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作品名:ラビリアンファンタジー 作者:ディオス

第146回   第百四十五話 運命の日 開戦の序曲

レベル・5になり覚醒空間から戻ったマサシとジゼルはユウタ達と共にエミリアの修行を受けて更に力をつけた。マサシとジゼルは自分達のいない間により力をつけたユウタ達を見て驚き、ユウタ達もレベルを上げ、更に力を得たマサシとジゼルを見て驚いた。彼はエクス・デストロからラビリアンを守るための力を少しずつ得つつあったのだ。既に各国ではエクス・デストロを迎え撃つための準備を終え、いつでも戦える様にしてある。そして、ディアボロスとルシフェルの演説があった日から一ヵ月後、遂にエクス・デストロの使者がやって来る日が訪れた。

「これでよしっと」

宿の部屋でマサシが服装を整えている。その服装は今までマサシが着ていた服とは明らかに違った。ライトシンフォニア特注の白いコート、その下にはライトシンフォニアの幹部だけが着ることの許される銀色のタクティカルスーツ。そして腰にはアロンダイトとシグザウアーが納められている。

「こっちも準備できたよ」

マサシが声のする方を向くと、そこには自分と同じ様に白いコートとその下に銀のタクティカルスーツを着るピンクのツインテールの少女、ジゼルが立っていた。彼女もマサシと同じ様に服装を整え、新しい相棒であるブリュンヒルドを腕につけて準備をしていたのだ。

「もうすぐ迎えが来るんだよね?」
「ああ、そろそろ外に出ていよう」
「ええ」

準備を終えた二人は真剣な表情をして部屋を後にした。そして二人は宿の外に出て市場へ続く大通りの前で立ち止まった。

「今何時?」
「・・・・午前9時36分だ」

ジゼルに時間を聞かれて自分の腕についている腕時計を見るマサシは静かに時間を伝える。

「・・・・確か、10時だったよね」
「ああ、昨日の演説ではな」

昨日の演説。実は昨日の夕方頃にまたディアボロスの声が世界中に向かって放たれたのだ。そして明日、つまり今日の午前10時に各国の首都に使者を送って返答を訊くと伝えてきたのだ。

「今日やって来る使者にあたし達の答えを伝えてエクス・デストロに宣戦を布告し、戦いの準備をするんだよね?」
「ああ、何も無ければな・・・・」
「・・・・・・『あの事』、まだ気にしてるの?」
「勿論、アイツは俺から生まれてきた闇の俺だ、奴の考え方は多分俺と同じはず。だから、アイツも計算しているはずだ、この返答で俺達『ラビリアン連合軍』がどう返事をするか、そしてアイツがどんな行動に出るか」

ラビリアン連合軍とは、マサシとジゼルが覚醒空間に入っている間に結成されたエクス・デストロと戦うためにラビリアン全世界の国が結集して作られた軍隊の事である。ラビリアンその物を消すエクス・デストロと戦うには全ての国が協力しなければならない。それ故にラビリアン連合軍の結成は直ぐに可決された。そして、ジゼルの言った「あの事」とは・・・・。

「マサシ、迎えが来たよ」

ジゼルの言われてマサシがジゼルの指差す方向を見ると、ライトシンフォニアの軽装甲機動車が向かって来るのが見えた。そして軽装甲機動車は二人の前で止まった。すると、運転席のドアが開き、中から二人と同じ銀色のタクティカルスーツを身に纏ったユウタが出てきた。

「よう!準備は終わったようだな」
「ユウタ、お前が迎えだったのか」
「まぁな、コンタ達はサンドリアの全軍の編成や指揮系統の確認なんかをしている。一番速く手が空いた俺が迎えに来たって訳さ」
「成る程ね」
「さあ、時間が無い早く乗った乗った」
「OK。マサシ、行きましょう」
「ああ」

ユウタが再び運転席に乗ると、マサシとジゼルもそれに続くように後部座席に座りドアを閉める。その直後、三人を乗せる軽装甲機動車は城へ向かって走り出した。しばらく走ると、軽装甲機動車は城門の前で止まった。三人が下りると門番が敬礼をして三人を通した。城の中に入り待ち合わせ場所の部屋へ向かう途中、シオンとレイナにばったり会った。

「マサシ、ジゼル、おはよう」
「ああ、おはよう、二人とも」
「おはよう」

マサシに笑いながら挨拶をするシオンとマサシに挨拶をされ、いつもどおり簡単な返事をするレイナ。二人もマサシ達と同じ様に銀色のタクティカルスーツを身に纏っていた。

「コンタは何処にいるんだ?」
「コンタならネリネと一緒に部屋で待ってるはずよ」
「なら俺達も急ごう、もうすぐ10時だしな」

マサシはそう言って待ち合わせ場所へ向かって再び歩き出す。ジゼル達もマサシの後を追う様に歩き出した。

「ところでシオン」
「どうしたのジゼル?」
「貴方の腰のナイフ、いつもと違うよね?」
「ん?ああ、コレね」

ジゼルが指差したのはシオンが愛用している大型ナイフとは違う全く別のナイフだった。いや、ナイフと言うより短剣と言ったほうがいいかもしれない。シオンが短剣を抜くと、短剣の刀身が水色に光りだした。

「と、刀身が光ってる?」
「フフ、驚いた?これは『ライトダガー』っていう私の新しい武器よ。昨日完成して届いたの」
「そうなんだ。でもどうして光ってるの?」
「この短剣はサンドリアの優秀な錬金術師達が私達の世界の技術とこの世界の技術を使って作った物なの。アイシャさん達が私達が勝てるようにって作ってくれたのよ」
「へぇ〜」
「俺達も初めて見た時は驚いたよ」
「ああ」

驚くジゼルの後ろで自分が始めて見た時の反応を話すユウタ、その隣でレイナが軽く頷く。

「レイナはやっぱりのSAAを使うんだね」

今度は自分の後ろを歩いているレイナの愛銃を見て尋ねるジゼル。レイナはそっと腰のホルスターに納めてあるゴールドエングレーブのSAAに手を乗せた。

「ああ、この銃には父さんと母さんの心が宿っている、二人がついていてくれれば私は何も怖くない」

レイナは珍しく少女らしい優しい微笑を見せてSAAを見つめている。そんな姿をジゼル達は静かに見ていた。

「皆、着いたぞ」

マサシの声を聞き、ジゼル達は前を見て立ち止まった。五人の前には小さな木製のドアがあり、マサシがゆっくりとノブに手をかけて回しドアを開いた。ドアを開くと、そこには椅子に座って武器の手入れをしているコンタとネリネがいた。二人もマサシ達と同じ様に銀色のタクティカルスーツを纏って戦いの準備を終えていた。

「おはよう、マサシ、ジゼル」
「おはよう」

コンタとネリネがマサシとジゼルの顔を見て笑いながら挨拶をする。そんな二人を見てマサシとジゼルも笑って挨拶を返した。

「おはよ」
「おはよう二人とも」

挨拶を終えたマサシとジゼルが部屋の奥は入って行き、ユウタ達もその後に続く。

「これで神竜隊は全員揃ったな」
「あとは時間を待つだけか・・・・」

仲間が全員揃った事を確認するマサシと約束の時間を待つため腕を組んで壁にもたれるユウタ。

「10時まであと15分・・・・」

自分の腕時計を見て時間を確認するレイナ、残りの隊員達も自分の腕時計を見て時間を確認した。





それからしばらくすると、ドアをノックする音が聞こえて神竜隊全員がドアの方を向く。

「失礼します」

ドアの向こうから聞こえてきる女性の声、入ってきたのはいつもの白いタクティカルスーツを身に纏ったエミリアだった。彼女を見て神竜隊は姿勢を直してエミリアの方を見た。

「皆さん、エクス・デストロの使者を名乗る者が現れました」
「「「!」」」

遂に来た、神竜隊全員は心の中でそう呟く。そんな中レイナは自分の腕時計を見て時間を確認しだす。

「9時58分、ちょうどいい時間だ。奴等も時間はしっかりと守るようだな」
「ちょっと驚きだね」

レイナの隣で時間を守る事を少し驚くコンタは両手を頭の後ろに回して言う。

「皆さん、私と一緒に謁見の間へ来てください。彼等の事は貴方達が一番よく知っているのですから」
「分かりました、皆行こう!」

マサシの言葉を聞きジゼル達は真剣な表情で頷く。それを見たエミリアは部屋から出て謁見の間へ向かう。マサシ達も彼女の後を追う様に謁見の間へ向かった。そして彼等が謁見の間へ着き、大きな扉を開いて中へ入ると、謁見の間には多くの貴族や将軍が立っている、そしてその中にはあの護衛隊の騎士であるセリーナもいた。奥の玉座にはハイドリアが座っていた。そして玉座から少し離れた所にエクス・デストロの使者らしき者が立っていた。その使者が扉が開いた事に気付き振り返りマサシ達の方を向いた。

「ッ!お前は・・・・」

マサシが振り返った使者を見て思わず声を出す。その使者は鬼の面を被った侍、そうタツノスケだったのだ。

「タツノスケ、お前が使者だったのか・・・・」
「マサシ、知ってるのかアイツを?」

驚くマサシに尋ねるユウタ。そしてマサシは静かな声で答えた。

「ああ、アイツがバジリスクの言っていたもう一人の魔人、タツノスケだ。俺とジゼルが夢の中で会った魔人もアイツだ」
「アイツが・・・・」

マサシとジゼル以外の神竜隊がタツノスケの方を見て鋭い視線を向ける。するとエミリアが神竜隊に話しかけてきた。

「皆さん、今は戦う時ではありませんよ。相手を丸腰です、決しててを出さないように」

エミリアに言われ表情を戻す神竜隊。それを見たタツノスケは再びハイドリアの方を向いた。

「銀河騎士団エクス・デストロの使者として参った。我等が主、ディアボロス様への返答はいかに?」

タツノスケがハイドリアの返答を尋ねると、セリーナが一歩前に出た。

「我々ラビリアンに住む全ての者は自らの秩序に従い生きる事で同意した。よって、エクス・デストロの申し出はお断りする」
「それは即ち、エクス・デストロに対する宣戦布告と取ってよろしいのか?」

タツノスケが尋ねるとハイドリアは目を閉じて静かに言った。

「我々に戦う意志はない。しかし、もし我が国、いやこの世界全ての人々を傷つけるような事があるのなら、エクス・デストロに刃を向ける、それは心得られよ」

その言葉を聞いたタツノスケはマサシ達の方を向いて喋った。

「やはり予想していたとおりの結果になったな」
「どういう事だ?」
「言ったとおりだ。ディアボロス様は既にこうなる事を予想していたのだ。ゆえに、既にこちらは準備をしておいたという事だ」
「それは一体・・・・」

どういう事だ?と聞こうとした瞬間、謁見の間に一人の兵士が飛び込んできた。

「陛下!大変です!」
「何事だ?」
「そ、空に・・・・」
「空?」
「空に、巨大な穴が!」
「「「!?」」」

兵士の言葉に一同はえっ?という表情をして驚く、ただ一人を除いて。

「フッ・・・・」

タツノスケは誰にも聞こえない小さな声で笑う。

「どういう事だ?空に穴が開いたというのか?」

ハイドリアは立ち上がって兵士に問いかけた、その時。

「へ、陛下!外をご覧ください!」
「ん?」

窓の近くに立っている一人の貴族がハイドリアに外を見る様に言う。ハイドリアはバルコニーに出て空を見た、そしてその瞬間に彼は言葉を失うほど驚いた。彼の間の前には、青い空に大きな穴が開き、その中からもの凄い数の生き物が出てくるのが見えたのだ。マサシ達もバルコニーに出てその光景を目にして驚いた。

「ア、アレは・・・・」
「虚無宇宙(ゼロスペース)・・・・」

驚くジゼルの隣でマサシが静かに名を呟いた。そう、空に開いた巨大な穴こそ、ラビリアンと虚無宇宙を繋ぐ入口だったのだ。マサシは持っていた望遠鏡を覗いて穴の様子を確かめる、穴からはもの凄い数の翼を生やした鬼の様な怪物が武器を持って出てくるのが見えた。

「アレはガーゴイルか?」

魔物の姿を見て最も似ている生き物の名を口にするマサシ。そして何かに気付き、フッと後ろを振り向いた。

「どうしたの?マサシ」
「・・・・タツノスケがいない」
「え!?」

マサシに言葉を聞いてジゼル達は謁見の間を見てみるがタツノスケの姿は何処にも無かった。

「おい!エクス・デストロの使者はどうした!」
「そ、それが、私達が気付いた時には既に・・・・」

ハイドリアが近くにいる貴族に訊くと貴族は首を振って答えた。

「逃がしてしまったか・・・・」

タツノスケを逃がした事を不覚に思い、再び外を見る。そして虚無宇宙から出てきた魔物達はサンドリアの町に向かって飛んで行く。

「なんていう事だ、今からでは民達を逃がす事も兵を送る事も、どちらも間に合わん・・・・・・」

ハイドリアは自分のミスを悔やみ、頭を抱えだす。だがその時、マサシが力の入った声で言った。

「大丈夫ですよ、陛下!」
「何?」

マサシの言葉を聞き顔を上げるハイドリア。マサシはエミリアの方を見て頷いた。するとエミリアが無線機を取り出して何処かへ連絡を入れる。

「こちらエミリア、全部隊に告げる。行動開始!!」

エミリアが無線機に向かって叫んだ次の瞬間、遠くから爆発音が聞こえてきた。一斉に爆発音のした方角を見ると、穴から出てきた魔物達が何者かの攻撃を受けて次々に落ちていく。

「な、何だ?」

ハイドリアが驚いて魔物達を見ると、彼等の真上を大きな影が通過した。それに気付いて上を見ると、なんと沢山のイーグル、ハインドが魔物達に向かって飛んでいく光景が見えた。そう、ライトシンフォニアの空中部隊だ。

「アレはそなた達の?」
「ええ、こんな事もあろうと、待機させておいたんです」

マサシはハイドリアの方を見て笑いながら言う。その隣ではジゼルがマサシの顔を見て小さく笑う。

「まさか、本当に『あれ』が的中するなんてね」

そう、さっきジゼルが言っていた「あれ」とはこの奇襲の事だったのだ。実は昨日の夜、最後の作戦会議を開いた時にマサシはエミリアに空中部隊を編成し、待機させるように頼んでいたのだ。

「ああ、ディアボロスは俺から生まれた存在だ、考え方が俺と同じだと確信していたからな。俺だったら交渉が決裂した場合の事も考えて奇襲をかける部隊を待機させておく。だから奴も絶対もそうすると思って迎撃部隊を用意してたって訳だ」

要するにマサシは敵の裏をかいたのだ。マサシは敵の足止めを確認すると、真剣な表情でハイドリアの方を向いた。

「陛下、これで少しは時間が稼げます。この間に町の人達の非難と部隊の編成を!」
「う、うむ!感謝する!」

ハイドリアは急いで中へ戻り将軍に指示を出した。

「さて、俺達も行きますか!」
「ええ、いよいよね」
「派手にやっちゃおう!」
「必ずこの世界を守るんだ!」
「私達ならできるわ!」
「全力で行くぞ」
「エミリア様!」
「ハイ、皆さん!行きましょう!」

エミリアの言葉を聞き、神竜隊とエミリアは謁見の間を後にした。遂に始まったエクス・デストロとの全面戦争。果たしたマサシ達はラビリアンを守り抜く事ができるのだろうか!?


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