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作品名:ラビリアンファンタジー 作者:ディオス

第135回   第百三十四話 覚醒空間は天国と地獄?

レベルを上げるための修練を受けるために覚醒の雫を使い覚醒空間へ飛んだマサシとジゼル。二人が七色に輝くトンネルを潜って行くと、奥から白い光が見えた。どうやら出口が見えてきたようだ。

「あれが出口か?」
「行ってみよう」

二人は出口に向かって走り出す。そしてトンネルを出ると二人の目の前には想像していたのとは全く違う光景が飛び込んだ。広い草原が広がり、奥には幾つもの丘があり、彼方此方に木が立っている、その周りには花も咲いていた。空は青く小さな雲が少しあるだけ、まさに晴天だった。

「な、何だここは?天国か?」
「想像していたのとは全然違うね」

マサシとジゼルは想像していた空間と違っていた事に少々驚いていた。そんな二人に温かい日差しが降り注ぎ、涼しい微風が吹いた。

「気持ちいいね・・・・」
「ああ、そうだな」

二人が目を閉じて日差しと微風を感じていると、何処からか声が聞こえてきた。

「おい、お前達」
「「ん?」」
「お前達がマサシとジゼルだな?」

何処からか聞こえてくる二つの声。一つは小学生くらいの男の子の声、もう一つは少しヤンチャそうな女の子の声だった。二人は辺りを見回すが誰も居ない。すると再び声が聞こえてきた。

「おい、何処見てるんだ?」
「上だよ、上!」
「「上?」」

二人が声を揃えて言った後に上を見ると、頭上から二つの物体が降りてきた。それはなんと二匹の子竜だった。姿形は同じだが一匹は水色の体に青いくりくりとした目、もう一匹は桃色の体に同じ様にくりくりとした赤い目をしていた。小さな竜翼を広げて二匹はゆっくりと二人の目の前で止まった。

「こ、子竜?」
「可愛いー!」

ジゼルは満面の笑みを浮かべて目の前の桃色の子竜を抱きしめて。

「お、おい止せよ!苦しいだろ!」
「あ、ゴ、ゴメンね」

慌てて子竜を放すジゼル。離れた子竜は首を振った。そんな光景をマサシともう一匹の子竜は見て苦笑いをした。

「おい、大丈夫か?」
「ああ、何とかね」
「ゴ、ゴメンね、本当に」
「もういいよ、気にするな」

何度も謝るジゼルを見て短い手を振る子竜。そして落ち着いた二人と二匹は向き合って話を始めた。

「改めて確認するけど、お前達がマサシとジゼルだな?」
「ああ、そうだ」
「貴方達は何なの?」
「オイラ達はこの覚醒空間でお前達の修練を手伝うようライディーン様に言われた者だ。オイラはユグドラ」
「アタイはシルドラって言うんだ、よろしくな」

水色の子竜は自らをユグドラと、桃色の子竜はシルドラと名乗って簡単な挨拶をした。

「そうか、よろしくなユグドラ、シルドラ。俺達も改めて名前を言っとくよ、俺は秋円マサシ」
「あたしはジゼル・アルフォントよ、よろしくね」

全員の自己紹介が終わり、マサシとジゼルは少し気を楽にした。すると、ユグドラが少し力の入った声を出した。

「よしっ!じゃあ早速修練を始めるぞ!」
「ええっ!いきなりかよ!」
「あたし達、今来たばっかりだよ?」
「何言ってるんだよ!時間は少ないんだ、一秒でも無駄にはできないぞ?」
「そうだよ、ほら、アタイ達について来な!」

いきなりの修練開始宣言に戸惑いながらも、マサシとジゼルは何処かへ飛んでいくユグドラとシルドラの後をついて行った。自分達の目の前を飛んでいる二匹の子竜の後姿を見ながら歩いていく二人は時々辺りを見回していた。

「おいユグドラ、この覚醒空間は一体何処にあるんだ?て言うか覚醒空間って何なんだ?」
「覚醒空間はライディーン様やアナスタシア様のような一部の魔物が魔封石に封印されろ時に稀に手に入れる事ができる雫から作り出される空間だ。その空間はどの世界にも繋がっておらず、外部から侵入する事はできないってい言われてる所だ」
「じゃあエミリア様達やディアボロス達がこの空間に来る事はできないの?」

マサシに続いてジゼルが質問をすると、今度はシルドラが答えた。

「ああ、まず無理だね。と言うより、どの世界に繋がっていないから、見つける事も不可能だよ」
「じゃあ今この空間は何処にあるの?」
「さあね、それはアタイ達のも分からないよ」

二人と二匹が話しながら進んでいくと、彼等は大きな湖に着いた。湖を囲むように岩の柱が何本も立っており、よく見ると、その岩の柱全てに竜の顔をした彫り物があった。

「さあ着いたよ」
「何だここは?」

マサシはユグドラに尋ねると、ユグドラとシルドラはゆっくりとマサシとジゼルの方を向いた。

「ここがお前達の最初の修練の場所、『水竜の闘技場』だ」
「水竜の闘技場・・・・」

目の前の湖をジッと見るジゼル。そしてシルドラは再び湖の方を見た。

「お前達にはあの水竜の闘技場を含む四つの修練場へ行き修練を受けてもらうよ」
「一つの修練をこなす事で、お前達のレベルは一つ上がるようになっている」

シルドラの言葉を続けるようにユグドラが話す。そして二匹はまたマサシとジゼルの方を向いて言った。

「さて、早速修練を受けてもらうから、ついて来な」

二匹の子竜は湖に向かって再び飛んでいく。マサシとジゼルも二匹の後を追ってゆっくりと歩き出した。しばらく歩くと二人と二匹は湖に到着した。目の前にある大きな階段を上り二人は湖が見渡せれる高さまで上がって来た。

「意外とデカイな・・・・」
「うん・・・・」

湖の大きさに驚くマサシとジゼル。そんな時、ユグドラが二人に話しかけた。

「それじゃあ、お前達にはまずあそこに立って貰うぞ」

ユグドラが小さな指で湖の中央に立っている二本の岩柱を指差した。しかし、岩柱までの距離はかなりある、ジャンプでいく事はまず不可能だ。

「あんな遠くにどうやって行くんだよ?」
「心配するな、岩柱まではオイラ達の力で送ってやるよ」

そう言うと、ユグドラとシルドラの体が突然光りだした。すると、マサシとジゼルの体が突然浮いた。

「おわっ!」
「な、何これ?」

突然体が浮いて驚きの声を出す二人。そして二人は浮いたままゆっくりと岩柱の方へ飛んでいく。岩柱の真上に着くと二人はゆっくりと降り立った。二人の立っている岩柱の幅は約1m、高さは約10m。下手に動けば落下し湖に真っ逆さまだ。二人が湖を見回していると、さっき自分達が立っていた場所からユグドラとシルドラが飛んできた。

「それじゃあ、修練を始める前に、お前達、周りの岩柱を見てみろ」

ユグドラに言われて周りを見るマサシとジゼル。岩柱に竜の顔の彫り物があることに気付いた。しかもその竜の口の部分には大きな穴が開いている。

「あの竜の口からお前達二人に向かって水球が飛んでくる。お前達は自分の持っている武器を使ってその水球を2時間連続で防いでもらう、それも四本」
「2時間連続を四本!?・・・・という事は、合計8時間?」
「そんなにやらないと駄目なの!?」

ユグドラが口にした時間に驚くマサシとジゼル。するとユグドラの隣のシルドラが腕を組んでマサシとジゼルを見た。

「当然だろ、半年掛かるレベルアップをたったの8時間で得とくするんだからね。ちなみに休憩は一本終わる毎に15分、そして湖へ落っこちた場合はまた最初の一本目からやり直しだから」
「「ええっ!?」」

失敗したらまたやり直し、それを聞いた二人は更に驚きの表情を見せた。

「前もってライディーン様から言われたはずだぞ?厳しい修練になるって。お前達はそれを承知してここに来たんじゃないのか?」

ユグドラの言葉を聞き、二人はハッと目を大きく開いて驚いた。

「・・・・そうだったな、これ位の事を乗り越えないと到底レベルなんて上がらない」
「うん、頑張らないとね、アナスタシア達と約束したんだもん」
「ああ」

二人はライディーンとアナスタシアとの約束を思い出し、改めて気合を入れた。二人はお互いを背中合わせにして白龍刀とメタトロンを手に取った。すると、シルドラが二人にゆっくり話しかけた。

「言い忘れてたけど、お前達はお互いを背中合わせにして修練を始めるんだ、もし自分に向かってくる水球をかわしたら、その水球は後ろにいる奴の背中に命中してそいつが落っこちちゃうから、相手を守るためにも絶対に避けるなよ。それじゃあ、始めるよ」

ユグドラとシルドラがゆっくりと離れ、しばらくすると全ての竜の目が光りだした。そして無数の水球が飛んできた。

「ジゼル、いくぞ!」
「ええ!」

二人は向かってくる水球を見て自分達の武器を強く握った。そして二人は自分の武器で向かってくる水球を一つずつ落としていく、攻撃を受けた水球は次々に湖に落ちていった。だが、次々に飛んでくる水球の位置の確認、そして向かってくる速さと距離を計算して落とす順番を瞬時に決めなければならない。二人は予想以上に苦労していた。

「クッ!だんだん飛んでくる速さが上がってきやがった!」
「それに数も増えてきたよ!」
「こんなものを2時間も続けなくちゃいけないのかよ!予想以上に辛い・・・・ッ!」

水球を防いでいたマサシが岩柱の端に行きすぎて足を踏み外してしまった。その直後、一つの水球がマサシに命中した。

「なぁ〜〜〜〜〜!!」

マサシは情けない叫び声を上げながら落下、バシャーンと音を立てて湖に落ちた。

「あ、マサシ!」

落ちたマサシに気を取られ、隙を作ってしまったジゼル。そんな彼女にも水球が命中。

「キャ〜〜〜〜〜!!」

ジゼルも水球を命中させ、ドボーンと水音を立てて落ちてしまった。

「あ〜あ」
「まだ15分しか経ってないのに」

早くもやり直しになり溜め息をつくに引きの子竜、二匹は自分達の力を使い湖に落ちてマサシとジゼルを引き上げた。ずぶ濡れになった二人はまるでサルベージされるように上がってきた。

「ヘックシィン!」
「クシュン!」

上がられた二人は風に吹かれてクシャミをしながら子竜達の目の前にゆっくりと飛んで来た。

「おいおい、大丈夫なのか?いきなりこんなんで」
「先が思いやられるな」

あきれる様な言い方で二人を見る子竜達。だがマサシとジゼルの表情から諦めは見えなかった。

「なぁに、今はちょっと驚いて失敗しただけだ」
「今度は成功させて見せるわ」
「へぇ〜、なら今度はちゃんと成功させてくれよな」

ユグドラはそう言って指を岩柱の方へ向けて二人を再び岩柱の上に戻した。ずぶ濡れの二人は武器を構えると、同じ様に無数の水球が二人目掛けて飛んできたのだった。それから何度も失敗し、二人は遂に最初に試練をクリアしたのだった。

「ゼェゼェゼェゼェ・・・・」
「ハァハァハァ・・・・」

試練が終わってから二人は湖の近くにある丘でずっと横たわっている。しかも辺りはもう暗くなりかかっていた。

「始めてから13時間、やり直しが47回。一本目は最初に失敗からは失敗はなかったけど、二本目から失敗の連続だったな。それでその度にやり直し、結局5時間もオーバーしたな」
「でも意外と根性あるね、まさか一日で最初の修練をクリアするとは」

二匹の子竜は横たわっているマサシとジゼルを少し見直したようだ。そんな時マサシがユグドラとシルドラを見て言った。

「お、おい・・・・これで、俺達はレベル・2になったのか?」
「ん?ああ、レベルは確かに上がった」
「明日はレベル・3になる為の修練をするから、今日はもう休んだほうがいいね」
「休むって・・・・たとえ体を休めても、こんなハードな修練をあと四日も続けたら、レベルを上げる前に体が壊れちまうよ。なぁ、すぐに疲労を無くす方法はないのか?」

マサシはゆっくりと体を起こしてユグドラとシルドラに尋ねる。するとシルドラが何かを思い出した様な表情を見せた。

「だったら、水竜の闘技場の近くに『精気の湯』に行きなよ」
「精気の湯?温泉か?」
「ああ、その温泉は浸かるだけで疲労も消えて、傷もすぐに治るんだ。いくら厳しい修練になると言っても、それくらいは必要だからな」
「そうか、じゃあまずそこへ行って疲れを取るとするかな」

マサシがそう言ってゆっくりと立ち上がると、隣で横になっていたジゼルもゆっくりと立ち上がった。

「なら早速行きましょう、疲れたし、汗でベトベトだもん」
「ああ、そうだな。・・・・・・ならついでに一緒に入るか?」
「ええ、いいわよ・・・・」

そう言ってジゼルは湖の方へ向かって丘を下りていった。

「フゥ、それじゃあ一緒に・・・・・・・・・・・・・・・・んんっ!?」
『ええ、いいわよ・・・・』

さっきのジゼルの言葉を思い出してマサシは一瞬固まった。

(なにぃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!?)

冗談で言ったつもりがジゼルがサラリと承諾した事に驚いて心の中で叫ぶマサシ。

(ど、どどど、どうなってるんだ!?疲れて俺の言った事がうまく聞き取れていなかったのか?それとも本気で言ってるのか?いや待て、俺達はつき合ってまだ一ヶ月も経ってないんだぞ?それなのに、い、いきなり混浴だと!?)

混乱して頭を両手で掻き乱すマサシを少し離れた所でユグドラとシルドラがジ〜っと見ていた。

「アイツって意外と初心だったんだな」
「て言うか、童貞じゃないの?」

マサシの意外な一面を少し面白そうに見ている二匹の子竜。すると、湖の方からジゼルの声が聞こえてきた。

「マサシー、早く行こうよ!」
「え?あ、ああ!い、今行く!」

慌てて丘を駆け下りていくマサシ。ユグドラとシルドラも彼の後をついていくように飛んだいった。最初の修練をクリアしたマサシとジゼル。だが、修練はまだ始まったばかり、二人は更に過酷な修練を受ける事になるだろう。そして、この後二人がどうなったのかは、誰のも分からない。


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