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作品名:ラビリアンファンタジー 作者:ディオス

第134回   第百三十三話 レベルを上げろ! 覚醒の雫

エミリアと神竜隊全員が集まり、いよいよ作戦会議が始まった。エミリアは全員が席に着いたのを確認しゆっくりと話し出した。

「それでは、会議を始めます。まず最初に、現在の状況からです。各国では国王や大統領など、多くの人々がエクス・デストロの申し出を受けるか受けないかで会議を行っています。ですが、まだ結論は出ていません」
「え、どうしてですか?何者か分からない奴のいう事にいちいち深く考える事はないでしょう?」

コンタがエミリアに尋ねると、マサシがコンタの方を向いて言った。

「何者か分からないからさ。突然全世界に自分達の声を流す程の未知の力を持つ奴等だ、それはつまり、それだけ相手が巨大な力を持っているという事。それだけの力を持っている奴等だ、そして真意も分からない、下手に逆らって何かをされるんじゃなかって、心配してるんだろう」
「そのとおりです。彼等も表では新しい世界に住ませると言っていますが、裏では自分達に逆らう者全てを排除すると考えているでしょう。ですからすでにこのユピローズから各国へ伝達が送られました」
「伝達?」

コンタが首を傾げると、シオンがエミリアに尋ねた。

「もしかして、以前エミリア様が仰っていた事ですか?」
「ええ、強い者だけが生き残れる世界を創るという彼等の真意です」

実はエミリアはマサシとジゼルが眠っている間にベンヌで自分が聞かされたディアボロスとルシフェルを真意を神竜隊全員に話しておいたのだ。

「この事を各国の要人達が知ればすぐに答えは出るでしょう」
「でしょうね、そんな強い者だけが生き延びれて、弱い者は死ぬなんて世界に誰も居たくありませんしね」

マサシは腕を組んで目を閉じながら言う。今度はジゼルがエミリアに尋ねた。

「それで、その会議が終わった後はどうなるんですか?」
「恐らく誰も自分達の申し出に応じなかった場合はエクス・デストロは全ての国に総攻撃を仕掛けてくるはずです。その時は各国に待機させてある我が社の傭兵達とその国の兵士達で協力しエクス・デストロの軍団を迎え撃ちます」
「という事は・・・・」
「ええ、各国はエクス・デストロに宣戦布告をするでしょう」

宣戦布告、誰もが予想していた答えが出てきた。そのせいか誰も取り乱した様子を見せずに黙っている。

「一ヵ月後に彼等は使者を迎えに向かわせると言いました。その時に宣戦布告を告げるはずです」

エミリアが会議の後の事を話し終えるとマサシ達は真剣な表情でエミリアの方を向き頷いた。どうやら全員納得したようだ。

「次に各地で起きているヘルデストロイヤーの残党襲撃事件の事です。各地で待機していたヘルデストロイヤーの残党がエクス・デストロに襲撃され全滅する事件はいまだに続いています。軍の中にはヘルデストロイヤーを始末してくれるとエクス・デストロの行いを良く思う人も居ます、ですが私はそれが正しいとは思いません。いかに罪を犯した者達でも正当に裁きを下さなければなりません」

エミリアの話を聞き再び頷くマサシ達。

「そこでマサシとジゼルを除く神竜隊は最も事件の発生が多いゼルキアスへ向かい、一週間ゼルキアスの各町とその周辺を調査してもらいます。情報では昨日の夜に残党部隊を見かけたという知らせが入りました。もしまだ残党部隊が残っていたら、その部隊を襲撃する為に眷属が現れる可能性が高いですから」
「それじゃあ俺達は残党部隊が襲われる前に彼等を確保すればいいのですね?」
「そうです」

ユウタの質問にゆっくりと頷くエミリア。そしてユウタはコンタ達を見た。コンタ達も理解したのか黙ったまま彼の目を見ていた。

「それでは、本日の会議の中で最も重要な件を話します」

エミリアの声を聞き全員が彼女の方を向く。

「最後の件、それはマサシとジゼルの事です」

やはり、とユウタ達は目を鋭くした。二人は新しい力を手に入れてもまだその力の全てを引き出せていない。そんな状態ではまともに戦う事はできないだろう、誰もがそう思っていた。

「二人は契約者の力を手に入れました、ですがまだレベルは1のままです。これでは普通の敵と戦うのが精一杯です。ですが、すぐにレベルを上がる方法があると彼は言いました」
「「「ええ?」」」

その言葉を聞いた契約者達は全員と驚いて声を出した。当然だ、今までそんな話を聞いたことは一度も無かったのだから。

「二人とも、それ本当なの?」

シオンが座っているマサシとジゼルに尋ねる。マサシはシオンの方を見て言った。

「ああ、俺も聞いた時は驚いたよ」
「それで、どんな方法なんだ?」

マサシの隣に座っているユウタが尋ねると、マサシはポケットから一つの小瓶を取り出した。

「それは?」
「これは『覚醒の雫』って言うみたいだ」
「覚醒の雫?」
「ああ・・・・」

小瓶を机に置き、マサシは話を始めた。それを静かに聞くユウタ達。そしてマサシの正面に座っているジゼルもマサシの方を向いていた。





時を溯り、エミリアの元へ戻る寸前の光の空間の中でマサシとジゼルはライディーンとアナスタシアの話を聞いていた。

『これを使うのだ』

ライディーンの目の前に小さな光が現れ、その光はゆっくりとマサシの目の前に下りてきた。マサシはその光を片手でゆっくりと掴む。すると光が消え、マサシの手の中に何かの感触が生まれた。ゆっくりと手を開くと、マサシの手の中には小さな小瓶があった。その中には水色の輝く液体が入っていた。マサシはその小瓶をジッと見ており、彼の隣でもジゼルがその小瓶を見ていた。

『それは覚醒の雫だ』
『覚醒の雫?』

マサシの隣でジゼルがライディーンの方を見て聞き返す。

『その瓶の中の液体を垂らすと『覚醒空間』という空間への入口を開く事ができる』
『その空間の中で貴方達はレベルを上げるために修練を受ける事ができます』

ライディーンとアナスタシアの話を聞いて二人は顔を上げて二匹の竜を見上げた。

『その修練を全てこなす事ができればお主達はレベルを5まで上げるこ事ができよう」
『修練、か・・・・』

マサシが再び小瓶を見て何かを考えていると、ライディーンが少し低い声を出した。

『ただし、その覚醒の雫は一度使ってしまったらただの水に変わってしまう。つまり、一度入口を開いてしまったらその時にしか空間には入れないという事だ』
『一度っきりって事か・・・・』
『それだけではありません』
『え?どういう事?』

アナスタシアの言葉を聞いてジゼルが尋ねると今度はアナスタシアが静かな声で言った。

『覚醒空間の中に居られる時間は限られています、貴方達が空間の中に居られる時間は120時間だけなのです』
『120時間、つまり五日って事なのね』
『そうです、そして120時間が経過した瞬間に貴方達は現実の世界に強制的に還されます』
『要するに、その120時間の間にレベルを上げないと、もうレベルは上げられないって事だな』

マサシの考えを聞いてアナスタシアはゆっくりと頷く。

『だけどよ、普通の修練をしても半年掛かるレベルをたったそれだけの時間で上がられるのか?』
『当然通常の方法よりもお主達に掛かる負担も大きいだろうな』
『だよなぁ。楽してレベルを上がる方法なんてないか・・・・』
『・・・・マサシよ、まさかとは思うが、お主は何の苦労もせずにレベルを上げるつもりだったのではなかろうか?』

少し怒った様な声でマサシに尋ねるライディーン。マサシは慌てて様子で首を振った。

『い、いやいや、そんなつもりは全然・・・・』
『ならばよい・・・・』

マサシとライディーンの会話を見てジゼルは苦笑いをした。

(楽するつもりだったのね・・・・)

心の中でマサシの本心を悟るジゼルはすぐに表情を戻してライディーンの方を向き直した。

『苦しい修練が待っているであろうが、それを乗り越えた時、お主達は邪竜王達に勝つ力を得られるであろう』
『そうか、ありがとうライディーン、アナスタシア』
『契約として力を貸したのだ、礼は不要だ』
『それでも礼を言わせてくれ、ありがとう』
『うん、ありがとう』

マサシとジゼルはそれぞれ自分の契約相手の竜を見て礼を言う。二匹も表情こそ変わらなかったが、少しだけ喜んでいたのかもしれない。そんな時、奥の方が強く光りだした。

『そろそろ出口のようだ』
『私達の意識はここで消え、貴方達二人の心に宿り一つとなります。もう語り合う事はないでしょう』
『そう、少し寂しいな』

もう話す事ができない、それを聞かされたジゼルは少し悲しそうな声で言った。そんな彼女にアナスタシアが顔を近づけた。

『悲しむ事はありません、貴方と私は一心同体です、いつでも貴方と共にいます』
『うん、そうだよね。ありがとう』

ジゼルとアナスタシアの会話を見ているマサシとライディーン。彼等もゆっくりとお互いの顔を見合って話を始めた。

『ライディーン、俺に力をくれたアンタの為にも必ず修練を乗り越えてみせる。だから、俺を見守っててくれるか?』
『フッ、お主の口からそんな言葉が出るとは思わなかったぞ』
『な、何だよ?似合わないか?』
『いや、意外だと思っただけだ』
『あっそ・・・・。とにかく、俺達は必ずレベル・5になってみせる』
『うむ、お主の中で見届けさせてもらうぞ』

二人と二匹の会話が一通り終わると更に光が強くなった。

『それじゃあ、俺達は行くよ』
『じゃあね、アナスタシア、ライディーン』
『ええ、お別れです』
『さらばだ』

二人は二匹に背を向け、光の方へ走っていく。そして二人の姿が消えた後、二匹の体も光の中へ消えていった。





「これがライディーンとアナスタシアから聞かされた覚醒の雫の事です」

説明を終えてエミリアに話の内容と覚醒の雫の事を話し終えたマサシは彼女に小瓶を渡し、エミリアはそれをゆっくりと手に取った。

「この液体にそんな力が・・・・」

手に取った小瓶を見て驚くエミリアと、彼女の手の中の小瓶を座ったまま見ている神竜隊の隊員達。

「それで、貴方達は何時からこの覚醒の雫を使うつもりなのですか?」
「今日中に準備をして、明日から始めるつもりです」

エミリアの質問にジゼルが答える。エミリアがマサシに視線を向けると、彼は黙って頷いた。どうやら同じ考えのようだ。

「分かりました、では明日二人は予定通り覚醒の雫を使い覚醒空間で修練を、そして残った神竜隊はゼルキアスへ向かって調査任務についてください。会議の結果は任務と修練が終わり次第、各隊員に報告します。以上、解散」

エミリアの解散の言葉と同時に全員が立ち上がり一礼をする。そして一人ずつ静かに退室していった。





翌日、マサシとジゼル、そしてエミリアと神竜隊はサンドリアから少し離れてた所にある草原に立っていた。エミリアと神竜隊はマサシとジゼルから少し離れた所で二人を見ている。どうやらここで覚醒の雫を使うようだ。

「それじゃあ、始めるぜジゼル?」
「うん」

マサシは小瓶の蓋を外しゆっくりと小瓶を傾けて中の液体を垂らした。液体が地面に落ちてしばらくすると、液体が光だし、二人の目の前に七色に輝く光のトンネルが現れた。

「コ、コレが・・・・」
「覚醒の雫の力・・・・」
「凄い・・・・」

光のトンネルを見て驚くユウタ、コンタ、シオンの三人。すると、エミリアがゆっくりと歩きマサシとジゼルに近づいた。

「二人とも、お気をつけて」
「ハイ、それじゃあ、行って来ます」
「行って来ます」

エミリアの方を向いて挨拶をする二人。すると、エミリアの後ろからユウタ達も近づいてきた。

「頑張れよ二人とも!」
「ファイトだよ!」
「お前達はこっちの事は気にせず修練の事だけ考えればいい」
「ああ、ありがとな」

マサシはユウタ、コンタ、レイナの顔を見て右手で拳を作り親指を立てた。

「ジゼル、マサシの事、お願いね」
「うん、分かった」

シオンの顔を見て笑って返事をするジゼル。そしてシオンの後ろからネリネがゆっくりと寄ってきた。

「ジゼルさん」
「・・・・!」
「私は貴方達の事をまだ何も知れないけど、応援してるから」
(姉さん・・・・)

契約を交わした事で自分の事を忘れてしまった実の姉。だがここで悲しむ顔を見せる事はできない、ジゼルはそう自分に言い聞かせて笑顔でネリネの顔を見てた。

「うん、ありがとう。あ、それからあたしの事はジゼルって呼んでくれるかな?」
「え?」
「お願い」
「え、ええ。分かった、頑張ってね、ジゼル」
「うん!」

ジゼルはとびっきりの笑顔を見せて頷いた。二人に挨拶を終えたエミリア達はゆっくりと二人から離れた。エミリア達が離れたのを確認したマサシとジゼルは再び入口の方を向いた。

「行くぞ、ジゼル」
「うん!」

二人を同時に地面を蹴り入口の飛び込んだ。そして入口はゆっくり消えた。覚醒の雫を使い、レベルを上げる為の修練を受けるために光のトンネルへ飛び込んだマサシとジゼル。果たして、二人にはどんな修練が待っているのだろうか?


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