もとの世界に戻ってきたマサシ達、そしてエミリアの許しで街までの外出を許可されたので出かける事にした。
「さっそく行こうぜ」 「ちょっと待って、マサシ」
街に行こうとするマサシを止めたシオン。
「何だよシオン?」 「ジゼルちゃんの格好よ。こっちの世界でこの格好は目立つでしょう、だからまずは・・・」 「?」
シオンの言う事に首を傾げるマサシ。
「鈍感だな、お前は・・・・まず服を変えるって事だ」 「ああ、なるほど。まずは服屋か」 「そういう事♪」
レイナに言われやっと気が付くマサシ、そしてシオンは楽しそうにジゼルの手を引っ張って玄関へ走って行った。
「ちょ、ちょっとまって〜!」 「お、おいシオン!」 「待ってくださいよ、シオン姉さん!」
シオンに引っ張られるジゼル、それを追うコンタとユウタ、そして少し遅れてマサシとレイナも後を追った。そして玄関を出たジゼルの目に入ったのはいくつもの高層ビル、道路、その道路を走る沢山の車、街中を歩く大勢の人、自分のいた世界とは全くちがう物が沢山広がっていた。
「うわぁ・・・・」 「ん?どうしたのジゼルちゃん」 「すごい・・・・」
驚くジゼルの後ろのから遅れて玄関を出たマサシ達。息が上がっていた。
「はぁはぁ、シ、シオン・・・・速すぎだぞ・・・・」 「そ、そうですよ、シオン姉さん・・・・」 「お、お前は、一度騒ぎ出すと後先考えないないからな・・・・・」 「そ、そこは、私も否定しない・・・・」 「そんなことよりも、見て」 「ん?」
シオンがジゼルを指差すと彼女は呆然としていた。マサシは呆然とする彼女を見てゆっくりとジゼルの肩に手を置いた。
「どうだ?ここが俺達の住んでいる世界だ」 「す、すごい・・・・こんなに人が沢山・・・・見たことない物ばっかり・・・・」 「おい、ジゼル?・・・・お〜い」
自分の気付かないジゼルを何度も呼び、彼女の顔の前で自分の手を揺らすマサシ。すると、ようやくマサシに気付いたのか彼女はマサシを見て言った。
「すごいよマサシ!なんだかすっごくワクワクしてきちゃった!」 「そ、そうか・・・・気に入ってくれてよかった」 「ねえ、早く行こう!」 「わかった、だからそんなに慌てるなよ・・・」
楽しそうに騒いでいるジゼルとそれを宥めるマサシ。そんな二人にやりとりを見てるコンタ達。
「まるで初めて遊園地に来た子供みたいね」 「そりゃあ初めて見るものばっかりなんだから、騒ぎたくなりますよ」 「そうだな、俺も初めて遊園地に行った時はあんな感じだったな」 「私達も行こう、早くしないと二人を見失ってしまうぞ・・・」 「あ、そうよ!早くしないと、それに服屋にも寄らなくちゃ!」
四人がマサシとジゼルのほうを見て時、二人は既に四人から10m近く離れていた、コンタ達は慌てて二人の後を追った。
マサシ、コンタ、ユウタの三人が一軒の洋服店の前で立っていた。シオンが「服を買うまで待ってて」とい言うので外で待っているのだ。レイナはその付き添い、なによりその店は女性の服しか取り扱っていないという店なので三人は入りづらかったのだろう。
「どんな服かな?」 「さあな、俺にはサッパリ分からん」 「マサシはどんな服だと思う?」 「・・・・・」 「マサシ?」 「ん、ああ・・・そうだな・・・」 「どうしたの?さっきから小難しい顔をして」 「いや、ちょっとな」
三人が会話をしていると後ろからシオンの明るい声が聞こえてきた。
「おっまたせ〜♪」 「いい服ありました?」 「ええ、いい服が。どうぞ〜!」
シオンの呼ばれレイナの後ろから姿を見せたジゼル。最初に着ていた皮でできた服とショートパンツからジャケットとミニスカート、そしてロングブーツといった少し大人の女性のファッションに近かった。
「へぇ〜、なかなか似合ってるぜジゼル」 「本当、今風の女の子って感じ」 「・・・・・」 「マサシ、どう・・・かな?」 「え?あ、ああよく似合ってるぜ」 「そ、そう?ありがとう・・・・」
少し顔を赤くして話し合うマサシとジゼル。そんな中、シオンが再び明るく大きな声で言った。
「さあ、ジゼルちゃんの服も決まった事だし、次行こう、次!」 「わかったわかった、少し落ち着け・・・」
張り切っているシオンを静かに落ち着かせるレイナ、するとさっきまで静かだったマサシが口を開いて言った。
「つぎの行き先はここにしないか?」 「どこどこ?」
マサシの持っている地図にコンタ達が顔をよせた。
「マサシ、お前いつのまに地図なんか手に入れたんだ?」 「支部の受付でもらったんだよ。それよりも、ここだよ、ここ」
マサシが指差した場所を見るとそこには「カフェ・ラズベリー」と書いてあった。
「カフェか・・・いいんじゃないか」 「うん、僕もいいよ、ちょうどお腹空いちゃったし」 「あ、私も賛成よ」 「私も構わんぞ・・・・」 「じゃあ、決まりだな。ジゼルもここでいいか?」 「あたしは、こっちの事はよく分からないから、皆に任せるわ」 「よし、決まったな、じゃあ行こうぜ『カフェ・ラズベリー』へ」
六人の次の行き先は喫茶店の「カフェ・ラズベリー」に決定した。六人は目的地に向かう途中に色々な物を見てまわった。ジゼルにとっては見たことのないものばかりで驚いている。
「ねえマサシ、これ何?」
ジゼルは目の前にある大きな鉄の箱を指差しマサシに尋ねた。それはジュースの販売機だった。
「ああ、これは自動販売機だよ」 「ジドウハンバイキ?」 「ああ、この中に飲み物が入ってるんだよ」 「え、この中に飲み物が入ってるの!?」 「金はかかるけどな・・・飲むか?」 「いいの?」 「いいよ、ジュースくらい」
マサシがそう言ってポケットから財布を取り出すと後ろからユウタが声をかけてきた。
「おいおい、これから喫茶店に行くって言うのにここでジュースを買う事もないだろう?」 「あ、確かに・・・・」 「・・・・・ねえ、そのキッサテンって何のお店なの?」 「喫茶店は簡単に言えば、茶を飲む所だな。他にもケーキなんかを食べたりもするぜ」 「そうなの、じゃあいいや。ゴメンねマサシ」 「いや、自分から喫茶店に行くって言いながらジュースを買おうとした俺も・・・・な」
マサシはそう言って自分の頭を掻いて苦笑いをした。
「それじゃあ改めて、行こうか喫茶店へ」
コンタの声でマサシ達は再び目的地へ向かって歩き出した。そしてマサシ達は目的地の「カフェ・ラズベリー」に着いた。
「ここだよ」 「へぇ〜なかなかいいオープンカフェじゃない」 「そうだな、でも外のテーブルは開いてないから中しかないな・・・」 「じゃあ入りますか」
マサシはそう言って喫茶店の入口を開け中に入っていきジゼル達も後をついて行った。そして六人はウェイトレスに案内されて空いている席に腰を下ろした。そしてウェイトレスはメニューを持ってきた。
「さて、何にするかな〜」 「私はハーブティにする・・・」 「僕はチョコレートケーキ」 「私はチーズケーキにするわ」 「俺はエスプレッソ」 「皆は決まったのか?」 「ああ、後はお前とジゼルだけだぜ」
ユウタ達はウェイトレスを呼びそれぞれ注文し終わった。そんな中、マサシはウェイトレスに商品について質問をしていた。
「この『ベリーパフェ』っていうのは?」 「こちらはブルーベリーのパフェでございます」 「こっちの『ベリーべリーパフェ』っていうのは?」 「こちらはブルーベリーとラズベリーのパフェでございます」 「じゃあ、こっちの『ベリーベリーパフェ』を、そういえばジゼルはどうする?」 「う〜ん・・・・・それじゃあマサシと同じ物を」 「じゃあこの『ベリーベリーパフェ』を二つ」 「かしこまりました」
ウェイトレスはメニューを受け取り厨房の方へ歩いて行った。
「ところでマサシ、この後はどうするつもり?」
シオンの問いにマサシは水を少し飲んで問いに答えた。
「そうだな、いつ召集がかかるか解らないからな、街からは出られないしな。ジゼルはどこか行きたい所はあるか?」 「行きたい所って言われても、あたしはこっちの世界の事は解らないし・・・・・」 「例えば、何処かへ買い物に行きたいとか、遊びに行きたいとか・・・何かないか?」 「そうね・・・遊べる所ってどんな所があるの?」 「遊園地なんかどうだ?この街に遊園地があるんだけど」 「ユウエンチ?」 「いろんな乗り物に乗ることができるんだけど、どうだ?」 「なんだか楽しそう。ねえ、そこ行こうよ!」 「ああ、皆はどうだ?」
マサシは四人の意見を聞いてみた。
「俺はいいぜ、この街の中にあるところなら何処でも」 「僕も、遊園地なんて久しぶりだし」 「私もよ、折角だから、うんっと楽しみましょう!」 「私も構わない・・・」 「決まりだ!ジゼル、次は遊園地に決定だ」 「うん」
皆の意見が同意した直後、注文していたケーキなどが運ばれてきた。
「お待たせしました」 「お、来た来た!ほら、回すぞ」
ユウタはウェイトレスから品を受け取り皆に回した。そしてパフェを受け取ったマサシはそれをジゼルの前に置いた。
「ほら、ジゼル」 「うわあ、これがパフェっていう食べ物?」 「ああ、食べてみろよ」
マサシに言われ、スプーンを取りブルーベリーソースのかかったクリームをすくって口に入れた。
「おいしい・・・凄くおいしい!」 「そうか、気に入ってくれてよかった」 「うん、こんなおいしい物、今まで食べた事ない」
ジゼルはそう言ってスプーンでパフェを次々に口へ運んでいく、それを笑いながらマサシ達は見ていた。
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