20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:ラビリアンファンタジー 作者:ディオス

第143回   第百四十四話 別れと記憶 悲しみを乗り越えて

最後の修練に失敗した後、マサシとジゼルは新しい戦い方を得る為に二人で特訓をした。最初は色々と迷うところもあったが、二人の息がピッタリ合うためかすぐに、そして幾つもの戦略ができた。

「よし、これなら今度は勝てる」
「ええ、行きましょう!」

四日目の朝、二人は体を休めるために建てられているコテージの中で椅子に座りながら武器の確認をし服装を整えて立ち上がった。

「ジゼル、作戦は把握したか?」
「うん、最初にAパターンで攻める、もしAパターンが通用しなかった場合はBパターン。Bパターンがうまく行ったらCパターンへ、だったよね?」
「ああ、それでもしAパターンが通用した場合はそのままCパターンへ行く」
「OK、バッチリ覚えたよ」
「よし、ちゃっちゃと終わらせるぜ」
「ええ。・・・・でもマサシ、いくら新しい戦略をたてたからって油断しちゃダメだよ?」
「分かってる、任せとけ」

マサシはジゼルの方を見て笑いながら親指を立てる。その姿を見てジゼルは「本当かしら」と言いたそうな顔をする。だが、決して呆れる様な顔はしていなかった。笑顔で彼を見ていた。それはジゼルがマサシを信頼しているからである。

「さぁ、行きましょう!」
「ああ!」

マサシとジゼルはコテージを出て再び神の精神領域へ向かった。二人がコテージを出ると何処からか声が聞こえてきた。

「休めたか?」
「ん?」

声に反応して二人が振り返ると、コテージの屋根の上で座り込んでいるユグドラとシルドラが見えた。二匹の子竜は屋根から飛び降りて二人の目の前で止まった。

「いい作戦は浮かんだ?」
「ああ、なんとかな」
「じゃあ勝てるんだね、今回は?」
「それは分からない、何しろ昨日の夜に完成したんだから」
「つまり実戦で使うのはこれが初めてって訳」
「そんなんで大丈夫なの?」

ユグドラが二人に尋ねるとマサシとジゼルは笑って頷いた。

「大丈夫だ、俺達は互いを信じ合っているからな」
「うん、この戦略の成功のポイントは相手を信じる事だからね」
「「?」」

作戦の内容が分からないユグドラとシルドラは首を傾げる。

「よし、行くぜ!」
「うん!」

二人はコテージに背を向けて走り出した。ユグドラとシルドラも二人の後を追う様に飛んでいく。しばらく歩いて二人と二匹は神の精神領域に着いた。そして彼等はゆっくりと中に入ると、昨日の戦いでできた壊れた所などは全て元に戻っていた。その光景を見たマサシとジゼルは一瞬驚いたがすぐに表情を戻して闘技場に入った。ユグドラとシルドラも客席場所へ移動して二人を見る、その直後にマサシとジゼルの前に再びあの黒いマサシと黒いジゼルが現れる、装備や姿は前と同じだった。

「よし、今度は勝つぞ?」
「勿論!」

二人は同時にレベル・2を発動させて竜翼を背中から生やし、大きく広げて羽ばたいた。黒いマサシと黒いジゼルも黒い竜翼と天使の翼を広げて後を追う様に飛び上がった。

「来たぜ!予定通りAパターン、行くぞ!」
「OK!」

飛び上がったマサシとジゼルはそれぞれ左右へ飛ぶ。マサシは右へ、ジゼルは左へ、それを見た黒いマサシはマサシを追って右に、黒いジゼルはジゼルを追って左へ飛んだ。自分を追って来た黒い自分を見ながら飛んでいるマサシは反対の方を飛んでいるジゼルの方を見た。ジゼルも自分の背後を飛んで後を追ってくる黒い自分を見てながら飛んでいた。

「ジゼルーッ!!」
「・・・・!」

自分の名を叫ぶマサシに気付いたジゼルは黙ったまま力強く頷く。作戦開始の合図だ。ジゼルは一気に方向転換してマサシの方へ飛んで行き、マサシもジゼルの姿を確認してジゼルの方へ飛んで行く。勿論黒いマサシと黒いジゼルはそのまま二人の後を追う、だが二人が急速に方向転換したため反応が送れて距離が開いていた。

「追ってきてるな?ここまでは予定通りだ」

自分を追ってくる黒い自分を見たマサシは前を見直してジゼルの方を見た。少しずつマサシとジゼルの間の距離が縮んでいく。

「もう少しだ、もう少し距離を縮める!」

そのままお互いに向かって飛んで行くマサシとジゼル。しかし、このままではいずれ二人はぶつかってしまう。だが二人だってそんな事は分かっているはずだ、それなのに二人は速度を落とす事無くそのまま一直線に飛んだ。そして残り3mまで近づいた瞬間に二人はぶつかりギリギリの距離で方向を変えて同じ方角へ全速で飛んだ。

「あっぶねぇ!ギリギリだな」
「でも、なんとかうまくいったわね!」
「ああ、奴等も後を追ってきている!」

マサシとジゼルは横に並びながら飛んで話しながら後ろを向くと、黒い自分達もぶつかる直前で自分達の方を向いた。だが二人とは違ってぶつかる直前に急停止して二人の方を向いた。だがマサシとジゼルはこの展開も予測していたのだ。いや、寧ろこの展開を待っていたと言ったほうがいいかもしれない、二人は方向転換しながら急停止し、二人は契約魔法の演唱を始めた。
「聖天(しょうてん)よ、魔に潜む者に裁きの波動を!」
「聖天よ、魔に裁きの波動を放て!」

同じ契約魔法の呪文を演唱しながら、マサシは左手を、ジゼルは右手を隣り合わせにして掌を空中で止まっている黒い自分達に向けた。

「「フォトンブラスト!!」」

魔法の名を叫んだ瞬間、マサシとジゼルの掌から白い波動が一直線に放たれた。しかしそれだけではない、二人の波動はお互いの波動と1つになり、太い1本の波動となったのだ。その大きさは一人で発動した時の波動とは比べ物にならない程大きい、なにしろ黒い二人を飲み込んでしまうほどの大きさなのだ。その巨大な波動は黒いマサシと黒いジゼルに迫ってきた。

「「!!」」

黒い二人は自分達に向かってくる白い波動に驚いて咄嗟に回避行動を行った。だが、突然の事だったので対処が遅れて黒いマサシは右足を、黒いジゼルは左足を波動に飲み込まれてしまった。足は黒焦げになり煙が上がっている、しかし黒い二人は足をやられたにも関わらず痛がる様子も見せずに無表情のままマサシとジゼルを見て再び向かってきた。

「アイツ等痛みを感じないのか?」
「Aパターンは失敗ね」
「ああ、このままBパターンにいくぞ!」
「ええ、じゃあまた打ち合わせどおりに!」

マサシとジゼルは再び左右別々に飛び、黒いマサシと黒いジゼルも二人の後を追う。追ってくるのを確認したマサシは一気の上昇し、黒いマサシもそれを追う。ジゼルは追ってくる黒い自分を見た後に急降下して低空を飛んだ。

「付いて来なさい!今度はAパターンの様には行かないわよ!」
「・・・・・・」

追ってくる黒い自分に言い放ち、今度は一気に上昇した。そして高空を飛んでいたマサシは急降下した。

「ジゼル、行くぞ!」

離れた所を飛んでいるジゼルを見て独り言の様に喋るマサシはそのままジゼルに向かって降下していく。ジゼルも自分に向かって降下してくるマサシに向かって上昇し続けた。二人ともさっきのAパターンと同じ様にもの凄い速さで距離を縮めていく。

「今度は!」
「避けられないわよ!」

二人がぶつかりそうになった瞬間、ジゼルは体を反らしてマサシの横を通り過ぎ激突を免れた。そしてマサシはジゼルの後を追って来た黒いジゼルに向かって白龍刀を居合いの形で抜き、斬撃を放った。

「!!」

全く予想していなかったのか、黒いジゼルは回避することができずにマサシの斬撃を左腕に受ける。黒いジゼルの左腕には1本の切り傷が生まれ、そこから血がにじみ出た。一方、マサシとの激突を免れたジゼルはマサシの後ろを付いて来た黒いマサシをメタトロンで攻撃した。

「!」

こちらも予想していなかったのか、黒いマサシは慌てて黒龍刀と白龍刀を交差させてメタトロンを止めようとしたが、メタトロンはアストラル超合金で出来ているトンファー。しかも、もの凄い速さで自分に向かって来る時の勢いと契約者としての力が加わればパワーは絶大。普通の日本刀で止められるわけがない。その結果、黒いマサシの2本の刀の刀身は粉々に砕けた。そしてメタトロンは黒いマサシの体にめり込む様に当たった。

「!!」
「よしっ!入った!」

ジゼルの攻撃をまともに受けてそのまま打ち上げられる黒いマサシ。だが、黒いマサシはその場でクルッと一回転してジゼルを見下ろす様に空中で止まる。それを見たジゼルも黒いマサシを見上げるように停止した。そしてよく見ると、黒いマサシの顔には紫色の光のラインが浮き上がっていたのだ。

「レベル・3・・・・」

黒いマサシがレベル・3を発動したのを確認したジゼルはマサシの方へ飛んで行く。黒いマサシは竜翼を広げてその後を追った。同じ頃、マサシは黒いジゼルと距離を作って睨みあっていた。そして自分に向かってくるジゼルに気付いて彼女の方へ飛んで行った。黒いジゼルもその後を追う。

「マサシ!アイツ、レベル・3を発動したよ!」
「ならこっちもレベル・3を使うぞ!」
「分かった!」

二人は一度合流して体勢を立て直す。すると、黒いマサシと黒いジゼルも合流して体勢を立て直した。敵を確認した後にマサシとジゼルは目を閉じた。

「「解放!レベル・3!!」」

マサシとジゼルは声を揃えてレベル・3を発動する。すると、マサシの顔に純白の光のラインが、ジゼルの顔には薄い黄色の光のラインが浮かび上がった。

「どうする?このままCパターンへ行く?」
「いや、Cパターンは相手の体力をある程度削ってから移る。奴等はレベル・3を発動し、聖天使人の力を全て使っていない」
「それじゃあ・・・・」
「もう少し様子を見よう」
「分かったわ」
「よし、行くぞ!」

マサシとジゼルは黒いマサシと黒いジゼルに突っ込んだ。それを見た黒いマサシは黒いジゼルに目で合図をした。すると、黒いジゼルは黒い翼を広げた、次の瞬間、翼から無数の黒い羽が放たれた。

「レインフェザー!」
「避けろ!」

上昇して飛んでくる羽を交わすマサシとジゼル。レベル・3を発動していたのですぐに反応できた為無傷で済んだ。だが、二人の目に両手に火球を持ち、それを放とうとする黒いマサシの姿が飛び込んだ。そして黒いマサシは両手を二人に向けて火球を放った。

「今度はフレイムショットか!」

マサシとジゼルは再び上昇しフレイムショットをかわした。高い所から黒いマサシと黒いジゼルを見下ろし二人は白龍刀とメタトロンを構える。その直後に黒いマサシと黒いジゼルが二人に向かって飛んできた。そして黒いマサシの両手には再び火球があり、黒いジゼルの両手には白い円盤状の光があった。

「同じ手は通用しないぞ!」

マサシが白龍刀を構えて迎撃態勢に入った瞬間、黒いマサシはフレイムショットを放った。自分に向かってくる火球をマサシは白龍刀で斬り、掻き消していく。二つの火球を掻き消したすぐ後に黒いジゼルが白い円盤状の光をフリスビーを投げる様に投げた。

「アレは!」
「ホワイトスフィア、天使魔法の一つだよ!」
「ホワイトスフィア?」
「気をつけてマサシ!アレは・・・・」

ジゼルが魔法の説明をしようとした直後、二つの円盤状の光が無数の小さな光球に変わり二人に向かって来る。

「いいっ!?」
「避けて!」
「・・・・動くな!」

回避行動を取ろうとしたジゼルを止めるマサシ。そしてそのすぐ後に契約魔法の演唱を始めた。

「秩序の光よ、我らを守る聖なる領域となれ!シャインバリア!!」

魔法名を叫び両手を向かって来る円盤状の光に向ける。するとマサシとジゼルを包み込む様に白い光の壁が現れた。無数の小さな光球はマサシの壁に止められて二人に当たる事無く消滅した。

「危ねぇ〜、ギリギリセーフだ」
「フゥ・・・・」

攻撃を止めてマサシとジゼルが一安心するが、それも束の間。黒いマサシと黒いジゼルが更に速度を上げて向かって来る。

「クッ!避けろ!」

二人は急いで降下し黒いマサシと黒いジゼルの下を通過して距離を取った。

「ジゼル、何なんださっきのは?」
「ホワイトスフィアは円盤状の光を相手に投げつける天使魔法よ。しかもしばらくするとその円盤状の光が小さく無数の光になって広範囲を攻撃する事ができるの」
「まるでショットガンだな・・・・」

二人が話しながら飛んでいると、背後から再び火球が飛んできて二人の真上を通過する。振り返ると黒いマサシと黒いジゼルが後を追って来た。

「クソッ!またか!」

マサシが追って来る黒い自分と黒いジゼルを見て目を鋭くする。そして何かを考えるようなまた前を見る。

「・・・・よし、ジゼル」
「どうしたの?」

マサシがゆっくりとジゼルに近寄り小声で何かを話し出した。

「・・・・うん、分かった」
「よし、行くぞ!」

何か作戦を思いついたのか、マサシとジゼルは自分達の武器をしまい、少しずつ速度を下げた。下げたのであれば当然後方の黒い二人は追いついてくる。二人の2m手前まで追いついた黒いマサシは再び右手から火球を生み出し、黒いジゼルも右手から円盤状の光を生み出した。そして同時にマサシとジゼルの背後に投げつけようとする。だがその直前に二人はスローモーションでクロッと回りながら黒いマサシと黒いジゼルの真上まで上がった。

「「!?」」

突然真上に移動したマサシとジゼルに驚く黒いマサシと黒いジゼル。マサシとジゼルは真上に移動するためにわざと追いつかれるように速度を落としたのだ。そして、マサシとジゼルは両手を黒い自分達の背中に向ける、その瞬間マサシの両手に水色の光が集まりだし、ジゼルの両手に桃色の光が集まり始めた。これこそ、マサシとジゼルの作戦なのだ。

「この距離じゃ避けられねぇ!」
「そして、これこそがあたし達の最後の戦略、Cパターンよ!」

Cパターン、それは確実に命中する状態で自分達の最強の技で攻撃する作戦。この戦略を取るには確実に当てる為に相手を弱らせる必要があったのだ。だが、今の状況なら確実に当たる。

「これで、最後だ!アストラルストリーム!!」
「エターナルバースト!!」

技の名を叫んだ瞬間、マサシの両手から大きな水色の光線が、ジゼルの両手からは大きな桃色の光線が放たれ、黒いマサシと黒いジゼルの背中に命中し、黒い二人は光線に押されるように地上へ叩きつけられた。果たして二人は勝利したのだろうか!?


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 185