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作品名:ラビリアンファンタジー 作者:ディオス

第138回   第百三十七話 VS バジリスク! No2
バジリスクとの戦いで毒の霧を吸ってしまい感覚が低下してしまった神竜隊。それだけではなく体には大きな倦怠感と目眩まで襲ってきたのだ、神竜隊の誰もがまともに戦える状態ではなくなってしまった。

「ハァハァハァ・・・・」

毒のせいで呼吸が乱れているユウタ。コンタ達も同じだ、体がだるく、思うように動けない。

「苦しいだろう?気の毒に」

立ち上がれず膝をついたままの神竜隊を見下ろすバジリスク。彼の両腕は毒の腕のままだった、今ならいつでもユウタ達を毒の餌食にする事ができる。

「クソッ・・・・。まずこの霧をなんとかしねぇと・・・・」

ユウタはバジリスクに気付かれないように小さな声で契約魔法の演唱を始めた。だが、バジリスクはゆっくりとユウタに近づいて来た。

「さて、まずはお前から始末してやるぜ。金山ユウタ」
(クッ!マズイ!)

毒で体が動か逃げる事ができないユウタ。しかも演唱中のため喋る事ができずコンタ達に援護を頼む事もできない。

(仕方ない、契約魔法は一旦止めてコンタ達に援護を・・・・!)

ユウタが演唱を止めようとした瞬間、バジリスクの足元に弾痕が生まれた。

「!」
「・・・・ん?」

突然の弾痕に驚くユウタと、ゆっくりと振り返るバジリスク。振り返った先にはコンタが膝をついてファイブセブンを構えている姿があった。

(コンタ・・・・?)
「・・・・・・」

コンタはユウタの方を見てゆっくりと頷いた。そして自分の狐耳をピクピクと動かした。

(・・・・!コンタの奴、まさか)

そう、彼はユウタが契約魔法を使う事を知ってバジリスクの気を引き付けたのだ。コンタは妖狐と人間のハーフ、その為人間よりも聴覚が優れているのだ。例え毒で五感が低下していても小声を聞き取る事はできる。

「まだ抵抗するつもりか?これだか不利な状況に追い込まれているのに」
「僕達はまだ負けていませんよ、例えどんなに不利な状況であろうと、諦めたらそれで終わりです!諦める事が本当の敗北です」
「フン、何時まで強がっていられるかな?」

バジリスクが毒の右腕をゆっくりと上げてコンタを叩き潰そうとした、その時、バジリスクの背後から何やら強い風音が聞こえてきた。フッと後ろを向くと、そこには演唱を終えたユウタがジッとバジリスクを見ていた。

「烈風よ、刃となりて全てを切り裂け!ウインドスラッシャー!!」

ユウタが地面を強く叩くと、ユウタの目の前に竜巻が現れた。大きさはユウタの2倍ほどはあるだろう、竜巻はバジリスクに向かっていく。それと同時に周囲に広がっていた毒霧も掻き消された。

「成る程、風で毒霧を掻き消したのか。月本もコレを知っていて俺の注意を・・・・」

下半身に力を入れて風圧に耐えるバジリスク。コンタ達も吹き飛ばされないように必死で体に力を入れていた。

「だが、こんな物で俺を止められると思っているのか!」

バジリスクは毒の右腕で拳を作り竜巻を殴った。竜巻と毒の腕がぶつかり周囲に毒が飛び散り、周りの地面や建物を溶かした。

「うおおおおおっ!!」

バジリスクが更に腕に力を入れて竜巻を押していく。そしてユウタの竜巻が掻き消されて消滅した。

「フッ、やはりこの程度か・・・・」

竜巻が消え、その竜巻が発生させた風が次第に弱まり辺りがハッキリと見える様になった。

「ん?」

風が治まりバジリスクが辺りを見回すと、ユウタ達の姿が消えていた。実はさっきのウインドスラッシャーは毒霧を掻き消すだけではなく、逃げるためにバジリスクを足止めする為の物でもあったのだ。

「・・・・チッ、逃げたか」

バジリスクが巨大な毒の両腕を元の腕に戻して辺りを再び見回す。

「まぁいい、どうせ奴等はこの町からは逃げられん。あの毒を吸って感覚が狂った奴等では町の出口にたどり着く事すらできないだろうからな。フフフフ」

笑いながらゆっくり歩き出しユウタ達を探しに向かうバジリスク。彼の顔にはユウタ達を甚振ってやりたいという、不気味な笑顔が浮かんでいた。





「ハァハァハァ・・・・」

広場から少し離れた所にある建物の中、ユウタは一階の窓の近くの壁に凭れて休んでいた。普通であれば不法侵入だと家の持ち主の騒がれて面倒な事になるが、その家はボロボロ、窓ガラスも割れて室内は酷い散らかり様だ。すでにこの家の人はバジリスクに殺されたか、逃げ出したのであろう。

「ハァハァ・・・・。皆は、無事なのか?」

ユウタは無線機を取り電源を入れ、コンタの無線機の周波数に変えて呼びかけた。

「こちらユウタ、コンタ、応答してくれ」
「・・・・・・こちらコンタ」
「コンタか、大丈夫か?」
「うん・・・・なんとかね」

コンタの声を聞き一安心するユウタ。だが、コンタの声には明らかに何時もの元気がない。

「今何処にいる?」
「さっきの広場から南西に50m位離れて所にある家の中。誰も居ないから勝手に窓から入らせてもらっちゃったけどね」

無線機の向かって語るコンタ。彼は二階建ての家の二階の窓際にいた。座り込み必死で疲れと戦っている。いや、疲れではなく毒と言ったほうがいいかもしれない。

「勝手に入ったのは俺も同じだ」
「ハハ、そっか・・・・」

聞こえてくるユウタの声に少しだけ笑みを浮かべるコンタ。左手で無線機を持って会話しながら空いている右手でファイブセブンの弾倉(マガジン)を抜き、残弾を確かめていた。

「それで、これからどうするの?」
「まずシオン達の無事を確認してからだ。俺はレイナとネリネに連絡を入れてみる。お前はシオンを頼む、その後全体会話の周波数に変えてもう一度連絡する」
「分かった、それじゃあ後でね・・・・」
「ああ・・・・」

そう言ってユウタは無線を切ってレイナの無線機の周波数に変えた。

「こちらユウタ。レイナ、聞こえるか?」

ユウタが無線機の向こう側のレイナに語りかけると、しばらくしてレイナの声が聞こえてきた。

「私だ・・・・」
「レイナ、無事だったか」
「ああ、なんとかな」
「今何処にいるんだ?」
「広場から北東へ100m程離れてた所にある宿屋の屋上だ、ネリネも一緒だ」
「そうか。ネリネ、聞こえるか?」

無線機から聞こえてくるユウタの声に反応し、宿屋の屋上で座り込んでいるレイナの隣に座っているネリネが無線機に喋りかけた。

「大丈夫よ、なんとか無事」
「私達は大丈夫だが、そっちはどうなんだ?コンタとシオンは?」

レイナがコンタとシオンの安否を尋ねてきた。

「コンタとはさっき連絡を取った、シオンには今コンタが連絡を取っているところだ」
「そうか・・・・」

その時、無線機からコンタの声が聞こえてきた。

「こちらコンタ。ユウタ、聞こえる?」
「コンタ、わざわざ全体会話の周波数を使ってきたのか?」
「レイナ!君も無事だったんだね」
「ああ、ネリネも無事だ」
「そう、よかった。シオン姉さんとも連絡が取れた、無事だったよ」
「私よ、皆無事?」
「ああ、大丈夫だ。シオン、お前は今何処にいるんだ?」
「例の広場から南南西に30m位行った所にある家の屋根の上よ。幸いバジリスクには見つかってないわ」
「そうか・・・・」

シオンは屋根の寝転がり無線機に語りかける。無線機から聞こえてきる仲間達の声を聞いて一安心するユウタ。だが、まだ安心なできない。この状況を切り抜けない限り彼等に本当の安心はやって来ないのだ。

「なんとか全員の無事は確認できたけど・・・・。ユウタ、これからどうするの?」

コンタがユウタに今後の事を訊ねると、ユウタはバックパックからチャクラムと取り出し、それをジッと見ながら無線機に向かって話し出した。

「奴の毒はハッキリ言ってヤバイ、解毒剤が完成していない今、奴と正面から戦うのは危険だ。距離を作って遠距離から攻撃して戦うしかない」
「遠距離から?」
「そうだ。今武器ケースを持ってる奴はいるか?」
「私が持っている。広場から逃げる時に持ってきた」

無線機からレイナの声が聞こえてユウタが今度はレイナに語りかけた。

「レイナ、武器ケースの中にスナイパーライフルが入っているはずだ、確かめてくれ」
「分かった」

レイナは自分の隣に置いてある大きな武器ケースの蓋を開いて中を見た。ネリネも彼女の隣からケースの中を覗き込んだ。ケースの中には「ドラグノフ」が入っていた。

ドラグノフ(USSR ドラグノフ)
1963年にソビエト軍が制式採用したセミオート式狙撃銃。ソ連が開発した狙撃銃で少々時代遅れな所もあるが、使い勝手の良い銃の一つだ。他の狙撃専用銃と比べ遠距離での命中精度は低いが、前述の通り「目標の何処かに当たりさえすれば良い」程度の精度で充分なので、特に問題は無かったようである。ちなみに発砲音は、他の小銃には無いほどの金属音がする。

レイナはドラグノフを取り出して銃本体と弾の確認を始めた。そして再び無線機からユウタの声が聞こえてきた。

「この町の出口はレイナ、お前とネリネの居る方角にある。奴は俺達を町から出さない為に出入り口に行って待ち構える可能性が高い。奴がもし現れたらライフルで狙撃してくれだが、もし奴が現れなかったら、お前達はそのままそこに隠れているんだ」
「ああ、分かった・・・・」

レイナが無線機をの方を向いて返事をする。

「コンタとシオンは合流して奴を警戒しながら何処か見渡しのいい所に隠れていろ。俺もここから奴を警戒している」

ユウタがチャクラムを閉まった後、一つ溜め息をついてまた無線機に喋りかける。

「奴と正面から戦うのが危険な以上、ここロードグランの基地からの援軍を待つしかない。捜索を始める前に基地に連絡を入れておいた、もうずぐここに来るはずだ、それまで持ちこたえるんだ」
「「「わかった」」」

無線機から聞こえてくる四人の声、その後、彼等は無線を切り、気配を消しながらバジリスクを探し出した。それから十数分後、レイナとネリネが隠れながら辺りを見回していると、ネリネが何かを見つけた。

「レイナ」
「どうした?」
「あそこ、あの建物の間で何かが動いた」
「何?」

ネリネと反対方向を調べていたレイナはネリネの方へ行き彼女の指差した方向を見た。だが距離は約50mはある、その為ハッキリとは見えない、が確かに何かが建物と建物の間を動いた。

「確かに何か動いたな・・・・」
「何だろう?」
「コレを使えば分かる」

レイナは持っていたドラグノフを構えてスコープ覗き込んだ。すると、左の建物から右の建物へ紫色のリザードマンが移動するのが見えた。

「・・・・!バジリスクだ」
「ええっ!?」
「まだ私達には気付いていないようだ」
「どうするの?」
「・・・・こちらに気付く前に叩く」

レイナはドラグノフのセーフティを解除して狙いを定める。スコープでバジリスクの頭部を狙い引き金にゆっくりと指をつける。そして引き金を引こうとした、その時、バジリスクが立ち止まり右腕が上がった。すると掌から濃緑色の液体が湧き上がり、槍の形になった。

「!!?」

嫌な予感がしたレイナはスコープから顔を放して倒れるように伏せた。次の瞬間、毒の槍がレイナが立っていた所をもの凄い速さで通過した。

「わぁ!な、何!?」
「バジリスクだ」
「え?気付かれたの?」
「分からない、奴はこっちを向かずに攻撃してきた」

バジリスクの突然の攻撃に汗を垂らして驚くレイナと彼女の話を聞いて驚くネリネ。レイナはゆっくりと起き上がり膝をついて姿勢を低くし再びスコープを覗き込む、だがさっきの場所にはバジリスクの姿が消えていた。

「奴が消えた・・・・?」
「え?消えたって、一体何処に・・・・」

ネリネがレイナの隣までやって来て同じ様に膝を低くした、その時、目の前にバジリスクが現れた。宿屋の下から跳び上がって来たのだ。

「「!!」」
「まずは二人」

バジリスクは両手に持っていた毒の槍を持って手すりの上に着地する。驚いた二人は急いで立ち上がり大きく後ろの跳んだ。

「どうして私達の場所が分かった・・・・?」
「簡単な事だ、そのライフルのスコープに反射した光を見つけ、あとはここまで走ってきただけだ。俺の毒が届かないように遠距離から攻撃を仕掛けようとした様だが、甘かったな?」
「クソッ!」

レイナはドラグノフを構えて発砲した。だがバジリスクが二人の真上まで跳び銃撃を回避した。

「速い!」
「この距離でかわしただと!」

バジリスクを見て驚きの声を上げるネリネとレイナ。

「ヴェノムジャベリン」

そしてバジリスクはレイナとネリネの頭上から毒の槍を投げつけた。

「かわせ!!」

レイナは叫び左へ跳び、ネリネも咄嗟に右へ跳び回避行動を取った。槍は何とか回避した、だが少量の毒が飛び散りレイナの右腕、ネリネの左腕に付着した。

「ぐわぁーー!!」
「うわぁーー!!」

ほんの少しの毒が腕に付着しただけで腕に激痛が走り、レイナとネリネの叫びが町に響いた。


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