゼルはミイラ兵が下りてきた上の階へ続く階段を上り三階へと向かった。二人が三階へ上がると、そこは一階や二階とは違うフロアであった。二つの階よりも広く、上の階へ繋がる階段の奥、左右、そして上がって来た階段の後ろに大きな扉があった。

「ここは、さっきの階とはちょっと違うね」
「ああ、前後左右に扉があるし、多分別の部屋と部屋を繋ぐ中央なんだろう」
「この部屋からいろんな部屋へ行けるって事だよね」
「そういう事だ」

二人は部屋に敵が居ないか警戒しながら上の階へ行く階段へ近づいていく。すると、奥の階段と左右の扉が開き、奥の方から何かがゆっくりと出てくる。

「また敵か?」
「今度はどんな奴かしら」

武器を構えて扉に意識を集中させるマサシとジゼル。そして扉の中から全身にタクティカルスーツを纏い、フルフェイスマスクを着けてアサルトライフルを装備した兵士が大勢姿を現した。

「おいおいちょっと待て、いきなり近代的になったぞ?さっきまで剣や槍を持っていた敵が出てきたのに今度はライフルを持った敵かよ」
「しかもアイツ等の持っている銃、今まで見たこと無い銃だよ。マサシ、何なのアレは?」
「アレは『M4』だ。しかもグレネードランチャーまで装備してやがる・・・・」

M4(コルト M4A1)
米国の特殊部隊統合軍SOCOMが、XM177の後継としてコルト社に開発依頼したM16A2のカービンモデル。それまでにも存在したM16系のショートカービンモデルの完成形、ひとつの頂点を形成するモデルである。M4はアメリカ軍の他、イギリス、オーストラリアのSAS等、各国の軍特殊部隊で採用されている。また近年ではマレーシア軍が、シュタイアー AUGに替わる制式ライフルとしてM4を採用している。今回、敵が装備しているのはそのM4に専用グレネードランチャーの「M203」を装備しているため、戦闘力が非常に高い。

「厄介だな、あんなので一斉射撃されたらひとたまりもない」
「どうするの?」

どうやって敵と戦うかを考えていると、自分達を囲む様に集まってきた敵兵が一斉にM4を二人に向け、M203にグレネード弾を装填した。それを見たマサシは咄嗟にジゼルの前に回りこみ急いで契約魔法の演唱を始めた。

「秩序の光よ、我らを守る聖なる領域となれ!シャインバリア!!」

発動が間に合い、マサシは自分とジゼルを包み込む光の壁が現れた。その直後に敵兵士達は一斉にM203の引き金を引いてグレネード弾を発射、全弾がマサシの光の壁に命中し爆発した。爆発によって起きた黒煙がフロアを包み込み、煙が消えると、真ん中には光の壁によって守られ、傷一つ付いていないマサシとジゼルがいた。

「フゥ、なんとか間に合ったぜ・・・・」
「あ、ありがとうマサシ」
「いや、お前が無事ならいい。だけど、この状況じゃ長くは持たないな」

マサシが壁の向こう側でM4を乱射している敵兵士達を見て次にどう対処するかジゼルと話し出す。

「どうするの?」
「・・・・・・ジゼル」
「何?」

何かを思いついたのか、マサシはジゼルの方を向き小声で何かを話し出す。二人の会話は銃を撃っている敵兵士達には聞こえていない。やがて、敵兵士達の銃撃が止む、どうやら弾切れのようだ。

「今だ!」

マサシの合図と同時に光の壁が消え、マサシも大きくジャンプした。それを待っていたかのようにジゼルは両手を上げて敵兵士達に向けた。

「サンライトフォース!!」

ジゼルの口から技の名前らしき言葉が出される。すると、ジゼルの両手から眩い光を放たれた。その光に照らされた敵兵士はM4を落とし両腕で光を防ごうとする。だが、そんな事に意味は無かった、光に照らされた敵兵士達は蝋燭の火を消されたように消滅した。そして光が消えるのと同時にマサシがジゼルの前に着地した。

「フゥ、うまくいったな」
「マサシの作戦のおかげよ」
「俺の?」
「ええ、『奴等の銃の弾が切れるタイミングを見計らって全体攻撃で一気に勝負をつける』って言うね」
「それは俺じゃなくてお前のタイミングと技がよかったんだよ」
「違うわよ、貴方のおかげよ」
「いやお前だって」
「貴方よ」
「おま・・・・」
「こんな時に何イチャついてるのさ」
「「!」」

お互いに相手を褒め合うマサシとジゼルの会話の中で突然聞こえてくる声。二人が声の聞こえた方を向くと、右の扉から一人の少年が出てきた。

「イチャつくなら全部終わってからにしてよ」
「コ、コンタ!」

そう、扉から出てきたのはウィッカとの戦いを終えたコンタだったのだ。

「コンタ、無事だったのか!」
「無事、と言えば嘘になるね」

コンタはボロボロになっている自分の体を見せながら二人の所へ歩いていく。その姿を見れば彼が激しい戦いをしたという事が誰もが一目で分かる。

「ついさっきまで魔人と戦っていたんだ。思ったより手間取っちゃってね、さっきまで気を失ってたんだ」
「魔人と・・・・でも、無事でよかった」

コンタの無事にジゼルは一安心する。すると、後ろの扉からも聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「無事なのはコンタだけじゃないぜ」

三人が後ろにある扉の方を向くと、ボロボロになっているユウタが腕を組み、笑いながら手を振った。

「ユウタ!」
「お前も無事だったのか!」
「当然だろ、俺を誰だと思ってるんだ?」

ユウタの無事を喜ぶコンタとマサシに、笑いながら軽口を叩くユウタ。すると、ユウタの後ろからまた聞き覚えのある声がした。

「ちょっと、私が無事だって事も伝えなさいよ」
「ハハハ、ワリィ」

背後を見て誰かに謝っているユウタの姿を見て、三人は聞こえてきた声の主を想像して喜びと期待を感じた。そしてジゼルがゆっくりと口を開いた。

「今の声って、もしかして・・・・」
「そう、私よ♪」

ユウタの後ろからシオンが顔を出す。彼女も全身ボロボロでタクティカルスーツの彼方此方が破れて、血がついている。

「三人とも、無事でよかったわ」
「シオン姉さんも無事でよかったです」
「貴方もね、コンタ」

笑うシオンの顔を見てコンタは自然に笑みを浮かべる。シオンもまたコンタの姿を見て微笑んだ、まるで遠足から帰ってきた子供を見る母親のように。

「途中で会ったのはお前達だけか?」
「ああ、俺はシオン以外とは会わなかった」

ユウタとシオンは自分達以外の仲間には会っていないと話し、それを聞いたマサシは今度はコンタの方を向いた。すると、コンタは黙って首を横へ振る。

「コンタもか、それじゃあ・・・・」

沈んだ様な声を出すマサシ。すると左の扉が開き、二人の少女が姿を見せた。

「何を沈んだ声を出しているんだ?」

左の扉を見るマサシが目にしたのはネリネに肩を貸しているレイナの姿だった。

「レイナ!」
「ね・・・・ネリネ、無事だったのね」

危うく姉さんと叫んでしまいそうになったジゼルは咄嗟に言い直して二人の下へ駆け寄った。

「二人とも酷い怪我よ、大丈夫?」
「ああ、大したことはない。魔人相手に少し手間取ったがな」
「ええ、ちょっと疲れたわ。でも直ぐに良くなるわよ」
「そう、よかった・・・・」

ネリネの記憶から消えてはいるが、自分の姉の無事を知り一安心するジゼル。そんな彼女の姿を見てマサシは優しく笑う。そして直ぐに顔を引き締めて神竜隊全員に告げた。

「皆、無事に再会できた事を喜びたいだろうけど、今はディアボロスとルシフェルを倒してゼロビッグクランチを止める事が先決だ」

真剣な表情でマサシの方を向き彼の話を聞く神竜隊。だが、その直後にマサシは笑って言った。

「この戦いが終わったら、皆の無事と勝利を祝ってパーティやろうぜ!」
「「「・・・・・・」」」

突然の祝勝会の開会宣言に一同は黙り込む。すると、ジゼルが突然笑い出した。

「フ、フフフフ、貴方らしいわね」
「ハハハハ、そうだね」

ジゼルにつられてコンタも笑い出し、他の神竜隊も笑い出した。

「ハハハ、さっきまで急ぐようなこと言ってたくせに」
「ああ、普段のチャランポランなマサシに戻ったな」
「フッ、まぁ良いんじゃないか?それがマサシの長所でもあるのだからな」

シオン、ユウタ、レイナも笑いながらマサシの言った事に自然と納得していた。記憶を無くしており、マサシの事を何も知らない事になっているネリネも最初は理解できなかったが、なぜか分からないがマサシの言う事に不安や不満を感じなかった。

「フゥ、面白い人ね、マサシって」
「え?」

ネリネの言葉にジゼルは思わず訊き返した。

「初めて会ったはずなのに彼の言う事がなぜか不安を感じないのよ。なぜなのかしら・・・・」
「・・・・・・」

「それは貴方がマサシの事を前から知っているからよ」と心の中で呟きながらネリネを見るジゼル。そして直ぐにマサシの方を見直した。

「ディアボロスとルシフェルはこの城の一番上の謁見の間にいる。ここから更に激しい戦いになるだろう、だけど俺達なら必ず乗り越えられる、行くぞ!」
「「「了解!」」」

神竜隊は四階へ繋がる階段を駆け上がって四階へ向かった。そして神竜隊が四階に着くと、そこは二階程の広さで左右に扉がある。先に階段を上がったマサシ、ユウタ、レイナが前、右、左を見て敵がいないことを確認してジゼル達を呼ぶ。

「ここには敵がいないのか?」
「いや、アレを見てくれ」

マサシが指差しを方向を見るユウタ達。彼等の目の先には刃物で付けられたような切傷、銃撃によってできた弾痕があった。

「アレは、戦闘の痕跡?」
「ああ、俺達より先にこの階で敵と戦った奴が居るって事だ」

マサシは自分の想像をユウタに説明しながら、誰かが来てるのではないかと話し出す。だがこの時マサシ達はエミリアとゾークが天空魔導城に来ていることをまだ知らない。するとその時、左右の扉が開いて扉の奥から黒い甲殻と鱗に竜翼と竜尾、そして長い二本の角に銀色の鎧、騎士剣を装備している竜人が大勢出てきた。そう、ディアボロスとルシフェルの親衛隊であるドラゴンナイトだ。

「おいおい、なんかヤバそうな奴等が出てきたぞ?」
「敵の精鋭部隊ってところだな・・・・」

マサシとユウタがドラゴンナイト達を見て武器を構えると、他の神竜隊も自分達の武器を構えた。すると、一人のドラゴンナイトが騎士剣を突きつけてきた。

「ここから先へ進みたければ我々親衛隊を倒してから進め、最もそんな事はありえないがな!」
「・・・・・・」

ドラゴンナイトの言葉にマサシは黙り込みどう対処するか考えていると、突然ユウタが話しかけてきた。

「マサシ、ジゼルと一緒に先へ進め」
「え?」
「ここか俺達で食い止める。お前達はディアボロスとルシフェルを止めろ!」
「何を言ってるんだ!お前達は魔人と戦って体力を消耗してるんだぞ!?そんな状態じゃやられちまう!」
「そうだよ!あたし達も残って戦うわ。そして皆で一緒に・・・・」
「馬鹿っ!なに悠長な事言ってるのよ!」

シオンの叫ぶような言葉に一瞬驚くマサシとジゼル。だがシオンは直ぐに静かな声で話を続けた。

「私達は魔人との戦いでまともに戦えないわ、一緒に戦っても足手まといになるだけ。でもアンタ達二人はまだ無傷、今全力で戦えるのはアンタ達だけ!それにアイツ等を倒すのはアンタ達の役目でしょう?さぁ、行きなさい!!」

シオンはこの戦いの勝敗は自分達にかかってるのだとマサシとジゼルに言い聞かせて再びドラゴンナイト達の方を向く。コンタ達もマサシとジゼルの方を向き、頷いてドラゴンナイトと見合う。

「皆・・・・」
「・・・・・・」

ユウタ達の意志の固さを知った二人はしばらく黙り込み、お互いの顔を見て頷いた。

「・・・・分かった、ここは任せたぜ!」
「必ず勝ってこの戦いを終わらせるから!」

二人の決心の付いた顔を見てユウタ達はドラゴンナイト達の方を向いたまま笑う。彼等の背中しか見ていないマサシとジゼルであったが、二人には分かっていた、彼等が笑っている事を。

「皆、ありがとう!」
「死なないでね!」

マサシとジゼルはドラゴンナイト達の事をユウタ達に任せて五階へ繋がる階段を駆け上がって行った。二人が階段を上がった直後にユウタ達は階段の前に集まり、階段を守るようにドラゴンナイト達を見て武器を構えた。そして、その瞬間にドラゴンナイト達は一斉にユウタ達に襲い掛かった。

「急ごう、アイツ等を倒せば敵も戦いを止める筈だ、ゼロビッグクランチも止められる!」
「ええ、あたし達を行かせてくれたユウタ達の為にも絶対に勝たなくちゃ!」

マサシとジゼルは戦いを終わらせる為に、ディアボロスとルシフェルの待つ謁見の間へ向かって全力で階段を駆け上がった。だが、この時二人はまだ知らなかった、その先に自分達が想像すらもしていなかった巨大な絶望が待ち構えている事を・・・・。


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