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作品名:ラビリアンファンタジー 作者:ディオス

第137回   第百三十六話 VS バジリスク!

ゼルキアスの軍人の町デノンを襲ったのはエクス・デストロの魔人、バジリスクだった。だがマサシとジゼルが居ない今、ライトシンフォニアの精鋭である神竜隊はコンタ、ユウタ、シオン、レイナ、ネリネの五人だけ、しかも彼等は魔人の力がどれ程の物なんかを知らない。ユウタ達は一体どうやって戦うのだろうか。

「聞きたい事がある」
「何だ?」

ユウタの質問にバジリスクは表情を変えずに尋ねる。

「なぜヘルデストロイヤーの残党を襲ったんだ?」
「ディアボロス様とルシフェル様の命だからだ」
「命令だと?」
「そうだ、奴等を消してこの世界の住人に我々を正義の使者と思わせ、少しでもお二人の創る世界へ行かせるようしろ、とな」
「ふざけるな!強い者が生き、弱い者は死ぬ、そんな世界を創る奴等に誰がついて行くか!」
「だから殺しているんだよ、少しでも俺達を『正義の味方』と思わせるためにヘルデストロイヤーという『悪い奴等』をな」

自分達の行いを棚に上げてヘルデストロイヤーの事を言いたい放題のバジリスクに次第に苛立ちを感じるユウタ。

「お前達のやってる事はただの偽善だ」
「そうだな、否定はしない。ディアボロス様もそう仰るだろう」
「どうだかな、アイツはマサシの心の闇を力にして生まれた只の小悪党だ」

ユウタの言葉を聞きバジリスクはユウタを睨んで言った。

「俺の前でディアボロス様を侮辱する事は許さんぞ」
「俺達だって自分達の都合でヘルデストロイヤーやこの町の人達を殺したお前を許させない」
「なぜだ?この町の連中はともかく、ヘルデストロイヤーはお前達の仲間を大勢殺した奴等だぞ?」
「確かに奴等は多くの人々を殺した罪人だ。だが、だからと言って殺していいという理由にはならない、正当な裁きくだして罪を償わせる必要があるんだ!」
「ハッ!屑どもを殺して誰かが困るのか?お前達のやり方は手ぬるいんだよ」

お互いに相手の顔をジッと見ているユウタとバジリスク。だが。それもここまでのようだ、ユウタはゆっくりと表情を変えてバックパックに手を回した。

「これ以上の会話は無駄だな・・・・」
「フフフ、そうだな」

バジリスクは大きく後ろの跳んでユウタ達から距離を取った。離れるバジリスクを見ながらユウタ達は自分の愛用の武器を取って構えた。

「皆、気を付けろ!奴はあのディアボロスとルシフェルの眷属だ。絶対に雑魚じゃない、初っ端から本気で行くぞ!」
「ああ、分かってる」
「一気に行こう!」
「ええ、私達の持てる全ての力で!」
「戦いましょう、ラビリアンに住む全ての人達の為にも!」

ユウタの続いてレイナ、コンタ、ネリネ、シオンが力強く答える。それを見たバジリスクは構える事もなくジッとユウタ達を見て出方を待っていた。何もしないバジリスクを見てシオンが投げナイフを取りバジリスクに向かって投げた。するとバジリスクはゆっくりと手を顔の近くまで持ってきた、するとバジリスクの掌から濃緑色の液体が湧き上がってきた。

「そんな玩具が俺に通じるか」

バジリスクは手の中の液体を飛んでくる投げナイフに向かって投げつけた。そして液体が投げナイフに当たった直後にナイフは煙を上げながらみるみる腐食し始めたのだ。それを見たユウタ達は驚いた。

「ナイフが腐った?」
「アレも毒なの?」
「多分な、まぁ毒じゃなかったとしても、一つだけ言える事がある。あの液体には絶対に触れるな!」

腐って地面に落ちるナイフを見て驚いたユウタとシオン、そしてユウタは改めて隊員達に毒に気をつけるように言った。だがその直後にバジリスクがユウタ達に向かって両手に持った液体を投げつけた。

「ッ!避けろ!!」

ユウタ達は飛んできた液体を散開して避けた。液体はユウタ達の背後にある家の壁に命中、壁は煙を上げてゆっくりと溶けた。

「ウワッ!壁が溶けた!」

溶け出した壁を見てコンタは驚いて声を上げる。

「コンタ、余所見をしないで敵に集中しなさい!」
「あ、ハイ!」

シオンに注意されてバジリスクに視線を戻すコンタ。液体を避けた各隊員達はそれぞれバジリスクを囲むように移動を始めた。

「くらえっ!」
「フッ!」

コンタとレイナはバジリスクの側面に移動し、自分達の銃で攻撃した。レイナはバジリスクから見て右に、コンタは左に立っている。コンタとファイブセブンの弾とレイナのSAAの弾がバジリスクに向かって放たれる、しかしバジリスクは慌てる事も回避行動を取る事もなくゆっくりと両手をコンタとシオンの方へ向けた。

「甘いぜ」

そう言った瞬間、バジリスクの両手から再び濃緑色の液体が湧き出た。液体はみるみる大きくなっていき、それは盾の形に変わった。二人の弾はバジリスクの作り出した液体の盾に遮られバジリスクに命中することなく煙を上げながら腐食し、ゆっくりと地面に落ちた。

「と、止めた?液体の盾で・・・・?」
「奴には銃の類は効かないか・・・・」

銃撃を止めた液体の盾に驚き表情を変えるコンタとレイナ。

「俺の体から作り出される毒は無生物を腐らせ、生物には激痛と死を与える特殊な毒なんだよ。つまり俺の毒はこの世界全てにとって脅威になるという事だ」
「世界全てにとって脅威・・・・だと?」
「そんな馬鹿な・・・・」

毒の脅威を知る驚くレイナとコンタ。バジリスクは顔の向きを変えずに両手の指を器用に動かし毒を操りだした。すると盾の形をしていた毒は徐々に姿を変えていき槍の形になった。

「ヴェノムジャベリン!」

バジリスクは毒の槍を自分の側面にいるコンタとレイナに向かって投げつける。二人は咄嗟に後ろの跳んで攻撃を回避した。毒の槍は二人が立っていた所に刺さり、その場所を溶かした。

「あっぶない!あんなのに当たったら只じゃすまないよ!」
「銃撃やナイフの攻撃が効かないとすれば、契約魔法でなんとかするしかないな」

距離を作ってバジリスクから離れたコンタとレイナは銃をしまいながらバジリスクの背後に回って目を閉じた。

「「解放!レベル・3!!」」

レベル・3を解放した二人の体に光のラインが浮き上がる。そしてそのまま契約魔法の演唱を始めた。しかしそれをバジリスクが黙って見過ごす訳がない。バジリスクは再び両手から毒を湧き上がらせて毒の槍を作り出した。

「甘いぞ!ヴェノム・・・・」
「甘いのはお前だ!!」
「!」

後ろから聞こえてくる声、バジリスクは咄嗟に後ろを向いた。そこにはレベル・3を解放しているユウタとシオン、そして聖天使人の力を解放したネリネが扇状に並び、それぞれ契約魔法と天使魔法の発動準備をし終えて立っていた。

「敵は二人だけじゃないぞ!」
「私達がいる事を忘れるな!」

ユウタとネリネは背を向けているバジリスクを見ながら叫ぶ。そして三人は一斉の攻撃を仕掛けた。

「唸れ、我が腕に宿りし真空波よ!ソニックブーム!!」
「仇名す敵を焼き尽くせ!フレイムショット!!」
「シャイニングレーザー!!」

ユウタとシオンの契約魔法とネリネの天使魔法がバジリスクに向かって放たれた。ユウタの真空波、シオンの火球、ネリネの光線がバジリスクに迫っていく。だがバジリスクは慌てた様子も無く、毒の槍をゆっくりと消した。

「フン、そんな単純な攻撃が俺に当たるわけないだろう」

バジリスクは右手を大きく空に上げると再びバジリスクの手から濃緑色の毒が湧き上がり彼の太い腕を被った。そして毒に被われた腕はバジリスクの本来の腕の数倍はある巨大な毒の腕に変わった。

「ヴェノムアーム!!」

技の名を叫んだバジリスクは巨大な毒の腕で握り拳を作り、向かってくる魔法に向かってパンチを放った。毒の腕とユウタ達の魔法がぶつかり小さな爆発と共に毒が周囲にまき散らされた。

「・・・・ッ!避けろ!!」

ユウタ達は自分達に向かって飛んでくる毒を見て大きくそれぞれ三方向へ跳んで毒を避ける。毒は地面の彼方此方に落ちて煙を上げた。バジリスクの腕は魔法とぶつかり拳の部分が無くなっているが、腕は一瞬で元に戻った。

「まだまだだな・・・・そして」

バジリスクは腕が戻った後に振り返り、そのままコンタとレイナの方を向きながら毒の腕で殴りかかった。

「魔法の発動が遅すぎるぞ!」
「「!!」」

突然自分達の方を向きながら攻撃してくるバジリスクに一瞬驚きの表情を見せるコンタとレイナは演唱を途中で止めて、バジリスクの側面に回り込むように走って毒の腕を避ける。二人が立っていた場所に毒の拳が当たり、そこから煙が上がり腐食し始めた。

「クッ!魔法は発動に時間が掛かって隙ができる。同じ所で演唱するのは危険か・・・・」
「だったら、横から同時に発動の早い魔法で攻撃すれば・・・・!」

レイナとコンタは再びバジリスクの側面に回り、再び魔法の演唱を始めた。

「水の精霊よ、水滴の砲弾で敵を撃て!アクアバレット!!」
「地に宿りし者、化の者を貫く槍と成せ、アースニードル!」

演唱を終えて魔法を発動するコンタとレイナ。コンタの手の中に大きな水球が生まれ、レイナの目の前に尖った岩が現れた。そしてコンタはバジリスクの右側から水球をバジリスクに向かって放ち、レイナは左側から尖った岩をバジリスクに放った。

「・・・・フフフ」
「「?」」

突然笑い出すバジリスクを見て不思議に思うコンタとレイナ。バジリスクはゆっくりと左手をレイナの方へ向けて言った。

「気づいていないのなら教えてやろう。ヴェノムアームが使えるのは右腕だけではない!」

バジリスクが力の入った声で言うと、彼の左腕も右腕と同じ様に毒に被われ始め、巨大な毒の腕に変わった。

「「!!」」

驚くコンタとレイナ。コンタの水球は右腕で、レイナの岩は左腕で鷲掴みにされた。二人の攻撃は毒に包まれた煙を上げながら消滅してしまった。

「片方の腕で出来るのなら、もう片方の腕でも使えると普通は考えるがな?」
「・・・・冷静に考えたらそのとおりだ」
「初歩的なミスをしちゃったね」
「・・・・・・いや、お前達は致命的なミスを犯した」
「何?どういう事だ?」

バジリスクの言う事が分からず彼をジッと見ながらレイナは訊ねる。反対側に立っているコンタや少し離れた所で構えているユウタ、シオン、ネリネの三人も理解できずにいた。

「一体何を言って・・・・・・ッ!」

突然コンタを変な感覚が襲った。さっきまで何ともなかったのに急に目まいがし、倦怠感、そして耳鳴りがするのだ。

「ハァハァ・・・・。な、何コレ・・・・」

体に力が入らず、呼吸を乱して膝つくコンタ。周りを見ると、自分と同じ様に膝をつき呼吸を乱すユウタ達がいる。そして自分達を霧状の物が包んでいるのだ。

「こ、この霧は・・・・」

自分達の体の異変の原因はこの霧だ、そう確信したコンタは目の前まで歩いてきたバジリスクを見上げた。

「ようやく気付いたようだな。コレは『感覚侵食の霧』、俺の作り出し毒を霧状にして周囲に散布する技だ。そしてこの毒を吸った者は五感の働きが鈍り、強い倦怠感に襲われるのだ。お前達が攻撃に集中してくれたおかげで俺は楽にこの霧を撒き散らすことができた、感謝するぞ」

ニッと笑いながらコンタや周りにいる神竜隊員達を見回すバジリスク。そして再びコンタを見下ろして笑いながら言った。

「さっきの話、お前達の犯した致命的なミスだが、分からないのなら教えてやる。毒を使う奴の大抵がガス類の技を使う、という事に気付かずガズマスクを所持していなかった事だ」

大きな失敗をしてしまった事を悔しがるコンタは歯を食い縛っている。バジリスクはそんなコンタを見て笑いながら腕を組んでいた。そんな時、バジリスクの背後から銃声が聞こえ、黄色の光弾がバジリスクの横を通過した。銃声に反応したコンタ達は銃声のした方を向くと、そこには立ち上がってSAAを構えているレイナがいた。

「ハァハァハァ・・・・」

呼吸を乱しながらSAAを構えるレイナ、どうやらさっきのは彼女がオーラショットを放った時の銃声のようだ。レイナが再び引き金を引く、だがバジリスクには命中しない、続いて何度もオーラショットを放つが一発も当たらない。

「ク、クソッ!・・・・なぜ当たらない・・・・」
「言っただろう、この霧を吸った者の五感は狂うと、今のお前では例え俺の2m前まで近づいても攻撃を当てる事はできないぞ」
「そ、そんな・・・・馬鹿な・・・・」

再び膝を地面につきSAAを落とすレイナ。他の神竜隊員も何とか立ち上がろうとするが、体に力が入らない。まさに彼等は今、絶体絶命の危機に追いやられてしまったのだ・・・・。


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