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作品名:ラビリアンファンタジー 作者:ディオス

第129回   第百二十八話 戦士の目覚め

「・・・・・・ッ!」

あれから更に三日、病室で目を覚ますマサシ。横になった状態で目だけを動かして辺りを見回した。そして自分の右側のベッドで横になり眠っているジゼルを見つけた。

「ジゼル・・・・。でも俺達はどうして・・・・・」

ジゼルの顔を見て少しだけ笑みを浮かべたマサシはどうして自分達はこうなっているのかを思い出す。

「ッ!そうだ、確かベンヌから脱出した後、地上に居た市松大佐達と合流して・・・・」

思い出した事を独り言のように喋って確認するマサシ。すると、ドアが開き、白衣を着た男性が入室して来た。そして目を覚ましているマサシを見て驚きの表情を見せる。

「おおっ!秋円大尉、目が覚めましたか!」

白衣を着た男性は早歩きでマサシの下へやって来る、どうやら医師のようだ。

「気分はどうですか?どこか痛みますか?」
「い、いえ。大丈夫だと思い・・・・テテッ!」

起き上がろうとしたマサシは体に走る痛みに声を出し傷口を押さえる。

「あっ、まだ安静にしないといけませんよ、傷口が開いてしまいます!」

医師は慌ててマサシの肩に手を置き、ゆっくりと寝かせる。マサシも言われたとおりゆっくりと横になった。その時、医師の背後から声が聞こえてきた。

「う〜ん・・・・」
「ジゼル?」

ジゼルが目を覚ました事に気付いたマサシと医師はジゼルの方を向いた。

「ん?マサシ・・・・?」
「大丈夫か?」
「ええ、でもまだ体中が痛いかな・・・・」
「そうか、でも気が付いてよかった」
「うん、マサシは何時気が・・・・イタッ!」

マサシと同じ様に起き上がろうとしたジゼルが痛みに声を上げる。そして再び医師がそれを止める。

「まだ横になっていてください。目を覚ましたばかりなのですから」
「ハ、ハイ・・・・」

医師の言うとおりに横になるジゼル。医師は二人のベッドの間に立ち、二人の顔を見て話し始めた。

「もう少し横になっていてください、社長達には私から知らせておきますので」
「すみません・・・・」
「それにしてもよかったですよ」
「え?」
「お二人とも、十日間も眠り続けていたんですよ」
「十日も、ですか・・・・?」
「ええ、仮死状態に近かったですから」

十日も目が覚めなかった事に驚くマサシとジゼルは横になったままお互いの顔を見た。するとマサシは医師の方を見て尋ねる。

「あの、俺達が眠った後に何かありましたか?」
「・・・・さぁ、私は何も」
「そうですか・・・・」

天井を見てゆっくりと溜め息をつくマサシ。

「とりあえず何か御用があったら呼んでください、私は奥に居ますので」
「「ありがとうございます」」

声をそろえて礼を言うマサシとジゼル。そして医師は奥の部屋へ歩いていった。医師が退室したのを確認したマサシはジゼルの方を見た。

「・・・・俺達が眠っている間に何か大きな事が起きてなければ良いんだけどな」
「ええ」
「まあ、深く考えても仕方が無い、今は体を休めよう」
「フゥ、自分から話し出しておいてよく言うね」

笑いながらマサシに小さくツッコムジゼル。そして二人はその会話を最後に再び眠りについた。





二人が眠りについてから更に二日後、マサシとジゼルは起き上がり歩く事ができるまで回復した。二人は服を着替えて病室の前の廊下に立っていた。

「大丈夫かジゼル?」
「うん、時々痛むけど大丈夫だよ。マサシはどう?」
「俺も少し痛むけど大丈夫だ」
「そう、よかった」

お互いに小さな笑みを見せるマサシとジゼル。すると声が聞こえてきた。

「おーい!」

声のする方を向くマサシとジゼル。手を振るコンタとユウタ、シオン、レイナ、ネリネが入ってきた。実は昨日、二人の所に意識を取り戻したと聞いてやって来たエミリアが二人に話が有るから自分の所に来てくれと言ってきたのだ、言わばコンタ達は迎えだ。

「マサシ!ジゼル!」

コンタは二人が目を覚ました事を喜びマサシの下へ駆け寄りマサシに跳びついた。そしてその瞬間。

「イッテ〜〜〜〜〜〜!!」

体に走る痛みに高い叫び声を出すマサシ。それを見たジゼル達も驚いた。そしてユウタが慌ててマサシの下へ駆け寄ってコンタをマサシから離した。

「ば、馬鹿!マサシはまだ病み上がりなんだぞ!」
「あっ!そうだった、ゴメン・・・・」

状況を思い出してマサシに謝るコンタ。

「マ、マサシ、大丈夫?」
「あ、ああ・・・・なんとかな・・・・・・」
「本当にゴメンマサシ。つい嬉しくて」
「ハハ、もういいよ」
「全く・・・・」

コンタの行動に小さく溜め息をつくユウタ。ユウタの後ろからシオン達も早歩きでやって来た。

「もう体は大丈夫なの二人とも?」
「ああ、歩けるくらいまで回復したよ」
「あたしも大丈夫」
「そう、よかった」

シオンに続いてレイナとネリネも話しかけてきた。

「無事で何よりだ」
「心配したのよ、でも目が覚めて本当によかった」

相変わらずクールに言うレイナと温かく微笑むネリネ。そしてマサシとジゼルはゆっくりとコンタ達の方を見て口を開く。

「皆、心配かけたな」
「あたし達はもう大丈夫だよ」

二人の元気な顔を見て安心するコンタ達は自然と笑顔を見せた。そんな中でユウタが二人を見て言った。

「よし、行こう。エミリア様が作戦会議室で待ってる」
「ああ」

マサシはユウタを見て頷きエミリアの待つ作戦会議室へ向かって歩き出し。それに続いてジゼル達もマサシの後をゆっくり付いて行く。しばらく歩いていくと、ユウタが一つのドアの前で立ち止まった。マサシ達もそれにつられて立ち止まる。そしてゆっくりとドアをノックした。

「エミリア様、ユウタです。マサシとジゼルを連れて来ました」
「入ってください」
「ハイ」

ユウタはゆっくりとノブを回してドアを開く。部屋の中では大きな縦長の机が置いてあり、それを囲むように上下に一つずつ、左右に四つずつ、合計十個の椅子が置かれている、そして一番奥の椅子にエミリアが座っていた。

「ご苦労様、皆座ってください」

エミリアに言われて神竜隊の隊員達はそれぞれ椅子に座る。マサシ、ユウタ、シオン、レイナはエミリアから見て左に、そしてジゼル、コンタ、ネリネは右に座った。それを確認したエミリアはマサシとジゼルの顔を見て優しい声で話しかけた。

「二人とも、体はどうですか?」
「少し痛みますが大丈夫です」
「あたしも大丈夫です」

エミリアは元気になった二人を見て温かい微笑を見せて頷いた。そして今度は真剣な表情で神竜隊を見た。

「さて、マサシとジゼルが元気になたところで、これまで起きた事を振り返って見ましょう」

エミリアの顔を見て同じ様に真剣な表情で頷く。そしてエミリアは話を続けた。

「ヘルデストロイヤーとの戦いが停戦して十日が経ちました。それから各地で様々な事件が起きています」
「エミリア様」
「ハイ」

エミリアが話している最中にマサシが手を上げて彼女を呼んだ。

「さっき停戦、と仰いましたよね?」
「ええ」
「終戦、じゃないのですか?」

マサシはエミリアの言った事が気になり質問する。ヘルデストロイヤーの戦いでは自分達(ライトシンフォニア)が勝利したのに、終戦ではなく停戦、つまり戦いを停止した状態になった事が引っかかったのだろう。

「確かに、彼等との戦いでは私達が勝利しました。ですが、ディアボロスとルシフェルが現れた事で状況が複雑になってしまった為、一時的に停止状態にしたのですよ。それに、もしもの為に・・・・」
「もしも・・・・?」

エミリアの言った事を聞き首を傾げるマサシ。

「いずれ話します。話を戻しましょう、マサシとジゼルが眠っていた十日間の間に色々な事件が起きていました」
「事件、ですか?」

ジゼルがエミリアの顔を見て尋ねる。エミリアはジゼルの顔を見て頷いて言った。

「ええ、各地でヘルデストロイヤーの残党が潜んでいると情報が入ったのです。そしてそこを偵察に向かった人々が何者かに襲われて死体となって発見されたのです」
「「ええっ!?」」

初めて聞く情報に驚くマサシとジゼルは声を揃えて驚いた。

「これまで発見されたヘルデストロイヤーの残党部隊は全部で16部隊、そしてその全ての部隊が毒殺されていたのです」
「毒殺?」
「ええ、コンタとシオンが発見した濃緑色の毒と全く同じ物です」
「という事は・・・・」

マサシが何かに気付いてエミリアの方を向いて言う、エミリアは頷いて口を開いた。

「そう、ベンヌでヘルデストロイヤーの傭兵達を襲った犯人と同一犯、そしてその犯人がディアボロスとルシフェルの眷属という事です」
「・・・・・・」

黙り込んで俯くマサシ。心の中で「やっぱり」と思ったのだろう。

「これは私の予想ですが、彼等は近いうちにこの世界の人々に宣戦布告をしてくるでしょう」
「それじゃあ、俺達はその宣戦布告に備えて体を鍛えておくのですか?」

マサシが今後の事を訊くと、エミリアが今度は少し悲しそうな顔をしてゆっくりと喋った。

「ええ。但し、貴方とジゼルはいいです・・・・」
「え?」
「エミリア様、それはどういう事ですか?」

エミリアの言った事が分からないマサシとジゼル。そして次のエミリアの言葉に二人は驚愕した。

「マサシ、ジゼル、現時刻をもって貴方達二人に神竜隊からの除隊を命じます」
「「!!!?」」

エミリアからの突然の除隊命令。マサシとジゼルは言葉を失った、一体エミリアは何を考えているのだろうか!?


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