罪滅ぼしが終わり元の世界へ戻るマサシとコンタ、そしてそれについて行く事になったジゼル。三人はコンタがラビリアンに来る時に使ったゲートを使い、地球へ向かった。
「うわあ!」 「いたっ!」 「むぎゃ!」
ゲートから放り出されるように出てきた三人はその場に倒れこんだ。
「いててて、二人とも大丈夫か?」 「う、うん・・・大丈夫」 「僕も、でも行く時もこんな風だったのにどうしてうまくいかないんだろう・・・」
どうやらコンタはラビリアンに着いた時もゲートから放り出されたんだろう。
「ところでここは?」
ジゼルが辺りを見回すとそこは小さな部屋だった。周りは白い壁、多くの機材が置いてあり、コードが沢山繋がれており、三人はその部屋の中心にいた。
「なんなのここは?」 「ここは第四支部のゲート実験室だよ」 「お前はここからラビリアンに?」 「うん」
立ち上がり、三人が会話をしていると部屋に三人の男が入ってくる。服装は白衣に眼鏡、科学者だ。
「おお、お戻りになりましたかコンタ君!」 「はい、それにほら」
コンタは自分の後ろに立っているマサシを指差した。
「こちらが秋円マサシ君ですか?」 「はい、任務完了しました♪」
コンタが敬礼し任務完遂を知らせる姿を見てマサシが別の科学者に問い掛ける。
「帰ってきたいきなりだが、ここの支部長に合わせてくれないか?」 「はい、ですが支部長より上の方がいらっしゃってます」 「誰だ?」 「社長です」 「・・・・・」 「・・・・・」
しばらくマサシとコンタが口を閉じていたが、すぐに大声を上げた。
「「え〜〜〜!!エミリア様!?」」 「はい、支部長室でお待ちです、お急ぎを」 「ど、どういうことだよコンタ!そんなこと聞いてないぞ!」 「ぼ、僕だって知らないよ!エミリア様が来てるなんて!」 「ね、ねえ二人ともどうしたの?」
後ろから話しかけてきたジゼルに気付き二人は少し落ち着いたようだ、振り返って言った。
「それは後で話すから、とりあえず支部長室に行こう」 「そうだね」 「う、うん・・・」
ジゼルは少し納得のいかない様な顔で二人のあとを着いて行く、すると・・。
「あ、あの〜、そちらの女性はどちらですか?」 「ん?ああ、彼女はあっちの世界の住人だ、代表で来てもらったんだよ。それじゃ〜な」
マサシの簡単な説明に悩まされている科学者達をおいて三人は実験室を後にした。
支部内を歩く事数分、二人は「支部長室」と書かれている部屋の前にいた。来る途中、周りの人達からジロジロ見られていたが気にしてはいなかった、ジゼル意外は・・・・。
「ここか・・・」 「ねえ、ここに来るまでに沢山の人があたしをジロジロ見てたけど・・・・」 「仕方ないさ、こっちの世界じゃお前みたいな服を着てる奴なんないないんだし、しかも髪がピンクだから余計に目立つよ」 「仕方ないでしょ、生まれつきなんだもん。それにあたしの世界ではこの色の髪は普通よ」 「確かにそうだけど・・・・」 「まあまあ、二人とも。話はエミリア様に会ってからにしようよ」 「そうだな、それじゃ・・・」
マサシは服装を整え扉をノックしようとした、すると中から女性の声が聞こえてきた。
「入りなさい」 「ええっ!ど、どうしてわかったんですか?」 「ウフフ、そんなに大きな声で話していればわかるわよ。入りなさい」 「「は、はい!」」 「・・・・・・」
声を合わせ返事をするマサシとコンタ、しかも少し顔が赤い、恥ずかしかったのだろう。そんな二人と違い少し驚きの顔のジゼル。三人はゆっくりと支部長室に入った行った。そこには大きなソファーに座って紅茶を飲んでいるエミリアの姿があった。だが、彼女だけではなかった、なんとそこには。
「よう」 「お帰り、二人とも」 「無事だったか」 「ユウタ!シオン姉さん!レイナ!」 「お、お前達もいたのか?」
なんとそこにはマサシとコンタの仲間である神竜隊のメンバーが全員いたのだ。三人もエミリアと同じようにソファーに座り紅茶を飲んでいる。
「無事でよかったわね二人とも!」 「シオン姉さんもお元気そうで・・・」 「まったくよう、相変わらずシオンにだけは礼儀正しいな、コンタ」 「そんな事ないよ、ちゃんと他の人にも礼儀正しくしてるよ」 「その中に私達は入っているのか?」 「レイナ達は別♪」 「なに〜?」 「お前という奴は・・・」 「まあまあ、ユウタもレイナも大人気ないわよ」 「ったく。・・・・・・ようマサシ、無事だったか」
ゆっくりとソファーから立ち上がりマサシの下へ歩くユウタ。
「ああ、なんとかな」 「ま、お前なら無事だって信じてたぜ」 「そうかい・・・・しかしお前等、コンタと一緒に迎えに来ないで部隊編成とは・・・」
苦笑いをしながらユウタと腕を組むマサシ、シオンに甘えるコンタ、その姿を呆れ顔で見るレイナ。そんな中、ユウタがマサシの後ろにいるジゼルに気が付く。
「おいマサシ、彼女は?」 「彼女はジゼルだ。ラビリアンの人達の代表として来てもらったんだ」 「ジ、ジゼル・アルフォントです」 「よう、俺は金山ユウタだ」 「私は狐火シオンよ、それでこっちの金髪の子が・・・」 「レイナ・スズキだ、よろしく」 「は、はい。よろしく」 「そんなに硬くなるなよ」 「で、でも・・・・」
少し硬くなっているジゼルを解そうとするマサシ。そして彼女を囲むようによってきた神竜隊の仲間達。するとソファーに座っていたエミリアが口を開けた。
「それくらいにしてあげなさい。ジゼルさん、困ってるじゃない」 「あ〜、そうですね・・・」 「とりあえず、座りなさい。話はそれからよ」 「「「「「はい!」」」」」
神竜隊のメンバーがほぼ同時に返事をしてゆっくりとソファーに座った。
「ジゼル、お前も座れよ」 「う、うん・・・」
マサシの隣に座ろうとするジゼル。彼女はまだ緊張している、そのせいか歩き方や座った後もまだ硬かった。そんな時、エミリアが優しく言った。
「ジゼルさん、そんなに硬くならなくていいのよ、ここを自分の家だと思っていいから」 「あ・・・・・はい、ありがとうございます」
エミリアの笑顔を見たジゼルの体から緊張が消えた、そしてジゼルは顔を赤くして小さな笑顔を見せた。
「改めて、マサシ、おかえりなさい。そしてジゼルさん、はじめまして、私はライトシンフォニアの社長、エミリアよ。よろしくね」 「はい、ジゼルです。よろしくお願いします」
お互いに自己紹介をし終わった後、ジゼルがマサシに小声で語りかけた。
(ねえ、マサシ) (なんだ?) (エミリアさんって不思議な人よね) (お前もそう思うか?俺達もあの人の笑顔を見ると何だが気持ちが落ち着くんだよ、まるで子供を癒す母親みたいだ) (あたしもそう思った、あの人の笑顔を見た時、あたし緊張しなくなったもん) (ハハハ、そうか)
二人が小声で話していると、ユウタが話しに割り込むように言った。
「おい、エミリア様が本題をお話になるぞ」 「あ、すまん・・・」 「ごめんなさい・・・」 「まったく・・・エミリア様、お願いします」 「それじゃあ、本題に入るわね。最近のヘルデストロイヤーの行動だけど・・・・・」
エミリアの説明である程度の状況を把握した三人。だが、それは信じ難い現実を受け入れるという事でもあった。
「つまり、ヘルデストロイヤーの戦力の五分の四はラビリアンに送り込まれるって事ですね?」 「ええ、しかも『自然の四塔(フォースド・ガイア)』まで動いてるらしいの」 「自然の四塔(フォースド・ガイア)!?」
自然の四塔(フォースド・ガイア)と言う言葉を聞きマサシは立ち上がりテーブルを両手で叩いた。
「マサシ、その自然の四塔(フォースド・ガイア)って?」 「自然の四塔(フォースド・ガイア)はヘルデストロイヤーの中で最も戦闘能力、忠誠心が高い四人の契約者、分かりやすく言えば敵の四天王だ・・・」 「四天王・・・・」
四天王、それを聞きジゼルは確信していた、その四人は只者ではない、と。しかしジゼルには他にも気になる点があった。
「あの、質問があるんですけど・・・」 「どうしたの?」 「どうして、ヘルデストロイヤーは全ての戦力でラビリアンに行かないんですか?侵略するなら全戦力のほうが成功率が高いと思うんですけど」 「確かに、いくらラビリアンには存在しない兵器や武器を使うからといっても、奴等はラビリアンの人達を全て敵に回す事になるんだから、50000人中10000人もこっちに残すのはおかしいな・・・・」
ジゼルの質問内容を聞きおかしいと考えるマサシ。するとエミリアが口に動かした。
「おそらく、残りの10000はこっちの世界で敵対する組織を潰しておくために残してあるのかもしれないわね。もしくは増援」 「増援・・・・」 「でも、これは私の考えであって本当にそうなのかは分からないわ、もしかしたら別の理由があるかもしれない・・・・」 「そっちは私が後で情報部に調べるよう連絡しておきます」 「お願いね、ユウタ。それで、次はマサシ達の教えてくれた情報だけど、敵の軍事総責任者がラビリアンにいたのね?」 「はい、敵は自分の事をUrsと言っていました」 「しかし驚いたわね、ロボットが自分の意思で動くんだもの」
シオンが驚いた後、隣に座っているレイナが静かの自分の考えを言った。
「おそらく、そいつには人間の脳が移植されているんだろう・・・」 「脳を移植?」
レイナの考えに聞き返すジゼル。
「そんなことができるんですか?」 「ああ、こっちの世界の医学をうまく使えば簡単な事だ・・・」 「マサシ達の話ではそいつは人間のように話していたらしいからな。しかも動きまで人間の動きに近かったらしいじゃないか、遠くでロボットを気配を消しながらリモコンで操縦したり、マイクで会話するのは至難の業だ。中に入って操縦するには小さすぎる、だったらレイナの考えが正しいだろうな」
ユウタの納得のいく答えにジゼルは驚きと「信じられない」という顔をした。
「とにかく、奴等の事を詳しく知るには情報がまだ少ないの、だから貴方達はこの支部から離れないで待機してるように」 「「「「「はい!」」」」」 「はい」
神竜隊の少し後に返事をするジゼル。そんなジゼルとマサシを見てエミリアがマサシ達に笑いながら言った。
「でも、折角ラビリアンから帰ってきたのにこの支部から離れてはいけないって言うのは少し厳しいわよね」 「え?」 「だから、この支部が配置されている街までなら外出してもいいわよ」 「「ええ〜!?」」
エミリアの出した提案に声を上げるマサシとジゼル。
「ちょ、ちょっと待ってくださいエミリア様!こんな時に休暇ですか!?」 「いいえ、休暇じゃないわ。外出を許可しただけよ」 「ですが、ヘルデストロイヤーとの大きな戦いを前にそんな事・・・・」 「あら、じゃあマサシは久しぶりの街を見たくないの?」 「い、いえ・・・・その・・・・」 「それに、折角ジゼルさんもわざわざラビリアンから来てくれたんだし、案内してあげたら?」 「え、あ、あたしは別に・・・・」 「いいじゃねぇか」
困り果てている二人を肩の後ろから叩くユウタ。
「彼女をいろいろな所へ連れってやれよ、俺達も帰ってきたお前を祝ってやりたいしな」 「そうよ、エミリア様がいいって言ってるんだからさ♪」 「ああ、私も同感だ・・・」 「僕も賛成だよ」 「みんな・・・・・」
心の底から帰ってきた自分を喜んでくれる四人に心を打たれたのか、笑いながら答えた。
「そうだな、よし!じゃあ街に行くか!」 「イエ〜イ!」
嬉しさに思わず飛び跳ねるコンタ。そしてマサシはゆっくりジゼルのほうを向き、手を差し伸べた。
「行こうぜ、ジゼル」 「で、でも・・・」 「美味いモンでも食いに行こうぜ」 「・・・・・うん」
小さく笑うマサシを見て、ジゼルは微笑みながらマサシの手に自分の手をのせた、まるでパーティーでダンスに誘われた貴族の少女みたいに。二人はゆっくりと支部長室を後にし、それ後ろをゆっくりとついて行くコンタ達。彼らは心の中で笑っているのかもしれない、デートだ、と。
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