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作品名:ラビリアンファンタジー 作者:ディオス

第131回   第百三十話 想いのぶつかり合い マサシVSエミリア?

ラビリアンに新たな魔封石が送られて来た。それを知ったマサシは何かを思いついたのか駐留基地を出てエミリアの元へ向かった。

「急がねぇと、間に合わなくなる!」

マサシはサンドリアの夜の城下町を駆けて城へ向かった。

「あれ?」

たまたま町に用事があってやって来たジゼルが偶然走って城へ向かうマサシを見つけた。

「マサシ!どうしたの?」

マサシの名を叫ぶジゼル。だが彼には届かなかった。

「?」

声が聞こえないくらい急いでいるのだろうか。そんな風に考えていたジゼルは首を傾げた。





昼にマサシ達が訪れたサンドリア城の作戦会議室。そこにはエミリアが何かを考えながら椅子に座っていた。彼女が黙って考えていると、ノックが聞こえてきた。

「どうぞ」

エミリアの許可を聞いてゆっくりとドアが開いた。そして部屋にマサシが静かに入ってきた。

「・・・・マサシ、どうしたのですか?」
「エミリア様、昼間の話なのですが・・・・」
「・・・・例の除隊命令の話ですか?」
「ハイ・・・・」

除隊の話になると、エミリアは立ち上がり、すっかり暗くなっている外を窓から見て静かに言った。

「その事ではもう議論する気はないと言ったはずですよ?」
「ええ、確かに仰いました」
「でしたら、もう話す事はありません。戻って地球へ行く準備を進めなさい」
「・・・・・・」

話を終わらされそうになったが、ここでマサシは切り札とも言える話題を持ち出した。

「・・・・さっき駐留基地で補給部隊の話を耳にしたんです」
「・・・・・・」
「補給物資の中に、魔封石が入っていると聞きました」
「!!」

魔封石という言葉を耳にした瞬間エミリアの表情が急変した。どうやら驚いているようだ。

「魔封石、ですって・・・・?」
「ハイ」
「・・・・・・その話は本当なのですか?」

静かに、そして取り乱すことなく、エミリアは話しながらゆっくりとマサシの方を向いて尋ねた。彼女の視界には真剣な表情で自分を見るマサシが飛び込んできた。

「ハイ」
「そうですか。それで、どうして今その話を?」
「エミリア様なら、もうお分かりのはずですが?」
「・・・・・・」

マサシの言葉を聞きエミリアはしばらく黙り込み、ゆっくりと口を開いた。

「もう一度、契約をするつもりなのですね?」
「・・・・・・ハイ」

エミリアの質問に迷うことなく頷くマサシ。そう、マサシは再び魔封石に封印されている魔物と契約を交わして契約者となり、ディアボロス達と戦うつもりなのだ。その為にマサシはエミリアから許可を得る為にやって来たのだ。

「もう一度契約を交わせば、俺はまた戦う力を得る事ができるんです。お願いです、魔封石の契約を俺に交わさせてください!」

マサシはエミリアに深く頭を下げて頼んだ。しかし、エミリアの口からは冷たい言葉が返ってきた。

「許可できません」
「なぜですか!?」

マサシはフッと頭を上げてエミリアの顔を見て尋ねる。そしてエミリアは静かに言った。

「貴方は忘れたのですか?契約者は契約を交わすと力を得る代わりに代償も得るのですよ?」
「そんなの分かっています」
「だったらなぜ契約を交わすのですか?契約を交わせば貴方は契約者以外の人間から忘れられるのですよ?」
「アイツ等と戦う力を得るためです!ディアボロスがこの世界に現れたのは俺の責任です、俺にはアイツを倒してこの世界から追い出さなくていけないんです!」
「・・・・・・」
「奴を倒す為なら、俺は自分の人生を捨てる覚悟だってできます!ですから・・・・」
「いい加減にしなさい!!」
「!!!」

突然自分を怒鳴りつけるエミリアにマサシは驚いて話を止めた。しかも普段と違って敬語ではなかった。

「貴方、どうして自分の人生を捨てられるなんてそんな簡単に言えるの!世の中にはね、幸せな人生を歩みたくても、歩めない人だって沢山居るのよ、でも貴方今、戦いという束縛を解かれて、愛する人と一緒に普通の人間として幸せを掴もうとしているの。これから新しい人生を歩むっていう時に、また人生を捨てるなんて、なんて言い草なの!!」
「・・・・・・」

自分を睨みながら怒鳴るエミリアの表情に少し怯えながらも、彼女の目を見たまま黙って話を聞くマサシ。

「仮に契約を交わしたとしても、貴方はまたレベル・1の状態に戻ってるわ。一度契約を交わした貴方なら分かるでしょう!契約者がレベルを一つ上げるには最低でも半年は掛かるのよ、エクス・デストロがゼロビッククランチを発動するのは一ヵ月後、それでは貴方はレベル・1の状態で彼等と戦う事になる。今のまま戦っても命を敵に差し出すだけよ!」
「・・・・・・」
「私は、貴方に私やゾークと同じ思いをしてほしくないの・・・・」
「・・・・!」

さっきまで興奮していたエミリアが今度は今にも泣き出しそうなくらい悲しそうな声を出し、それを聞いたマサシはハッとした。

「私はゾークと結婚して幸せな生活を歩もうとした、でもティアマットの呪いで私とゾークの人生は大きく変わってしまった。そしてそのせいで多くの人々を傷つけてしまった・・・・。私は、もう見たくないの、自分達と同じ様に人生を狂わせてしまう人達を・・・・・・」

目を閉じて悲しそうに語るエミリアを見てマサシはゆっくりと歩いてエミリアの目の前で立ち止まった。

「・・・・ありがとうございます、エミリア様」
「・・・・・・」

マサシの声を聞いてエミリアはゆっくりと目を開いてマサシを見た。

「分かっています、エミリア様は俺とジゼルの事を思って言ってくれた事は、昼間も、そして今も」
「だったらなぜ・・・・?」
「俺が契約を交わすのは戦う力を得るためだけではありません、この世界を、エミリア様達を、そしてジゼルを守る力を得るためなんです」

マサシは笑いながらエミリアの顔を見て話を続けた。

「俺はこの世界が好きです。沢山の人と出会って、ジゼルを好きになる事ができました。だから、俺はこの世界を守りたいから契約を交わしたいんです。それに俺はあんな奴等を倒すためにだけに自分の幸せを捨てるつもりはありません」
「え?」
「俺にとって、力を得てこの世界を守ること、皆と居る事、ジゼルが笑ってくれる事が一番の幸せなんです」

マサシが自分の気持ちを素直に話すと、エミリアはそっとマサシの肩に手を置いて静かな声で言った。

「忘れたの?ジゼルは普通の人間、貴方が契約を交わせば彼女は貴方を忘れてしまうのよ?」
「それでもいいんです。彼女を守れるのなら、それに、その時はまた一から彼女とやり直すつもりでしたから」
「・・・・フゥ、簡単に言うわね」

少し飽きてた様な言い方をしながら溜め息をつくエミリアはゆっくりと肩から手を退かした。

「・・・・・・分かりました。貴方の意思と覚悟は伝わってきました」

再び話し方を敬語に戻して椅子に座るエミリア。

「それじゃあ・・・・!」
「ええ、貴方を地球へ戻すのは止めます。ですが、ジゼルは地球に送りますよ?貴方が契約を交わそうと、彼女がディアボロス達に狙われている事は変わりませんから」
「・・・・ハイ」
「それから覚えていてください。貴方は契約を交わしても、レベル・1のまま、ディアボロスと戦う事はまず無理なのですから」
「分かっています」
「契約は今夜、ジゼルを地球へ送る直前に行います。それから、この事はあえて神竜隊には伝えないでおきます、いいですね?」
「ハイ!」

エミリアを見て敬礼をするマサシ。だが、そんな光景を作戦会議実のドアからこっそり覗いていた人物が居た。

「・・・・マサシ」

ジゼルだった。彼女は様子がおかしかったマサシを見てこっそり後をつけたのだ。そしてマサシとエミリアの話を全て聞いていた。ジゼルは二人に気付かれないようにドアから離れて廊下を走って行った。





エミリアとの話を終えてから一時間後、マサシはジゼルに挨拶をしようとずっと駐留基地で待っていた。だが・・・・。

「ジゼルは何処に行っちまったんだ?」

予定の時間にあっても彼女は駐留基地に姿を見せなかったのだ。マサシは必死で彼女を探すが何処にもいない。

「・・・・!もしかして!」

マサシはジゼルの行き先に心当たりがあるのか、方向を変えて全力疾走をした。十数分後、マサシはある林にやって来た。そこは自分がジゼルは初めて出会った林だ。しばらく林の中を探していると、マサシは一本の木に凭れているジゼルを見つけた。彼女の足元にはメタトロンと小さな皮の鞄が置かれていた。

「ジゼル、こんな所に居たのか、探したんだぜ」
「やっぱり、貴方ならここに来ると思った」
「どうしてここに居るんだ?」
「貴方と二人だけで話がしたかったからよ」
「そうか、実は俺も話しが有るんだ。ジゼル、俺は・・・・」
「あたしも契約を交わすわ」
「!!!?」

自分が話す前にジゼルが話した事、しかもそれが契約の話だったのでマサシは驚いた。

「な、なんでお前が契約の事を・・・・?」
「・・・・あたしね、貴方とエミリア様の話を廊下で聞いてたの」
「・・・・!それじゃあ」
「ええ、聞いたわ。貴方が契約を交わす事、この世界に残る事、全部ね」
「だったら・・・・」
「あたしも契約を交わす、魔封石は二つあるんでしょ?」
「ジゼル、それがどういう事か分かるのか?契約を交わせばその人間は大切な物を沢山失うんだ」
「・・・・・・」
「お前は俺と違って大切な物が沢山あるだろう?それにネリネもお前を守るために地球へ行かせる事に賛成したんじゃないか。だったら・・・・」
「マサシ、いい加減にしないとあたしも本気で怒るよ・・・・?」
「!」

今まで見た事のないジゼルの睨んだ顔を見てマサシはエミリアの顔を思い出し少し驚く。

「前にも言ったでしょ?あたしは貴方が好き、貴方と一緒にいたい、貴方と一緒に戦いたい。ただそれだけよ」

睨んだ表情が次第に和らいでいき、ジゼルはマサシの目の前まで歩いてきた。

「契約を交わすと契約者以外の人から忘れられる、以前貴方が教えてくれた事よ。どうして、あたしが貴方を忘れないといけないの?」
「もし契約を交わしたら、お前も皆から忘れられるんだぞ?ネリネやシンディやベルおばさんからも・・・・」
「地球(向こう)に言ったら二度と皆には会えないわ、だったらどっちでも一緒でしょ?」
「契約を交わしてもルシフェルと互角に戦う事はできないんだぞ?」
「それは貴方も同じでしょう?それに、あたしは貴方と一緒に居る事が一番幸せだもの」
「!!」

マサシは覚悟していたのだ、ジゼルに忘れられて生きる事を。だが、彼女はそんな自分と一緒に居てくれると笑顔で答えてくれて。それを聞いたマサシは知らず知らずの内に涙を流していた。

「マサシ、どうしたの?」
「い、いや・・・・嬉しくて、ついな。おかしなもんだよな、涙なんて、父さんと母さんが死んだ時に枯れたと思っていたのに」
「マサシ・・・・」
「ありがとうジゼル。それじゃあ改めてお願いする、俺と一緒に契約を交わしてくれるか?」
「マサシ、さっきからそう言ってるでしょ?」

ジゼルは再び笑ってマサシの背中に手を回した、マサシもゆっくりとジゼルの背中に手を回し二人は抱き合った。そして、二人の唇がゆっくりと重なった。この二人の想いがさらに絆を強くした。そしてこの後、二人は契約者になる為の試練を受けるのだ。


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