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作品名:ラビリアンファンタジー 作者:ディオス

第156回   第百五十五話 連続魔法の恐怖 コンタVSウィッカ!

北東の渡り廊下ではコンタとウィッカがお互いを見合い、戦いを始めようしていた。

「他の皆も戦いを始めた頃かな?」
「そうね、じゃあ私達も始めましょうか」
「そうですね、君を倒して皆と合流させてもらいますよ」
「フフフ♪それは無理よ。だって貴方はここで死ぬんだもの」

ウィッカはその幼さとは裏腹に早く戦いたいと言いたそうな不気味に笑う。それの表情を見たコンタは一瞬背筋が凍るような恐怖を感じた。だが直ぐに気を引き締めてファイブセブンを二丁抜いて構えた。そんなコンタを見てウィッカは不気味な笑顔から普通の女の子のような笑顔を見せてクルクル回り始めた。彼女が回るのと同時に彼女の着ている赤と白のゴスロリドレスも回りだす。

「じゃ〜あ、始めましょう、かっ!」

回っているウィッカは突然地面を蹴りコンタに向かって跳んだ。コンタは咄嗟にファイブセブンを発砲。だがウィッカは片手をコンタの方に向けて自分の前に風の壁を作り出した。弾丸は風に進路を妨げられ反れてしまった。

「風の壁!?」
「当たらないよぉ♪」

コンタの数m前まで近づいたウィッカは掌から赤紫色の光に現れ、その光は徐々に形を変えて剣の形になった。

「エナジーソード!」
「ひ、光の剣!?」

突然ウィッカの掌から現れた光の剣に驚くコンタ。そしてウィッカはコンタが自分の間合いに入った瞬間、エナジーソードを大きく横へ振った。コンタは後ろに跳んでウィッカの斬撃を回避しファイブセブンを連射する。無数の弾丸はウィッカに向かって飛んでいく。だがウィッカは地面に足を付くのと同時にエナジーソードで全ての弾丸を弾いた。

「弾いた。・・・・やりますね?」
「フフフ、貴方もなかなかの反応速度よ」
「ありがとうございます。それじゃあ、今度はこっちから行きますよ!」

コンタは後ろに大きく跳び、ファイブセブンの引き金を連続で引きながら小声で契約魔法の呪文を言い始めた。それに気付いているのか分からないが、ウィッカは表情を崩さずにエナジーソードで弾丸を次々に弾き落としていった。

「水の精霊よ、水滴の砲弾で敵を撃て!アクアバレット!!」

契約魔法の演唱を終えると、コンタはファイブセブンを撃つのを止め、持ったまま両手は横に伸ばした。すると、彼の目の前に大きな水球が現れてその水球は大砲の弾の様にウィッカに向かって飛んでいった。それを見たウィッカは焦る事無く光の剣を持っていない左手を水球に向けた。

「フレイムショット」
「えっ!?」

ウィッカの口から出た言葉にコンタを自分の耳を疑った。そして今度は自分の目を疑った、ウィッカの左手の前に自分の水球と同じ位の大きさの火球が現れて水球に向かって放たれたのだ。そして水球と火球がぶつかった瞬間、爆発と白い煙が上がり二つの球はあっという間に蒸発した。

「い、今のは、まさか・・・・」
「そ♪貴方達契約者が使う契約魔法の一つ、フレイムショットよ」
「ど、どうして君が契約魔法を!?契約魔法は僕達契約者だけしか使うことができないはずです!」
「知りたい?なら教えてあげる♪」

ウィッカは茜色の髪を手でゆっくりとなびかせると、光の剣を消して両手を自分の前に持ってきて掌を上に向けた。すると、彼女の左手に小さな火球、右手には小さな水球が生まれた。その二つの球は掌の上でフワフワと浮いている。

「私は魔人の中で唯一貴方達契約者と同じ契約魔法が使えるの、私は魔人の中で一番魔力が強いからね」

ウィッカは笑顔で自分の力のことを説明しながら手の中にある二つの小さな球を消し、今度は風球と土球を生み出し、掌の上でフワフワと浮かせた。

「貴方達は契約を交わすと契約相手である魔物の力によって得られる契約魔法が変わってくる。コンタ、貴方は水属性の神竜、リヴァイアサンと契約を交わしたことにより水属性の魔法を多く取得した」
「・・・・・・」

コンタは黙ったままウィッカの話を冷静に聞いている。だが、ウィッカは途中から少女の笑顔からまるでコンタを見下す様な笑顔に変わり話を続けた。

「でもね、私は全ての属性、全ての種類の契約魔法を全て使うことができるのよ。しかも、演唱無しでね♪」
「演唱無しぃ!?」

契約魔法を使う際に必ず必要な演唱をウィッカは必要としない、つまり彼女はコンタよりも早く契約魔法が使えるという事だ。

「そうよ、こんな風にね。アースニードル!」

ウィッカが右手をコンタに向けると、ウィッカの手の前に先の尖った岩が現れてコンタに向かって飛んで来た。コンタは咄嗟に横へ跳んで岩を回避して再びウィッカの方を見た。

(今のはレイナの使っているのと同じ魔法、炎属性のフレイムショットに続いて今度は地属性のアースニードル。全ての属性、そして無演唱で使えると言うのは本当みたいだね・・・・)

コンタはファイブセブンをウィッカに向けて連射する。ウィッカは左手を向けて微笑むと、彼女の左手に青白い電流が纏い始め、掌に雷の光球が現れた。

「ライジング!」

契約魔法の名を口にした瞬間、光球から広範囲に青白い電撃が放たれた。その電撃はコンタのファイブセブンの弾丸を全て弾き飛ばしてコンタに迫っていく。コンタは高くジャンプしてその電撃を回避した。

「今度はハヤテの使っていた魔法?」

ベンヌでヘルデストロイヤーのハヤテと戦った時の事を思い出し、コンタの顔に若干歪みが生まれる。そんなコンタの表情を見たウィッカは不適な微笑を浮かべて両手をコンタに向けた。

「フォトンブラスト!サンダーソード!」

ウィッカの右手から白い波動が放たれ、左手の前に紫の雷の剣が現れてコンタに向かって飛んでいく。それを見たコンタは歪んだ表情から驚きの表情へ変わった。

「ふ、二つの種類の魔法を同時に!?」

コンタは咄嗟に二丁のファイブセブンをホルスターに戻して両手を向かって来る二つの魔法に向けて契約魔法の演唱を始めた。

「邪念を阻む水の盾よ、聖者を護れ!アクアウォール!!」

コンタの目の前に大きな水壁が現れてウィッカの二つの契約魔法を止めた。だが彼女の契約魔法の威力はコンタが想像していた以上のものだった。ウィッカの白い波動と紫の雷の剣はコンタの水壁を打ち消しコンタの真横を通過していった。だがそれと同時に二つの契約魔法はコンタの両肩を掠めたのだ。

「ううっ!!」

コンタは左肩に熱さを、右肩に痺れを感じながら降下して行き、渡り廊下に着地した。

「まさか、魔法を二つ同時に発動できるとは、驚きました・・・・」

コンタは両手を強く握り両肩から伝わる痛みに耐えてウィッカの方を見る。ウィッカは右手をコンタに向けながらゆっくりと歩いて近づいてくる。彼女の右手には冷気が纏われていた。

「言ったでしょ?私は全ての種類と属性の魔法を使うことができるって、それなら別の魔法を同時に使うことも可能。少し考えれば分かることでしょ?」

ウィッカは笑いながらコンタの数m前で止まり、冷気の纏った右手を渡り廊下の床に付けた。

「次はコレよ♪シルバーロヴィッシュ!」

ウィッカが使ったのはコンタも使うことができる水属性の契約魔法、シルバーロヴィッシュ。どのような契約魔法なのかを知っているコンタは咄嗟に後ろへ跳んでウィッカから距離を取った。その瞬間、ウィッカの右手からコンタに向かって渡り廊下が凍り始めた。コンタは再び後ろに跳んで距離を取ったものの、廊下を凍らせるのが速すぎて直ぐに追いつかれてしまった。逃げれないと判断したコンタは着地した直後に高くジャンプして冷気から逃れた。自分の立っていた場所を凍った事を確認したコンタはウィッカの方を向いた。だがウィッカは姿を消していた。コンタは目を、耳を動かしてウィッカの居場所を探る。だが全く気配を感じられない。

「何処に行ったんだ?」
「こっちよ♪」
「!!」

コンタが真上を見ると、そこには真下にいるはずのウィッカが宙を舞うようにコンタを見下ろしていたのだ。

「い、いつの間に!」
「フフフ♪」

驚くコンタを見ながらウィッカは自分の足を指差した。彼女の両足にはバチバチと電気が纏っていたのだ。それを見たコンタはすぐに答えに気付いた。

「もしかして、クイックロード!」
「ウフフフ、流石にすぐ気付いたみたいね」
「レイナも同じ魔法を使っていましたからね、発動後に足に電気が残っているって事を知っていましたからね」
「でも、たとえその事が分かったとしても、この状況を逃れることはできないわよ♪」

ウィッカは左手をコンタに向け、笑いながら言った。そしてウィッカの左の掌に炎が集まりだした。それを見たコンタは空中で体を動かしてウィッカの方に体を向ける態勢に入り右手をウィッカに向けた。

「水の精霊よ、水滴の砲弾で敵を撃て!アクア・・・」
「フレイムショット!」

コンタがアクアバレットを発動するより先にウィッカのフレイムショットが発動し、コンタに直撃し爆発した。

「うわあーーー!!」

コンタは全身から煙を上げて渡り廊下へ落下していき渡り廊下に叩きつけられた。その光景を目にしたウィッカはニヤリと笑いながらコンタと後を追う様に降下して行き、渡り廊下に着地した。

「あらあら、もうおしまい?」

ウィッカが首を傾げると、コンタはゆっくりと体を起こし、立ち上がるとウィッカの方を向いて右手でファイブセブンを抜いて構えた。彼のタクティカルスーツは爆発のせいか所々が焦げており腹部には大きな火傷の痕ができて煙が上がっていた。

「まだまだこれからですよ、この程度で死ぬほど僕は弱くありません」
「フフフ、そう。それを聞いて安心したわ。まだまだいたぶり足りないもの♪」

余裕を見せるコンタを見てウィッカはニコッと笑いながら言った。だがコンタは余裕の表情こそ見せてはいるが汗を垂らしている。

「それじゃあ、もっと派手にやりましょうか♪」

ウィッカはそう言うと両手を上に向けた。すると彼女の両手の真上に巨大な黒い球体が現れた。

「ダークネスノヴァ」
「ダークネス、ノヴァ?」
「そ、そう言えば貴方は知らなかったわね。じゃあ教えてあげる、このダークネスノヴァは闇属性魔法の上級魔法の一つ、そしてヘルデストロイヤーのボスであるゾークも使っていた魔法よ」
「ゾークが!?」

ゾークの使っていた契約魔法だと聞かされてコンタは驚きた。そしてウィッカはそんなコンタにお構いなく黒い球体をコンタに向かって投げつけた。

「そぉれっ!!」
「ヤ、ヤバイ!」

コンタは慌てて渡り廊下から飛び降り、中庭へに逃げ込んだ。そしてコンタが立っていた場所を黒い球体が飲み込み、大爆発を起し渡り廊下の一部を消し飛ばした。

「っと、危なかった・・・・」

中庭に降り立ったコンタは渡り廊下を見上げた。渡り廊下の一部が消し飛んで通ることができなくなっていた。

「とんでもない威力だ、もしくらっていたら僕は跡形も無く消えていたね・・・・」
「当然よ♪」

コンタはフッと前を向くとウィッカがゆっくりと下りて来て再び不敵な笑いを見せる。そんなウィッカを見てコンタはもう一丁のファイブセブンを抜いて構え直した。

「これで思う存分戦えるわ、さっきは渡り廊下で戦いっていたから思うように動けなかったけど、ここなら派手に動けるわ♪」
「僕を中庭へ誘導する為にダークネスノヴァで渡り廊下を消し飛ばしたと?」
「ピンポーン、そのとおり。と言いたい所だけど少し考えれば分かることよね」

コンタの閃きをまるで馬鹿にするように笑いながら言うウィッカ。だがコンタはそんな事気にもしていなかった。それどころか中庭に来たことを良く思っていた。なぜなら派手に動けるようになったのはウィッカだけではなくコンタも同じだからだ。

「中庭に誘導してくれて感謝しますよ。おかげで僕も思うがままに行動できるんですから!」
「フフフ、その自身が空振りにならない様に頑張ってね♪」

ウィッカは大きく後ろに跳んでコンタとの距離を取った。その距離は約30m、遠距離攻撃ができる二人にとっては良いポジションでもあった。そして最初に攻撃を仕掛けたのはウィッカだった。

「グランドブレイク!フリーズファング!」

ウィッカが両手を地面に付けると、地面から先の尖った巨大な岩と巨大な氷柱が次々に突き出ながらコンタに迫ってくる。コンタは大きく右へ跳んで回避する。そしてファイブセブンの引き金を連続で引いた。銃口から無数に弾丸が吐き出されてウィッカに迫っていく。だがウィッカが両手を地面から離すと左手を弾丸の方へ向けた。

「マグマタワー!」

ウィッカが契約魔法の名を叫ぶと、彼女のとコンタのちょうど真ん中の地面からマグマの柱が吹き出てきた。弾丸はマグマの高熱に耐えられずに溶けてしまった。マグマの柱からは小さなマグマが四方八方に飛び散る。マグマは周りの草を焼き尽くしていく。コンタは後ろに下がり飛んで来るマグマを回避。しかし、ウィッカには当たりもしなかった。彼女の周りの草だけを焼き払っていたのだ。まるでマグマがウィッカを避けているように。それを見たコンタはウィッカの周りを見てある事に気付いた。

(・・・・マズイ、あのまま炎が広がったら、いずれこの中庭全てを焼き尽しちゃう!それじゃあ契約者と言えど人間である僕の方が不利になる。なんとかあのマグマと炎を消さないと!)

コンタは再び二丁のファイブセブンをホルスターに納めて両手をウィッカに向けて契約魔法に演唱を始めた。

「大いなる水の精霊よ、我が意志に従い敵を飲み込め!ダイダルウェーブ!!」

コンタは自分が使える最強の契約魔法を発動した。コンタの目の前から水が湧き出てその水は広がっていき大きな津波となってウィッカに迫っていく。中庭はそれ程広くはないので津波は中庭全体を飲み込むことができる。ウィッカに逃げ道は無い、はずなのだが、ウィッカは表情を崩さなかった。そして両手を自分に迫ってくる津波に向ける。

「フリーズカプセル!」

ウィッカは今まで誰も使った事の無い契約魔法を発動してきた。彼の両手から小さな冷気が津波に向かって飛んでいく。そして冷気が恒美に触れた瞬間、津波は一瞬で氷の壁へと変わった。

「フフフ、マグマを固めるついでに私を攻撃しようとしたようだけど甘いわね。こんな手が通じると思うなんて貴方は相当お馬鹿ね♪」
「僕がそんな単純な手を打つと思っていたんですか?」

コンタの声が突然氷の後ろから聞こえてきた。そして、氷の一点が突然光だし、その光は徐々に大きくなった。

「ツインスターバレット!!」

銀色に光る二つの光弾が氷壁を貫通してウィッカに向かって飛んで来た。だがウィッカはそれを横に跳んで回避した。

「津波を凍らされる事を計算して氷壁を挟み、そのまま私に攻撃を仕掛ける。こっちが本当の狙いだったのね。で、も、やっぱり私には通用しないわ♪」

ウィッカが笑いながら再び氷壁の方を見てコンタの出方を待った。だが、その時彼女はまるで予想していなかった出来事が起きた。

「残念だけど、それも違いますよ」

声が聞こえてウィッカがフッと振り返ると、そこには氷壁の向こう側にいるはずのコンタが立っていたのだ。しかも彼はまたファイブセブンをホルスターに戻していた。

「いつの間に?」
「君がツインスターバレットに気を取られている間にですよ。そして・・・・」

コンタが片手を上げて勢い良く下ろすと、氷壁の後ろから何かがウィッカに向かって急速に近づいてきたのだ。気配に気付いたウィッカが振り返ると、彼女の視界には体を炎の様に揺らしながら駆け寄ってくる二匹の水色の狐が飛び込んできたのだ。

「なっ!?」

突然の出来事にウィッカは対処できなかった。そして二匹の狐はウィッカの腕と足に噛み付いた。魔人であるウィッカにとって、その噛み付きにたいした痛みは感じなかった。だが、その瞬間に二匹の狐は爆弾の様に爆発してウィッカを巻き込んだ。

「うわあーっ!!」

爆発と共に叫びを上げるウィッカ。その光景をコンタはジッと見ながら喋りだした。

「それは僕の作り出した『気』でできた狐、『フォックススピリッツ』。僕の気力を実体化させてそれを狐の形に変えて生き物のように操る事ができる技です。これは自分自身の気力を使うからあまり使いたくなかったんですが、君にダメージを与える為に仕方なく使いました。・・・・僕の本当の狙いはこっちですよ」

最初のダイダルウェーブはマグマを固めるだけではなく、ウィッカが凍らせる事を読み、自分の姿を隠す壁を作るため。その後、壁越しにツインスターバレットを撃ち敵の気を引くのと同時に自分の狙いがツインスターバレットであるとウィッカに思わせる。その後にフォックススピリッツを発動して二匹の気の狐を残して自分はウィッカの背後に回る、そしてウィッカが氷壁に背を向けた瞬間に狐達に攻撃命令を出して攻撃。これがコンタの考えた作戦の全体だったのだ。

「さて、これ位でやられる様な人、じゃなくて、魔人じゃありません、よね・・・・?」

コンタはファイブセブンを二丁抜いて構えた。爆発した場所からは灰色の煙が上がりよく見えなくなっている。すると煙の中から、爆発で焦げ、そして破れたゴスロリドレスから露出している肌や顔に沢山の傷を付けたウィッカが出てきたのだ。しかも彼女の表情からは笑顔は消えていた、その表情はコンタに対する怒りしか見えなかった。

「よくも・・・・よくもやったわね!」
「・・・・・・!」
「私に傷をつけただけじゃなく、お気に入りのドレスまでもこんなにしてっ!絶対に殺してやるんだから!!」

コンタを睨みながらウィッカはゴスロリドレスのポケットから何かを取り出した。彼女が取り出したのは掌サイズの小さな黄色い小箱だった。小箱の蓋を開けると、中には小さなカラフルな玉が幾つも入っている。ウィッカはその中の一つを取り出して自分の口の中に入れた。それの光景を見た瞬間コンタはウィッカの取り出したものが何か直ぐに分かった。

「アレは、キャンディーボックス?」

そう、ウィッカが取り出しのはキャンディーボックス、そして彼女が口に入れたのは飴玉だったのだ。だがコンタはウィッカの行動の意味がまるで分からなかった、なぜ戦いの最中に飴玉をなめるのだろうと。コンタが考えていると、ウィッカは怒りの表情から再び不適な笑みを見せ、口に入れた赤い飴玉を歯で挟み、それをコンタに見せた。

「フフフフ、後悔させてあげる、私を怒らせた事をね」

再び飴玉を口に中に隠したウィッカは左手を天に掲げる、すると突然ウィッカの頭上に中庭の半分はあるだろう巨大な火球が現れたのだ。いや、火球ではなく、太陽と言うべきだろう。

「なっ!」
「フフ、驚いた?コレは炎属性の『禁呪』よ」
「禁呪!?」
「契約者の魔法には『低級』『中級』『上級』の三段階があるの。でも、上級の上にもう一つのレベルが隠されている、それが禁呪。エミリアやゾークですら取得できなかった禁断の領域から生まれた負の力、最大にして最凶の破壊呪文。この飴玉をなめる事でその色と同じ属性の禁呪を一度だけ使うことができるの。そしてその禁呪の一つがこの『アポロプロミネンス』よ!」

アポロプロミネンス、太陽神アポロの名が付けられたその魔法こそ禁呪に相応しい。だがコンタはそんな事を考えている余裕は無かった。ファイブセブンを下ろして意識をウィッカだけに集中させる。そしてしばらくしてウィッカは左手を勢い良くコンタに向けて振った。そして太陽の様な火球はコンタに向かって飛んで来た。火球は中庭に生えている木や周りの城壁を飲み込んで行き、少しずつコンタに迫っていった。コンタは動こうとせずに小声でブツブツ何かを言っている。そう、契約魔法だ。

「大いなる水の精霊よ、我が意志に従い敵を飲み込め!ダイダルウェーブ!!」

再びダイダルウェーブを発動させて津波を作り出したコンタはその津波を火球に向けて流した。そしてその直後にコンタは中庭の端まで全力で走る。津波は火球を飲み込もうとするが、火球の熱が異常なまでに高いため、津波はあっという間に蒸発してしまった。そして火球はそのままコンタが立っていた場所をも飲み込みそのまま直進し、天空魔導城の城壁を破壊して突破、虚無宇宙(ゼロスペース)まで飛んで行ってしまった。そしてコンタが立っていた場所から後ろは焼け焦げた地面と大きく穴の開いた城壁しかなかった。

「そ、そんな・・・・!なんて破壊力・・・・」

驚くコンタを離れた所から見るウィッカはゆっくりとコンタに近づきながら喋った。

「やるわね、ダイダルウェーブをぶつけてアポロプロミネンスの速さを少しだけ遅らせるなんて、普通あんな状況でそれだけ冷静な判断と対応はできないわ」
「・・・・お褒めの言葉と受け取っておきます」

コンタはファイブセブンをウィッカの方へ向ける。ウィッカは立ち止まると右手の指で何かを弾け上げた。よく見ると、それはなんと黄色い飴玉だった。

(マズイ!アレを食べられたら新しい禁呪を使われる!)

コンタはウィッカの口に向かって落ちていく飴玉を撃ち落そうとするが、引き金を引く前に飴玉はウィッカの口に入ってしまった。その瞬間ウィッカは右手をコンタに向けて叫んだ。

「トールジャッジメント!!」

叫び声と共にコンタの頭上に黄色い雷が落ちてコンタを直撃した。

「うわあああああああっ!!」

体中に流れる痛みと痺れにコンタは叫びを上げる。そして落雷が終わると、コンタは体から煙を上げてバタリと倒れてしまった。更に落雷の影響かコンタの周りの草は消し飛んで焦げた土しか残っていなかった。

「あ・・・・ああ・・・・・・」

倒れたまま声を漏らすコンタを見てウィッカは拍手をしながら大笑いをした。

「キャハハハハハッ!いい気味、言ったでしょう?私を怒らせたことを後悔させてあげるって♪」

ウィッカは笑いながらコンタに近づいて行き、彼の前で立ち止まると右手から最初に使った光の剣を出した。

「でも、これで終わりじゃないわよ。楽には殺してあげない、まず両手を切り下ろして、その後両足、次に尻尾で最後は首を刎ねてあげる♪」

ウィッカが光の剣をゆっくりと上げて腕を切り落とそうとした、その時、突然コンタの右手がウィッカの左足を掴んだ。

「!?」
「契約者を・・・・甘く見ないで・・・・ください!!」
「そ、そんな!禁呪の直撃を受けてまだ動けるなんて!」
「僕達はこの一ヶ月間エミリア様から様々な知恵と力を授かりました。そのおかげで自然に体もさまざまな抵抗力を身につけたんですよ」
「で、でも、禁呪を耐えるなんてありえないわ!」
「ありえるから、今こうしているんですよ!」

コンタは言葉に力を入れて空いている左手でファイブセブンを握り、ウィッカの腹部を狙って引き金を引いた。

「妖狐気功弾(ようこきこうだん)!!」

銃口から放たれた青白い気弾はウィッカの腹部に直撃し爆発してコンタとウィッカを吹き飛ばした。二人は飛ばされて地面を転がって行き、やがて止まった。

「ぐ、ぐうう・・・・い、一度だけじゃなく二度も私に傷を負わせて・・・・!」

離れた所で倒れているコンタを睨みながらウィッカは腹部を押さえて歯を食い縛った。コンタも全身の痛みに耐えながらなんとか体を起こした。既に彼の体は限界に近いようだ、タクティカルスーツや肌の彼方此方が焦げ、出血もしている。だがそれでも彼の目から光は消えていなかった。

「クッ!もう苛めるのはやめた!次で跡形もなく吹き飛ばしてやる!」

ウィッカは立ち上がってキャンディーボックスの中の飴玉を鷲掴みに沢山の飴玉を口に入れて噛み砕いていった。それを見たコンタは目を閉じて何かに意識を集中しだし始める。

「フン、今更なにをしても無駄よ!」

ウィッカはキャンディーボックスを捨ててコンタを睨み両手をコンタに向けた。そしてコンタもそれと同時に目を開いてウィッカを見詰める。

「何その目?まだ勝てると思っているの?フフフ、無駄よ、今の貴方は狼に囲まれた狐も同然。何処にも逃げ道は無いわよ」
「それはまだ分かりませんよ?」
「ふ〜ん、まだ諦めないつもりなのね。じゃあ教えてあげる、現実は甘くないという事をね」

ウィッカは両手の魔力をコンタに向けて放とうとした時、コンタは高くジャンプした。それを追う様に視線を向けるウィッカは再び両手をジャンプしたコンタに向けた。

「馬鹿ね!上に逃げればまだチャンスはあると思ったの?寧ろ逆よ、ジャンプしている間は回避行動を取ることはできない、自分でチャンスを捨てたのよ!」
「・・・・前」
「は?」

コンタの言っていることが分からず前を見ると、ウィッカの目の前には狐の形をした青白い気が三つ、彼女に飛びかかろうとする光景が見えた。その光景を目にした瞬間、ウィッカは驚きのあまり言葉を失った。そして三匹の狐がウィッカに触れた瞬間、大爆発を起した。しかも彼女の両手には禁呪の魔力が集まっていたせいか、その魔力も爆発した為、爆発を今まで以上に激しいものだった。

「キャアーーーーー!!」

爆発の中から聞こえるウィッカの断末魔、それを空中で見ていたコンタは静かに独り言を言い出す。

「さっき君が飴玉を食べている間に僕の背後にフォックススピリッツを一列に並べて貴方の視界から隠したんです。今の君なら僕が行動を起した時、僕以外は何も目に入れないと確信していました。平常心を失い、取り乱してフォックススピリッツに気付かなかった、それが最大のミスです」

コンタは離れた所に着地し、振り返って爆発した場所を見る。そこには既に爆発が治まりその中央で呆然と立ち尽くすウィッカがいた。

「な、なんで・・・・魔人の私が・・・・人間に・・・・勝てない・・・・の・・・・・・・?」

その言葉を最後に、ウィッカの体は黒い霧状となり完全に消滅した。それを見届けたコンタはゆっくりとその場で仰向けになった。

「フゥ・・・・一つ言っておきますよ。追い込まれた狐は狼よりも凶暴です・・・・」

コンタは疲れに押されたのかそのまま眠りに付いた。コンタとウィッカの戦いはコンタの勝利、だがまだ二人の魔人が残っている。そして最大の敵、ディアボロスとルシフェルも。神竜隊の戦いはこの後更に激しさを増すのだった。


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