20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:ラビリアンファンタジー 作者:ディオス

第132回   第百三十一話 光の神竜 ライディーンとアナスタシア

自分と一緒に戦ってくれる、一緒に苦しみを背負ってくれる、ジゼルの想いと優しさに心を打たれたマサシはジゼルと共に新たな契約者の力を得ると誓った。

「この先にエミリア様はいるはずだ」
「じゃあ急ぎましょう」
「ああ!」

二人はエミリアとの待ち合わせ場所へ向かう為に全力で走った。そして二人は駐留基地から少し離れた草原にやって来た。夜風が吹き、月明かりに照らされた草原に中央に一人の女性が立っていた。エミリアだ。

「エミリア様」

マサシの声に気付いたエミリアはゆっくりと振り向く。

「来ましたか、ジゼルへの挨拶は・・・・!なぜジゼルがここに居るのですか?」

マサシの方を見て隣に立っているジゼルを目にし、一瞬驚きの表情を見せたがすぐに表情を戻してマサシに尋ねる。

「彼女も契約を交わす事になりました」
「何ですって?」

マサシの口から出てきた言葉に再び驚きの表情を見せるエミリア。マサシの隣になっていたジゼルはマサシとエミリアの前まで歩きエミリアの顔をジッと見ていた。

「ジゼル、マサシの言った事は本当なのですか?」
「ハイ、あたしも契約を交わしてマサシと一緒に戦いたいんです!」
「・・・・ジゼル、貴方はマサシが何の為に再び契約を交わそうとしているのか、分かっているのですか?」
「分かっています」

ジゼルの言葉に「え?」という表情を見せるエミリア。そしてジゼルは少し暗い顔をして口を開いた。

「実はエミリア様とマサシの話を会議室の廊下で聞いてたんです・・・・」
「・・・・!あの時ですか」

エミリアはマサシと契約の事を話していた時の事を思い出した。ジゼルはエミリアの顔を見ながら話を続ける。

「あたしもマサシと同じです。エミリア様があたし達の事を為に昼間に冷たく言った事も知っていましたし、この世界が好きだから、エミリア様達が、姉さんが、マサシが好きだから、戦いたいんです。それに、あたしはマサシ一人に辛い思いをさせるつもりはありません」

エミリアは目を閉じてジゼルの話を聞き、ゆっくりと目を開いた。そしてジゼルをジッと見ながら言った。

「貴方はマサシから契約者の代償の事を聞いていますか?」
「ハイ、契約を交わせば、契約者以外の人から忘れられる事も・・・・」
「そうです、つまり姉妹であるネリネからも忘れられるという事になるのです。そしてなにより、契約者になれば地球で普通の女の子としての生活もできなくなります。それでも後悔しませんか?」
「ハイ!」

微笑みながら力強く頷くジゼル。それを見たエミリアの顔にも笑顔が浮かんだ。

「分かりました。では、マサシ、ジゼル、これより貴方達にはこの二つの魔封石に封印された魔物と契約を交わしてもらいます」

エミリアは地面に立ててあるアタッシュケースを持ち上げて横にしてゆっくりと開いた。そこには二つの魔封石が揃って置かれていた。

「これが、魔封石?」
「ああ」

マサシが魔封石の一つを手に取ると、ジゼルも残ったもう一つの魔封石を取った。二人が魔封石を手にした事を確認したエミリアはゆっくりとケースを閉じて地面に置いた。

「では、契約を行ってもらいます。契約者は契約を交わす時に別の契約者と同時に契約を交わせば、お互いを忘れる事はありません」

その話を聞いたジゼルはコルヘルスへ向かう時にシオンから聞いた事を思い出した。シオンとサヤカも同時に契約を交わした為お互いの事を忘れる事がなかったのだ。

「ちなみに貴方達が契約を交わす相手ですが、マサシの相手は神竜種の『救済竜 ライディーン』。ジゼルの相手は同じく神竜種の『聖妃竜(せいひりゅう) アナスタシア』です」

エミリアは契約相手の名を告げるとゆっくりと下がりマサシとジゼルから離れた。

「私にできるのは貴方達が契約を交わして無事に帰ってくるよう祈るだけです」

エミリアの顔を見てマサシとジゼルは真剣な表情で言った。

「ありがとうございます、エミリア様」
「あたし達、必ず契約を交わして戻って来ます!」
「御武運を・・・・」

マサシとジゼルは一度お互いの顔を見合って、小さく頷き手を握り合う。

「よし、始めるぞジゼル。まず魔封石を顔の前まで持ってきて強く握るんだ」
「う、うん!分かった」

少し緊張しているのか、ジゼルは少し汗を垂らしてマサシの言われたとおりにした。

(聞こえるか?救済竜 ライディーン、俺はアンタと契約を交わしたい、俺の声に答えてくれ!)
(聖妃竜 アナスタシア、あたしはジゼル、貴方と話がしたいの。お願い、あたしの声に答えて!)

二人が心の中で同時に契約相手の名を叫んだ瞬間、二人の持っていた魔封石が眩しい光を放った。そしてその光は二人を包み込むように広がっていった。





「・・・・・・ん?」

目を開いて周りを見回すマサシ。彼は一人で真っ白な広い空間に立っていた。

「ここは?以前契約を交わした時とは全然違うな?」

マサシが最初の契約の時を思い出していると、何処からか男の声が聞こえてきた。

「ここは我が作り出した契約の間だ」
「!誰だ?」

声に反応して振り返ると、そこには自分よりも二回りほど大きい一匹の竜がいた。二本足で立ち、鋭い爪の生えた腕と体を包み込む位の大きな竜翼、長い首と尻尾、そして頭から生えて後ろに伸びている光の角と銀色の髪に純白の甲殻と鱗。

「・・・・アンタがライディーンなのか?」
「いかにも」

ライディーンは長い首を動かして顔をマサシの前まで運んだ。そして蒼く輝く目でマサシをジッと見た。

「秋円マサシ、我が同族と契約を交わしその者に力をすべて奪われ、世界に解き放ってしまった者」
「分かるのか?俺がディアボロスと契約を交わした事を?」
「うむ、お主の体から我らと同じ力を感じる。しかし、よりにもよって邪竜王などと契約を交わしてしまうとは・・・・」
「俺だって好きでアイツと契約を交わしたわけじゃない、両親を殺されて錯乱していたから誤って奴と・・・・」
「・・・・過去の話をする為にここに来たのではなかろう?」
「・・・・ッ、そうだったな。すまない」

目的を思い出しライディーンに謝罪をするマサシ。そしてマサシはライディーンの顔を見て言った。

「ライディーン、俺はディアボロスに力を奪われて普通の人間に戻ってしまった。今の俺は何もできない、だけど、アンタの力があればラビリアンを救う事ができるんだ!頼む、俺に力を貸してくれ!」
「・・・・・・」

マサシの頼みを聞いたライディーンはしばらく黙り、ゆっくりと大きな口を開いた。

「お主に訊こう、お主が我の力を欲しているのは、ただラビリアンを守る為なのか?」
「いや、ラビリアンだけじゃない、エミリア様、神竜隊の仲間達、そしてジゼルの笑顔を守りたい!」
「・・・・ディアボロスと戦おうとは思ってはおらぬのか?」
「・・・・・・」

ライディーンの質問に黙るマサシ。そして少し力の無い声で言った。

「確かに、最初は契約を交わしてディアボロスと戦おうと思った。だけど契約者の力を手に入れても俺のレベルは1だ、レベル・5だった俺の力を丸ごと持っていったアイツには勝てない」
「では、もしすぐにレベル・5の力を得る事ができれば奴とも戦うという事か?」
「ああ、勿論だ。だけど現実ではそれは不可能だろう」
「・・・・いや」
「え?」

ライディーンの言葉を聞いてマサシは訊き返した。ライディーンは再び静かな声でマサシの顔を見て言った。

「すぐにレベルを上げる方法はある」
「ほ、本当なのか!教えてくれ!」
「それは我と契約を交わしてからだ、契約を交わさなければ教えても意味は無い」
「・・・・そう、だったな」
「最後にもう一つ質問をしよう。この質問で我の予想していた答えであれば、お主と契約を交わそう」
「ああ、分かった」
「では、マサシ。お主はなぜディアボロスと戦おうと思う?」
「ディアボロスと戦う理由か・・・・」

質問の内容を確認しマサシは目を閉じる。しばらくしてマサシは目を開いた。

「アイツは俺の心の闇が生んだ悪の塊だ、両親を目の前で殺されてずっとその絶望を引きずりながら生きてきた。アイツを倒さなければ、世界の平和は勿論、俺自身の過去も精算できない。俺はラビリアンと仲間達、そして俺自身の為に奴と戦う!」
「・・・・・・フッ、そうか」

ライディーンは小さく笑い、マサシを蒼い目で見つめながら言った。

「お主は他人の事だけではなく、自分自身の過去と決着をつける為に奴と戦うと決めていたか。よかろう、お主と契約を交わそう」
「・・・・!ありがとう、ライディーン」

マサシがライディーンに礼と言うと、何処からか水滴が落ちる様な音が空間に響いた。

「ん?今の音は?」

マサシが音のする方を見ると、マサシとライディーンの目の前に大きな光のトンネルが現れた。そしてその中から優しい女性の声が聞こえてきた。

「ジゼル・アルフォントが私の最後の質問に答えようとしています。秋円マサシ、貴方が彼女を見守っていてあげなさい」

突然聞こえてきた女性の声にマサシは少し驚いていた。

「ライディーン、今の声は?」
「あれはアナスタシアの声だ。お主と共にやって来た娘も、アナスタシアに認められつつあるようだ」
「ジゼルが?」
「ゆけ、あの娘を見守るのはお主の役目だ」
「あ、ああ!」

ライディーンに言われてマサシは光のトンネルへ向かって走って行った。





マサシとライディーンが居た空間とは別の空間ではジゼルが契約相手であるアナスタシアと向き合っていた。ライディーンと同じように二本足で立ち、細い腕に宝石のように輝く竜翼、長い首と後ろに伸びる一本の長い角、そして額には白く輝く宝玉が埋め込まれている。薄い黄色の甲殻と皮、そして紅く輝く目。アナスタシアはライディーンと同じ様に顔を近づけてジゼルと話していた。

「ジゼル、貴方に最後の質問をします。この質問の答えが私の予想していた答えならば、私は貴方と契約を交わしましょう」
「ハイ」

ジゼルは自分よりをずっと大きいアナスタシアを見て返事をする。そしてアナスタシアは口を開いた。

「ジゼル、貴方はなぜ私と契約を交わそうと決意したのですか?」
「・・・・あたしはマサシと出会っていろんな事を教えてもらいました。マサシの世界の事、戦いで背負う物、そして戦いから生まれる物。あたしは知らないうちに彼を好きになっていました。そして彼はあたしの為に一人で契約を交わして戦おうとしていました。あたしは彼が一人で苦しむ姿をこれ以上見たくない。一緒に戦って、一緒に辛い事を乗り越えたい、それで彼の苦しみが少しでも無くなるのなら、あたしは彼と一緒に契約を交わす。そう心に誓ってここに来ました」
「契約を交わさずに地球へ行けば、貴方は普通の人間として生きる事もできるのですよ、それでも貴方は私と契約を交わすのですか?」
「マサシが戦うって言ってるのにあたしだけ安全な世界で幸せになる事なんてできない!あたしは彼と一緒に戦い、彼と一緒に、生きていきます!」

ジゼルは自分のマサシへの想いをアナスタシアに力一杯伝える。そんな彼女を見たアナスタシアは頷いてジゼルに顔を寄せた。

「分かりました、私は貴方と契約を交わしましょう。貴方のマサシへの想いがルシフェル達を打ち倒す事を信じます」
「あ!ありがとうございます!」

ジゼルはアナスタシアに礼を言って笑顔を見せた。その時、ジゼルの背後に光のトンネルが現れ、トンネルからマサシが出てきた。

「ジゼル!」
「マサシ!」
「ジゼル、アナスタシアに認めてもらったんだな!」
「うん、マサシ、貴方もライディーンに認めてもらったの?」
「ああ、勿論だ!」
「よかった」

ジゼルはマサシに抱きつき両手を背中に回した。マサシもジゼルの背中に手を回し、彼女の存在を確かめるように強く抱きしめた。マサシの背後に現れた光のトンネルは消え、代わりにライディーンがマサシに背後に現れ、アナスタシアもジゼルの背後までやって来た。二匹の竜は抱き合う二人を見守るように見下ろしている。まるで二匹は二人を祝福しているように。

「これほどお互いを想い合う人間に会ったのは初めてだ」
「ええ、私もそう思っていました」

ライディーンとアナスタシアが話していると、マサシはジゼルをそっと放してライディーンの方を見た。

「ライディーン、教えてくれ、どうすれば俺達はすぐにレベルを上げる事ができるんだ?」
「え?すぐにレベルを上げるって、そんな事ができるの?」
「ああ、そうすれば俺達はディアボロスとルシフェルと戦う事ができるんだ」

ジゼルの質問に答えるマサシ。そんな時ライディーンはマサシ達を見下ろして言った。

「それは元の世界に戻る道中に教えよう、まずは元の世界へ戻るぞ」
「分かった、ジゼル、行こう」
「うん!」

マサシがジゼルの手を握った瞬間、二人の足元が光だし、その光は二人を包み込んだ。遂に契約者の力を手に入れたマサシとジゼル。だが、まだレベルを1のまま、ディアボロスとルシフェルに勝つにはレベルを5にしなくてはならない。一体どのような方法でレベルを上げるのだろうか?


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 185