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作品名:ラビリアンファンタジー 作者:ディオス

第128回   第百二十七話 停戦

ディアボロス達が仕掛けたセムテックスが爆発し、ベンヌは墜落しようとしている。そんな中でエミリアは何かを思いつきマサシ達に指示を出し始めた。

「うう、結構揺れるな」

気絶しているユウタ達を集めて部屋の隅で座り込むマサシとジゼル。エミリアとゾークは操縦システムを操作してベンヌを動かしていた。

「おいエミリア、一体どうするつもりだ?いい加減に説明しろ」
「このまま放っておいたらいつかベンヌは墜落して多くの犠牲者を出すわ。だったら人気の無い所までベンヌを飛ばしてそこに不時着させるのよ」
「何を言っている!奴等はこのベンヌのいたろ所にセムテックスを仕掛けたと言っていた。不時着したとしてもその時の衝撃で爆発していないセムテックスも爆発する、大爆発は免れないぞ!」
「分かってるわ、だから不時着する直前で私の力を使ってテレポートするのよ」
「何?だが、それだと少しでもタイミングがずれたらおしまいだぞ!」
「他に方法は無いでしょう!とにかくベンヌをできるだけユピローズから遠ざけて!」
「・・・・分かった」

エミリアの一か八かの作戦に仕方なく乗る事にしたゾークはベンヌを操縦し始める。ベンヌはあちこちから煙を上げてサンドリアから離れていく。ベンヌの移動に気付いた地上のライトシンフォニア、サンドリア、そしてヘルデストロイヤーの傭兵達は戦いを止めてジッと見ている。空中で待機していた両会社の戦闘機隊も驚いて見ていた。

「・・・・よし、ここまでなら」

やがてベンヌはサンドリアから約20K離れた山脈近くまで飛んできた。すでにベンヌはいつ墜落してもおかしくない程にまでに煙を上げ、損傷していた。

「ここならいいだろう」
「そう・・・・」

エミリアはマサシとジゼルの方を見て二人を呼んだ。

「二人とも、皆を連れてこっちに来て」

エミリアに呼ばれて二人はユウタ達をエミリアの下へ運んでいく。だが、今の二人はただの人間であるため全員を運ぶのにかなり時間がかかった。そして全員を運び終え、操縦していたゾークもやって来た。

「それじゃあ皆、一箇所に集まって」

マサシ達はエミリアに言われたとおり一箇所に集まった。エミリアは集まっているマサシ達に両手を向ける、すると彼女の両手が光だしマサシ達を包んでいく。そしてエミリアはゆっくりと光の中に入る。

「行くわよ、皆!」

エミリアが叫んだ瞬間、光がマサシ達を包んで弾けるように消えた。その直後、ブリッジは爆発と炎に包まれ、ベンヌの高度が一気に下がり、山脈にぶつかりながら墜ちていく。最後には地面に激突し大爆発を起こした。それをサンドリア付近で驚きながら傭兵達は見ていた。その後、ベンヌが墜落し、ヘルデストロイヤー社長のゾークがエミリアに敗北したと伝達が入りユピローズ大戦は停戦したのだった。





「くぅ〜」

ユピローズ大戦から一週間後、微風と温かい日差しの出ている昼下がり。サンドリアの近くにある草原の丘で眠っているコンタ。ベンヌが墜落した後、エミリアのテレポートのおかげで助かったマサシ達は地上にいたシンディや市松達と合流して全軍に停戦を報告。その後に彼等はライトシンフォニアの駐留基地に向かい治療を受けて五日前に目を覚ました。

「コンタ・・・・」
「くぅ〜」
「コンタ、コンタ」
「ん〜」
「コンタ!起きなさい!」
「ワッ!」

突然名前を叫ばれ飛び起きるコンタ。辺りを見ると自分の後ろに腰に手をつけて自分を見下ろすシオンがいた。

「こんな所でサボってたのね」
「シ、シオン姉さん、脅かさないで下さいよぉ・・・・」
「サボってるアンタが悪いんでしょ?まったく」

怒られながらゆっくり立ち上がるコンタは服についている葉を掃ってシオンの方を向いた。

「少しぐらいサボってもいいじゃないですか、ただでさえ復興作業で忙しくて休む暇が無いんですから」
「仕方ないでしょう、先の大戦で多くの犠牲が出ちゃって人でも不足しているんだから」

実はこの一週間、彼等は世界各地で街の復興作業に協力していた為、殆ど休んでいなかったのだ。コンタが草原で眠っていたのも作業をサボって休んでいたからである。

「こうしている間にもユウタ達は復興作業や逃げたヘルデストロイヤーの残党探しに専念しているんだから、少しは我慢しなさい」
「ハ〜イ」

シオンの注意に軽く返事をするコンタ。二人は丘を下りてサンドリアへ向かって歩き出した。

「ゾークはあれからどうしていますか?」
「相変わらずよ。独房の中で大人しくしてる」
「生き残ったヘルデストロイヤーの傭兵達もですか?」
「ええ」
「そうですか、でもどうして大人しくしてるんでしょうか?あの人達がその気になれば脱獄だってできる筈なのに・・・・」

コンタが腕を組んで考えるとシオンが隣を歩くコンタを見下ろしながら言った。

「エミリア様の話だと、ゾークはやり方は残酷だけど戦士としてのプライドは持ってるみたいよ。負けた時は素直に負けを認めるって言ってたわ」
「素直に、ですか・・・・」

なんだか信用できないなぁ、と言いたそうな顔をするコンタ。

「加えてアイツ等はベンヌと幹部五人を失ったわ。主力と言う戦力が無い以上、脱獄してもすぐに捕まるって考えてるんでしょうね」
「成る程、それなら納得」

コンタはポンッと手を叩いて納得した。そして今度は少し深刻な顔をしてシオンに尋ねる。

「そう言えば・・・・」
「ん?」
「マサシとジゼルはどうなんですか?」

マサシとジゼルの名前が出た瞬間、シオンは足を止めた。コンタも同じ様に立ち止まる。

「・・・・・・相変わらずよ」
「・・・・意識不明、ですか」
「ええ・・・・」





サンドリア城の一室。部屋には沢山の機械が置かれており、その部屋の端に二つのベッドが並んでいた。そのベッドには上半身裸のマサシとツインテールから髪をほどいき、寝巻き姿のジゼルが眠っていた。二人とも酸素吸入のボンベを付け、体のいたろ所に包帯、そして点滴を受けている。そして二人の周りにある機械は全て医療機器。マサシとジゼルは停戦直後に意識を無くしてしまいそのまま駐留基地に運ばれたのだ。しかし一週間たった今でも二人の意識は戻っていない。

「もう一週間経つのか」
「ああ・・・・」

マサシとジゼルの眠っている部屋の前でユウタとレイナが書類や箱を持ち、立ち止まりながら話している。

「医療班は仮死状態に近いって言ってたぜ」
「無理も無い、契約者の力を失った状態でディアボロスとルシフェルの攻撃を受けて助かったのだ。それだけでも奇跡だ」

二人はマサシとジゼルの部屋の前を通り過ぎ廊下を歩きだした。部屋のドアには日本語とラビリアンの文字で「医療班以外立ち入り禁止」と張り紙が張られていたのだ。つまり面会も見舞いも禁止、完全にICU(集中治療室)状態になっていたのだ。

「俺達は契約者と聖天使人の回復力が有ったから二日で目が覚めたけど、あの二人は普通の人間と大して変わりないからな」
「仮に意識を取り戻したとしても二人は力を失い、自分達の中にいたもう一人の自分達にやられたのだ、きっとショックを受けるだろう」
「だよな。ところで、エミリア様は今後二人をどうするつもりなんだ?」
「分からない、それは二人が目を覚ましたときに話すのではないか」
「そうか。ところでネリネは?」
「ネリネならゼルキアスでヘルデストロイヤーの残党を探しながら復興作業に取り組んでるみたいだ」
「大丈夫なのか?」
「今回はライトシンフォニアの部隊も同行しているから大丈夫だろう」





ゼルキアスの首都、ロードグランから3K離れた所にある森丘(しんきゅう)。そこ警戒しながら進んでいくライトシンフォニアの傭兵達、その先頭には騎士剣を構えているネリネがいた。

「この辺りに間違いないのね?」
「ハイ、偵察隊の報告ではヘリで探索中に森の中でヘルデストロイヤーの傭兵らしき者を見たとの話です」
「そう、それじゃあまずは森の中とその周辺を調べましょう」

ライトシンフォニアの傭兵から話を聞き、的確な指示を出すネリネ。ネリネ達はヘルデストロイヤーが確認されたと思われる森へ入って行った。森に入ると、木の影で少し暗くなり少し不気味になってきた。ネリネは騎士剣を構え、ライトシンフォニアの傭兵達はG36を構えて辺りを警戒した。

「もしここにヘルデストロイヤーが潜んでいたらどこから攻撃してくるか分からないわ。皆、十分気をつけて!」
「「「ハイ!」」」

ネリネの言葉に声をそろえて返事をする傭兵達。そんな時、ネリネが片手を挙げて傭兵達に止まるよう指示を出した。傭兵達が立ち止まって前を見た。

「見て」

ネリネは膝を付いて足元に落ちていている細長い黒い物を拾った。

「これが何か分かる?」

ネリネは傭兵に黒い物を差し出して尋ねる。しばらくすると、傭兵は黒い物をネリネに返して言った。

「これはMP5の弾倉(マガジン)ですね。ヘルデストロイヤーが使っている銃のですよ」
「じゃあここに彼等がいた事は間違いないわね」
「そうですね・・・・」
「各員二人一組になって散開して捜索!範囲は50m以内!」

冷静に、そして正確に傭兵達に指示を出すネリネ。指示を受けて捜索を始める傭兵達。しばらく探してはいるがなかなかヘルデストロイヤーの残党も手掛かりも見つからない。

「いない、もうここには居ないのかしら」

ネリネは辺りを見回して考えていると、突然背後から声が聞こえてきた。

「ネリネ隊長!ちょっとこっちに来てください!」
「・・・・?」

どうやら何かを見つけたらしい。傭兵に呼ばれてやってくるネリネ。そして彼女は傭兵が見つけた物を見て驚いた。彼女の目には苦しそうな表情で息絶えたヘルデストロイヤーの傭兵達の死体が飛び込んだ。しかもその死体全てに濃緑色の液体が付着していた。

「この液体は、もしかしてシオンとコンタが言っていた猛毒・・・・?」

ネリネは停戦後にシオンとコンタから聞いた事を思い出した。

「急いでこの事をサンドリアの本部に知らせて!」
「ハ、ハイ!」

ネリネの指示を受けて慌てて無線機のスイッチを入れる傭兵。ヘルデストロイヤーとの戦いは終わった。だが、ラビリアンの存亡を賭けた新たな戦いが始まろうとしている。そして、すでにその戦いは近づきつつあったのだ。


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