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作品名:ラビリアンファンタジー 作者:ディオス

第14回   第十三話 心の答え

自分の罪を償う為に教会で暴れている言われているスライムを退治し罪を償ったコンタ。それは同時に周りの人達から信用してもらったという証でもある。仕事を終えたコンタ達は城へ戻りハイドリア王に報告に戻った。

「陛下、セリーナ隊長と少年達が戻りました」
「なに、本当か?・・・・・まさか本当に戻ってくるとは、分かった、通してくれ」
「ハッ!」

ハイドリアの命令で兵士はセリーナ達を呼びに王の間を後にした。それからしばらくしてセリーナに連れられてコンタ達が王の間にやって来た。

「ただいま戻りました」
「ごくろうだったなセリーナ、コンタもよく無事に戻ってきてくれたな。正直驚いたぞ」
「いえいえ」
「またお前は陛下の前で・・・・」
「よいのだセリーナ。コンタよこれでお主の罪は消えた、今後は自由に城や町を出歩くとよい」
「ありがとうございます。ところで陛下、お話があるのですが・・・・」
「なんだ?」

コンタはヘルデストロイヤーの計画をハイドリアに知らせた、ヘルデストロイヤーがこっちの世界に来てすぐにこの国の人々に宣戦布告する可能性があるからだ、それに素早く対処する為に伝えておく必要がある。

「信じられん話だ・・・・」
「私も最初は信じられませんでしたが、この二人の強さを目にし、話を聞いてるうちに・・・・・」

セリーナは跪きながら自分の後ろに立っているマサシとコンタを見てハイドリアに自分の考えを伝えた。

「うむ・・・・」
「陛下、信じられないと思われますが、全て真実です。このままではこの国、いいえ、この世界そのものが奴等に奪われてしまいます!陛下、私達を信じてください!」

マサシの真剣な目にハイドリアも真面目な顔でマサシを見ている。すると、彼はマサシ達の事を信じたのか、その表情のまま口を開いた。

「・・・・・お主達を信じよう」
「「ありがとうございます!」」

マサシとコンタはほぼ同士に感謝の言葉を口にし、ほぼ同士に頭を下げた。

「それでお主達はこの後どうするつもりだ?」
「僕達は明日の朝にでもすぐ元の世界に戻ろうと思っています」
「・・・・ッ!!」

マサシ達の後ろで立っているジゼルとシンディ。コンタの「明日の朝」という言葉を聞いたジゼルは、突然胸を何かに締め付けられたような痛みに襲われた。

(なに、この胸の痛いのは?コンタ君が明日の朝帰るって言った途端に・・・・・)
「ジゼル、どうしたの?」
「う、ううんなんでのない・・・」

ジゼルの苦しそうな顔を見たシンディが心配し彼女の肩に手を置いた。しかしジゼルは自分の気持ちを知られたくないのか、元気なふりをして誤魔化した。





王の間を出て大きな廊下を歩いているマサシ達。セリーナとは王の間で別れたため今はマサシ、ジゼル、コンタ、シンディの四人だけだ。四人で廊下を歩いているとマサシがコンタに声をかけた。

「ところでコンタ、お前に一番最初に訊こうと思っていたんだけどよ」
「なに?」
「お前がこっちの世界に来たのはヘルデストロイヤーの次元移動装置のおかげなんだろう?」
「うん」
「戻るときはどうやって戻るんだよ?」
「それなら心配ないよ、僕がこっちの世界に来た時に一番最初に降り立った場所でこのスイッチを押せばまたゲードが開くようになってるんだ」

コンタはそう言ってズボンのポケットに入っている小さな装置を取り出してマサシに見せた。その装置は真ん中に赤いスイッチがあるだけのなんとも簡単な装置だ。

「降り立った場所ってお前とセリーナが出会った場所か?」
「うん、あそこからライトシンフォニアの支部へ繋がってるんだ」
「そうか・・・・・もう一ついいか?」
「ん?」
「ユウタ達はどうしたんだ?」

コンタが来たのだから当然残りの三人(ユウタ、シオン、レイナ)も来てるのではないかと思ったマサシ。だが、彼の考えとは全く違う真実をコンタは苦笑いしながら言った。

「ユウタ達はあっちの世界にいるよ」
「・・・・・なんだって?」
「ヘルデストロイヤーの計画を知った後、ユウタ達はあっちに残って部隊の編成の手伝いを・・・それで君と一番親しい僕が一人で行く事になったんだ」
「なんだと〜!自分達の部隊の隊長が行方不明になったというのに、探しにも来ないで部隊編成だ〜!?」
「ま、まあまあ落ち着いて・・・・」

自分を探しにこない仲間に興奮するマサシ、それを宥めるコンタ、そんな二人のやりとりを見ていたシンディが口を挟む。

「ねえ、コンタ」
「はい?」
「アンタ確か急いでマサシを連れ戻してこいって言われたのよね?」
「はい、そうですよ」
「じゃあ、どうしてすぐにむこうに戻ろうとしないの?」
「実は僕を送る時は、装置を急いで作ったから未完成だったんです、送る時に装置のエネルギーを全部使っちゃうらしいです、だから戻るときのエネルギーを充電する為に数日待たなくちゃいけないんです。でも僕がこっちに来て数日、明日にはもうエネルギーが溜まってると思います」
「エネルギーってなに?」
「エネルギーっていうのは・・・・・え〜っと」
「ま、まあ細かい話はいいじゃないか、それよりもコンタ、お前今夜どこで寝泊りするんだ?」
「う〜ん、お城では色々騒いじゃったから泊まるわけにもいかないし・・・・・」
「じゃあ、俺が世話になってる施設に来ればいいじゃないか、なあジゼル・・・・・・ジゼル?」
「え?う、うん、いいよベルおばさんにはあたしが話しとくから・・・」
「どうしたんだ、さっきから黙った下を向いてるけど?」
「な、なんでもないの・・・そう、なんでも」
「ジゼル?」

マサシとコンタの会話が始まった辺りからずっと黙ったいるジゼル。彼女はもしかするとマサシ達が元の世界へ帰るという事でなにかを考えているのかもしれない・・・・。





「「あはははははっ!」」

ジゼルの施設からマサシとコンタの笑い声が聞こえてきた。辺りもすっかり暗くなり施設の窓から明かりか溢れている。

「口に合うかい?」
「はい、おいしいです」

ベルの出した料理を次々の口に運んでいくコンタ。それを見て子供達も料理をもの凄い勢いで食べている。まるで競争でもしているみたいだ。

「そんなに慌てて食べなくてもまだたくさんあるよ」
「あ、ごめんなさい、おいしくてつい・・・・」
「フフフ、いいこと言う子だねぇ」
「ベルおばちゃん、おかわり!」
「はいはい」

ベルは次の料理を取りに台所へ戻っていく。楽しそうに会話しているコンタ子供達、それを笑いながら見ているマサシ、しかしその中で浮かない顔をしている者がいた、ジゼルだ。彼女はずっと下を向いていた。

「おいジゼル」
「え?」
「どうしたんだ?お前城から出たときからずっとその調子じゃないか」
「・・・・・」
「気分でも悪いのか?」
「別に・・・・そうじゃないの・・・・ただ・・・・」
「ただ?」
「・・・・・」
「・・・・・」
「ごめんね、なんでもないの、ごちそうさま・・・・」

ジゼルは立ち上がり階段の方へ歩いていくと、その途中ベルと顔が合った。

「おや、ジゼルもういいのかい?」
「う、うん・・・・ごちそうさま、あたし部屋に戻るね」
「そうかい?」
「うん、それじゃあ」

ジゼルはゆっくりと階段を上っていった。その様子を見て少し心配そうな顔をするベルと子供達とマサシ。しかしコンタは心配そうにではなく、なにかを感じ取ったような目で見ていた。





夜中。皆が寝静まった時、一人の少女が施設の外に立っている。ジゼルが寂しそうな眼で月を見ていたのだ。

「・・・・・・どうしちゃったんだろう、あんなにマサシを元の世界に帰してあげようって決めたのに・・・・なのに今は・・・・」

ジゼルが自分の本当の気持ちを考えていると突然どこからか声が聞こえてきた。

「今はマサシを『帰したくない』って思ってるんですか?」
「!!」
「ここですよ」

ジゼルが辺りを見回しても誰もいない、声の聞こえた方を向くと施設に屋根でコンタが自分を見下ろしていた。

「コンタ君、どうしたのこんな夜中に?」
「それはこっちの台詞ですよ、どうしたんですか?」
「あ、あたしは・・・・・月を見に・・・」
「僕もです。それよりも、どうしてそんな風に思ってるのか聞かせてくれませんか?」
「な、何のこと!?」
「とぼけなくてもいいです・・・よっと!」

コンタはその小さな身体で屋根から飛び降り見事に着地に成功した。その後ゆっくりとジゼルの下へ歩いていく。

「あなたがどうしてマサシを帰したくないのか・・・・いいえ正確には『別れたくない』の方が正しいかもしれませんね。どちらにせよ、僕は知っていますよあなたがどうしてそんな風に考えるのか」
「?」
「あなた、マサシが好きなんでしょ?」
「な!!」

コンタの言葉に一瞬で顔を真っ赤にしたジゼル。コンタの頭にギャグマンガに使われている汗のマークが浮き上がった。

(分かりやすっ!)
「な、なななな、なに言ってるによ!!」
「違うんですか?」
「あ、あああ当たり前よ!ど、どうしてあたしがマサシなんか・・・!」

ジゼルがコンタに背を向けて再び空を見上げると、コンタが施設のほうを見て・・・。

「あ、マサシ!」
「ええっ!?」

ジゼルが慌てて振り返ると、そこにマサシはいない。

「ウッソ〜」
「だ、騙したわね!!」
「やっぱり好きなんじゃないですか・・・」
「う、うう〜・・・・」

再び顔を赤くするジゼル、そんなジゼルを見てコンタが口を開く。

「好きな人と離れたくない、今の年頃の女の子には誰にでもあることですよ」
「・・・・・」
(あたしより年下のあなたに言われたくないわ・・・・)
「マサシと離れたくないんですよね?なら、いい方法があるんですが・・・」
「え?」





翌朝、施設から少し離れた場所でマサシの声が静かな町中に響いた。

「なにぃ〜!彼女も連れて行く〜!?」
「うん」

マサシがコンタの後ろを見ると、手に大きなカバン、腰には愛用のトンファーを納めているジゼルが立っている。

「どうして彼女を?」
「連れてっちゃまずい?」
「い、いやまずくはないが・・・・」
「これは僕達の世界とジゼルさん達の世界の問題なんだから、こっちの世界の人を代表として連れて行くのもいいんじゃない?」
「た、確かにそうだけど、どうしてもっと早く言ってくれなかったんだ?」
「だって、昨日の夜に決めた事なんだもん」
「はぁ〜!?」

コンタの間抜けな答えに情けない声で訊き返すマサシ、するとコンタの後ろで黙っていたジゼルの口が開いた。

「ごめんね、マサシ・・・・あたしがコンタ君にお願いしたの」
「・・・・・」
「あたし、この世界を救う為にも貴方と一緒に貴方の世界に行きたいの」
「・・・・・」
「あと・・・・・貴方がどんな世界で生きてきたの、貴方の世界を見てみたくて・・・」
「・・・・・はぁ、わかった」
「え、いいの?」
「ああ、考えてみりゃ、M1戦車やUrsとの戦いで俺達、一緒に戦おうって誓い合ったんだもんな、もう俺達だけの問題じゃない。だったら一緒に来いよ」
「あ・・・・・ありがとう!」

ジゼルは手に持っていたカバンを落としマサシに抱きついた。

「お、おい!」
「あたし、うれしい!」

眼から涙をほんの少し流したジゼル、顔を赤くするマサシ、そんな二人を見たいたコンタは心の中で思っている。

(意外とアッサリ折れたねマサシ、もしかして・・・・マサシ・・・・)
「ほ、ほら行くぞ、コンタ、お前が降り立ったっていう場所へ案内してくれ」
「OK、こっちだよ!」
「ほらジゼル行くぞ」
「うん」

ジゼルはカバンを拾い、マサシとコンタの後をついて行った。

「そういえば、ベルおばさん達には伝えたのか?」
「ううん、手紙を置いてきた」
「あ〜あ、帰ってきたら怒られるぞ〜」
「だ、大丈夫だよ、おばさん優しいもん!」

少し楽しそうに会話をするマサシとジゼル。そして、しばらく歩いて三人は町外れの小さな橋にたどり着いた。

「ここなのか?」
「うん、ここで僕はセリーナさんの部隊ともめてね、お城に連行されたんだ。ま、そんな事はどうでもいいや。じゃあゲートを開くよ」

コンタがポケットからスイッチを取り出し親指で押すと、突然三人の前にバチバチと緑の電流が流れ、その中央からマサシを飲み込んだのと同じゲートが姿を現した。

「こ、これが・・・」
「ああ、俺を飲み込んだのと全く同じだ」
「じゃあ、行くよ」
「ほ、本当にこの中に入るの?」
「そうですよ」
「な、なんかやだな〜」
「なに言ってるんだよ今更」
「先に行くね」
「あっ!」

コンタは迷うことなくゲートに飛び込んだ。それを見て一歩下がるジゼル。でも、マサシが彼女の手を取って。

「行くぞ」
「ちょ、ちょっと待って心の・・・・キャアーーー!!」

マサシに引っ張られゲートに飛び込んだジゼル。三人が飛び込んだとゲートは跡形もなく消えた。元の世界に戻って行ったマサシとコンタ、そして違う世界へ旅立って行ったジゼル。今後彼らはどうなっていくのだろうか、そしてヘルデストロイヤーとはどの様な戦いを繰り広げる事になるのか?


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