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作品名:ラビリアンファンタジー 作者:ディオス

第151回   第百五十話 戦場という名のチェス盤 No2

エクス・デストロの別働隊がサンドリアの南門方面へ現れた。マサシがサンドリアの主力部隊を町に待機させたおかげで南門へ送る戦力を残す事ができた。マサシとジゼルは南門の部隊の指揮を取るためにユウタ達に北門方面を任せて急いで町へ戻るのだった。

「よし、もうすぐ北門に着く!」
「急いでお城に戻らないと!」
「分かってる、飛ばすから捕まってろ!」
「うん!」

マサシにしがみ付き、マサシもスロットルを回して更にバイクの速度を上げて城へ繋がる大通りを走りぬけた。同時刻、南門方面ではエクス・デストロの黒騎士達が並んで南門を潜り町に侵入してきた。黒騎士達は町に入ると直ぐに散らばり建物を破壊していく。南門から城へ続く大通りにある建物の中では町の人々がガタガタと震え、窓ガラスが割れる音や悲鳴がするたびにビクッと反応した。そして黒騎士達は腰の騎士剣を抜き、建物の中に入ろうとした、その時。

「突撃ーっ!!」
「!」

突然聞こえてきた声に黒騎士達はフッと声の聞こえて方向を向く。そこには銀と青の鎧を身の着け大勢の兵士や騎士が剣や槍を構えて走って来るのが見えた。そう、彼等こそライトシンフォニアの主力部隊の兵士達だ。兵士達は黒騎士達に向かって行き、町に侵入してきた黒騎士達を迎え撃ち始める。それと同時に南門方面の各場所でライトシンフォニアの兵士達とエクス・デストロの黒騎士達の戦いが始まった。

「フッ!ハァッ!!」

一人の騎士が黒騎士の剣を弾き正面から斜め切りを黒騎士に入れ、黒騎士は体を黒い霧に変えて消滅した。騎士は剣を空に掲げて周りで戦っている仲間の騎士や兵士達に向けて大きな声を上げた。

「皆、怯むなぁ!我々にはライトシンフォニアという心強い味方がついている、彼等がこの南門に着くまで我々だけでなんとしても持ち堪えるのだ!!」
「「「おおぉーー!!」」」

騎士の声に周りの騎士や兵士達の士気も高まり、彼等は自分達の武器を握り、黒騎士の軍団に向かって走って行った。そして次々に黒騎士を薙ぎ倒していく、だが彼等の勢いも直ぐに途切れてしまう。黒騎士達の後ろから量産型Urs(ウルス)軍団が現れ、ライトシンフォニアの部隊に襲い掛かってきた。

「で、出たぞ!鉄の巨人だぁー!!」

量産型Ursに驚きその場に止まる兵士達。そして量産型Urs達の額の石が黄色く光だした。それを見た兵士達は四方バラバラに広がる。そして量産型Urs達は額の石からアトミックレーザーが発射され、兵士達に襲い掛かる。レーザーが命中した所は爆発し周りの兵士や騎士を吹き飛ばした。

「ク、クソッ!怯むなぁ、魔術師部隊出撃!!」

騎士の言葉を合図に兵士達の後ろから黒いローブを身に纏い、杖を持った男が五人一列に並んで前に出た。そして杖の先を量産型Ursに向けて呪文を唱えた。

「ファイヤーボール!!」

呪文を唱え終えて魔法の名を叫んだ魔術師達。そして杖の先から火球が放たれ量産型Ursに命中し爆発、それと同時に黒煙が上がる。だが煙が消えると、中から傷すらついていない鉄の巨人が一歩一歩、ライトシンフォニアの主力部隊に向かって歩いてくる。無傷の量産型Ursを見た魔術師や兵士達は驚き言葉を失った。

「そ、そんな・・・・魔法も効かないなんて・・・・・・」

騎士達が驚くいている中黒騎士達は量産型Urs軍団が近づいてくる。サンドリアの兵士達が後退しようとした時、彼等の背後から声が聞こえてきた。

「道を開けろ!!」
「「「!」」」

兵士達が振り返ると、そこには銃火器を装備したライトシンフォニアの傭兵達、そして3台の90式戦車の姿があった。エミリアが残した一個中隊だ。そして隊長らしき傭兵が騎士に近づいてきた。

「大丈夫か!」
「おおっ!アンタ達はライトシンフォニアの・・・・!」
「あの巨大ロボットは我々任せてもらいたい。アンタ達は黒騎士やガーゴイル達を!」
「心得た!・・・・・・それから」
「ん?」
「来てくれて、感謝する」
「礼など不要だ。一つの世界に生きる人間として助け合うのは当然のこと。共に戦い、共に生き残ろう!」
「・・・・ああっ!」

騎士と隊長が短めの握手をし、再び向かって来る敵に目を向ける。そして隊長が後ろにいる別の傭兵達に手を上げて合図をする。すると、数人に傭兵が何やら大きな機材を台車に運んで来た。台車に乗っている機材は多くのランプを光らせて作動している。そして機材から一本の太いコードが伸び、そのコードの先は傭兵が持つ奇妙な形の銃に繋がっていた。その銃は先はパラボラアンテナのような形をしており、ライフルの様な長い銃身をしている。傭兵達が配置に就くのを確認した隊長は機材の近くに立っている傭兵に指示を出した。

「よし、電磁パルスガン、充電開始!」
「了解、充電開始!」

隊長の合図で傭兵は機材のスイッチを入れ、電磁パルスガンをいう銃を持っている傭兵は銃先を量産型Urs達に向けた。

「充電完了しました!」
「よし、電磁パルスガン、発射!」

隊長の合図で傭兵は引き金を引くと銃先からパルス状の黄緑色の電磁波が発射されて量産型Ursに命中した。電磁波が消えると量産型Ursは動きを止めてバチバチと関節部分から火花を散らせた。そして次の瞬間量産型Ursは爆散、そして周りの黒騎士達を巻き込んだ。それを見たサンドリアの兵士達は驚き、直ぐに歓喜の声を上げた。

「うおーーっ!やったぞぉー!」
「あの鉄の巨人を倒しちまった!」
「流石ライトシンフォニアだぁ!」

喜びの声を上げるサンドリアの兵士達を見てライトシンフォニアの傭兵隊長は電磁パルスガンを見た。

「流石はアイシャ主任が開発した新兵器だ。様々な電子機器、兵器を破壊する電磁波を発射するパルスガン。コイツがあれば量産型Urs達を倒す事ができる、彼女に感謝しなくてはな」

電磁パルスガンを開発したライトシンフォニアの技術開発主任のアイシャに感謝するように言う隊長は再び敵の方を見て自分の持っているG36を構えて傭兵、戦車に指示を出し戦闘命令を出した。

「我々はこのまま大通りの敵を迎え撃つ!第三から第五分隊は北西の市場通りへ、第六から第八分隊は南の噴水広場へ向かいサンドリアの部隊と合流し敵の進攻を防げ!」
「「「了解!」」」

隊長の指示で各分隊は自分達の護るエリアへ向かった。そして残った第一と第二分隊は引き続き大通りの護りに移った。





一方、虚無宇宙(ゼロスペース)の天空魔導城の謁見の間ではディアボロスが玉座に座り、大型モニターに映っているラビリアン全世界の状態と自軍の戦況を見ていた。ディアボロスの隣ではルシフェルが同じ様に大型モニターを見ている。

「他国の侵攻は順調よ。それから、サンドリアの南門方面にも一個師団を出撃させたわ。これでアイツ等も終わりね」
「うむ・・・・」
「どうしたの?ディアボロス」

ディアボロスの様子を見たルシフェルが尋ねると、一人の竜人が謁見の間の床から上がるように姿を現した。その竜人は人間のように二本足で立ち、黒い甲殻に銀色の二本角、黒い竜翼と竜尾を生やしている。そして紫色の鎧を身に纏い、腰には一本の騎士剣が納めてある。一言で言うとドラゴンナイトだ。そのドラゴンナイトはディアボロスとルシフェルの前で跪いた。

「南門の別働部隊から連絡が入りました。ライトシンフォニアとサンドリアの部隊が現れて激しく抵抗しているとの事です」
「何ですって!」
「やはりな・・・・」
「どういう事?」
「北門方面の映像を映してくれ」
「え?ええ」

ルシフェルは理解できずに片手をモニターに向ける。すると、モニターの映像がサンドリア全体を映す映像から北門方面の映像に変わった。そしてディアボロスとルシフェルは映像を見てある事に気付いた。

「マサシとジゼルがいない?」
「アイツ等、こちらの陽動作戦に気付いたようだ」
「この短時間で?」
「しかも北門方面にマサシとジゼルがいないという事は、奴等は南門の方へ向かったという事だ。フフフ、流石だな。だが長く持ち堪える事はできん、こちらの戦力は無限、だが向こうの戦力には限りがある。制圧するのにはそう時間は掛からないだろう」
「そうね、制圧が完了したら全ての人間を虚無宇宙へ連れて来てゼロビッグクランチで世界を消滅させてあたし達の理想の世界を創るのね」
「ああ」
「ちなみに人間達はどうするの?」
「そうだな、奴隷として生かしておくのもいいだろう」
「ウフフフフ、最高ね。あたし達を受け入れなかった人間達が奴隷として生きるなんて」

ディアボロスとルシフェルは自分達の理想の世界の事を考え、不適な笑みを浮かべながらモニターを見る。ディアボロスは少しモニターを見た後にドラゴンナイトを見た。

「ゼロビッグクランチの方はどうなっている?」
「ハイ、ゼロビッグクランチを発動するためのエネルギーは現在30%まで溜まっています」
「30%か、100%まで溜まるまでの時間は?」
「四時間程かと思われます」
「四時間か、だったら四時間以内に全ての国を制圧しなければならないな」
「それじゃあ、この城に残してある戦力も送り込んでサンドリアに攻撃をしかけましょう」
「そうだな、一気に奴等を蹴散らすか。この城の守備部隊以外の戦力を全てサンドリア制圧に向かわせろ」
「ハッ!」

ディアボロスの命を受けてドラゴンナイトは沈むように床に消えていった。





その頃、マサシとジゼルの乗ったバイクはサンドリア城の正門の前で止まっていた。二人はバイクから飛び降りるとエミリアの待つ作戦会議室へ向かった。実は南門方面に向かう前に会議室によって状況を把握するようにとエミリアから通信が入ったのだ。会議室の前に付いた二人はドアをノックする。

「エミリア様!マサシ、ジゼル、ただいま戻りました!」
「入りなさい」

エミリアの許可を得てマサシとジゼルは入室した。中に入ると、エミリアやハイドリア、そして大勢の将校が入室してきた自分達の方を見た。

「マサシ、ジゼル、大丈夫ですか?」
「ええ、大した傷も負ってません」
「そうですか」

マサシの報告を聞きエミリアは一安心したのか笑みを浮かべる。

「エミリア様、戦況はどうなんですか?」

ジゼルが今の戦況を聞こうとエミリアに尋ねるとエミリアは真面目な表情でジゼルとマサシの方を見た。

「南門方面から黒騎士やガーゴイル、そして量産型Urs達も大勢出てきました。今サンドリアの主力部隊の八割と我が社の一個中隊が迎撃しています」
「八割?」
「そう言えば、ここに来る途中にサンドリアの部隊と擦れ違ったわよね?」
「ああぁ、アレは残り二割の部隊だったのか」

城へ向かう途中に自分達が見たサンドリアの部隊を思い出してマサシとジゼルは納得した。

「貴方が主力部隊を待機させてくれたおかげで南門を護る戦力を残す事ができました。ありがとうございます、マサシ」
「いえ、敵の陽動作戦に気付いたのは偶然です」
「例え偶然でも貴方がサンドリアを護ったのは事実ですよ」

笑って自分を見るエミリアの顔を見てマサシは喜びを感じた。そして再び真面目な顔になったエミリアは今後の方針について話し出した。

「現在町はサンドリアの主力部隊と我が社の部隊でなんとか持ち堪えていますが、敵の戦力が分からない以上迂闊に戦力を分けることはできません。長期戦になってしまえば私達に勝ち目はありません」
「ではどうするのですか?」
「ユピローズ王国以外の国でも敵との戦力の差に押さえているようです。このままでは長くは持ちません、そこで貴方達神竜隊には空中部隊を率いて敵の本拠地と思われるあの浮遊城へ向かってもらいます」
「ええっ!敵の本拠地に、ですか・・・・?」
「この戦いを終われせるには敵将を討つしかありません」
「ですが、あたし達はいなくなったら防衛部隊の戦力も大きく下がります!」
「その事でしたら、もう手は打ってあります」
「「え?」」





それから数十分後、北門方面ではユウタ達が休む事無く戦っていた。

「ハァハァ、切がないぜ・・・・」
「サンドリアの部隊が来てくれたけど、これじゃあこっちの体力が持たない」

息を切らしながらユウタとコンタが話していると、市松がコンタの所へ駆け寄ってきた。

「秋円大尉から連絡が入った、神竜隊、全員集まってくれ!」
「「「!」」」

マサシからの連絡があると聞いたネリネ以外の神竜隊はレベル・5を解除し元の姿に戻り市松の下へ駆け寄った。

「マサシから連絡ですか!?」
「ああ、急いで城へ来てくれと連絡があった」
「え?でも私達がいなくなったらこの北門方面の守りが弱くなってしまうんじゃ・・・・」
「うむ・・・・・・その事なのだが、別の部隊がこちらと南門方面に向かっているとの事だ」
「別の部隊?」

シオンが首を傾げていると、町の方からこちらに近づいてくる物が見えた。だが一つではない、沢山の物体が地上と空から近づいてくるのだ。やがてユウタ達の目で確認できる所まで近づいた。見覚えのある装備をした兵士達、そして見覚えのある戦車に戦闘機、そしてそれを見た神竜隊は目を疑った。

「ア、アレは・・・・ヘルデストロイヤー!?」
「ど、どうしてアイツ等が・・・・?」

ヘルデストロイヤーの突然の登場に驚きを隠せないレイナとネリネ。勿論ユウタやコンタ、シオンも同じだ。だが市松はマサシから聞かされていたせいかあまり驚かなかった。だが、気に入らないのか表情は若干曇っている。





一方マサシとジゼルは町の広場に止めてあるジェット輸送機に荷物を積みながら話をしていた。

「ねぇマサシ、本当に大丈夫なの?」
「俺にも分からない。だけど、他に方法がないんじゃ仕方ないさ」
「だけど・・・・」
「お前が納得できないのも分かる。俺だって受け止め切れていないんだからな。正に苦肉の策さ・・・・」

北門方面にヘルデストロイヤーの部隊が現れた訳、それは数十分前のマサシ達の会話にあった。

『その事でしたら、もう手は打ってあります』
『『え?』』
『苦肉の策、ですが、この状況では他に選択肢はありません』
『どんな手ですか?』

マサシはエミリアに作戦の内容を尋ねると、目を閉じていたエミリアはゆっくりと目を開いて話し出した。

『ゾークとヘルデストロイヤーの傭兵達を解放します』
『『ええ〜〜〜〜〜〜〜っ!!?』』

予想もしていなかった作戦にマサシとジゼルは声を上げる。周りにいたハイドリアは将校達は先にエミリアから聞かされていたの驚きはしなかったが、市松と同じ様に曇った表情をしていた。

『エ、エミリア様、本気なんですか!?ゾーク達を解放するなんて!』
『そうですよ、もしアイツ等があたし達を裏切って逃げ出したり敵側に付いたりしたら!』
『分かっています、ですがこのままでは解放しようとしまいと何れは敗北します。だったら例え使いたくない方法でも使うしまありません』
『『・・・・・・』』

エミリアの言う事も一理あるとマサシとジゼルは黙り込んだ。エミリアは二人の顔を見た後にハイドリアの方を見て話を続ける。

『彼等がもし私達を裏切るようなことがあれば、私が全ての責任を取ります。ハイドリア陛下、お願いします、彼等を解放する許可を!」
『・・・・・・致し方ありませんな』
『陛下!?』
『エミリア殿の仰るとおり、このままでは我々は負ける、だったら賭けてみるしかないだろう。私は王としてこの国を守らねばならんのだ』

将校の方を向いてハイドリアは王としての考えを口にした。ハイドリアの王としての義務と答えを聞いた将校は黙ったまま頭を下げた。どうやら納得したようだ。

『ありがとうございます、陛下。では私はこれからゾークの下へ向かい話し合いをしてきます。マサシ、ジゼル、貴方達二人は北門方面の部隊に連絡を入れた後、敵浮遊城へ向かう準備を始めてください』
『分かりました』
『ハイ・・・・』

マサシとジゼルはやや納得のいかない様子で一礼して会議室を後にした。これが数十分前にあったマサシ達の会話だった。

「エミリア様にとっても苦渋の選択だろうな。それにゾークも昔はエミリア様の愛した男だったんだ、彼女も知らず知らずの内にゾークに助けを求めていたのかもしれない」
「頼っていいのか、いけないのか、複雑なところね。それにゾークが素直に協力してくれるとも思えないし」
「ああ、だけど今はこれしか手がないんだ。今は信じよう、エミリア様の選択が正しいと!」
「・・・・うん!」

敵の圧倒的な戦力に追い詰められて行くマサシ達はヘルデストロイヤーを解放することになった。果たしてこの選択が吉と出るか凶と出るか、それはまだ誰にも分からなかった。


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